女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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徒手空拳

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 どうにかこうにか、大人の威厳は保たれた。が、今度はタイマン張れと言う。魔装の使用は無しにして、しっかり物理で対峙した。

「ひっ、ひいっあひーっ」

「チクショーッ!やっぱ手の長さの分不利だーっ」

こっちはバット、相手は小剣。この差をフットワークと獣人特性とスキルで補って来るのだ。生きた心地がしない。真剣を使った挙句鬼ごっこさせられているとは言え、これは騎士も真面目にやらんと殺られてしまう。そこらの人の子じゃかなりキツいぞ?

「兄貴っ、次俺ー」「ああっ俺もお」「僕もー」

やめてくださいしんでしまいます。回復掛けて水飲んで、インターバルください。

「「「はーよ、はーよ」」」

「干し芋食って待て」

急かしよる。

「兄貴ってさー、心と体が一緒に動いてないよなー」

「あー、なー」

モグモグタイムの中、俺と一戦交わったダートが口を開き、ガットはその意見に乗った。

「どゆことー?」

ニットとハークは理解出来なかったのか首を傾げる。

「俺もまだまだ未熟でな。スキルに振り回されてんのさ」

「な。見てて思った」

「それなのに一発も当てられねーんだぜ?」

「あー、避ける先分かんないもんねー」「さ、さすかけー」

心も体も動こうとしてるのに、《逃げる》等移動系のスキルはノーモーションで来るから何方も付いて行けない状態なのだ。ミーネズブートキャンプを耐え切った兄弟子達はその事に気付いたようである。ハークはその場の流れに乗ったな。

息を吹き返し、ガットニットをボコにして、ハークの膝を折った所でブルランさんが帰って来た。

「カケル殿…」

「…ハ、ハークッ。お前の心はまだ折れて無い筈だ!この程度で音を上げるな!」

「爺やぁ…」

「カケル殿…」

「……加減はしたんだからねっ。治すから此処迄ーっ」

有無を言わせず《治癒》をして、はいはいそれまで。

  「爺やに仇討ちして欲しかったのにー」
聞こえているぞ?

「徒手空拳では勝ち目がありませぬし、装備を纏っては命の遣り取りになり兼ねませぬ」

「スキル無しだと俺がボコボコにされるからな?」

「「「見たいっ!」」」

流石兄弟子!俺がされたくない事を平然と言ってのけるッ。そこに痺れたり憧れたりはせんぞォ!

「ハークは、俺がボコにされて転がされるのが見たいのか…」

「頑張って!」「応援してまぁ~す」

とほほ。徒手空拳、スキル無しで対峙する事になっちまった。

「《逃げる》スキルと《並列思考》は自動発動だから」

「初めて耳にするスキルですな。では、私も《身体強化》を使わせて頂きましょう」

言わなきゃ良かった。結局スキルバトルになっちゃったよ。

「カケルさぁ~ん」

リュネ!助けてくれるのか!?

「鎧、強過ぎですよ~」

鬼悪魔リュネ。脱いだらアイツがこんにちわしちゃうでしょうが。練兵場の隅でカナブン鎧にフォームチェンジした。これなら普通の皮だからな。

「「「すげーっ!」」」「カケル何それーっ!」

「ふ、普段着にしようと思ったら、派手過ぎたんだ」

「流石は冒険者と言った所でございますな。では…」

《強化》系スキルを帯びたブルランさんが構えると、スッと前に出る。一瞬で必殺の間合いに詰められたが、左に回り込みながら避ける。手の内を探ろうとしているブルランさんだが、手の内の無い俺はローキックだ。執事服のズボンを少し汚して間合いから離れる。させじと寄って来ては拳を突き出して来るのを今度は体勢を低くして躱し、脛への前蹴り。後ろへ跳ねて間合いを取る。間合いに入って拳を繰り出すブルランさんに対し、俺は執拗な迄にローを当てて間合いを取る。加減して、加減して…。

「カケル殿、此処迄でございます」

そしてブルランさんが折れた。両脚の異変に気付いて膝を折り、負けを認めた。

「爺や!何で!?」

「陛下、恥ずかしながら、足が折れてしまいました」

「ハークも骨折って終わりだったんだ。此処迄にしような」

「兄貴の戦いってやるぶんには楽しいけど見るのはつまんねーよなー」

余計なお世話ですよ。




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