戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える

遊鷹太

文字の大きさ
15 / 28
第2章

第15話「暗闇層」

しおりを挟む
第二層を、さらに進んでいた。

暗闇が、より濃くなっている。

恒一は、LED照明を三台展開していた。

前方、マルコが持っている。

後方、リーナが持っている。

中央、恒一が持っている。

三百六十度、視界を確保している。

遠方から、悲鳴が聞こえた。

マルコが、立ち止まる。

「誰か、魔物に襲われてるのか?」

ゴルドが、耳を澄ませた。

「暗闇で、位置が分からないんだろう」

悲鳴が、続く。

だが、助けには行けない。

距離がある。方向も定かではない。

恒一は、前を見た。

「進みます」

五人は、歩き続けた。

リーナが、小声で言った。

「私たち、恵まれてますね」

カインが、頷いた。

「恒一のおかげだな」

恒一は、LED照明の配置を確認した。

前方、良好。

後方、良好。

中央、良好。

死角なし。

ゴルドが、感心した顔をした。

「完璧な陣形だ」

恒一は、淡々と答えた。

「安全を優先します」

マルコが、笑った。

「恒一、お前、本当に慎重だよな」

「慎重でなければ、死にます」

「まあ、そうだけど」

リーナが、周囲を見回している。

「でも、本当に明るいです」

「昼間みたいですね」

カイン「松明とは、全然違うな」

恒一は、LED照明を見た。

白く、強い光。

電気の光。

消えない。

暗闇を吸収する力があっても、LED照明には効かない。

光源の質が、違うのだろう。

恒一は、それを記録した。

LED照明、第二層で有効。

暗闇吸収の影響なし。

前方に、明かりが見えた。

弱い光。

松明だ。

恒一は、立ち止まった。

「前方に、誰かいます」

ゴルドが、剣に手を置いた。

「敵か?」

「分かりません」

五人は、慎重に近づいた。

冒険者のパーティだった。

三人組。

壁に背を向けて、固まっている。

松明を持っているが、光が弱い。

すぐに消えそうだ。

リーダーらしき男が、叫んでいる。

「どこだ!どこにいる!」

仲間が、闇雲に剣を振っている。

何かと戦っている。

だが、見えていない。

暗闇の中、手探りで戦っている。

マルコが、恒一に尋ねた。

「助けるか?」

恒一は、少し考えた。

「LED照明を貸します」

恒一は、自分が持っていたLED照明を投げた。

冒険者たちの足元に転がる。

明るい光。

暗闇が、一気に照らされた。

魔物が見える。

犬のような姿。だが、大きい。

黒い毛。鋭い牙。

冒険者たちが、驚いた顔をした。

「見えた!」

リーダーが、剣を振る。

魔物に、命中した。

仲間も、槍で突く。

魔物が、倒れた。

もう一匹いる。

だが、LED照明の光を嫌がっている。

後退していく。

そして、闇の中に消えた。

冒険者たちが、安堵のため息をついた。

リーダーが、恒一たちを見た。

「助かった……ありがとう」

LED照明を拾い上げる。

恒一たちに返そうとした。

恒一は、首を振った。

「そのまま使ってください」

リーダーが、驚いた。

「え?いいのか?」

「予備があります」

恒一は、携帯バッテリーから新しいLED照明を召喚した。

光る。

リーダーが、感動した顔をした。

「本当に、ありがとう」

「これで、何とか進める」

カインが、笑顔で言った。

「頑張れよ」

冒険者たちは、LED照明を持って去っていった。

光が、遠ざかる。

マルコが、恒一を見た。

「優しいじゃん」

恒一は、淡々と答えた。

「必要ない照明を、有効活用しただけです」

カインが、笑った。

「そういうとこ、好きだわ」

リーナも、嬉しそうだ。

「恒一さんらしいです」

五人は、再び歩き始めた。




広い空間に出た。

天井が高い。

どこまで高いか、分からない。

闇が、深い。

恒一は、立ち止まった。

「魔物の気配があります」

ゴルドが、剣を抜いた。

「どこだ?」

「上です」

恒一は、LED照明の光量を上げた。

より明るくなる。

天井が、照らされた。

そこに、何かがいる。

コウモリのような魔物。

大量。

数十匹。

いや、百匹以上いるかもしれない。

天井に、びっしりとぶら下がっている。

マルコが、声を上げた。

「うわ……多いな」

リーナも、緊張している。

「あんなにたくさん……」

魔物たちが、動き始めた。

羽を広げる。

飛び立とうとしている。

だが――

LED照明の光を避けている。

近づいてこない。

リーナが、不思議そうに言った。

「あれ?攻撃してきません」

カインが、観察している。

「光を嫌がってるのか?」

恒一は、頷いた。


「夜行性の魔物です」

「強い光は、目を傷めます」

ゴルドが、尋ねた。


「......つまり、戦わなくていい?」

「はい」

恒一は、LED照明をさらに明るくした。

最大出力。

強烈な光。

魔物たちが、悲鳴のような声を上げた。

さらに遠ざかる。

天井の隅に、固まった。

恒一は、前を見た。

「このまま通過します」

五人は、ゆっくり進み始めた。

LED照明を掲げながら。

恒一が先頭。

マルコが前方を照らす。

リーナが後方を警戒。

ゴルドとカインが、両脇を固める。

魔物たちは、動かない。

光を避けている。

恒一たちが通過するのを、ただ見ている。

部屋を抜けた。

通路に戻る。

マルコが、振り返った。

「マジで、戦わずに済んだ」

カインが、感心した顔をした。

「すげー……」

ゴルドが、恒一を見た。

「戦闘回避、成功か」

恒一は、LED照明の光量を通常に戻した。

「計画通りです」

リーナが、安堵の表情を見せた。

「戦わなくて、よかったです」

「あんなにたくさん、相手できませんよね」

マルコも、頷いた。

「百匹以上いたぞ」

「戦ってたら、確実に負けてた」

ゴルド「装備も消耗する」

カイン「恒一の判断、正しかったな」

恒一は、記録をつけた。

第二層、大空間。

夜行性魔物、百匹以上。

LED照明による戦闘回避、成功。

討伐数、ゼロ。

だが、問題ない。

戦わないことが、最善だった。

五人は、さらに進んだ。

暗闇の中。

だが、恐れることはない。

LED照明がある。

明るい道が、続いている。

夜、野営地点に到着した。

広い空間。

天井が高い。

恒一は、LED照明を三台設置した。

部屋全体が、明るく照らされる。

他のパーティも、同じ空間に集まっている。

だが、彼らの周囲は暗い。

松明の弱い光だけ。

恒一たちの野営地だけが、昼間のように明るかった。

マルコが、荷物を下ろした。

「いやー、今日もすごかったな」

「あの魔物の群れ、戦わずに抜けるなんて」

ゴルドも、座った。

「......俺も、初めてだ」

「いつもは、戦って消耗する」

カインが、記録をつけながら言った。

「恒一の戦術だな」

恒一は、装備を確認している。

LED照明、三台。

稼働中。

魔力消費、許容範囲。

携帯バッテリー、まだ残量あり。

問題ない。

リーナが、食事の準備を始めた。

「今日は何にしますか?」

マルコが、明るく答えた。

「何でも!リーナちゃんの料理なら」

「もう、お世辞は要りません」

リーナが、笑いながら言う。

ゴルドが、珍しく口を開いた。

「......俺も、同じだ」

マルコが、驚いた顔をした。

「え、ゴルド?料理の話してるんだぞ?」

「初めてだ、という話だ」

「戦わずに進めたのが」

カインが、笑った。

「あ、そっちか」

マルコが、頷いた。

「まあ、確かに」

「あの百匹以上の群れ、戦ってたらどうなってたか」

ゴルド「全滅していた」

マルコ「だよな」

恒一は、記録を続けている。

カインが、恒一を見た。

「なあ、恒一」

「はい」

「戦闘は、リスクだと言ってたな」

恒一「はい」

「今日、それがよく分かった」

カインが、真面目な顔をした。

「百匹相手に戦ったら、どれだけ消耗するか」

「装備が傷む。魔力が減る。体力が落ちる」

「それが積み重なって、後半に死ぬ」

恒一「そうです」

「だから、戦闘を回避します」

マルコが、感心した顔をした。

「でもさ、討伐数はゼロだぞ」

恒一「問題ありません」

マルコ「ギルド、評価しないんじゃね?」

恒一は、淡々と答えた。

「評価は、気にしません」

マルコが、少し驚いた顔をした。

「気にしないのか?」

「はい」

「私の目的は、第七層への到達です」

「評価ではありません」

ゴルドが、静かに言った。

「......俺は、評価する」

マルコが、驚いた。

「え?ゴルド?」

ゴルドが、恒一を見た。

「戦わずに進む。それが、最も賢い」

「無駄な消耗をしない」

「装備も、魔力も、体力も、温存する」

「第七層まで、それを続けられれば」

ゴルドの目が、真剣だ。

「お前の戦術は、正しい」

恒一は、頷いた。

「ありがとうございます」

リーナが、嬉しそうに言った。

「ゴルドさん、恒一さんを認めてくれたんですね」

ゴルド「当然だ。実力がある」

カインが、笑った。

「ゴルド、最初は疑ってたくせに」

ゴルドが、少し間を置いた。

「......金さえもらえれば、と思っていた」

「だが、今は違う」

ゴルドが、恒一を真っ直ぐ見た。

「このパーティなら、第七層に到達できる」

マルコが、声を上げた。

「俺もそう思う」

リーナも、頷いた。

「私も!」

カインが、笑顔で言った。

「全員一致だな」

恒一は、四人を見た。

全員が、恒一を信頼している。

温かい空気。

恒一は、小さく頷いた。

「では、引き続きよろしくお願いします」

マルコが、笑った。

「よろしくお願いします、って、お前らしいな」

「もっと、喜んでいいぞ」

恒一「......喜んでいます」

リーナが、クスッと笑った。

「恒一さんらしいです」




夜、リーナとゴルド、マルコが眠った後。

恒一とカインだけが、起きていた。

カインは、記録をつけている。

羊皮紙に、丁寧に文字を書いている。

恒一は、自分の記録をつけていた。

しばらく、二人は黙って作業をしていた。

カインが、ふと顔を上げた。

「なあ、恒一」

「はい」

「お前、記録見るか?」

カインが、羊皮紙を見せた。

『第二章・深層遺跡攻略記録
記録者:カイン・ヴォルフ、監視官』

恒一は、目を通した。

『第一層:除湿機により環境対策成功
装備劣化なし、体調不良なし
他パーティは大半が撤退
第二層:LED照明により視界確保
夜行性魔物百匹以上、光により戦闘回避
討伐数:ゼロ(ゴルド・マルコが対応)』

恒一は、一行一行、確認した。

「詳細ですね」

カインが、頷いた。

「まあな。これがギルドに提出される」

恒一は、記録を見た。

「......討伐数ゼロ、と書かれていますね」

「ああ」

カインが、恒一を見た。

「気にする?」

恒一は、首を振った。

「いえ」

「だろうな」

カインが、笑った。

「でもさ、俺はこう書くわ」

ペンを持つ。

羊皮紙に、追記する。

恒一は、カインが書く文字を見た。

『三浦恒一、環境対策により生存率を大幅に向上
戦闘回避戦術、有効性を確認
パーティ全員、無傷
恒一の判断は、常に適切かつ合理的であった』

恒一は、少し驚いた。

「......ありがとうございます」

カインが、羊皮紙を置いた。

「事実だからな」

カインが、真面目な顔をした。

「ギルドがどう評価するかは、分からない」

「討伐数ゼロだから、低評価になるかもしれない」

「でも」

カインが、恒一を見た。

「俺は正しく記録する」

「お前がやったこと、全部」

「それだけは、約束する」

恒一は、カインを見た。

監視官。

ギルドの命令で来ている。

だが、公正だ。

事実を、正確に記録する。

それは、恒一と似ている。

「感謝します」

カインが、ニヤリと笑った。

「いいって」

「それに、俺もお前のおかげで楽してるし」

恒一「楽、ですか」

カイン「ああ。こんなに快適なダンジョン攻略、初めてだわ」

「いつもは、もっと消耗するんだ」

恒一は、少し考えた。

「カインさんも、ダンジョンに何度も来たことがあるんですか?」

「まあな。元冒険者だし」

「第何層まで?」

カインが、少し遠い目をした。

「第六層まで」

恒一「それは……深いですね」

「まあな。仲間が何人か死んだけど」

カインが、淡々と言った。

「だから、俺は知ってる」

「ダンジョンで、いかに消耗しないかが大事かを」

「お前のやり方は、正しい」

恒一は、頷いた。

「第六層の情報を、教えてもらえますか?」

カインが、笑った。

「もちろん。それも記録してやる」

二人は、深夜まで話し合った。

第六層の情報。

環境の特性。

魔物の種類。

対策。

恒一は、すべてを記録した。

有益な情報だった。




翌朝。

恒一は、早起きして装備を確認した。

LED照明、三台。

稼働確認。

問題なし。

マルコが、あくびをしながら起きてきた。

「おはよー……恒一、もう起きてたのか」

「はい」

「早いな」

リーナも、起きてきた。

「おはようございます」

「あ、朝ご飯、作りますね」

ゴルドは、すでに起きていた。

剣の手入れをしている。

カインが、記録を確認している。

朝食を終えた。

恒一が、地図を広げた。

「第二層の出口は、ここです」

全員が、地図を見る。

「あと半日ほどで、到達できます」

マルコが、地図を見た。

「第三層は、毒霧だな」

ゴルド「厄介だ」

恒一「送風機を使います」

カインが、興味深そうに言った。

「また、何か面白いことやるんだろ?」

恒一「毒霧を排除します」

マルコが、驚いた。

「排除?そんなことできるのか?」

恒一「できます」

ゴルドが、静かに言った。

「......お前を信じる」

恒一は、頷いた。

「ありがとうございます」

カインが、笑った。

「じゃ、行くか」

五人は、荷物をまとめた。

LED照明を手に持つ。

出発だ。

しばらく進むと、第二層の出口が見えた。

階段が、下に続いている。

マルコが、歓声を上げた。

「やった!第二層もクリア!」

リーナも、嬉しそうだ。

「早かったですね」

ゴルドが、静かに言った。

「......三日だ」

カインが、頷いた。

「普通は、一週間かかるんだぜ」

「暗闇で迷うからな」

マルコが、驚いた。

「マジで?」

「ああ」

カインが、恒一を見た。

「LED照明のおかげだな」

恒一「そうです」

階段の手前で、パーティとすれ違った。

撤退する冒険者たち。

四人組。

顔色が悪い。

目が充血している。

暗闇の中、目を酷使したのだろう。

リーダーが、恒一たちを見た。

「......お前ら、すげーな」

「元気そうだ」

カインが、軽く手を振った。

「まあな」

リーダーが、不思議そうに言った。

「どうやってる?」

「俺たち、三日で限界だった」

「目が、もう限界だ」

恒一が、LED照明を見せた。

「これです」

リーダーが、目を細めた。

「明るい……」

「俺たちの松明とは、全然違う」

恒一は、LED照明を一台渡した。

「差し上げましょうか?」

リーダーが、驚いた顔をした。

「え?いいのか?」

「もう不要です」

「第三層には、別の装備が必要なので」

リーダーが、LED照明を受け取った。

感動した顔をしている。

「ありがとう……本当に」

「これで、何とか戻れる」

カインが、笑顔で言った。

「お疲れ様」

パーティは、去っていった。

LED照明の光が、遠ざかる。

リーナが、恒一を見た。

「恒一さん、また渡したんですね」

「不要になった装備です」

「有効活用しました」

カインが、笑った。

「そういうとこ、いいよな」

マルコが、感心した顔をした。

「俺には、なかなかできないな」

ゴルドが、静かに言った。

「......お前は、余裕があるから渡せる」

「余裕があるのも、準備のおかげだ」

恒一は、ゴルドを見た。

「そうです」

「準備が、余裕を生みます」

「余裕が、判断の幅を広げます」

五人は、階段の前で立ち止まった。

階段の前で、休憩した。

恒一は、装備を確認した。

LED照明、残り二台。

一台は、先ほどの冒険者に渡した。

だが、問題ない。

第三層は、暗闇ではない。

LED照明は、不要になる。

代わりに、送風機が必要だ。

恒一は、LED照明を解除した。

魔力が、戻ってくる。

体に、力が戻る感覚。

カインが、横で伸びをしている。

「いやー、快適な二日間だったわ」

マルコが、笑った。

「本当に。暗闇なのに、全然怖くなかった」

リーナも、頷いた。

「普通は、暗闇ってだけで精神的に疲れますよね」

「でも、LED照明があると、全然違います」

ゴルドが、静かに言った。

「......精神的な消耗が、ない」

「それが、体力の温存につながる」

恒一は、ゴルドを見た。

「正確な分析です」

ゴルドが、少し驚いた顔をした。

「......お前に、褒められるとは思わなかった」

カインが、笑った。

「恒一、滅多に褒めないからな」

マルコ「そうそう。事実しか言わない」

恒一「事実です」

リーナが、クスッと笑った。

「恒一さん、本当に正直ですね」

恒一は、地図を確認した。

第三層への階段。

すぐそこだ。

「準備します」

全員が、立ち上がった。

恒一は、送風機を取り出した。

召喚する。

小型の送風機。

白い筐体。

マルコが、興味深そうに見た。

「それが、送風機か?」

「はい」

「小さいな」

「十分です」

カインが、送風機を観察した。

「これで、毒霧を排除するのか?」

「はい」

「どういう仕組みで?」

恒一は、説明した。

「送風機で風を起こします」

「風が、毒霧を吹き飛ばします」

カインが、少し考えた。

「でも、吹き飛ばしても、周囲に毒霧があれば」

恒一「はい。完全な排除はできません」

「ただし、自分たちの周囲の濃度を下げることはできます」

「それで、十分です」

カインが、頷いた。

「なるほどね」

ゴルドが、マルコを見た。

「布を、鼻に巻け」

マルコ「ああ、防護用か」

「分かった」

二人は、布を顔に巻いた。

リーナも、同じようにする。

恒一も、布を巻いた。

カインも、カインも、準備した。

「行きましょう」

五人は、階段を下り始めた。




第三層への入口。

階段を下りると、すぐに異変があった。

緑色の霧。

薄く、漂っている。

マルコが、顔をしかめた。

「うわ……臭い」

「酸っぱいような、変な臭い」

リーナが、咳をした。

「少し、喉が痛いです」

ゴルドが、布を確認した。

「しっかり巻け」

恒一は、送風機を稼働させた。

モーター音。

風が、起きる。

前方に向かって、風が吹く。

緑色の霧が、揺れる。

吹き飛ばされていく。

マルコが、驚いた。

「おお……霧が、消えてる」

「消えてはいません」

恒一は、訂正した。

「周囲の濃度を下げているだけです」

「吹き飛ばした霧は、別の場所に移動します」

カイン「つまり、完全には安全じゃない?」

「そうです。ですが、直接吸い込む量は減ります」

カインが、頷いた。

「なるほど。リスクを下げる、ということか」

「はい」

五人は、進み始めた。

送風機が、風を起こし続ける。

前方の霧が、常に吹き飛ばされる。

通路が、見える。

リーナが、深呼吸した。

「さっきより、楽です」

「喉の痛みが、減りました」

マルコも、頷いた。

「確かに。最初より、ずっとマシだ」

ゴルドが、布を少し下げた。

「......臭いが、薄い」

「布は外さないでください」

恒一が、注意した。

「送風機が止まった瞬間、濃度が上がります」

ゴルドが、布を戻した。

「了解だ」

カインが、記録をつけながら歩いている。

「送風機、有効。毒霧濃度低下を確認」

「お前の観察、早いな」

「仕事だからな」

カインが、笑った。

しばらく進んだ。

通路が、分岐している。

右と左。

恒一は、地図を確認した。

「右です」

「分かった」

五人は、右の通路を進んだ。

毒霧が、濃くなっている。

送風機の風量を上げる。

霧が、より強く吹き飛ばされる。

マルコが、少し咳をした。

「うっ……濃くなってるな」

リーナが、マルコを見た。

「大丈夫ですか?」

「ああ、平気だ」

恒一は、マルコを観察した。

顔色、問題ない。

目の充血、なし。

「水を飲んでください」

恒一が、水筒を渡す。

マルコが、水を飲んだ。

「ありがとう」

カインが、恒一に言った。

「この層、長いぞ」

「魔力、大丈夫か?」

恒一は、自分の状態を確認した。

送風機の維持。

LED照明は解除済み。

残量は、許容範囲だ。

「問題ありません」

「携帯バッテリーも、まだあります」

カインが、安心した顔をした。

「そか、よかった」

さらに進む。

通路が、下に向かっている。

勾配がある。

滑りやすい。

ゴルドが、前に出た。

「足元に注意しろ」

全員が、慎重に歩く。

リーナが、壁に手をついている。

「滑りますね」

「気をつけてください」

恒一が、リーナの腕を支えた。

「ありがとうございます」

マルコが、槍を杖代わりにしている。

カインも、壁に手をついた。

「ここ、歩きにくいな」

ゴルドだけが、安定した足取りで歩いている。

「こういう地形、慣れてる」

五人は、慎重に下り続けた。

勾配が、終わった。

平坦な通路に戻る。

全員が、安堵のため息をついた。

カインが、笑った。

「緊張したわ」

マルコも、笑う。

「俺も」

リーナが、恒一を見た。

「恒一さん、ありがとうございます」

「腕、支えてくれて」

「問題ありません」

カインが、ニヤリと笑った。

「お前、さりげなく優しいよな」

恒一「必要な支援をしただけです」

「そういうとこが、さりげなくて優しいんだよ」

リーナが、クスッと笑った。

五人は、再び歩き始めた。

送風機が、風を起こし続ける。

毒霧が、吹き飛ばされる。

通路が、続く。

しばらく歩くと、広い空間に出た。

天井が高い。

毒霧が、濃い。

送風機の風量を最大にした。

霧が、大きく揺れる。

吹き飛ばされていく。

だが、追いつかない。

広すぎる。

カインが、眉をひそめた。

「これは……厳しいな」

恒一は、状況を分析した。

空間が広すぎる。

送風機一台では、十分に排除できない。

だが、通過するだけなら問題ない。

「急いで通過します」

全員が、素早く動き始めた。

駆け足で、空間を横切る。

毒霧の中を走る。

リーナが、咳をしている。

マルコも、苦しそうだ。

ゴルドが、ペースを上げた。

「早く」

全員が、出口を目指した。

通路が、見えた。

狭い通路。

霧が、薄い。

全員が、通路に入った。

一気に、霧の濃度が下がる。

全員が、立ち止まった。

荒い息。

カインが、深呼吸した。

「はー……きつかった」

マルコも、膝に手をついている。

「あそこ、ヤバかったな」

リーナが、咳をしている。

恒一は、リーナを確認した。

「大丈夫ですか?」

「はい……少し吸い込みましたが」

「回復魔法、使えますか?」

「自分に使えます」

リーナが、手を自分の胸に当てた。

淡い光。

回復魔法。

咳が、収まった。

「大丈夫です」

恒一は、全員を確認した。

カイン、問題なし。

マルコ、少し顔色が悪い。

ゴルド、平然としている。

「マルコさん、回復魔法を使います」

リーナが、マルコに手を当てた。

「少し、吸い込みすぎました」

淡い光。

マルコの顔色が、戻っていく。

「ありがとう」

全員の状態を確認した。

問題ない。

恒一は、記録をつけた。

第三層、大空間。

毒霧濃度、高い。

送風機一台では、不十分。

急いで通過、成功。

リーナの回復魔法、有効。

課題:魔力消費が激しい。

恒一は、自分の魔力を確認した。

送風機の継続使用。

消費が、予想より多い。

携帯バッテリーを確認する。

残量、六割程度。

まだ、余裕はある。

だが、注意が必要だ。

カインが、恒一を見た。

「なあ、恒一」

「はい」

カインが、真面目な顔をした。

「お前、やっぱりすげーわ」

「何がですか?」

「戦ってるんだよ、ちゃんと」

恒一は、カインを見た。

「......環境と、ですか」

「ああ」

カインが、全員を見回した。

「第一層、湿気と戦った」

「第二層、暗闇と戦った」

「第三層、毒霧と戦ってる」

カインの目が、真剣だ。

「魔物とは戦ってない」

「でも、環境に勝ち続けてる」

「しかも、全員無傷で」

カインが、恒一の肩を叩いた。

「これは、戦闘だ」

「ギルドが認めなくても、俺は認める」

マルコが、同意した。

「俺も認めるぜ」

ゴルドも、静かに頷いた。

「......俺もだ」

リーナが、笑顔で言った。

「私も!」

恒一は、四人を見た。

全員が、恒一を信頼している。

温かい空気。

恒一は、小さく頷いた。

「ありがとうございます」

「では、第四層へ向かいます」

マルコが、元気よく言った。

「次は、寒冷層だったな」

ゴルド「凍傷のリスクがある」

カイン「恒一、何か対策あるんだろ?」

恒一「電気毛布です」

カインが、笑った。

「電気毛布……また、面白いのが出てくるな」

「楽しみだわ」

五人は、第四層への階段を目指した。

送風機が、まだ風を起こしている。

毒霧が、吹き飛ばされていく。

通路の先に、光が見える。

違う層の光。

冷たい空気が、流れてきた。

第四層が、近い。

恒一は、電気毛布の召喚を準備した。

次の戦いが、始まる。

環境との戦い。

それが、恒一の戦い方だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

異世界転移したので旅してみました

松石 愛弓
ファンタジー
ある日、目覚めたらそこは異世界で。勇者になってと頼まれたり、いろんな森や町を旅してみることにしました。 ゆる~い感じののんびりほんわかなんでやねん路線の地味系主人公です。 気楽に読めるものを目指しています。よろしくお願いします。毎週土曜日更新予定です。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

処理中です...