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ホカホカ
しおりを挟む日が明けて、朝の仕事を終えると餌トカゲの生皮をエメラルダスの元へ持って行き、序にピンクの尻尾も見てもらう。色はともかく、柔らか過ぎて装備としては使い物にならないそうだ。
店の中に屯してた野次馬達も生皮を覗き込んだり触ったりして店主の邪魔をする。加工前後の状態を見比べて俺もぺたぺた触られた。俺は歩くマネキンだから諦めざるを得ない。お値段はそれなりだが、全身ギトギトにしなければオプション価格で揃えられるのだから冒険者の手も伸び易いのだろう。中には装備の内張りにしたいと抜かす金持ち冒険者も居るが、学ランの内側を赤くしてた俺に口を挟む資格は無い。
「あ、カケルさん。鎧の掃除は終わってるから持ってって」
商談してたエメラルダスが思い出したのか、カウンターの中をゴソゴソして海竜の鎧を出してくれた。
「おい店主よ、その青いのも良いな。偶に同じ色のを見掛けるが、幾らだ?」
「装飾無しの一揃えで六千万くらいかな。けど在庫無いから揃えは無理だね。見積もり立てる?」
「…緑の方にする。元々其方が目当てだからな」
「それが良いわね。リザルトは越境すれば手に入らない事も無いけど、アレは海竜だからさ。獲れる人一人しか知らないし」
流石に高過ぎるよな。コレ一揃えでセカンドハウスの土地が買えてしまう。商談中の冒険者は値段を聞いて青鎧から目を逸らした。
メンテの終わった鎧を受け取り、昼前迄防具屋でマネキンしたら施設で飯を食ってそのまま午後の部へ。主婦の他に、店屋の女将もチラホラ居て、俺から直接買い付けしようと画策して来た。しかし加工はエメラルダスの専売特許。なのでエメラルダスから買わねばならん事を理解すると諦めてエッチに集中した。彼女等にして見れば、昼間に外出する口実がメインで、値切れたらラッキーと言う程度なのだろう。
仕事の後は、朝の部から午後の部へとシフトが変わったテッチ達ノースバー女子に福利厚生をして、夕飯迄島でゲル製容器を試作して過ごした。結果、一度板状で固めてから熱い内に型に嵌めて形成するのが良さそうだと分かった。プロの作ったゲル版が強い。やはり餅は餅屋だ。
夜の部を終えて戻ると、まだホカホカな容器を取り出して食堂に居たラビアン達に見てもらう。
「硬そうですね。灯りのカバーは結構脆かったので、これに模様を刻んだりすると良いかも知れないですね」
「細かく刻んでからくっ付けても良さそうなのです」
「容器としても充分使えそうですね」
「汚れ落ちが外から見えるのが良いです」
丈夫さは明日にでも試してもらう事にして、この線で量産化に踏み切ろうと思う。寝る前の時間に容器の量産と灯りカバーの試作をして寝た。
翌日。俺は朝の部を休みにしてもらい、耐久テストをするイゼッタとネーヴェに付き合う。焼き部屋の床にゴリゴリガシガシする横で、俺は量産した容器のバリを取る。
「カケル、前より丈夫になってる」「けど、ザラザラ」
「前よりはマシになったな。落とした時の割れ具合はどうだ?」
「私の背丈じゃ割れなくなった」「もっと高いとダメー」
「陶器や木桶でもそんなモンだし、中身入ってそれなら及第点かな」
「「おおー」」
取り敢えず、容器が三百出来たらスープの素を売り出す事にするとラビアン達には伝えた。
次に灯りのカバー。江戸切子みたいに切れ目や模様を入れたりしたが、切削カスが危ないので却下とした。なのでゲル版を大小様々な角切りにして、ゲルに浸した後型に詰めて押し焼きする。部屋が暑くなってイゼッタが逃げたので、これはまた後で見る事に。
昼食を摂り、午後の部を終えて向かったのは建具屋。作業場でゲル版を作る職人達に島から持って来た型を見せながら、プロのゲル版を使って実際に作って見せた。
「へぇ、熱いまま型に入れる訳か」
「版でそれやったら親方から大目玉食らうけどな」
「冷やすのは水でも良さそうだな」
俺は自然冷却させていたが、プロは水冷すると言う。縮みや貫入が入るのを恐れての事だが、ゲル版にはそれが無いらしい。
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