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街に着いたら馬車のメンテナンスは欠かせない
しおりを挟むガッポガッポとセイコーが歩いて行くと、視界が開けて正面に木の柵が見えて来た。その手前には目印だろう木が生えていて、右の道は深い轍が出来ている。順路は左のようだな。畑の世話をする農民を見ながら左折して、平和な街道を歩いてく…。
「ゲインさんっ!」
バチッ
「ぎゃっ」
メロロアが声を上げ、俺の体を跨ぐ。同時に投石したのだろう、可愛らしいガキの声が痛そうだ。
「止めてやれメロロア」
「ゲインさん、察知してたのに無視してたんですか?」
「馬車が来たら石くらい投げるだろ?」
「投げませんよ!?」
「投げた事無いわね」「同じく」
「あたい、ある…」
「ほらな?おーいガキンチョ、怪我はないか~?」
痛そうに手の甲を擦るガキンチョは、俺を見て悪態をついた。
「くそっ、大人になったら見返してやる!」
「そう言うのは親の手伝いちゃんとやってから言え~。仕事出来なきゃ大人じゃないぞ~」
「ちくしょう!」
平和なモノである。
「ゲインさん、どうして放置したんですか?」
俺の膝に座るメロロアを退かす。前が見えんだろうが。
「馬車を見たら石投げたくなるモンだろ。あのくらいの子供だとさ。なータララー?」
「あたい、すっごい怒られた」
「馬車の中に何が入ってるかの予想が出来てないからな。命知らずな年頃なんだよ」
「何よそれ。貴族だったら首が無いわよ?」
「土地の貴族じゃ無かったら飛ぶよな。土地の貴族は死なせたら収量減るからむち打ち程度だ」
「ゲインはむち打ち?」
「兄さん共々、父さんのゲンコツで済んだよ」
「それは…、ご無事で何より、で良いのでしょうか…」
その後は草原広がる街道を何事も無く進み、1つ目の休憩地は混んでいたのでスルー。少し離れた所でセイコーに水を与え休憩。その間に、カウモアと草刈りして干し草を確保した。
「おやつにカツリョクソウ採って来たぞ」
ウォーターでサッと洗ったら、お皿に盛って好きにお食べ。
「わーい」
「生で食べるんですか?」
「美味しいわよ?」
メロロアは生薬草を食べた事が無いようだ。美味いと言われて渋々齧ってた。甘くても生ではちょっと抵抗があるっぽい。
「アントルゼ嬢、野性味が増しましたね…」
「立派ですよ」
セイコーの休憩が終わったら、再び移動を開始する。馬車の中で昼飯を食べながら、そろそろ今夜の寝床を考える。
「次の休憩地で野営すると、街には午前中に着けると思うのだが、みんなはどう思う?」
「セイコーさんに頑張ってもらって、更に進んで村に泊まれば午後には街に着きますね」
「そうだな」
「んで?どゆこと?」
「いつ街に着くかを逆算してるのね」
「んーと、明日の午後か、明後日の午前って事?だよね?」
「そうだな」
「何となくだけどさ、ゲインは村には行きたくないって思ってる気がする」
「そうかしら?とっとと街に行って、鎧を脱いでお風呂に入りたいって思ってるわよきっと」
「予想が割れましたね。ゲインさんの回答は?」
「どっちもなんだ。早く着ければそれだけ敵に遭う機会も減るし、村でいざこざに巻き込まれるのはまっぴらってのもある。みんなも風呂に入りたいだろうし、セイコーも洗ってやりたい」
「ブルブルブルッ」
「セイコーちゃんも水浴びしたいみたいだね」
「結構汗かくからなー。メロロアはこの先に川はあると思うか?」
「国境まではありませんね。けどあそこは降りられませんよ」
「メロロアさん、それって国境だから?」
「はい。国境前で変な事してると捕まっちゃいますよ?」
国境まで川が無い。川があっても降りられないし使えない。そんな所に国境なんて作るなよと言いたい。
「…ゲイン様、例えばですが、足を使って休憩地まで行って、場の雰囲気を見て先に進むか決めても良いのかと。それに、村の手前で陣を張るのも一つの手ではあると思います」
「折衷案ね」
「川でもあればそうしたんだがなぁ。取り敢えず、村に行く体で移動してもらうか」
話の結果、足を使って休憩地まで行く事にした。セイコーはチラリと俺を見て、徐々に速度を上げて行った。
この街道は、轍は無いが石で補強されているので早く走ると結構揺れる。オマケでもらったクッションでは衝撃に耐えきれない。アントルゼが喚くし、俺も痛い。
「皆さん、こんな時こそ壁歩きですよ」
メロロアが車内のみんなに告げる。壁にくっ付いてどうなるんだ?
「壁に背中を付けて張り付いてみて下さい。お尻への衝撃は無くなりますよ。ゲインさんもやってみてください」
「そっ!そう言うのはっはやっ早く言って欲しいわっ!」
「あ、確かに。メロロアさんの言う通り、背中が張り付くと少し楽になりますね」
「あた、あたい。鎧のせいで滑っちゃうんだけど…」
「タララはマットか毛布を敷いて何とかするしか無いな」
タララに毛布をあるだけ渡すと、雑に畳んで尻に敷く。その状態で壁に張り付くと少しだけマシになったと言った。俺も背中を壁にべったり付けたら尻を叩かれなくなったよ。
「ふぅー。助かったわ。まったく、何でお尻を叩くのかしら!」
「バネが無いからですね。もっとも、バネがあっても速度を上げると揺れますが」
「人の体が馬車に跳ね上げられるからですね。跳ね上げられて、床に叩き付けられるんです。そのタイミングでまた跳ね上がるとガツンと来る訳です」
「理屈は分かったわ。道がガタガタして、こうなる予想があったからゲインは考えてたのね」
「俺だって尻が痛いのは嫌だからな。それに車輪も痛む」
セイコーの頑張りにより、村への分かれ道には予想より早く着いたと思う。一時停車し水をやり、俺達は体を伸ばしたり尻を揉みほぐしたりて体を休めた。
「ゲインさん。取り敢えず不審な感情は見えませんね」
「予想より早く着いたと思うから。先に進みたいなら同意するぞ」
「セイコー次第って事よね?」
「そうだな。セイコー、どうだ?」
「ブルル」
「やる気はありそうね」
セイコーのやる気を信じよう。水を飲み終えたらセイコーのタイミングで出発だ。3人が車内に張り付くと、意外と車内が広く見える。俺も背中を付けて準備完了。その内ガポガポ歩きだし、徐々に速度を上げて行った。
1つ目の休憩地は草地の中にポコっと膨れた小さな丘の上にあった。着いたのは夕方になってしまったが、先客が居ないのでとても助かる。手分けして陣地を構築しなければならない。
「先にエリアを囲ってしまおう」
「ゲイン様、草を払うのが先です」
「分かった。よろしく頼む」
「昨日と同じだとセイコーちゃんが座って寝られないわよ?」
「板が足りないな。斜面からブロックを切り出す訳には行かないから、それ以外の三方を深く掘って壁にしよう」
馬車から降りると板と棒をメロロアに分けてカウモアの作業を見守る。迂闊に近付くと足が斬られちゃうからな。しばらくしてカウモアの合図があり、メロロアは板壁の準備。俺は草を集めてデリートウォーター。選別する暇は無いのでセイコーのご飯には出来ない。板壁を作る横で、タララとアントルゼがブロックを切り出して土壁を重ねて行く。
「ゲイン様、馬車を寄せます。ご注意ください」
「助かるよ」
馬車の後部が板壁に向けて寄って来る。出入りもあるので2ハーン程余裕を持たせて停めてもらった。馬車の隣は居住スペース、馬車の正面にセイコーの寝床。寝床の隣にトイレと水浴び場を作る予定だ。
板壁を建てたらメロロアは土壁を手伝う。俺は繋ぎっ放しのセイコーの装具を外して水を飲ませる。
「待たせたな。ご飯はもう少しだけ待っててくれよ?今壁を作るから」
パーティー総出で土壁作り。高さは2ハーン程だが、暗くなって来たのでこれ以上時間をかけられない。全員陣地の中に入り、トイレと水浴び場は板壁で簡単に作った。
「俺はセイコーのご飯を作るから、みんなは人のを頼むな」
「あーい」「分かったわ」「「了解です」」
荷物を出して、ランタンに火を付けるとすぐに暗くなって来た。水をグビるセイコーの横に飼葉桶一杯の干し草を与えると、モシャモシャグビグビ詰め込んで行く。
「足りなかったら教えてくれ。食べ終わったら水浴びしようなー」
「ぶるる…」
「ゲイン~、テントはどうする~?」
炊事場の一角に戻るとタララがテントの心配をする。テントを建てるスペースは取ったが作る余裕は無いな。それだったら遅くならないうちに水浴びを済ませた方が良い。
「今夜も馬車で寝よう。火の番を残して交代で水浴びしよう。人や敵が居ない内に浴びておかないとマズイだろ。タララ、先に浴びといで」
「んー。アクセサリー貸して~」
「次はカウモアとアントルゼな」
「あんたは?」
「セイコーを洗ってからな」
カウモアとアントルゼが水浴びから戻るタイミングで料理が揃い、先に夕食を摂る事にした。セイコーもおかわりが欲しいようだ。よしよし。水と干し草を補充して、やっとご飯にありつけた。
「だいぶ進みましたね」
暖かい食事に会話も弾む。出来れば静かにな。
「セイコーのおかげだ。何も無ければ明日の昼には街に着けそうだよ」
「ありがとね~、セイコーちゃ~ん」
「ゲイン様、肉はまだ充分ですが干し野菜がそろそろ、マタル粉も10ナリ袋に手を付けました。1日3ナリは使いますので買い足したいと思います」
「燻し肉も使い切りたいな。今夜は燻し肉を薄切りにして干し肉にしてしまおう」
「そっちを先に食べるんだね?」
少し早めに食事を切り上げ、アクセサリーを返してもらいセイコーを洗いに行く。ウォーターウォールを腹の位置に出し、前後させて全身を濡らしたら、食べさせない干し草でこすり洗いだ。
「痒い所は無いかー?」「ぶひひひ」
気持ち良さそうに洗われているセイコーだが、全身を洗ったので俺も全身ずぶ濡れだ。金属鎧、脱いどきゃ良かった。濡れたセイコーと地面をデリートウォーターすると乾いちゃうんだけどね。食べさせない干し草を厚く敷き詰めると、どっかり座って寛ぎだした。ゆっくりおやすみ。
乾いたとは言え汚れてるので、俺も水浴びしよう。みんなに一声かけて水浴び場で服を脱ぎ、ウォーターウォールをかけて入水する。冷たいけど汗を流せて気持ち良い。
「ゲーイーンさーん」
「…俺、まだ使ってんだけど…」
「お背中流しますね」
背後にメロロアがいた。水浴びの気持ち良さに気が緩んでいたんだな。気を付けねば。
「背中は終わりました。今度は頭洗ってあげますよ」
「頭は自分でやれるぞ?」
「適当にやって、虱が湧いても知りませんよ?タララさんの尻尾に移ったら戦力にならなくなりますからね?」
「分かったよ…」
「では、こちらを向いて…」
振り向くと、俺の首が出る程度の高さのウォーターウォールの中で器用に立ち泳ぎしてるメロロアが居た。
「抱えててくれると楽ですので、ひとつよろしく…」
「メロロア、溜まってんの?」
「そりゃあもちろん。ゲインさんと変わりませんよ。石鹸使うんで目を閉じててくださいね」
「マジかよ…」
目を閉じると、むんにゅりと柔らかいモノが顔を挟み、わしゃわしゃと髪が洗われる。
「気持ち良いですか?」
「ん、んん…」
「痒い所が無ければ流しましょう。頭を下げてくださいね」
ウォーターウォールに頭を突っ込み石鹸を洗い流す。時間をかけて頭を洗われ、だいぶスッキリした。
「ゲイン…硬くなってる」
「あまり見ないでくれるか?」
「夜でもなるのね。性欲溜まってるのかしら」
「我慢なされてますね。街に着いたら楽にして差し上げます」
「あたいが先ぃ」
「私は見てるわ。興味はあるもの」
「それはちょっと…恥ずかしいよぅ」
「出来れば触れないでやって欲しいんだがな」
「あ、言っておきますが私は触れてませんよ?」
「なのにそんなになってるの?」
「女として見て頂けたようで嬉しいです」
「俺だって外じゃなければ…、いや、みんなと冒険者続けたいから我慢だ」
「心がけは立派ね。そろそろ夜の番を決めましょ」
話を切ってくれたアントルゼに心の中で感謝して、見張りの順番を決める。タララとアントルゼ、俺とカウモア、メロロアの順となり、客車にマットと毛布を敷いて寝る。
「ゲイン様、私も女として見て下さいますか?」
「見てるぞ。街に着いたらおっぱい枕してくれ、おやすみ」
マットを二重にしていても、金属鎧だと体に当たって寝辛い。マットの枚数増やすかな…。
「…インさん、ゲインさん、敵です」
耳元で囁かれ、ハッとして目を覚ます。カウモアは既に起きていて、俺の口を塞いでいた手をそっと離した。ドキドキして胸が痛いのを我慢して感知系スキルを張り巡らせると、四足の何かが陣地の周りを取り囲み、ぐるぐると巡回していた。数は3と4が2つずつに、動いてないのが5で、その周りをうろちょろしてるのがひーふー…12。足して足して…31匹!?その全てがだいぶ警戒しているな。迂闊に動くと音が出るので俺とカウモアは動かない。動けない。
「狼にしては多いな…」
「群れを率いる者が居るのかと」
「動いてない奴のいずれかだろうな。タララ達は?」
「じっとしてますね」
大人しく帰ってくれればありがたいが、そう上手くも行かないだろう。ならばせめて防衛しやすくするか。俺は静かに鎧と鉄靴を仕舞って外に出て、皮鎧を着るのをメロロアに手伝ってもらう。革靴に履き替えると、心配気にこちらを見ていたタララ達の元に音を立てないように向かった。
「ブロックを切り出して壁を高くする。板壁は土壁で作り直しだ」
「ん」「ん…」
囁くように指示を出し、俺とメロロアは壁作りに取り掛かる。タララとアントルゼは鎧を仕舞い、下着姿で客車前で待つカウモアと合流。3人も皮鎧に着替えるようだ。
隠密行動となるとメロロアが早い。俺が切り出したブロックを板壁の場所に素早く静かに積み上げる。静かに座って俺を見るセイコーの横にもブロックの壁を作り、余ってた板を屋根として乗せた。セイコーは強いが多勢に無勢じゃ餌になっちまう。そっと鼻っ面を撫でて、空いてる一面を壁にした。
その後は壁を高くする。2ハーンだったのを4ハーンに。皮鎧に着替えた3人がブロック作りに加わって効率が増すと、メロロアは壁歩きを上手く使って、ぴょんぴょんと跳ね回りながら壁を高くして行く。俺達ではこうは行かない。訓練しなくちゃな。
馬車とセイコーの寝床以外が1ハーン程低くなり、さらに壁を厚くして籠城の構えは完璧となった。
「殺りますか?」
メロロアが問う。皮でも剥げれば明日の飯は美味いだろう。
「俺達じゃ役不足だよ。夜目が利かないし気付かれちまう」
「街に着いたらスキル探しましょうか」
「だな。今夜はここまでだ。怯えながら寝よう」
野獣との夜戦は冒険譚の定番ネタの1つだ。寝込みを襲われ命からがら追い払う話は野獣を見慣れた村人の俺達にもドキドキワクワクさせられたものだ。実際に経験して、よく笑って話せたものだと感心するよ。ワクワクしない。違う意味でドキドキしてる。
タララとアントルゼとメロロアを休ませて、俺とカウモアは毛布に包まりくっ付いて馬車の前に座って気を張る。カウモアの傍には抜き身のブロードソード。俺もお高い剣鉈を置いて静かに過ごす。ウロウロと巡回していた四足が、一斉に離れて行く。動きの無かった5匹が動き出すと、それに合わせて移動を始め、暫くすると何も居なくなった。
「ふぅ~……」
「肝が冷えましたね」
「街に着いたらスキルを買おう。お高く無ければ良いけど」
「そうですね…んちゅ」
抱き着かれてキスされた。ぷるぷるの唇が震えてるのはカウモアだけじゃ無さそうだ。震えるのを隠すように唇を重ね続けた2人は、交代のメロロアに見つかりそそくさと荷車の中へ逃げだしたのだった。
「ゲインさ~ん、チュッチュ~ん」
朝になり、朝食を食べに起きて来たメロロアにキスをせがまれる。
「口ゆすいで来い。3ピルだけ待ってやる」
「流石に無理ですよぉ」
「私はゆすいだわよ?しなさいよ」
ソーサーを温めてたアントルゼが乗って来るが、俺は早く出発したいんだ。
「街に着いて、宿に入ったらゆっくりしてやるよ。今日は片付けが多いから忙しいぞー」
「あ~い」「仕方ないわね」
「せっかく口ゆすいだのに…」
壁の量が多いから、朝の時間は無駄に出来ないのだ。セイコーを守る壁だけは取り払ったが、それでも四方に壁がある。いそいそと料理が並び、いそいそしながらいただきます。
悪くなる前に燻し肉を消費したいので、今朝の肉は燻し肉の炙りだ。残りは枚数にして304枚。食べなきゃ勿体ない。
「ゲインさん、これはお酒が欲しくなりますねー」
「酒場に売るのもありか」
「新しいお肉捕まえたら売っちゃう?」
「ああん、酷ぉい」
食事と片付けが終えたら壁を取り壊す。凹んだ地面を直さないと馬車が取り付けられないのだ。馬車の通り道はきっちりと、その他は投げ付け撃ち込んで、少しこんもりした状態にしたら装具を着けて出発だ。
「急ぐ事はないが早く着くに越した事は無いからな。セイコー、頑張っておくれ」
「ぶひ、ぶひひ」
背中を壁にくっ付けて、合図と共にガッポガッポと歩き出す。
「みんなは中で金属鎧に着替えとけよ?俺も後で着替えるから」
「あ~い」
「ゲインさん、セイコーちゃんの手網は私が見ておきますから、着替えても構いませんよ?」
感知系スキルに今の所反応は無い。ここは先輩のお言葉に従うか。1度降りて馭者を代わり、客車に入ると女達が着替えの真っ最中で、俺は降りようと思った。
「開けっ放しにしてないで早く入りなさいよ」
「お前達の魅力にやられちまいそうだよ…」
「うひひ、もっとメロメロになってもい~んだよ?」
「アントルゼ、助けて…」
「はいはい。ゲインが泣いちゃうわよ?良い女はそんな事しないものよ」
「そうですね。街に着いたらたっぷり可愛がっていただきます。タララ様は指を咥えて見ていてください」
「裏切り者ぉ~」
「タララも後でおっぱい吸ってやるから。早く着替えなされ。馬車持ちのクセに中古の皮鎧じゃ不審がられるだろ?」
「約束だかんね?」
立ち上がれなくて面倒だったが金属鎧に着替えたら、再び馭者席に着く。客車が重くなってしまったがセイコーは気にする事なく歩いてく。
「そろそろ街が見えてくると思いますよ」
乗合馬車や歩きの冒険者とすれ違い、森の切れ目に壁が見えるようになって来た。
「壁が見えるな」
「はい。あれがシュートリンガンです」
「そう言えばシュートリンガンで馬を買うって言ってたんだよな」
「はい。あの街から国境越えなので、買うならギリギリの方が良いかと。ですが幼なじみと再開出来ましたし、それもまた良しですよね」
「まあ、そうか。セイコーに再会出来て俺は嬉しいよ」
「ヒッヒヒーッ!」
歯を向いて嘶いてるが、それは嬉しいのか?感知系スキルで見ると嬉しいみたいだ。
午前中には門前に着き、やや時間があってようやく門を潜る事が出来た。この門前はもう一本街道があって、そこからの行商馬車が列を成していたのだ。この街道はサハギンの生息地の先にある街と繋がっているのだと。タララは遠回りしてスタンリーガイに来たって事になるな。
「ゲインさん、私はギルドで馬車OKな宿を聞いて来ます。あそこの駐車場に置いて待っててくれますか?」
メロロアの指差す先は馬車や馬が停められた立派な柵の広場がある。金を払って世話がなされ、泥棒からもある程度守ってもらえる施設だ。ミーミンガイでも見た馬糞箱もある。
柵の入口に立って入って来る馬車と話をしてるおっさんはきっとこの施設の人だろう。セイコーに声をかけると馬車の列に並ぶべく歩き出した。
「いらっしゃい。何泊の予定かね?」
「今連れがギルドに馬車OKの宿を聞きに行ったんだが、値段を教えてくれないか?」
「値段に関しちゃこっちの方が断然安いさ。世話付きで1日1000ヤンだ。だが大事な馬なら宿に入れた方が良い。捨てられたと勘違いして夜泣きされると困るんだ」
「そんな事もあるのか。連れが戻るまで端の方で待たせてもらっても良いかな?」
「そのままどっか行っちまわなけりゃ構わんよ」
人が居なくなったら盗られても知らないぞ?って事だな。礼を述べて柵の端に移動した。
「セイコー、もうちょっとで休めるからなー。宿に着いたらまた水浴びさせてやるからなー」
「ブルルルルッ」
「ゲインがセイコーちゃんに優しい」
「当たり前だろう?俺達を乗せて馬車を引っ張ってくれてるんだぞ?しかも給料は草と水と水浴びだけだ。労ったって良いじゃないか」
「そ~だけどさ~」
タララはブー垂れているが、馬が駄々こねたら大変なんだぞ?
「タララも撫でてやろうか?」
「セイコーちゃんの匂いが付いたら、ゲインはあたいを可愛がってくれる?」
「セイコーはセイコー、タララはタララだ。セイコーはおっぱい枕出来ないし、タララは馬車を曳けない。そうだろ?」
「約束、絶対だかんね?」
暫くセイコーとタララを構っていると、ようやくメロロアが帰って来た。
「お待たせしました!宿はバッチリ調べて来ましたよ」
「助かるよ。宿を取ったらセイコーを洗って風呂飯買い物だ」
「あ~い」「はーい」「やっと休めるのね」「了解です」
メロロアに先導されて、大通りの一本奥の通りをガッポガッポと進んで行くと、大きな壁が見えて来た。馬車持ち用の宿屋街だそうで、壁の中では数件の宿屋が合同で管理している厩舎があると言う。個人でやるより土地を広く使えて管理も楽なんだとさ。
木戸の前に立つ守衛に声をかけて入れてもらうと、まだ午前中なだけあって馬車も馬もまばらだ。場所はどこでも良いそうなので一番端の馬房を使う事にした。
「掃除するからちょっと待っててね」
馬房には入れず、先ずは馬房を掃除する。
「ウォーターウォール」
水の壁を生やしたら、そいつを収納して馬房の奥から射出すると、敷き藁と馬糞とたれ流されたおしっこが勢いよく外に排出される。
「デリートウォーター」
地面が乾いて掃除完了。昨日使い切れなかった食べない干し草を全部敷き、水桶と飼葉桶を用意したらセイコーがノシノシ入って来た。
「水浴びしなくて良いのか?」
モッシャモッシャと飼い葉を食べてる。腹減ってたんだな。せっかくだから干し野菜もあげようか。飼葉桶に干し野菜を入れてやるとザクザク齧って水をグビグビ。きっと気に入ってくれたのだと思う。
水浴びはまた後でと言う事にして、客車のチェック。メロロアにはチェックインに行ってもらった。主に見るのは足回り。多少足を使ったから車輪や車軸の減りを見ておかねばならない。折れたり曲がったりをチェックして、車輪に油を塗って前後に動かしお手入れ完了。掃除はまた今度で良いだろう。
「みなさーん、お部屋取って来ましたよー」
「ありがとな。こっちも整備終わったから部屋で着替えて昼飯にしよう」
5人用の部屋は無いようで、6人用の部屋だそうだ。部屋の感じは前に泊まった宿とさほど変わらないな。タララとカウモアの手によりベッドが3台ずつ部屋の隅に押し込まれ、部屋の入口に広いスペースが出来た。2階だから音がしないか心配になるな。
「メロロア、宿賃出すぞ~」
「あ、はーい。6000ヤンと馬房代1500ヤンです。馬房のお世話は餌と水だけなので、出来れば見てあげた方が良いですね」
セイコーが寂しくて夜泣きしたら可哀想だしな。ちょくちょく見に行ってやろう。
「そうだな、分かったよ」
6人部屋で1人1000ヤンか。意外とお高めな宿のようだな。馬房に関しては妥当だろう。メロロアに金を返した。
全員が皮鎧に着替えて部屋を出る。そして食堂で昼飯だ。料理は普通に美味い。今回はスルーしたが魚を煮た物があるらしい。夜はそれにしようかな。
食休みをしたら次は風呂だ。これもメロロアが聞いて来てくれてたのでみんな揃って公共浴場へと向かう。汚れを落としてゆっくり浸かり、店番の婆さんが呼びに来るまでぐったりしてた。
「ゲイン~、長風呂だよぉ~?」
「悪い悪い。つい気持ち良くってな。すっかり寝そうになってたよ」
「でしたら宿に戻りましょうか?買い物は明日でも構いませんし」
「そうしたいが…、干し野菜を作り増ししたいから今日のうちにある程度買っておきたい」
「だったら食料品店だけ見て行きましょ」
アントルゼの案に乗り、店番の婆さんに食料品店の場所を聞くと、中央広場の市場が安くて大量に買えると教えて貰って移動する。だが市場と言っても露店街みたいな感じで食べ物以外も色々売ってるようだった。葉物や根物、実物等色々買って1万ヤン。随分買ったが干せば箱に収まるだろう…どうかな?マタル粉も10ナリ1万ヤン買って宿に戻った。
部屋着に着替えて押し集められたベッドに横たわり毛布を被ると、すぐに誰かが忍び入る。抱きついてる感覚から、アントルゼだと分かった。
「やっぱり、ゲインは温かいわね」
「服は脱ぐなよ、俺は寝る」
「分かってるわよ、おやすみ」
反対側には居ないので、3人は対面側で寝てるのだろう。鎧から開放された俺は抱き締められる温もりを感じてすぐに眠りに着いてしまった。
現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/D
HP 100% MP 92%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D
所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆ 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス
鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き
水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ
土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン
火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー
所持品
革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
水のリングE
水のネックレスE
革製リュックE
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 9ハーン
└布カバン
├冊子
├筆記用具と獣皮紙
├奴隷取り扱い用冊子
└木のナイフ
革製ベルトE
├ナイフ
├剣鉈
├剣鉈[硬化(大)]
├解体ナイフ
└ダガー
小石中☆500
小石大☆450
石大☆20
冒険者ギルド証 0ヤン
財布 ミスリル貨231 金貨31 銀貨8 銅貨9
首掛け皮袋 鉄貨74
箱中 564,559→530,759ヤン
ミスリル貨 金貨17 銀貨293 銅貨674 鉄貨359 砂金1250粒
マジックボックス
├猪(頭・皮)燻304枚
├戦利品
├箱
|└シルクワームの反物×33
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱
├ランタン箱
|└油瓶×10 9.1/10ナリ
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大
├テントセット
├マット×4
├毛布×4
├洗濯籠
|├耐水ブーツ
|└耐水ポンチョ
└宝石
鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
ゲル手甲E
ゲル股当E
帆布のズボンE
脛当E
鉄靴E
熊皮のマント
籠入り石炭0
石炭80ナリ
ランタン
油瓶0.1/0.8ナリ
着火セット
服箱
├中古タオル
├中古タオル
├未使用タオル×2
├中古パンツ
├パンツE
├未使用パンツ×2
├ヨレヨレ村の子服セット
├サンダル
├革靴
├街の子服Aセット
└街の子服Bセット
スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 0/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 0/2859
ハチS 0/1
カメ 0/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1861
石S 0/1
スライム 0/2024
オオスズメ 0/1573
トンビS 0/4
フォレストモンキー 0/972
ウルフ 0/1070
カラードウルフ 0/1
ワニS 0/1
グラスベア 0/1
ラージアントワーカー 0/100
ラージアントソルジャー 0/100
蝶 0/204
花 0/161
腕 0/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 0/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 0/576
体 0/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 0/627
ナイフ 0/640
ナイフS 0/1
短剣 0/352
短剣S 0/100
鎧S 0/1
袋S 0/1
箱G 0/1
水滴 0/446
水滴S 0/1
立方体 0/525
火 0/4
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威圧目S 0/1
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眼鏡G 0/1
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