戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える

遊鷹太

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第2章

第19話「退路なし」

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来た道を戻る、というのは、想像以上に気が楽だった。

地形が分かっている。
どこに段差があるか、どこの床が滑りやすいか、どこで天井が低くなるか。
一度通った道は、体が覚えている。
ゴルドの松明と恒一のLEDライトが前後を照らしている。

マルコが、歩きながら言った。

「帰りは早いな。地形が分かってるって全然違う」

「ああ」

カインが、前を向いたまま答えた。

「第六層さえ抜ければ、あとは知ってる道だ」

「第六層のサングラスも、まだあるしな」

「そうだ。行きより楽に通れる」

リーナが、小さく息を吐いた。

「やっと帰れますね」

「帰ったら飯だ。何でもいい。温かいものが食いたい」

マルコが、そう言って少し笑った。

恒一は、歩きながら計算していた。

第六層は光苔の胞子問題があるが、サングラスがある。
遮光カーテンも使える。
第五層の瘴気は、空気清浄機で対応した。
魔力は帰路でも消耗するが、行きほどではないはずだ。
すでに対処法が確立している。
行きに比べれば、格段に早く抜けられる。

日が暮れる前に地上に戻れるか。
そこが問題だ。

計算していると、前方に階段が見えてきた。

第七層と第六層の境界。
行きに下りてきた、あの階段だ。

「見えたぞ」

カインが、足取りを軽くした。

先頭を歩くカインが、階段に足をかけた。

一段目に、足を乗せた。

次の瞬間、止まった。

「……あれ?」

カインが、もう一度足に力を込めた。
足が、上がらない。
見えない何かに阻まれているように、前に進まない。
壁に手を伸ばした。
指先に、何かが触れた。
空気より固い。
温度もない。

「何だ、これ」

マルコが、カインの横に並んで手を伸ばした。
同じように、何かに触れて止まった。

「……俺も通れない」

リーナが、両手をゆっくり前に出した。
何かに触れた瞬間、小さく声を上げた。

「……固い。何か、あります」

ゴルドが、前に出た。
松明を障壁に近づけた。
炎が、わずかに揺れた。
熱を遮断している。

「魔法障壁だ」

ゴルドが、短く言った。

全員がゴルドを見た。

「以前、似たようなものを見たことがある」

「どこで?」

「北方の遺跡だ。特定の条件を満たすまで、解除されない仕組みになっていた」

「条件って、何だ?」

「場所によって違う。俺が見たものは、遺跡内の全ての部屋を訪れることで解除された」

カインが、障壁を拳で叩いた。

鈍い音がした。
手が、痺れた。

「……本当に通れないな」

カインが、拳を開いたり閉じたりしながら言った。

「固いどころじゃない。
岩より固い」

マルコが、蒼白な顔で言った。

「俺たち……閉じ込められたのか?」

誰も、すぐには答えなかった。

音が、広間の方から聞こえた。

低く、波のような音。
三十秒に一度、大きくなる、あの音だ。

リーナが、障壁から手を離した。
手のひらを見た。
何も変わっていない。
ただ、固いものに触れた感触だけが残っている。

「……恒一さん」

リーナが、恒一を見た。

恒一は、すでに羊皮紙を取り出していた。

何かを、書いている。


全員が、階段から離れた。

通路の壁際に、それぞれ座り込んだり、壁にもたれたりした。

カインが、腕を組んで目を閉じていた。
表情が、険しい。

マルコが、行ったり来たりしていた。
止まれない様子だった。

リーナは、膝を抱えて座っていた。
顔が青い。
唇が、微かに動いている。
何かを、小さく呟いている。

ゴルドは、無言で腕を組んでいた。
壁にもたれず、ただ立っていた。

恒一だけが、羊皮紙に向かっていた。

カインが、目を開けて恒一を見た。

「お前、今何してる」

「状況を整理しています」

「状況は分かってる。閉じ込められた」

「原因を整理しています」

カインが、黙った。

恒一は、書きながら言った。

「第七層に入った後から、戻れなくなりました」

「そうだ」

「つまり、第七層への入場が、何らかの条件を起動させた可能性があります」

マルコが、足を止めた。

「条件?」

「魔法障壁は、ランダムに発生するものではありません。設計者の意図があります。何かのトリガーによって起動した」

カインが、ゆっくりと口を開いた。

「トリガーが何かは、分かるか」

「今の段階では分かりません」

恒一が、広間の方を向いた。

「ただ、あの構造物が関係している可能性があります」

「あの音が出てたやつか」

「はい。私たちがあれを放置したまま戻ろうとしたから、障壁が起動した。そういう設計かもしれない」

リーナが、顔を上げた。

「つまり……あれを調べないと、帰れない、ということですか」

「可能性として、最も高いと思っています」

沈黙が、通路に落ちた。

マルコが、頭を抱えた。

「最悪だな」

誰も、反論しなかった。

カインが、恒一に言った。

「他の可能性は?」

「時間で自然解除される場合。ただし、それなら警告として機能しません。設計の意図から考えると、可能性は低い」

「第七層以外に出口がある場合は?」

「探すべきですが、記録に記述がありません。根拠なく期待するのは危険です」

「つまり」

「実質的な選択肢は、一つです」

「前進するしかない、か」

「そうです」

カインが、深く息を吸った。

マルコが、壁を一度蹴った。
足の甲が痛そうだったが、何も言わなかった。

ゴルドが、静かに言った。

「文句を言っても変わらない」

「分かってる」

マルコが、短く答えた。

カインが、立ち上がった。
全員を見回した。

「状況を整理する。俺たちは第七層に閉じ込められた。帰るには、あの広間を調査して、何らかの条件を満たす必要がある。それでいいか、恒一」

「おそらく、そうです」

「おそらく、か」

「確証はありません。ただし、今動けることをやるしかない」

カインが、全員を見た。

リーナが、膝から手を離した。
表情を、作り直した。

「……行きます」

マルコが、槍を握り直した。

「行くしかないなら、行く」

ゴルドは、すでに広間の方を向いていた。

カインが、恒一に言った。

「魔力はどうだ。調査なら動けるか」

「回復しています。問題ありません」

「戦闘になったら?」

「……その時は、皆さんに頼ります」

カインが、口の端を上げた。

「それでいい。じゃあ行くぞ」

全員が、再び広間への通路を歩いた。

行きとは、空気が違った。

最初に広間に向かった時は、任務の達成感があった。
第七層への到達という目標が、前方にあった。
しかし今は違う。
退路がない。
戻るためには、前に進む以外に方法がない。
選択肢が、一つしかない。

その分、全員の集中が高かった。

マルコが、歩きながら言った。

「あの構造物を調べて、どうすれば帰れるんだ」

「分かりません」

恒一が、前を向いたまま答えた。

「分からないのに調べに行くのか」

「分からないから、調べに行きます」

「……なるほど」

マルコが、それ以上は聞かなかった。

壁の文字が、また目に入った。

行きにも見たものだ。
入口付近にあった「帰れ」
の文字と同じ系統の文字が、通路の奥に進むほど密度を増している。

「この文字……」

恒一が、足を緩めながら言った。

「入口付近より、明らかに多い」

「同じことが書いてあるのか」

「違います。文字の種類が変わっています。入口では一種類の繰り返しでしたが、奥に進むほど種類が増えている」

カインが、壁を照らした。

「何かを説明しているのか?」

「可能性があります。読めれば、この場所の目的が分かるかもしれない」

「読めるのか?」

「今は無理です。ただ、規則性があります。記録して、後で照合します」

恒一が、歩きながら壁の文字を羊皮紙に書き写した。
正確に全部は無理だ。
特徴的なパターンを、できるだけ多く。

広間の入口が、見えてきた。

全員が、自然と足を緩めた。

あの音が、近くなっている。
低い、波のような音。
三十秒に一度、大きくなる周期は変わっていない。

全員が、入口で立ち止まった。

広間は、行きに見た通りだった。

天井が高い。
LEDライトの光が、端まで届かない。
中央に、柱が円形に配置された構造物。
その中央が、空洞になっている。

恒一は、今度はじっくりと観察した。

行きは、全員で数秒見ただけだった。
今回は違う。
時間をかけていい。
むしろ、時間をかけなければならない。

「柱が、七本あります」

恒一が、声に出した。

「七層だから七本か?」

「偶然かもしれません。ただし、配置が等間隔です。ランダムではない。設計されている」

「円形に並んでるな」

「中央の空洞を囲む形で。そして……」

恒一が、柱の表面を見た。

「全面に、壁と同じ文字が刻まれています」

「柱にも文字か」

「通路の壁より、密度が高い。重要な情報が書かれている可能性があります」

ゴルドが、構造物を見て口を開いた。

「魔法陣ではないか」

全員がゴルドを見た。

「ギルドの鑑定室にあった魔法陣と、構造が似ている。円形で、中央が空洞で、等間隔に何かが配置されている」

「鑑定室の魔法陣は、床に描かれたものでした」

恒一が、ゴルドの観察を受けて考えた。

「しかし言われてみれば、配置の原理は同じです。中央を囲む形で、対称性がある」

「起動する条件があるはずだ」

「鑑定室では、鑑定士が呪文を唱えることで起動していました。ここも、何らかの入力が必要なのかもしれない」

カインが、腕を組んだ。

「俺たちが入場した時に、勝手に起動したのか。それとも、最初から動いていたのか」

「分かりません。あの音は、私たちが来る前から鳴っていたのか、入場後から鳴り始めたのか、確認できていません」

「帰りに、障壁が発動したのは確かだ」

「そうです。つまり、私たちの行動が何かを変えたのかもしれない。あるいは、最初から帰れない設計だったのか」

マルコが、やや引きつった声で言った。

「最初から帰れない、ってどういうことだ」

「この場所が、入ったら出られない設計になっているとしたら……何かを完了させることが、退出の条件になっているということです」

「完了って、何を」

「それが、分からない」

沈黙。

マルコが、深く息を吐いた。

「……分からないことが多すぎる」

「そうです。だから調べます」

恒一が、構造物に目を戻した。

音が、また大きくなった。

三十秒経った。
周期は変わっていない。

「周期が一定というのは、重要です」

「なぜ?」

「生き物の行動は、不規則になります。疲れれば遅くなり、興奮すれば速くなる。しかし機械は、設計された通りに動く。周期が一定ということは……」

「機械みたいだな、と行きに言ったな」

「そうです。この構造物は、何かを動かすための装置かもしれません。建物の換気設備や動力源のような。魔物ではなく、設計された機構」

カインが、構造物を改めて見た。

「戦う相手じゃないのか」

「その可能性があります」

「なら、壊せばいいとかじゃないわけだ」

「むしろ、壊すことで状況が悪化するかもしれません」

カインが、剣を鞘に戻した。

「分かった。戦闘は最後の手段だ」

「ありがとうございます」

リーナが、小声で言った。

「恒一さん、少し……楽しそうです」

恒一は、一瞬止まった。

「……そうですか」

「目が、さっきと違います。閉じ込められた直後より」

「仮説が、生まれました」

「仮説があると、変わるんですね」

「動ける方向が見えます。見えない時と、見える時では、状況が変わります」

カインが、苦笑した。

「さっきまで分からないって顔してたのに、仮説が出た途端に変わるんだな」

「仮説があれば、検証できます。検証できれば、前に進めます」

「それがお前の戦い方だな」

「そうです」

カインが、立ち上がった。

「よし。調査するぞ」

全員が、立ち上がった。

「ゴルドとマルコは周囲の警戒。リーナは恒一の後ろについてくれ。俺は恒一の横につく」

「ありがとうございます」

「当然だ。行くぞ」

五人が、広間の中へ歩み入った。

天井の高さが、改めて分かった。
LEDライトを上に向けても、光が届かない。
暗闇が、頭上に広がっている。

音が、近い。

構造物に近づくにつれ、音の輪郭がはっきりしてくる。
行きに聞いた時は、低い唸り声のようなものだと思った。
しかし近くで聞くと、違う。
唸りではない。
振動だ。
構造物そのものが、一定の周期で震えている。

「振動しています」

恒一が言った。

「音じゃないのか」

「振動が、空気を揺らして音になっています。発生源は、構造物の内部です」

「内部に何かある?」

「あるはずです。外側を見ただけでは分かりません」

全員が、構造物の前に立った。

近くで見ると、大きさが改めて分かる。
一番高い柱は、三メートルを超えている。
恒一の身長の倍以上だ。
柱の表面に刻まれた文字は、近くで見ると更に細かい。
手のひら大の文字が、隙間なく刻まれている。

「触れていいか?」

カインが、恒一に確認した。

「……少し待ってください」

恒一は、まず観察した。

柱の根元。
床との接続部分に、何かがある。
溝だ。
柱の周囲を一周する、細い溝。
溝の中に、うっすら光るものがある。
液体か、それとも別の何かか。

「根元に溝があります」

「見える。光ってるな」

「何かが流れています。あるいは、溜まっています」

リーナが、恒一の後ろから覗き込んだ。

「魔力……に似た光です」

「そうですか?」

「回復魔法を使う時と、色が似ています。もっと淡いですが」

恒一は、それを記録した。

「溝内の発光物質。リーナの証言:魔力と類似した光。要詳細確認」

「中央の空洞を見ます」

恒一が、柱と柱の間を通り抜けようとした。

カインが、腕を伸ばして止めた。

「一人で入るな」

「……では、一緒に来てください」

「そのつもりだ」

カインと恒一が、柱の間に入った。

ゴルドとマルコが外側の警戒を続ける。
リーナが、柱の入口付近で待機した。

中央の空洞は、直径三メートルほどの円形の空間だった。

床に、何かが描かれていた。

円形の、複雑な模様だ。
恒一は、それを見た瞬間、足を止めた。

「……これは」

「何だ?」

「魔法陣です」

床一面に、精緻な模様が描かれている。
ギルドの鑑定室にあったものとは比較にならない規模だ。
線が細く、正確で、円の中に幾何学的な形が何重にも重なっている。

「でかいな」

「直径三メートル近くあります」

「これが、起動したら……」

「分かりません。ただし、この魔法陣が、障壁と連動している可能性があります」

「つまり、これを起動させれば、帰れる?」

「あるいは、正しく起動させれば、という条件がつくかもしれません。誤った方法で起動させれば、別の問題が生じる可能性もある」

カインが、床を見た。

「慎重にいかないとな」

「そうです」

恒一は、魔法陣の模様を羊皮紙に書き写し始めた。

全部は無理だ。
範囲が広すぎる。
しかし中心部分と、外縁部分の特徴的なパターンを記録する。
帰還後に、ギルドの資料と照合できる可能性がある。

書きながら、気づいた。

魔法陣の中心に、何かが置かれている。

小さい。
最初は模様の一部だと思っていたが、違う。
独立した物体だ。
石か、結晶か。
透明に近い色をしていて、内部に光が揺らいでいる。

「中心に、何かあります」

カインが、屈んで覗き込んだ。

「触れていいか?」

「……まだ待ってください」

恒一は、その物体を観察した。

大きさは、握りこぶしほど。
形は不規則だ。
自然に形成されたものか、加工されたものか判別できない。
内部の光は、三十秒周期で強くなっている。

「この光の周期……」

「構造物の振動と、同じか」

「そうです。この物体が、音の、いや振動の発生源かもしれません」

カインが、静かに言った。

「核、みたいなものか」

「そう言えるかもしれません」

恒一は、物体を見続けた。

取り出すべきか。
このままにすべきか。
触れることで、何かが変わるのか。
変わらないのか。

判断できない。

情報が、まだ足りない。

リーナが、入口から声をかけた。

「恒一さん、壁を見てください」

恒一が振り向いた。

広間の壁に、通路と同じ文字が刻まれていた。
しかし配置が違う。
通路では不規則に並んでいたが、ここでは上から下へ、段を成して並んでいる。

「……順序があります」

「順序?」

「読む方向が、あるのかもしれません。上から下へ。あるいは、右から左へ」

「記録しておけるか」

「できます」

恒一は、羊皮紙に壁の文字を書き写した。

カインが、外に出て全員に声をかけた。

「状況報告する。中央に魔法陣がある。でかい。中心に何か光る物体がある。壁に文字が並んでる。今のところ、触れていない」

マルコが答えた。

「周囲は問題ない。魔物の気配もない」

「ゴルド」

「異常なし」

「よし」

カインが、恒一の隣に戻った。

「どうする。触れてみるか?」

「まだです」

「いつ触れる?」

「もう少し、見ます」

「分かった。待つ」

恒一は、壁の文字を書き写しながら、全体の構造を考えた。

七本の柱。
円形配置。
中央の魔法陣。
光る物体。
三十秒の周期。
壁の文字。

これは何のための場所か。

恒一の頭に、一つの考えが浮かんだ。

ここは、入ってきた者を試す場所ではないか。

一層から六層は、環境そのものが試練だった。
湿気、暗闇、毒霧、寒冷、瘴気、光。
どれも、対応できなければ生き残れない。

しかし第七層は、環境の試練ではなかった。
温度は普通で、毒もない。

代わりに、この場所がある。

読めない文字。
解読できない魔法陣。
触れるべきか分からない物体。

これは、知識と判断を試している。

「……テストかもしれません」

恒一が、声に出した。

「テスト?」

「一層から六層は、生存能力の試練でした。環境に対応できるかどうか。しかしここは、環境による試練ではない」

「じゃあ何の試練だ」

「解読です。この場所を理解できるか。文字を読めるか。構造を把握できるか。そして、正しい操作ができるか」

カインが、黙って考えた。

「設計者が、何かを遺した。それを理解できる者だけが、先に進める。あるいは、帰れる」

「そういうことかもしれません」

「お前、解読できそうか」

恒一は、壁の文字を見た。

羊皮紙に書き写した記録を見た。

魔法陣の模様を見た。

中心の光る物体を見た。

「今すぐは、できません」

カインが、軽くため息をついた。

「正直だな」

「ただし」

恒一が、羊皮紙を折り畳んだ。

「記録は取れました。ここで急ぐより、今日は観察に徹して、整理する時間を取る方が確実です」

「泊まる気か、ここに」

「食料と水は持っています。一夜かけて記録を整理すれば、明日には仮説が立てられます」

カインが、苦笑した。

「ダンジョンで野宿か。冒険者らしくなってきたな、お前も」

「必要なことです」

「分かった」

カインが、外に出て全員に伝えた。

「今夜はここで野営する。明日、調査を続ける」

マルコが、複雑な顔をした。

「第七層で野営か……」

「嫌か?」

「嫌だけど、しょうがない」

ゴルドが、松明を確認した。

「燃料は、三日分ある」

「十分だ」

リーナが、恒一に近づいた。

「今夜、私も手伝えることはありますか」

「記録の整理を手伝ってもらえますか。私が書き写した文字を、規則性がないか確認してほしいのです」

「分かりました」

「ありがとうございます」

五人は、広間の隅に荷物を降ろした。

柱と壁の間、魔法陣から距離を置いた場所に、それぞれの寝床を作った。

音が、続いている。
三十秒に一度、大きくなる。

恒一は、その音を聞きながら羊皮紙を広げた。

「退路なし」
と書いた文字が、目に入った。

その下に、新しく書き加えた。

「一夜で解読する」
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