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第9話:呪われた聖女の「誤診」
しおりを挟む月が雲に隠れ、街の喧騒が完全に途絶えた深夜。
零助とラナが滞在する最高級宿舎の客室に、かすかな、しかし切迫したノックの音が響いた。
「……サトウ様、夜分に失礼いたします」
扉を開けると、そこには昼間の豪奢な装いとは一変し、深いフード付きの外套で身を隠したクラリスが立っていた。お忍びで訪れた彼女の顔は、月の光を浴びて透き通るほどに青白く、その唇はわずかに震えている。
「あら、こんな夜更けに……。聖女様も、ずいぶんと積極的なのね」
ソファに深く腰掛けたラナが、低く、攻撃的な声で皮肉を投げた。
ラナは既に「寝着」として、零助が仕立てた薄い絹のドレスを纏っている。だがその下には、常に零助の魔力が脈動する『神風』と『疾風』が、彼女の肉体を完璧にホールドし続けている。
「……申し訳ありません。ですが、昼間、あなたが仰った言葉が……どうしても、胸から離れないのです」
クラリスは部屋に入るなり、縋るような目で零助を見つめた。
「私たちは、祈るほどに死に近づく……。教会では『昇天の恩寵』と呼ばれますが、私は、恐ろしいのです。最近では、聖歌を口にするだけで、胸の奥を熱い鉄串で刺されるような痛みが走り、呼吸が止まってしまう……。サトウ様、これが本当に、神に召される兆しなのですか?」
「恩寵だぁ? 笑わせるな」
窓辺に立っていた零助が、ゆっくりと振り返る。その瞳は、暗闇の中でも獲物を逃さない獣のように、冷徹な光を湛えていた。
「【固有スキル:下着の禁書庫】――全方位・深層ボディースキャン」
零助の瞳が、鈍い銀色の光を放つ。
暗い室内で、零助の視線はクラリスの修道服を透過し、その下にある「真実」を無慈悲に暴き出していく。
「……ひどいな。想像を絶する『欠陥品』だ」
零助の脳内に、クラリスの内部構造が図解となって投影される。
【診断対象:クラリス】
【装着物:一級神聖法衣『鉄の純潔』】
【構造:鋼鉄製ボーン24本、魔導銀ワイヤーによる強制固定】
【影響:横隔膜の可動域を70%制限。心肥大の誘発。肋骨の慢性的な不全骨折】
「アンタたちの言う『呪い』の正体は、魔導的なもんじゃない。もっと物理的で、低俗で、悪趣味なエラーだ。……クラリス、外套を脱げ。アンタの身体が、どれだけ『惨めなこと』になっているか、自分で自覚させてやる」
「……サトウ様、そのお言葉、聞き捨てなりません」
クラリスは外套の端を静かに、しかし固く握りしめた。その瞳には、昼間の当惑ではなく、聖職者としての確固たる矜持、そして一人の女性としての深い憤りが宿っている。
「たとえ命の恩人であっても、夜闇に紛れて訪れた女性に脱衣を強いるなど……。あなたが私の身体の不調を言い当てたのは、私を救うためではなく、そのような不埒な目的のためだったのですか?」
「……目的だと? 安心しろ。俺は仕立て屋だ。アンタの裸になんて、これっぽっちも興味はない」
零助の吐き捨てた言葉に、クラリスの頬が屈辱で赤く染まった。
「……興味がない? 興味がないと言い放ちながら、私に裸を晒せと命じるのですか!? なんという身勝手な……女性を、私を何だと思っているのですか! 聖女である前に、私も一人の尊厳ある人間です。その言葉こそ、何よりも私の心を深く傷つける不躾な暴言だとお分かりにならないのですか!」
クラリスの激しい抗議。だが、その言葉とは裏腹に、彼女の呼吸はさらに細く、苦しげなものへと変わっていた。
「尊厳だぁ? そんなもんがアンタの寿命を削ってんだよ。俺が興味あるのは、アンタが纏っているその『欠陥品』の下着だけだ。アンタが『聖なる誓い』だと思っているその服の下……ボーンが24本も入った鋼鉄製コルセットが、アンタの横隔膜を物理的にロックしてるんだ。いいか、アンタの身体は今、自分の心臓に首を絞められてる状態なんだよ! 誰だ、鳩尾を起点にこんな逆V字型で締め上げろと教えた奴は!」
「それは……代々の聖女が受け継いできた、身を律するための……っ、はあ……っ」
「律するだぁ? 殺してるの間違いだろ! アンタ、もうまともに肺が膨らんでないぞ。魔力が循環できずに逆流してる。このままだと、あと数分で心臓が止まるぞ!」
「いいえ……これは、神が与えた試練……。私は、耐え……っ、あ……」
言い争う気力さえ、彼女の肉体から奪われていった。激しい感情の昂ぶりが、限界まで圧迫された心肺機能に最後の一撃を与えた。クラリスの顔から急速に血の気が引き、その美しい瞳の焦点が、ふらりと外れる。
「っ……あ、は……っ、あ、あぁ……!」
クラリスが、自分の喉元に手をかけ、喘ぎながら崩れ落ちた。激しい酸欠。過呼吸になろうとしても、神聖法衣の鋼鉄ワイヤーが胸郭の広がりを1ミリも許さない。彼女は、自分の身体という名の檻の中に閉じ込められ、窒息しようとしていた。
「クラリスッ!」
「零助、危ないわ! この女、魔力が暴走して――」
ラナの制止よりも早く、零助が動いた。彼は倒れ込むクラリスの華奢な身体を横から抱き寄せ、迷うことなくその純白の修道服の「合わせ目」に指をかけた。
「……くそっ、これじゃ指が入らねえ。ラナ、抑えてろ!」
「ちょ、ちょっと! アンタ、本気で剥くつもり!?」
「死なせたいのか!?……【解体(ディスアセンブル)】ッ!」
零助の手から放たれた鋭利な魔力が、クラリスの修道服を、そしてその下で彼女の肉体を無慈悲に抉っていた「神聖法衣」の鋼鉄ワイヤーを一気に焼き切った。
バリッ、という、厚手の布が裂ける音。そして、パキィィィンッ! という、張り詰めた鋼鉄のボーンが弾け飛ぶ、乾いた衝撃音が室内に響き渡る。
「あ……ぁ、あああああああぁぁぁッ!!!」
服を破られ、強制的に束縛から解かれたクラリスの口から、絶叫とも喘ぎともつかぬ声が漏れた。それは、生まれてから一度も許されなかった「本当の深呼吸」が、彼女の肺を、胸郭を、強制的に押し広げた瞬間の、衝撃的なまでの生命の爆発だった。
これまで彼女の胸を、脇腹を、背骨を、執拗に圧迫していた鉄の触手が消え去る。雪のように白い肌が、一気に押し寄せる血流によって薔薇色に染まり、大きく、深く、波打つように動き始めた。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、あ……あぁ……っ、空気が……入ってくる……っ、あ……っ」
床に横たわり、破れた服の間から豊かな双丘を震わせながら、クラリスは恍惚とした表情で空気を貪った。彼女を「呪い」として蝕んでいたのは、神の試練でも魔物でもない。ただ、あまりにも「残酷に設計された衣服」によって、彼女自身の命が奪われていただけだった。
それを見つめるラナの瞳が、これまでにないほど激しく燃え上がった。零助によって、自分と同じように「無理やり」解放され、純白の肌を晒して喘いでいる聖女。あたかも、男に純潔を奪われた女の絶頂の後の姿のようだった。
(……やだ。やめてよ、零助。その女に、そんな顔をさせないで……!)
ラナは、救われたはずのクラリスを、今すぐこの場で噛み殺したいほどの、ドス黒い嫉妬に支配されていた。
「……はぁ、はぁ……っ、あ……」
床に横たわり、裂けた修道服の間から剥き出しの肌を震わせるクラリス。その頬は異常なほど赤らみ、焦点の合わない瞳は虚空を見つめ、ただ貪るように酸素を求めている。零助の「解体」によってもたらされたあまりにも急激な解放は、彼女にとって聖なる法悦にも似た衝撃だった。
だが、その劇的な救済劇を、冷たい炎のような瞳で見つめる者がいた。
「……満足? 零助」
ラナの声は、低く、地を這うような重圧を孕んでいた。
彼女は零助の背後に立ち、その逞しい肩を、鋭い爪が食い込むほど強く掴んだ。彼女の身体を包む『疾風』が、主人の激しい情動に呼応してギチギチと音を立てて加圧し、魔力のスパークが暗い室内に散る。
「……何がだ。見ての通りだろ、欠陥がある下着を排除しただけだ」
零助は平然と答え、膝をついてクラリスの心拍を確認しようとする。だが、その手はラナによって強引に引き剥がされた。
「触らないで。……これ以上、その女に触れないで!」
「ラナ?」
「嫌なのよ! アンタが他の女を、私と同じように『剥く』のも、その指で『救う』のも! アンタに中身まで作り替えられて、アンタがいないと生きていけなくなったのは、私だけでいい……。私だけの特権のはずでしょ……!?」
ラナは零助の胸元に顔を埋め、絞り出すような声で吠えた。
彼女にとって、零助の下着を纏うことは、彼の一部になることと同義だった。自尊心も、戦士としての誇りも、すべてを彼に預け、その代償として「最強」という名の支配を享受している。
その特別な絆が、目の前の聖女にも分け与えられたことが、彼女には耐え難い裏切りに感じられたのだ。
「……勘違いするな。俺はこいつをラナと同じモデルにしたわけじゃない。壊しただけだ」
「同じよ! 壊された女は、もうアンタがいなきゃ自分がどうやって息を吸えばいいかも分からなくなる……! アンタは、そうやって無自覚に女を壊して、依存させて……」
ラナは零助の首筋に、噛みつくような勢いで顔を寄せた。
「……確認させて。私の身体は、この女とは違うって。アンタが一番熱を込めて作ったのは、私だって……!」
ラナは零助の手を強引に掴み、自分の服の下、狂おしいほどに締め上げられた『神風』のワイヤーが食い込む脇腹へと導いた。
深夜の密室。荒い息をつく聖女を傍らに、ラナは嫉妬という名の毒に突き動かされ、自分だけの「支配の証」を刻み直すよう、主人に縋り付いた。
「……っ、ふぅ……。あ、ありがとうございます、サトウ様……」
ようやく呼吸を整えたクラリスが、身体を起こした。裂けたクラリスの法衣の隙間からは、雪のように白い肌が時おり見えている。
その瞳には、先ほどまでの拒絶や憤りは微塵もない。あるのは、自分を長年の「死の恐怖」から文字通り力ずくで引きずり出した男に対する、盲目的なまでの敬畏だった。
「勘違いするな。俺はアンタを助けたかったわけじゃない。そのコルセットの設計があまりにゴミだったから、職人として我慢できなかっただけだ」
零助は冷淡に言い放ち、床に散らばった鋼鉄のボーンを爪先で弾いた。
「いいか、クラリス。アンタがこれまで『神への試練』だと思っていた身体の重みも、魔力の枯渇も、全部その鉄屑が原因だ。教会の上層部は、聖女を意のままに操るために、ワザと呼吸を殺すデザインを押し付けたんだよ。思考力を奪い、身体を弱らせれば、聖女は組織に縋るしかなくなるからな」
「そんな……。伝統ある法衣が、私を支配するための……罠、だったのですか?」
「ああ。デザインの敗北であり、悪意の勝利だ。……いいか、アンタの本当の魔力は、今まで感じていた十倍はある。そのポテンシャルを殺して満足してる奴らの顔を、拝んでやりたいぜ」
零助の語る「論理的な絶望」は、クラリスのこれまでの人生観を根底から覆した。
彼女が守ってきた「誇り」は、ただの「枷」に過ぎなかった。そして、その枷を破壊してくれたのは、自分を女性として見ることすらせず、ただ『正しい下着』の在り方だけを追求する、この変態的な男なのだ。
「……サトウ様。私は、これまで何を信じてきたのでしょう……。私は、どうすれば……」
「自分で考えろ。俺は仕立て屋だ。……だが、一つだけ言える。アンタの今の身体には、それに相応しい『下着』が必要だ」
零助の視線が、クラリスの露わになった肩から、肺の動きに合わせて上下する豊かな胸元へと向けられた。
それは情欲ではない。真っ白なキャンバスに、どんな機能を、どんな美を書き込むべきかという、創造主の視線だった。
それを見たラナが、喉の奥で「グルル」と獣のような唸り声を上げたが、零助は構わずに続けた。
「……ラナ、準備しろ。まずはこの聖女様に、本当の『祈り』ができる服を――」
零助の言葉が最後まで紡がれることはなかった。
「……うるさいわよ」
銀色の閃光が走った。
ラナの身体能力が、下着(デバイス)の限界加圧によって爆発し、零助の視界が反転する。
ドン、と重い衝撃が走り、零助は背後のベッドに押し倒されていた。
「っ、ラナ!? 何を――」
「黙って。今は、その口から他の女のための言葉を吐かないで」
零助の身体を組み伏せたラナの瞳は、獲物を前にした獣のようにギラついていた。
これまで零助は、彼女を「最高の実験材料」としてしか見ていなかった。彼女が自分の下着に依存し、身を委ねるほどに最強の力を発揮する。その機能美を追求することに没頭し、彼女の心、すなわち「女」としての自覚を置き去りにしていた。
だが、この世界に来てから、零助を「下着狂いの異常者」としてではなく、唯一無二のパートナーとして受け入れ、旅を共にしてきたのはラナだけだ。普通なら嫌悪感すら抱く彼の偏執的な情熱を、彼女は最も近い場所で愛し、誇りとしてきた。
零助の脳内に、ラナとの旅の記憶が、熱を帯びたデータのように駆け巡る。
自分に向けられる彼女のストレートな物言い。戦いの中での信頼。そして、今、下着を介して伝わってくる、壊れんばかりの切ない情愛。
(……ああ。そうか。俺が作ったのは『武器』だけじゃなかったんだな)
下着は身を守るための鎧であると同時に、女としての悦びを教える「鍵」でもある。その理屈を、零助は今、ラナの熱い体温を通してようやく「人として」理解した。
「……ふぅ。わかったよ」
零助がため息をつき、その逞しい腕で、暴れるラナの腰を逃げられないほど強く、そして慈しむように引き寄せた。
「っ……、零助……?」
驚きで目を見開くラナ。そのわずかに開いた唇に、零助は迷いなく、深く、優しく口づけをした。
「……ん、ぁ……っ!?」
それは、解析でもフィッティングでもない。零助という一人の男が、ラナという一人の女に向けた、初めての人間的な愛情の証明だった。
ラナの全身を包む『疾風』が、主人のあまりの歓喜と衝撃に、今まで聴いたこともないような澄んだ共鳴音を奏でる。
「今はここまでだ。……そんなに嫉妬するなら、もっと俺を本気にさせてみろ。アンタが俺の『最高傑作』であることを、誰にも疑わせないくらいにな」
零助の、熱を孕んだ低い声。
ラナの瞳は一瞬で潤み、独占欲という名の毒は、零助に認められたという極上の甘露に溶かされていった。
「あ……、あ……っ。ずるい、わよ……零助……っ」
ラナは、恍惚と震えを交互に繰り返しながら、零助の胸に顔を埋めた。
傍らで服を破られ、肌を晒したまま立ち尽くす聖女クラリスは、その光景をただ呆然と見守るしかなかった。
二人の間に流れる、命を預け合い、愛憎を絡ませ合う濃密な空気。それは、教会のいかなる経典にも記されていない、美しくも残酷な「絆」の形だった。
零助はラナを腕の中に抱き寄せたまま、その体温を離そうとはしなかった。
ラナの肩越しに、震えながら立ち尽くすクラリスへ、職人の冷徹さと支配者の熱を帯びた視線を向ける。
「さあ、見せてみろ、聖女様。アンタを縛っていたその『ゴミ』が消えて、どれだけ純粋な魔力がその肌に眠っているのかをな」
零助の言葉は、慈悲深い救済などではない。それは剥き出しの好奇心と、素材に対する容赦のない審美眼だった。
「あ……ぅ、あ……っ」
クラリスは破れた修道服をかき集め、かろうじて胸元を隠していたが、もはや彼女に抗う術はなかった。コルセットという物理的な枷を壊されたことで、数年ぶりに脳へと送り込まれた大量の酸素が、彼女の判断力を心地よい麻痺へと誘っていた。
零助は片腕でラナの腰を引き寄せたまま、空いた方の手をクラリスへと差し出し、空中に指を滑らせる。
「【固有スキル:虚空の裁断(ボイド・カット)】――構成開始」
零助の指先から、光の糸が紡ぎ出される。それは禁書庫から引き出された、神話時代の「聖なる繊維」の魔力構成案だった。
「ラナ、よく見ておけ。これが、祈りと戦闘を両立させる『真の機能性』だ」
零助の魔力が、クラリスの薔薇色に染まった肌をなぞる。直接触れているわけではない。だが、彼女の体温、皮膚の弾力、そして呼吸に合わせて波打つ肺の動きを、零助は「数値」としてではなく「感触」として掌握していく。
「ひ、あ、ぁ……っ! なに、これ……っ、熱い……っ」
クラリスが身体をよじり、喘ぎ声を漏らす。零助の魔力糸が、彼女の肌に直接縫い付けられるかのように、新しい下着の形状を成していく。
それは、従来のコルセットのように「外側から固める」ものではなかった。
クラリス自身の背骨と肋骨に魔力の「核」を添わせ、彼女の魔力循環そのものを支柱として利用する、極めて背徳的で高度な設計だ。
「アンタの魔力は光属性だ。ならば、その光を拡散させるのではなく、胸の『結節点』に集中させろ。そうすれば、服が勝手にアンタの姿勢を正し、肺を広げ続けてくれる」
零助の指がクラリスの胸間、そして下腹部へと向けられるたび、光のレースが編み上げられていく。
それは極薄でありながら、どんな鋼鉄の鎧よりも強固な守護を、そしてどんな絹よりも官能的な愛撫を着用者に与える「聖女専用魔導下着――『福音(エヴァンゲリオン)』」のプロトタイプだった。
「……っ、零助、その女をそんなに熱心に『仕立てる』なんて……!」
抱き寄せられたラナが、零助の首筋に歯を立てる。
ラナの身体からも、嫉妬と興奮が入り混じった熱い魔力が溢れ出し、室内の温度をさらに上昇させる。
零助はラナの耳元で低く囁いた。
「安心しろ、ラナ。こいつに与えるのは『祈りのための服』だ。お前に与えた『鎖(下着)』とは、格が違う」
「……本当? 嘘だったら、アンタを今すぐ食べちゃうからね……っ」
ラナは零助の言葉に安堵しながらも、目の前で別の女が「零助の色」に染められていく光景に、ドロドロとした優越感と加虐心を抱き始めていた。
自分は既に完成された傑作。そして今、目の前の聖女は、零助という天才の実験台として、その尊厳を「機能」という名の快楽に塗り替えられている。
やがて、光が収束した。
そこには、破れた修道服の間から、まばゆい光のレースを纏ったクラリスの姿があった。
それは下着というにはあまりに神々しく、防具というにはあまりに扇情的だった。
「あ……、あぁ……。魔力が……勝手に、巡る……。私、こんなに……身体が軽いなんて……っ」
クラリスは、自分の意思とは無関係に、背筋がスッと伸び、胸が誇らしく持ち上げられる感覚に酔いしれた。
鉄のコルセットで押し潰されていた絶望が、今は零助が編み上げた「光の加圧」によって、絶え間ない全能感へと変換されている。
「それが、本当の『下着』だ。……さあ、聖女様。その新しい翼で、明日からどう祈るか、自分で決めなよ」
夜が明けようとする頃、クラリスは恍惚とした表情のまま、ふらつく足取りでお忍びの帰路についた。
彼女の服の下には、教会の誰にも知られてはならない、禁断の「光の枷」が刻まれている。
一度この自由を知ってしまった彼女が、二度と教会の腐敗した伝統に戻れないことは、零助にも、そしてラナにも明白だった。
室内に残されたのは、濃密な魔力の残り香と、乱れたベッド。
零助は、再び自分の腕の中で甘えるように丸まったラナの銀髪を撫でた。
「……満足か、ラナ」
「……いいえ。アンタが他の女を視るたびに、私はもっとアンタを欲しくなる。……ねえ、零助。次の街へ行く前に、私の『疾風』、もっとキツく調整し直してよ。アンタの魔力が、もっと奥まで届くように……」
ラナは零助のシャツを掴み、その瞳に底なしの依存心を宿して微笑んだ。
零助は、自分を「人」として繋ぎ止めるこの美しい猛獣の首筋に、おかえしと言わんばかりに唇を寄せた。
王都へと向かう旅路。
そこには、まだ見ぬ「不自由な衣服」に縛られた女たちと、それを解体し、己の支配下に置き換えていく仕立て屋の、残酷で甘美な変革が待っていた。
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