1,468 / 1,519
耳が長くなる
しおりを挟むお椀を出す事で、バシットは此処を折り返しにすると決めたようだ。他の者はと言うと、バシットがお椀を出すのを見て諦めたようだ。ゴネて戻っても十階分なら誤差と見たのだろう。ペース配分が出来る此奴等はやはり優秀な冒険者だと思う。俺も鍋を出す。
「カケル、交代だ」
夜警の交代を告げるギルマスに起こされ、俺は身を起こす。
「目が乾いてシパシパするな」
メットを外すと魔法の水を玉にして顔を突っ込む。当たる瞬間ぽよんとしておっぱ感あり。
「水魔法も使えたのか」
「生活魔法の範囲でな」
ギルマスはまだ起きてたようで、水魔法を使える事に関心を示す。
「人妻乙女を助けたのだろ?」
「…まあな」
「何故、此処迄?」
ダールッターは確信して質問を投げ掛けている。答えてやるのが筋だろう。
「精神攻撃に耐えられる人種が居ないからだよ」
「だが、君は助けられた」
「人妻乙女のお陰でな」
「どう言う事だい?」
「あの五人の内、四人は真のドラゴンが人化したモノだ」
「…初耳だね。耳が長くなるよ」
「何だいその格言は。…まあ、ドラゴンが人の子と幼いドラゴンを守る為、力を使った結果、動けなくなった訳だ」
「それを助けたのか」
「それと、精霊が居なければ遭難現場迄行く事も出来無かったよ。対価として目玉一つ、使えなくなったがね」
「目玉…え?魔道具?うわ…埋め込んだのかい?」
素顔から覗く俺の左目を見てドン引きしとる。魔力視で見たからだろうな。
「ドラゴンの母にやってもらった。怖かったぞ?」
「ふぅ…。人に化けるドラゴンなんて、物語の中だけかと思っていたよ…、けど、まだ欲しい答えは聞けてないな」
「幼い娘を虐められたドラゴンが激オコでな。街を凹みにする所だったのを止めた結果だ」
「街…よりは、マシ…なのか」
「俺はそう思ってる」
『そんな事しませぇ~ん』
「うっ」
「ふむ。入場記録は一回しか無かっ…どうした?」
「ドラゴンからの思念が届いた。あまり身内の恥を晒すな、とな」
「これ以上は君の命が危うい、か。此処は退こう。だが、復興の手伝いはして欲しい。この街は私のような者でも隔て無く生かしてくれる」
「仕方無い、か」
「そろそろ寝るよ」
仕方無いな。俺も此処の女達好きだし。
起きて飯を食い、今日から折り返し。心の憂いが晴れたのか、ダールッターはにこやかだ。逆に俺は悩ましいぜ。
帰りは敵も殆ど居らず、掘られた穴を進むだけなので進行が早い。疲れ易い魔法職の休憩を挟みながらも七十階迄上がり、翌日は二十五階、三日目の午後にして地上に出る事が出来た。
「報酬は責任持って振り込むよ。報告書は部屋で書けるからね。皆、お疲れ様」
本来ならギルドに戻って報告するのだが、ギルマスが直に見て来たのだからその必要が無い訳で、冒険者達はダンジョン入口にて解散となった。そして男達は風呂へ向かう。俺は先に宿へ向かうと断って男達と別れた。《洗浄》すれば一瞬だしな。
「来てくれると信じていたよ」
「来ないと指名手配にするつもりだったろ」
「ハハ、まさか」
嘘吐きは《洗浄》だ。風呂にも入らずギルマス室に篭った男の匂いを嗅ぎたくない。窓も開ける。
「びっくりしたが、成程、キレイになった。君は本当に多彩だね」
「取り敢えず、復興計画は後で書面か図面で提出する。それで良いか?」
「街のお歴々が納得出来るなら、ね」
「オーバーフローしなくなっただけでも喜んで欲しいモンだが」
「その分恩恵もあったんだよ。ドロップ品や入場料の収益、街に流れる金もね」
「最近の買取目録見せてくれる?」
「守秘義務なんだが…」
「その額を目標にしないと何作ってもダメ出しされそうでな」
「一番はダンジョンに戻す事なんだが、流石に無理だろうしね」
「魔素を流し込めば魔物は湧くが、ブフリムやらミミッキュ、後はゲルの仲間だしな…あ」
「戻せる宛があるのかい?」
ある、には、ある。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる