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第3章「辺境からの革命」
第29話「改革の第一歩」
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改革承認から一週間。
執務室は、朝から慌ただしかった。
「エリシア様、各地から報告が来ています」
オスカーが、書類の山を持ってきた。
「学校建設の要望が――百件以上」
「百件……」
私は、書類を見た。
全国の村、町、都市から。
「皆、学校を欲しがっています」
「でも――」
オスカーの表情が、曇った。
「問題があります」
「何?」
「資金です」
彼は、計算書を見せた。
「百校を建設するには、金貨十万枚が必要です」
「十万……」
莫大な額だった。
「国庫には、その予算がありません」
「どうしますか?」
私は、考え込んだ。
「まず、優先順位をつけましょう」
地図を広げる。
「人口が多く、子供の数が多い場所から」
「二十校、建設します」
「残りは――」
「既存の建物を、学校に転用します」
「転用……?」
「はい。空き倉庫、使われていない邸宅――」
「そういう建物を、学校として使います」
「なるほど……」
オスカーが、頷いた。
「それなら、予算を抑えられます」
「それに――」
私は、別の案を出した。
「寄付を募ります」
「寄付?」
「はい。裕福な商人、貴族――」
「教育に賛同してくれる方々から」
「なるほど……」
翌日、私は王都の商業ギルドを訪れた。
「エリシア様、ようこそ」
ギルド長――ハインリヒが、出迎えてくれた。
「お久しぶりです」
「改革、承認されましたね。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
私は、本題に入った。
「実は、お願いがあります」
「何でしょう?」
「学校建設のための、寄付をお願いしたいのです」
私は、計画書を見せた。
「全国に学校を作り、全ての子供に教育を」
「でも、資金が足りません」
「だから――」
「寄付、ですか」
ハインリヒは、しばらく計画書を読んでいた。
そして――。
「わかりました」
彼は、微笑んだ。
「商業ギルドとして、金貨一万枚を寄付します」
「本当ですか!?」
「ええ。それに――」
ハインリヒは、他の商人たちを見た。
「各商会にも、呼びかけます」
「きっと、協力してくれるでしょう」
「ありがとうございます!」
私は、深く頭を下げた。
「なぜ、ご協力いただけるのですか?」
「理由は、簡単です」
ハインリヒが、窓の外を見た。
「教育を受けた子供たちは、将来の顧客です」
「読み書きができれば、契約も理解できる」
「計算ができれば、商売もできる」
「つまり――」
彼は、微笑んだ。
「教育は、経済を活性化させます」
「これは、投資なんです」
その言葉に、納得した。
「なるほど……」
「それに――」
ハインリヒの目が、真剣になった。
「私も、元は貧しい商人の息子でした」
「たまたま、師匠に拾われて商売を学べた」
「でも、多くの子供たちには、そんな機会がない」
「だから――」
「その機会を、作りたいんです」
胸が、熱くなった。
「ありがとうございます」
商業ギルドの協力を得て、資金問題は改善した。
次は――教師の確保。
「第二期教師養成プログラムを開始します」
私は、発表した。
「今回は、百人を募集します」
前回の五十人から倍増。
「応募は――」
ミラが、報告した。
「五百人以上!」
「そんなに……」
「みんな、教師になりたいって」
「教育の重要性が、広まってるんだね」
「良かった……」
試験を行い、百人を選抜。
その中には――。
「トーマス?」
バルトリアで出会った、あの少年がいた。
今は十八歳、立派な青年に成長していた。
「エリシア様、お久しぶりです」
トーマスが、深く頭を下げた。
「私、教師になりたいんです」
「あなたが教えてくれたように――」
「今度は、私が子供たちに教えたい」
「トーマス……」
涙が、溢れそうになった。
「もちろん、歓迎するわ」
二ヶ月後。
全国二十ヶ所に、新しい学校が開校した。
私は、王都第五小学校の開校式に出席した。
「本日、この学校が開校します」
壇上から、宣言する。
「ここでは、全ての子供が学べます」
「貴族も、平民も、関係ありません」
「全ての子供に、平等な教育を」
拍手が、起こった。
校門には、長い列。
入学を希望する子供たちと、その親たち。
「本当に、無料なんですか?」
一人の母親が、不安そうに訊いた。
「はい。完全無償です」
「教科書も、給食も、全て無料です」
「そんな……」
母親が、涙を流した。
「信じられない……」
「うちの子も、学べるなんて……」
その光景を見て、胸が一杯になった。
「これが、やりたかったこと」
小さく呟いた。
開校式が終わり、最初の授業が始まった。
教室を覗くと――。
様々な服装の子供たちが、一緒に座っている。
豪華な服を着た貴族の子。
質素な服を着た平民の子。
でも、教室の中では――。
皆、同じ生徒だった。
「では、授業を始めます」
教師――第一期卒業生のエマだった。
「今日は、算数です」
「一緒に、数を数えましょう」
子供たちの、元気な声。
「いち、に、さん……」
笑顔が、溢れていた。
「良かった……」
私は、涙を拭った。
でも、全てが順調だったわけではない。
開校から一週間後。
「エリシア様、問題が発生しました」
オスカーが、緊迫した顔で報告に来た。
「何?」
「南部のクラーク領――」
「学校が、襲撃されました」
「襲撃!?」
現場の報告書を読むと――。
夜中、何者かが学校に侵入。
窓ガラスを割り、教室を荒らした。
黒板には、文字が書かれていた。
『平民に教育など必要ない』
「くそ……」
私は、拳を握った。
「まだ、こんなことを……」
「犯人は?」
「わかりません。でも――」
オスカーが、別の報告を出した。
「同じような事件が、他にも三件」
「全て、保守派が強い地域です」
「組織的な妨害か……」
「可能性があります」
私は、立ち上がった。
「現地に行きます」
「危険です」
「構いません」
私は、マントを羽織った。
「放っておけません」
三日後、クラーク領に到着した。
荒らされた学校を見て――。
「ひどい……」
机は倒され、教科書は破られ、黒板は割られていた。
「エリシア様……」
校長――老教師が、涙を流していた。
「申し訳ありません……」
「守れなくて……」
「いいえ」
私は、彼の肩に手を置いた。
「あなたは悪くありません」
「でも――」
「子供たちは、どうしていますか?」
「それが――」
校長は、外を指差した。
校庭に、子供たちが集まっていた。
「何をしているの?」
近づくと――。
子供たちが、掃除をしていた。
「この机、まだ使えるよ」
「黒板も、洗えば綺麗になる」
「教科書、破れてるけど――テープで直せば読める」
一生懸命、学校を直そうとしている。
「みんな……」
「エリシア様!」
一人の少年が、気づいて駆け寄ってきた。
「やっと学校ができたのに――」
「悪い人が、壊しちゃった」
「でも、僕たち――」
少年の目が、輝いていた。
「諦めません!」
「勉強、したいんです!」
その言葉に、涙が溢れた。
「みんな……」
私は、膝をついた。
「ありがとう」
「一緒に、直しましょう」
「本当ですか!?」
「ええ」
私は、袖をまくった。
「さあ、始めましょう」
村中の人々が、協力してくれた。
大工が、机を直した。
ガラス職人が、窓を直した。
母親たちが、教室を掃除した。
そして――。
「新しい教科書です」
商人たちが、寄付してくれた。
「黒板も、新品を持ってきました」
二日間の作業で――。
学校は、元通りになった。
いや、前より綺麗になった。
「ありがとうございます、みなさん」
私は、涙を流しながら頭を下げた。
「これで、また――」
「子供たちが、学べます」
「当たり前だ」
一人の村人が、笑った。
「この学校は、村の宝だ」
「子供たちの未来だ」
「誰にも、壊させない」
その言葉に、勇気をもらった。
再開校の日。
子供たちが、嬉しそうに教室に入ってくる。
「綺麗になった!」
「新しい教科書だ!」
「やった、また勉強できる!」
授業が、始まった。
私も、特別に授業を担当した。
「みんな、聞いてください」
黒板に、大きく書いた。
「夢」
「夢とは、何でしょう?」
子供たちが、次々と手を上げた。
「なりたいもの!」
「やりたいこと!」
「そうですね」
私は、微笑んだ。
「では、みんなの夢は?」
「お医者さん!」
「騎士!」
「先生!」
様々な夢。
「素晴らしいですね」
私は、子供たちを見渡した。
「でも、夢を持つことは――」
「時に、困難です」
「なぜなら――」
黒板に書いた。
「『お前には無理だ』と言う人がいるからです」
「『平民には無理だ』」
「『女には無理だ』」
「『貧しい家の子には無理だ』」
子供たちが、真剣に聞いている。
「でも――」
私は、力を込めて言った。
「そんな言葉に、負けないでください」
「努力すれば、夢は叶います」
「私も、そうでした」
「貴族の娘だった私は、追放されました」
「みんなに、『もう終わりだ』と言われました」
「でも――」
私は、微笑んだ。
「諦めませんでした」
「そして今――」
「こうして、みんなに会えています」
「だから――」
私は、子供たち一人一人の目を見た。
「みんなも、諦めないでください」
「夢を、追い続けてください」
「必ず、叶います」
子供たちの目が、輝いていた。
「はい!」
「「「はい!!」」」
力強い返事。
授業が終わると――。
一人の少女が、近づいてきた。
「先生」
「はい?」
「私の夢――」
少女が、恥ずかしそうに言った。
「先生みたいに、なりたいです」
「人に、希望を与える人に」
その言葉に、涙が溢れた。
「なれるわ」
私は、少女を抱きしめた。
「必ず、なれるわ」
その夜、宿で。
「疲れたか?」
ルシアンが、お茶を入れてくれた。
「ええ。でも――」
私は、窓の外を見た。
星空。
「充実しています」
「子供たちの顔、見たか?」
「はい」
私は、微笑んだ。
「あの輝き――」
「守りたいですね」
「ああ」
ルシアンが、私の隣に座った。
「だが、妨害は続くだろう」
「わかっています」
「怖くないか?」
「怖いです」
私は、正直に答えた。
「でも――」
私は、ルシアンを見た。
「あなたがいるから、大丈夫」
「エリシア……」
ルシアンが、私を抱きしめた。
「必ず、守る」
「お前と、お前の夢を」
「ありがとう」
二人で、しばらく抱き合っていた。
温かい沈黙。
「さあ、休もう」
「はい」
ベッドに横になると――。
今日も、すぐに眠りに落ちた。
充実した疲労。
幸せな疲労。
夢の中では――。
全国の子供たちが、笑顔で学んでいた。
身分に関係なく。
生まれに関係なく。
皆が、同じ教室で。
同じ夢を語っていた。
「これが、私の夢」
夢の中で、呟いた。
「必ず、実現させる」
長い夜が、静かに更けていった。
でも、エリシアの心には――。
消えない炎が、燃えていた。
希望の炎。
改革の炎。
そして――。
愛の炎。
それは、どんな困難にも負けない。
強く、強く、燃え続ける。
明日への炎として。
未来への炎として。
翌朝。
「エリシア様、良いニュースです!」
ミラが、飛び込んできた。
「何?」
「昨日の学校襲撃の件――」
「犯人、捕まりました!」
「本当!?」
報告書を読むと――。
犯人は、保守派貴族に雇われた者たちだった。
「そして――」
ミラが、嬉しそうに言った。
「その貴族、今朝逮捕されました」
「カイル殿下の命令で」
「殿下が……」
「改革の妨害は、許さないって」
「厳しく処罰するって、宣言したんだ」
「そうですか……」
私は、安堵のため息をついた。
「良かった」
「それだけじゃないよ」
ミラが、別の報告を見せた。
「全国の学校――」
「今朝、村人たちが自主的に警備を始めたって」
「『俺たちの学校は、俺たちが守る』って」
その言葉に、涙が溢れた。
「みんな……」
改革は、確実に人々の心に根付いていた。
身分制度改革の第一歩――。
教育の平等化。
それは、今――。
確実に前進していた。
困難はまだある。
抵抗もまだある。
でも――。
「大丈夫」
私は、微笑んだ。
「人々が、味方してくれている」
「だから、絶対に成功する」
窓の外、朝日が昇っていた。
新しい一日。
希望の一日。
そして――。
変革の一日。
「さあ、始めましょう」
私は、立ち上がった。
まだやることは、山ほどある。
でも、一歩一歩――。
確実に、前に進んでいる。
「行きましょう、ミラ」
「うん!」
二人で、執務室に向かった。
新しい一日が、始まった。
希望に満ちた一日が。
執務室は、朝から慌ただしかった。
「エリシア様、各地から報告が来ています」
オスカーが、書類の山を持ってきた。
「学校建設の要望が――百件以上」
「百件……」
私は、書類を見た。
全国の村、町、都市から。
「皆、学校を欲しがっています」
「でも――」
オスカーの表情が、曇った。
「問題があります」
「何?」
「資金です」
彼は、計算書を見せた。
「百校を建設するには、金貨十万枚が必要です」
「十万……」
莫大な額だった。
「国庫には、その予算がありません」
「どうしますか?」
私は、考え込んだ。
「まず、優先順位をつけましょう」
地図を広げる。
「人口が多く、子供の数が多い場所から」
「二十校、建設します」
「残りは――」
「既存の建物を、学校に転用します」
「転用……?」
「はい。空き倉庫、使われていない邸宅――」
「そういう建物を、学校として使います」
「なるほど……」
オスカーが、頷いた。
「それなら、予算を抑えられます」
「それに――」
私は、別の案を出した。
「寄付を募ります」
「寄付?」
「はい。裕福な商人、貴族――」
「教育に賛同してくれる方々から」
「なるほど……」
翌日、私は王都の商業ギルドを訪れた。
「エリシア様、ようこそ」
ギルド長――ハインリヒが、出迎えてくれた。
「お久しぶりです」
「改革、承認されましたね。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
私は、本題に入った。
「実は、お願いがあります」
「何でしょう?」
「学校建設のための、寄付をお願いしたいのです」
私は、計画書を見せた。
「全国に学校を作り、全ての子供に教育を」
「でも、資金が足りません」
「だから――」
「寄付、ですか」
ハインリヒは、しばらく計画書を読んでいた。
そして――。
「わかりました」
彼は、微笑んだ。
「商業ギルドとして、金貨一万枚を寄付します」
「本当ですか!?」
「ええ。それに――」
ハインリヒは、他の商人たちを見た。
「各商会にも、呼びかけます」
「きっと、協力してくれるでしょう」
「ありがとうございます!」
私は、深く頭を下げた。
「なぜ、ご協力いただけるのですか?」
「理由は、簡単です」
ハインリヒが、窓の外を見た。
「教育を受けた子供たちは、将来の顧客です」
「読み書きができれば、契約も理解できる」
「計算ができれば、商売もできる」
「つまり――」
彼は、微笑んだ。
「教育は、経済を活性化させます」
「これは、投資なんです」
その言葉に、納得した。
「なるほど……」
「それに――」
ハインリヒの目が、真剣になった。
「私も、元は貧しい商人の息子でした」
「たまたま、師匠に拾われて商売を学べた」
「でも、多くの子供たちには、そんな機会がない」
「だから――」
「その機会を、作りたいんです」
胸が、熱くなった。
「ありがとうございます」
商業ギルドの協力を得て、資金問題は改善した。
次は――教師の確保。
「第二期教師養成プログラムを開始します」
私は、発表した。
「今回は、百人を募集します」
前回の五十人から倍増。
「応募は――」
ミラが、報告した。
「五百人以上!」
「そんなに……」
「みんな、教師になりたいって」
「教育の重要性が、広まってるんだね」
「良かった……」
試験を行い、百人を選抜。
その中には――。
「トーマス?」
バルトリアで出会った、あの少年がいた。
今は十八歳、立派な青年に成長していた。
「エリシア様、お久しぶりです」
トーマスが、深く頭を下げた。
「私、教師になりたいんです」
「あなたが教えてくれたように――」
「今度は、私が子供たちに教えたい」
「トーマス……」
涙が、溢れそうになった。
「もちろん、歓迎するわ」
二ヶ月後。
全国二十ヶ所に、新しい学校が開校した。
私は、王都第五小学校の開校式に出席した。
「本日、この学校が開校します」
壇上から、宣言する。
「ここでは、全ての子供が学べます」
「貴族も、平民も、関係ありません」
「全ての子供に、平等な教育を」
拍手が、起こった。
校門には、長い列。
入学を希望する子供たちと、その親たち。
「本当に、無料なんですか?」
一人の母親が、不安そうに訊いた。
「はい。完全無償です」
「教科書も、給食も、全て無料です」
「そんな……」
母親が、涙を流した。
「信じられない……」
「うちの子も、学べるなんて……」
その光景を見て、胸が一杯になった。
「これが、やりたかったこと」
小さく呟いた。
開校式が終わり、最初の授業が始まった。
教室を覗くと――。
様々な服装の子供たちが、一緒に座っている。
豪華な服を着た貴族の子。
質素な服を着た平民の子。
でも、教室の中では――。
皆、同じ生徒だった。
「では、授業を始めます」
教師――第一期卒業生のエマだった。
「今日は、算数です」
「一緒に、数を数えましょう」
子供たちの、元気な声。
「いち、に、さん……」
笑顔が、溢れていた。
「良かった……」
私は、涙を拭った。
でも、全てが順調だったわけではない。
開校から一週間後。
「エリシア様、問題が発生しました」
オスカーが、緊迫した顔で報告に来た。
「何?」
「南部のクラーク領――」
「学校が、襲撃されました」
「襲撃!?」
現場の報告書を読むと――。
夜中、何者かが学校に侵入。
窓ガラスを割り、教室を荒らした。
黒板には、文字が書かれていた。
『平民に教育など必要ない』
「くそ……」
私は、拳を握った。
「まだ、こんなことを……」
「犯人は?」
「わかりません。でも――」
オスカーが、別の報告を出した。
「同じような事件が、他にも三件」
「全て、保守派が強い地域です」
「組織的な妨害か……」
「可能性があります」
私は、立ち上がった。
「現地に行きます」
「危険です」
「構いません」
私は、マントを羽織った。
「放っておけません」
三日後、クラーク領に到着した。
荒らされた学校を見て――。
「ひどい……」
机は倒され、教科書は破られ、黒板は割られていた。
「エリシア様……」
校長――老教師が、涙を流していた。
「申し訳ありません……」
「守れなくて……」
「いいえ」
私は、彼の肩に手を置いた。
「あなたは悪くありません」
「でも――」
「子供たちは、どうしていますか?」
「それが――」
校長は、外を指差した。
校庭に、子供たちが集まっていた。
「何をしているの?」
近づくと――。
子供たちが、掃除をしていた。
「この机、まだ使えるよ」
「黒板も、洗えば綺麗になる」
「教科書、破れてるけど――テープで直せば読める」
一生懸命、学校を直そうとしている。
「みんな……」
「エリシア様!」
一人の少年が、気づいて駆け寄ってきた。
「やっと学校ができたのに――」
「悪い人が、壊しちゃった」
「でも、僕たち――」
少年の目が、輝いていた。
「諦めません!」
「勉強、したいんです!」
その言葉に、涙が溢れた。
「みんな……」
私は、膝をついた。
「ありがとう」
「一緒に、直しましょう」
「本当ですか!?」
「ええ」
私は、袖をまくった。
「さあ、始めましょう」
村中の人々が、協力してくれた。
大工が、机を直した。
ガラス職人が、窓を直した。
母親たちが、教室を掃除した。
そして――。
「新しい教科書です」
商人たちが、寄付してくれた。
「黒板も、新品を持ってきました」
二日間の作業で――。
学校は、元通りになった。
いや、前より綺麗になった。
「ありがとうございます、みなさん」
私は、涙を流しながら頭を下げた。
「これで、また――」
「子供たちが、学べます」
「当たり前だ」
一人の村人が、笑った。
「この学校は、村の宝だ」
「子供たちの未来だ」
「誰にも、壊させない」
その言葉に、勇気をもらった。
再開校の日。
子供たちが、嬉しそうに教室に入ってくる。
「綺麗になった!」
「新しい教科書だ!」
「やった、また勉強できる!」
授業が、始まった。
私も、特別に授業を担当した。
「みんな、聞いてください」
黒板に、大きく書いた。
「夢」
「夢とは、何でしょう?」
子供たちが、次々と手を上げた。
「なりたいもの!」
「やりたいこと!」
「そうですね」
私は、微笑んだ。
「では、みんなの夢は?」
「お医者さん!」
「騎士!」
「先生!」
様々な夢。
「素晴らしいですね」
私は、子供たちを見渡した。
「でも、夢を持つことは――」
「時に、困難です」
「なぜなら――」
黒板に書いた。
「『お前には無理だ』と言う人がいるからです」
「『平民には無理だ』」
「『女には無理だ』」
「『貧しい家の子には無理だ』」
子供たちが、真剣に聞いている。
「でも――」
私は、力を込めて言った。
「そんな言葉に、負けないでください」
「努力すれば、夢は叶います」
「私も、そうでした」
「貴族の娘だった私は、追放されました」
「みんなに、『もう終わりだ』と言われました」
「でも――」
私は、微笑んだ。
「諦めませんでした」
「そして今――」
「こうして、みんなに会えています」
「だから――」
私は、子供たち一人一人の目を見た。
「みんなも、諦めないでください」
「夢を、追い続けてください」
「必ず、叶います」
子供たちの目が、輝いていた。
「はい!」
「「「はい!!」」」
力強い返事。
授業が終わると――。
一人の少女が、近づいてきた。
「先生」
「はい?」
「私の夢――」
少女が、恥ずかしそうに言った。
「先生みたいに、なりたいです」
「人に、希望を与える人に」
その言葉に、涙が溢れた。
「なれるわ」
私は、少女を抱きしめた。
「必ず、なれるわ」
その夜、宿で。
「疲れたか?」
ルシアンが、お茶を入れてくれた。
「ええ。でも――」
私は、窓の外を見た。
星空。
「充実しています」
「子供たちの顔、見たか?」
「はい」
私は、微笑んだ。
「あの輝き――」
「守りたいですね」
「ああ」
ルシアンが、私の隣に座った。
「だが、妨害は続くだろう」
「わかっています」
「怖くないか?」
「怖いです」
私は、正直に答えた。
「でも――」
私は、ルシアンを見た。
「あなたがいるから、大丈夫」
「エリシア……」
ルシアンが、私を抱きしめた。
「必ず、守る」
「お前と、お前の夢を」
「ありがとう」
二人で、しばらく抱き合っていた。
温かい沈黙。
「さあ、休もう」
「はい」
ベッドに横になると――。
今日も、すぐに眠りに落ちた。
充実した疲労。
幸せな疲労。
夢の中では――。
全国の子供たちが、笑顔で学んでいた。
身分に関係なく。
生まれに関係なく。
皆が、同じ教室で。
同じ夢を語っていた。
「これが、私の夢」
夢の中で、呟いた。
「必ず、実現させる」
長い夜が、静かに更けていった。
でも、エリシアの心には――。
消えない炎が、燃えていた。
希望の炎。
改革の炎。
そして――。
愛の炎。
それは、どんな困難にも負けない。
強く、強く、燃え続ける。
明日への炎として。
未来への炎として。
翌朝。
「エリシア様、良いニュースです!」
ミラが、飛び込んできた。
「何?」
「昨日の学校襲撃の件――」
「犯人、捕まりました!」
「本当!?」
報告書を読むと――。
犯人は、保守派貴族に雇われた者たちだった。
「そして――」
ミラが、嬉しそうに言った。
「その貴族、今朝逮捕されました」
「カイル殿下の命令で」
「殿下が……」
「改革の妨害は、許さないって」
「厳しく処罰するって、宣言したんだ」
「そうですか……」
私は、安堵のため息をついた。
「良かった」
「それだけじゃないよ」
ミラが、別の報告を見せた。
「全国の学校――」
「今朝、村人たちが自主的に警備を始めたって」
「『俺たちの学校は、俺たちが守る』って」
その言葉に、涙が溢れた。
「みんな……」
改革は、確実に人々の心に根付いていた。
身分制度改革の第一歩――。
教育の平等化。
それは、今――。
確実に前進していた。
困難はまだある。
抵抗もまだある。
でも――。
「大丈夫」
私は、微笑んだ。
「人々が、味方してくれている」
「だから、絶対に成功する」
窓の外、朝日が昇っていた。
新しい一日。
希望の一日。
そして――。
変革の一日。
「さあ、始めましょう」
私は、立ち上がった。
まだやることは、山ほどある。
でも、一歩一歩――。
確実に、前に進んでいる。
「行きましょう、ミラ」
「うん!」
二人で、執務室に向かった。
新しい一日が、始まった。
希望に満ちた一日が。
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