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第27章「闇の魔王──最後の敵」
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蓮が目を覚ました翌日。
五人は王城に召喚された。
「魔王を倒した英雄たち」として、国王から直接謁見を受けるのだ。
王城の謁見の間は、煌びやかだった。
赤い絨毯が敷かれ、両脇には騎士たちが並んでいる。
玉座には、威厳のある国王が座っていた。
「よくぞ参った、勇者たちよ」
国王の声が響く。
五人は跪いた。
「魔王を倒し、世界を救ったそなたたちに、心より感謝する」
国王は立ち上がった。
「この国の、いや、この世界の英雄である」
拍手が起こった。
騎士たちが、貴族たちが、五人を称賛する。
蓮は少し照れくさかった。
「俺たちは、ただ……」
「謙遜するでない」
国王は笑った。
「そなたたちがいなければ、この世界は魔王の手に落ちていた」
国王は五人に近づいた。
「褒美を取らせよう。何でも望むがよい」
「いえ、褒美は……」
健太が言いかけたが──
その時。
ゴゴゴゴゴ!
城が揺れた。
「な、何だ!?」
騎士たちが慌てる。
窓の外を見ると──
空が、真っ黒に染まっていた。
「これは……」
アリシアは息を呑んだ。
「まさか……」
その時、謁見の間に黒い影が侵入してきた。
影は人の形を取り、やがて──
黒いローブを纏った人影になった。
「魔王……!?」
リリアが叫んだ。
「いや、違う……」
健太は剣を構えた。
「こいつは、もっと強大な魔力を放っている……」
人影は、ゆっくりとフードを外した。
現れたのは──
若い男の顔だった。
だが、その目は血のように赤く、邪悪な光を放っていた。
「よくぞ、我が分身を倒したな」
男は冷たく笑った。
「分身……?」
蓮は驚いた。
「まさか、お前が本物の魔王なのか!?」
「ああ。お前たちが倒したのは、俺の人形に過ぎん」
男──真の魔王は、両手を広げた。
「俺の名はダークロード・ゼノス。この世界を闇で覆う者だ」
ゴゴゴゴゴ!
ゼノスの体から、圧倒的な魔力が放出される。
騎士たちが次々と倒れていく。
国王も膝をついた。
「ぐ……」
「陛下!」
アリシアが国王を支えようとしたが──
「触れるな」
ゼノスが指を鳴らすと、アリシアは吹き飛ばされた。
「アリシア!」
蓮が叫んだ。
「ハハハ!お前たちに俺は倒せん」
ゼノスは高笑いした。
「お前たちは、所詮人間。俺は、神に等しい存在だ」
「神だと……?」
健太は歯ぎしりした。
「ふざけるな!」
健太はゼノスに斬りかかった。
だが──
ゼノスは片手で健太の剣を受け止めた。
「無駄だ」
ゼノスが手を振ると、健太は壁に叩きつけられた。
「健太!」
セラとリリアも攻撃したが、同じように弾き飛ばされた。
「みんな……」
蓮は震えた。
(こいつ……強すぎる……)
ゼノスは蓮に近づいた。
「お前が、支援魔術師か」
「……」
「面白い。人間の分際で、絆の力を使いこなすとは」
ゼノスは蓮の顎を掴んだ。
「だが、その程度では俺には勝てん」
蓮は動けなかった。
体が、金縛りにあったように動かない。
「お前の絆とやらが、どれほどのものか見せてもらおう」
ゼノスは蓮を放り投げた。
蓮は床に叩きつけられた。
「ぐ……」
「神谷さん!」
アリシアが駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「ああ……何とか……」
蓮は立ち上がった。
五人は再び集まった。
「どうする……」
健太が呟いた。
「こいつ、前の魔王とはレベルが違う……」
「でも、やるしかないわ」
リリアは杖を構えた。
「ここで負けたら、世界が終わる」
「そうね……」
セラも爪を構えた。
「やるしかない」
アリシアは剣を構えた。
「みんな……行きましょう」
「ああ!」
五人は同時に動いた。
だが、ゼノスは動かなかった。
ただ立っているだけ。
健太の剣が迫る。
セラの爪が迫る。
リリアの魔法が迫る。
アリシアの剣が迫る。
だが──
全ての攻撃が、ゼノスの前で止まった。
「な、何……!?」
四人は驚いた。
「結界だ」
ゼノスは冷たく笑った。
「お前たちの攻撃など、俺には届かん」
ゼノスが指を鳴らすと──
四人は吹き飛ばされた。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
四人は床に叩きつけられた。
「みんな!」
蓮が叫んだ。
「くそっ……」
健太は立ち上がろうとしたが、体が動かない。
「体が……重い……」
「これは……重力魔法……」
リリアは呻いた。
「動けない……」
ゼノスは五人に近づいた。
「お前たちは、よく頑張った。俺の分身を倒すほどの力を持っていた」
ゼノスは蓮の頭を踏みつけた。
「だが、それだけだ」
「ぐ……」
蓮は歯を食いしばった。
(くそ……動けない……)
「さあ、お前たちを殺して、この世界を闇で覆う」
ゼノスが手を挙げた。
黒い球体が現れる。
それは、前の魔王が使った闇の球体よりも遥かに巨大だった。
「死ね」
ゼノスが手を下ろそうとした──
その時。
まばゆい光が、謁見の間を包んだ。
「何……!?」
ゼノスは驚いた。
光の中から、一人の女性が現れた。
白いローブを纏い、金色の髪を持つ美しい女性。
「女神……!」
アリシアが叫んだ。
「お前は……」
ゼノスは女性を睨んだ。
「光の女神・ルミナか」
「そうです、ゼノス」
女神ルミナは優しく微笑んだ。
「あなたの暴虐は、ここまでです」
「ふん、神が何だ」
ゼノスは冷笑した。
「お前は、この世界に直接干渉できないはずだ」
「確かに」
ルミナは頷いた。
「私は直接戦うことはできません」
「なら、何をしに来た」
「彼らに、力を授けるために」
ルミナは五人を見た。
「勇者たちよ。あなたたちは、よく戦いました」
ルミナが手を挙げると、五人の体を縛っていた重力が消えた。
「立ちなさい」
五人は立ち上がった。
ルミナは五人に近づいた。
「あなたたちには、まだ可能性があります」
ルミナは蓮の額に手を当てた。
「支援魔術師・神谷蓮。あなたは、仲間を支える優しい心を持っています」
温かい光が、蓮の体を包む。
「その心が、あなたの真の力です」
次に、アリシアの額に手を当てた。
「騎士・アリシア。あなたは、誰よりも勇敢で、誰よりも優しい」
アリシアの体も光に包まれる。
健太、リリア、セラにも、次々と手を当てていく。
「あなたたちは、絆で結ばれています」
ルミナは微笑んだ。
「その絆こそが、最強の力です」
五人の体が、まばゆい光に包まれた。
「私が授けるのは、神の祝福」
ルミナの声が響く。
「それは、あなたたちの力を限界まで引き出すもの」
光が、さらに強くなる。
「さあ、行きなさい。ゼノスを倒し、世界を救うのです」
光が消えた。
五人は、床に立っていた。
体が軽い。
魔力が、溢れている。
「これは……」
蓮は自分の手を見た。
今までとは、比べ物にならない力を感じる。
「神の祝福……」
アリシアも呟いた。
「すごい……こんな力……」
ゼノスは舌打ちした。
「ちっ……余計なことを……」
「ゼノス」
蓮は前に出た。
「今度は、負けない」
「ほう……」
ゼノスは冷笑した。
「女神の力を借りたところで、お前たちに俺は倒せん」
「やってみなければ、分からない」
蓮は杖を構えた。
「みんな、行くぞ!」
「ああ!」
四人が応えた。
五人は、同時に動いた。
今度は違った。
五人の速度が、圧倒的に速い。
健太の剣が、ゼノスの結界を破る。
「な、何……!?」
ゼノスは驚いた。
セラの爪が、ゼノスの頬を切り裂く。
「ぐ……」
リリアの魔法が、ゼノスの胸を直撃する。
「がはっ……」
アリシアの剣が、ゼノスの腕を斬る。
「くそっ……」
ゼノスは後ずさった。
「あり得ない……俺が……押されている……」
「これが、俺たちの本当の力だ!」
蓮が叫んだ。
「支援魔術・究極奥義──神の絆!」
五人の体が、さらに光り輝いた。
五人の心が、完全に一つになる。
お互いの考えが、手に取るように分かる。
「行くぞ!」
五人は完璧な連携で、ゼノスを攻撃した。
健太が右から。
セラが左から。
リリアが上から。
アリシアが正面から。
そして──
蓮が後方から、全員に支援をかける。
「くそっ……くそっ……」
ゼノスは必死に防戦したが、五人の攻撃を防ぎきれない。
「お前たち……何故だ……何故、人間がここまで強くなれる……」
「それは……」
蓮は答えた。
「俺たちが、一人じゃないからだ」
「一人じゃない……?」
「ああ。俺たちには、仲間がいる。信じ合える仲間が」
蓮は五人を見た。
「だから、俺たちは強くなれる」
「仲間……絆……」
ゼノスは呟いた。
「そんなもので……そんなもので、何故……」
「お前には分からないだろうな」
健太が言った。
「お前は、一人で全てをやろうとした」
「誰も信じず、誰にも頼らず」
リリアが続けた。
「だから、お前は孤独だった」
セラも言った。
「孤独な者は、絆を持つ者には勝てない」
アリシアが最後に言った。
「それが、私たちの答えです」
ゼノスは、静かに笑った。
「そうか……俺は、孤独だったのか……」
ゼノスは空を見上げた。
「俺は、強さを求めた。誰にも負けない強さを」
「だが……」
ゼノスは涙を流した。
「その代償に、全てを失った……」
「ゼノス……」
蓮は、少し同情した。
「お前も……寂しかったんだな……」
「ああ……」
ゼノスは頷いた。
「俺は……誰かと繋がりたかった……」
「でも、もう遅い……」
ゼノスは目を閉じた。
「俺は……消えるべきだ……」
「待て!」
蓮が叫んだ。
「お前を殺す必要はない!」
「え……?」
ゼノスは驚いた。
「お前は、孤独だっただけだ。もう一度、やり直せる」
「やり直す……?」
「ああ。俺たちと一緒に、この世界で生きよう」
蓮は手を差し伸べた。
「俺たちの仲間になれよ」
「仲間……」
ゼノスは、蓮の手を見つめた。
涙が、止まらなかった。
「俺が……仲間に……なれるのか……?」
「もちろんだ」
蓮は笑顔で答えた。
「誰だって、やり直せる」
ゼノスは、震える手で蓮の手を掴んだ。
「ありがとう……」
その瞬間──
ゼノスの体が光に包まれた。
「これは……」
ゼノスの体から、黒い闇が消えていく。
やがて、そこには普通の青年が立っていた。
「俺……元に戻った……」
ゼノスは自分の手を見た。
「魔王の力が……消えた……」
女神ルミナが現れた。
「よくやりました、勇者たちよ」
ルミナは微笑んだ。
「あなたたちは、敵を倒すのではなく、救いました」
「これが、本当の強さです」
ルミナはゼノスに近づいた。
「ゼノス。あなたは、長い間闇に囚われていました」
「でも、もう大丈夫です」
ルミナはゼノスの頭を撫でた。
「これから、光の中で生きなさい」
ゼノスは涙を流しながら頷いた。
「はい……」
ルミナは五人を見た。
「勇者たちよ。本当に、ありがとう」
「あなたたちのおかげで、世界は救われました」
そして──
女神ルミナは、光の中に消えていった。
謁見の間には、静寂が戻った。
国王が立ち上がった。
「勇者たちよ……」
国王の目には、涙が浮かんでいた。
「本当に、ありがとう……」
騎士たちも、貴族たちも、全員が五人に跪いた。
「世界を救ってくれて、ありがとうございます」
その光景を見て、蓮は涙が溢れた。
「俺たち……やったんだ……」
「ああ」
健太が肩を叩いた。
「よくやったよ、神谷」
「神谷君、あなたは英雄よ」
リリアも微笑んだ。
「神谷、ありがとう」
セラも涙を拭いた。
「神谷さん……」
アリシアが蓮の手を握った。
「あなたがいてくれて、本当に良かった」
蓮は、みんなの顔を見た。
温かい笑顔。
優しい眼差し。
「俺も……みんなに会えて、本当に良かった」
長い戦いは、本当に終わった。
世界は、救われた。
そして──
新しい時代が、始まろうとしていた。
五人は王城に召喚された。
「魔王を倒した英雄たち」として、国王から直接謁見を受けるのだ。
王城の謁見の間は、煌びやかだった。
赤い絨毯が敷かれ、両脇には騎士たちが並んでいる。
玉座には、威厳のある国王が座っていた。
「よくぞ参った、勇者たちよ」
国王の声が響く。
五人は跪いた。
「魔王を倒し、世界を救ったそなたたちに、心より感謝する」
国王は立ち上がった。
「この国の、いや、この世界の英雄である」
拍手が起こった。
騎士たちが、貴族たちが、五人を称賛する。
蓮は少し照れくさかった。
「俺たちは、ただ……」
「謙遜するでない」
国王は笑った。
「そなたたちがいなければ、この世界は魔王の手に落ちていた」
国王は五人に近づいた。
「褒美を取らせよう。何でも望むがよい」
「いえ、褒美は……」
健太が言いかけたが──
その時。
ゴゴゴゴゴ!
城が揺れた。
「な、何だ!?」
騎士たちが慌てる。
窓の外を見ると──
空が、真っ黒に染まっていた。
「これは……」
アリシアは息を呑んだ。
「まさか……」
その時、謁見の間に黒い影が侵入してきた。
影は人の形を取り、やがて──
黒いローブを纏った人影になった。
「魔王……!?」
リリアが叫んだ。
「いや、違う……」
健太は剣を構えた。
「こいつは、もっと強大な魔力を放っている……」
人影は、ゆっくりとフードを外した。
現れたのは──
若い男の顔だった。
だが、その目は血のように赤く、邪悪な光を放っていた。
「よくぞ、我が分身を倒したな」
男は冷たく笑った。
「分身……?」
蓮は驚いた。
「まさか、お前が本物の魔王なのか!?」
「ああ。お前たちが倒したのは、俺の人形に過ぎん」
男──真の魔王は、両手を広げた。
「俺の名はダークロード・ゼノス。この世界を闇で覆う者だ」
ゴゴゴゴゴ!
ゼノスの体から、圧倒的な魔力が放出される。
騎士たちが次々と倒れていく。
国王も膝をついた。
「ぐ……」
「陛下!」
アリシアが国王を支えようとしたが──
「触れるな」
ゼノスが指を鳴らすと、アリシアは吹き飛ばされた。
「アリシア!」
蓮が叫んだ。
「ハハハ!お前たちに俺は倒せん」
ゼノスは高笑いした。
「お前たちは、所詮人間。俺は、神に等しい存在だ」
「神だと……?」
健太は歯ぎしりした。
「ふざけるな!」
健太はゼノスに斬りかかった。
だが──
ゼノスは片手で健太の剣を受け止めた。
「無駄だ」
ゼノスが手を振ると、健太は壁に叩きつけられた。
「健太!」
セラとリリアも攻撃したが、同じように弾き飛ばされた。
「みんな……」
蓮は震えた。
(こいつ……強すぎる……)
ゼノスは蓮に近づいた。
「お前が、支援魔術師か」
「……」
「面白い。人間の分際で、絆の力を使いこなすとは」
ゼノスは蓮の顎を掴んだ。
「だが、その程度では俺には勝てん」
蓮は動けなかった。
体が、金縛りにあったように動かない。
「お前の絆とやらが、どれほどのものか見せてもらおう」
ゼノスは蓮を放り投げた。
蓮は床に叩きつけられた。
「ぐ……」
「神谷さん!」
アリシアが駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「ああ……何とか……」
蓮は立ち上がった。
五人は再び集まった。
「どうする……」
健太が呟いた。
「こいつ、前の魔王とはレベルが違う……」
「でも、やるしかないわ」
リリアは杖を構えた。
「ここで負けたら、世界が終わる」
「そうね……」
セラも爪を構えた。
「やるしかない」
アリシアは剣を構えた。
「みんな……行きましょう」
「ああ!」
五人は同時に動いた。
だが、ゼノスは動かなかった。
ただ立っているだけ。
健太の剣が迫る。
セラの爪が迫る。
リリアの魔法が迫る。
アリシアの剣が迫る。
だが──
全ての攻撃が、ゼノスの前で止まった。
「な、何……!?」
四人は驚いた。
「結界だ」
ゼノスは冷たく笑った。
「お前たちの攻撃など、俺には届かん」
ゼノスが指を鳴らすと──
四人は吹き飛ばされた。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
四人は床に叩きつけられた。
「みんな!」
蓮が叫んだ。
「くそっ……」
健太は立ち上がろうとしたが、体が動かない。
「体が……重い……」
「これは……重力魔法……」
リリアは呻いた。
「動けない……」
ゼノスは五人に近づいた。
「お前たちは、よく頑張った。俺の分身を倒すほどの力を持っていた」
ゼノスは蓮の頭を踏みつけた。
「だが、それだけだ」
「ぐ……」
蓮は歯を食いしばった。
(くそ……動けない……)
「さあ、お前たちを殺して、この世界を闇で覆う」
ゼノスが手を挙げた。
黒い球体が現れる。
それは、前の魔王が使った闇の球体よりも遥かに巨大だった。
「死ね」
ゼノスが手を下ろそうとした──
その時。
まばゆい光が、謁見の間を包んだ。
「何……!?」
ゼノスは驚いた。
光の中から、一人の女性が現れた。
白いローブを纏い、金色の髪を持つ美しい女性。
「女神……!」
アリシアが叫んだ。
「お前は……」
ゼノスは女性を睨んだ。
「光の女神・ルミナか」
「そうです、ゼノス」
女神ルミナは優しく微笑んだ。
「あなたの暴虐は、ここまでです」
「ふん、神が何だ」
ゼノスは冷笑した。
「お前は、この世界に直接干渉できないはずだ」
「確かに」
ルミナは頷いた。
「私は直接戦うことはできません」
「なら、何をしに来た」
「彼らに、力を授けるために」
ルミナは五人を見た。
「勇者たちよ。あなたたちは、よく戦いました」
ルミナが手を挙げると、五人の体を縛っていた重力が消えた。
「立ちなさい」
五人は立ち上がった。
ルミナは五人に近づいた。
「あなたたちには、まだ可能性があります」
ルミナは蓮の額に手を当てた。
「支援魔術師・神谷蓮。あなたは、仲間を支える優しい心を持っています」
温かい光が、蓮の体を包む。
「その心が、あなたの真の力です」
次に、アリシアの額に手を当てた。
「騎士・アリシア。あなたは、誰よりも勇敢で、誰よりも優しい」
アリシアの体も光に包まれる。
健太、リリア、セラにも、次々と手を当てていく。
「あなたたちは、絆で結ばれています」
ルミナは微笑んだ。
「その絆こそが、最強の力です」
五人の体が、まばゆい光に包まれた。
「私が授けるのは、神の祝福」
ルミナの声が響く。
「それは、あなたたちの力を限界まで引き出すもの」
光が、さらに強くなる。
「さあ、行きなさい。ゼノスを倒し、世界を救うのです」
光が消えた。
五人は、床に立っていた。
体が軽い。
魔力が、溢れている。
「これは……」
蓮は自分の手を見た。
今までとは、比べ物にならない力を感じる。
「神の祝福……」
アリシアも呟いた。
「すごい……こんな力……」
ゼノスは舌打ちした。
「ちっ……余計なことを……」
「ゼノス」
蓮は前に出た。
「今度は、負けない」
「ほう……」
ゼノスは冷笑した。
「女神の力を借りたところで、お前たちに俺は倒せん」
「やってみなければ、分からない」
蓮は杖を構えた。
「みんな、行くぞ!」
「ああ!」
四人が応えた。
五人は、同時に動いた。
今度は違った。
五人の速度が、圧倒的に速い。
健太の剣が、ゼノスの結界を破る。
「な、何……!?」
ゼノスは驚いた。
セラの爪が、ゼノスの頬を切り裂く。
「ぐ……」
リリアの魔法が、ゼノスの胸を直撃する。
「がはっ……」
アリシアの剣が、ゼノスの腕を斬る。
「くそっ……」
ゼノスは後ずさった。
「あり得ない……俺が……押されている……」
「これが、俺たちの本当の力だ!」
蓮が叫んだ。
「支援魔術・究極奥義──神の絆!」
五人の体が、さらに光り輝いた。
五人の心が、完全に一つになる。
お互いの考えが、手に取るように分かる。
「行くぞ!」
五人は完璧な連携で、ゼノスを攻撃した。
健太が右から。
セラが左から。
リリアが上から。
アリシアが正面から。
そして──
蓮が後方から、全員に支援をかける。
「くそっ……くそっ……」
ゼノスは必死に防戦したが、五人の攻撃を防ぎきれない。
「お前たち……何故だ……何故、人間がここまで強くなれる……」
「それは……」
蓮は答えた。
「俺たちが、一人じゃないからだ」
「一人じゃない……?」
「ああ。俺たちには、仲間がいる。信じ合える仲間が」
蓮は五人を見た。
「だから、俺たちは強くなれる」
「仲間……絆……」
ゼノスは呟いた。
「そんなもので……そんなもので、何故……」
「お前には分からないだろうな」
健太が言った。
「お前は、一人で全てをやろうとした」
「誰も信じず、誰にも頼らず」
リリアが続けた。
「だから、お前は孤独だった」
セラも言った。
「孤独な者は、絆を持つ者には勝てない」
アリシアが最後に言った。
「それが、私たちの答えです」
ゼノスは、静かに笑った。
「そうか……俺は、孤独だったのか……」
ゼノスは空を見上げた。
「俺は、強さを求めた。誰にも負けない強さを」
「だが……」
ゼノスは涙を流した。
「その代償に、全てを失った……」
「ゼノス……」
蓮は、少し同情した。
「お前も……寂しかったんだな……」
「ああ……」
ゼノスは頷いた。
「俺は……誰かと繋がりたかった……」
「でも、もう遅い……」
ゼノスは目を閉じた。
「俺は……消えるべきだ……」
「待て!」
蓮が叫んだ。
「お前を殺す必要はない!」
「え……?」
ゼノスは驚いた。
「お前は、孤独だっただけだ。もう一度、やり直せる」
「やり直す……?」
「ああ。俺たちと一緒に、この世界で生きよう」
蓮は手を差し伸べた。
「俺たちの仲間になれよ」
「仲間……」
ゼノスは、蓮の手を見つめた。
涙が、止まらなかった。
「俺が……仲間に……なれるのか……?」
「もちろんだ」
蓮は笑顔で答えた。
「誰だって、やり直せる」
ゼノスは、震える手で蓮の手を掴んだ。
「ありがとう……」
その瞬間──
ゼノスの体が光に包まれた。
「これは……」
ゼノスの体から、黒い闇が消えていく。
やがて、そこには普通の青年が立っていた。
「俺……元に戻った……」
ゼノスは自分の手を見た。
「魔王の力が……消えた……」
女神ルミナが現れた。
「よくやりました、勇者たちよ」
ルミナは微笑んだ。
「あなたたちは、敵を倒すのではなく、救いました」
「これが、本当の強さです」
ルミナはゼノスに近づいた。
「ゼノス。あなたは、長い間闇に囚われていました」
「でも、もう大丈夫です」
ルミナはゼノスの頭を撫でた。
「これから、光の中で生きなさい」
ゼノスは涙を流しながら頷いた。
「はい……」
ルミナは五人を見た。
「勇者たちよ。本当に、ありがとう」
「あなたたちのおかげで、世界は救われました」
そして──
女神ルミナは、光の中に消えていった。
謁見の間には、静寂が戻った。
国王が立ち上がった。
「勇者たちよ……」
国王の目には、涙が浮かんでいた。
「本当に、ありがとう……」
騎士たちも、貴族たちも、全員が五人に跪いた。
「世界を救ってくれて、ありがとうございます」
その光景を見て、蓮は涙が溢れた。
「俺たち……やったんだ……」
「ああ」
健太が肩を叩いた。
「よくやったよ、神谷」
「神谷君、あなたは英雄よ」
リリアも微笑んだ。
「神谷、ありがとう」
セラも涙を拭いた。
「神谷さん……」
アリシアが蓮の手を握った。
「あなたがいてくれて、本当に良かった」
蓮は、みんなの顔を見た。
温かい笑顔。
優しい眼差し。
「俺も……みんなに会えて、本当に良かった」
長い戦いは、本当に終わった。
世界は、救われた。
そして──
新しい時代が、始まろうとしていた。
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前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
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