夜更けにほどける想い

遊鷹太

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第3章「遅い夜のビストロ」

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週末は、いつも通り過ぎていった。
土曜日の午前中、母の通院に付き添った。血圧は安定している。薬も変わらない。病院の帰りに、スーパーで買い物をして、母と一緒に昼食を作った。
「夕、最近元気そうね」
母がキッチンで野菜を切りながら言った。
「そう?」
「うん。顔色がいい」
「疲れてるけど」
「でも、前より明るいわよ」
母は笑った。
「何かいいことあった?」
「別に」
「嘘」
母は私の顔を覗き込んだ。
「同窓会、楽しかったんでしょう」
「まあね」
「誰かいい人いた?」
「お母さん」
「なによ。母親なんだから、娘のことは気になるのよ」
私は黙って、鍋に火をつけた。
母は、それ以上何も聞かなかった。
昼食を食べて、少し話をして、夕方に家を出た。
自宅に戻ると、スマホに陸からメッセージが入っていた。
「今日は何してた?」
「母の通院に付き添ってたよ。久我くんは?」
「掃除と洗濯。あと、本屋に行ってきた」
「何か買ったの?」
「ミステリー小説。篠原さんにも貸すよ」
「ありがとう。でも、読む時間あるかな」
「無理しないで。時間があるときでいいから」
会話が続く。
夜、ベッドに入ってからも、メッセージのやり取りは続いた。
些細なこと。今日食べたもの。テレビで見た番組。天気のこと。
でも、その些細なやり取りが、心地よかった。
「もう寝る?」
陸からのメッセージ。
「うん。明日も仕事だから」
「おやすみ。いい夢を」
「おやすみなさい」
スマホを充電器に置いて、目を閉じた。

月曜日。
朝のミーティングで、新しいプロジェクトの話が出た。大手企業の周年記念イベント。予算も大きく、スケジュールもタイト。
「篠原さん、このプロジェクト、任せられる?」
上司が聞いた。
「やります」
「助かる。チームを組んで進めてくれ」
デスクに戻って、スケジュールを組み始める。納期は三ヶ月後。企画、デザイン、制作、全て並行して進めなければならない。
昼休み、デスクでおにぎりを食べながら、スマホを見た。
陸からメッセージが来ていた。
「今日も忙しい?」
「うん。新しいプロジェクトが入った」
「大変だね。無理しないで」
「ありがとう。久我くんも忙しい?」
「まあまあ。でも、今週は比較的余裕あるかな」
「いいな」
「今週、また会えない?」
心臓が跳ねた。
「いつがいい?」
「木曜日とか。篠原さんの都合に合わせるよ」
手帳アプリを開く。木曜日は、特に予定がない。
「木曜日、大丈夫」
「じゃあ、前と同じビストロでいい?」
「いいよ」
「七時に」
「了解」
画面を見つめて、思わず笑顔になった。
「篠原さん、何ニヤニヤしてるんですか」
隣の佐々木が覗き込んできた。
「え、してない」
「してますよ。何かいいことありました?」
「別に」
「嘘だ。絶対何かある」
佐々木は笑った。
「まあいいです。でも、篠原さん、最近いい感じですよ」
「どういう意味?」
「前より柔らかい雰囲気になったというか」
「そう?」
「はい。なんか、恋してる感じ」
顔が熱くなった。
「してない」
「はいはい」
佐々木は笑って、自分の席に戻った。
私はもう一度スマホを見た。
陸とのやり取り。
木曜日。また会える。

木曜日は、雨だった。
朝から小雨が降り続いていて、傘を持って出勤した。
仕事は順調に進んでいた。クライアントとの打ち合わせも無事に終わり、午後は資料作成に集中できた。
五時半、定時で仕事を切り上げた。
「お疲れ様です」
佐々木が声をかけてきた。
「お疲れ様」
「今日もデートですか?」
「違う」
「わかりました」
佐々木は意味ありげに笑った。
会社を出て、駅へ向かう。雨は小降りになっていたけれど、傘はまだ必要だった。
ビストロに着いたのは、六時五十分。
店の前で傘を閉じて、中に入る。
「いらっしゃいませ」
ウェイターが案内してくれる。前回と同じ、窓際の席。
陸は、まだ来ていなかった。
席に座って、メニューを眺める。今日は何を食べようか。
七時ちょうど、陸が入ってきた。
「ごめん、遅れた?」
「ううん、私も今来たところ」
陸は向かいの席に座った。髪が少し濡れている。
「雨、強かった?」
「いや、大丈夫。でも、傘が小さくて」
陸は苦笑した。
「濡れちゃったね」
「平気。すぐ乾くよ」
ウェイターが来て、注文を取る。
私は今日もワインにした。陸も同じ。
「今週、忙しかった?」
陸が聞いた。
「まあまあ。新しいプロジェクトが動き始めて」
「大変だね」
「でも、やりがいはあるよ。久我くんは?」
「今週は比較的楽だった。来週からまた出張が入るけど」
「出張、多いの?」
「月に二回くらいかな。地方の病院を回ってる」
「大変だね」
「慣れたよ」
ワインが運ばれてきた。グラスを合わせる。
「乾杯」
「乾杯」
一口飲む。冷たくて、少し酸味がある。
「美味しい」
「うん」
前菜が運ばれてくる。生ハムとチーズの盛り合わせ。
フォークを持って、ひと口食べる。
「ねえ、篠原さん」
陸が言った。
「なに?」
「前に言った話、考えてくれた?」
心臓が跳ねた。
もう一度やり直せないか、という話。
「うん」
「どう思った?」
私は少し迷ってから、口を開いた。
「正直、怖い」
「怖い?」
「うん。私、もう四十四歳だし、離婚もしてるし、娘もいる。恋愛なんて、もう無理だと思ってた」
陸は黙って聞いていた。
「でも、久我くんと会うと、高校生の頃に戻ったみたいな気がする。あの頃の、何も考えずに人を好きになれた自分」
「それって、悪いこと?」
「わからない。でも、また傷つくのが怖い」
陸は静かに頷いた。
「わかるよ。俺も怖い」
「久我くんも?」
「うん。俺も、もう四十五歳だし、今まで結婚もしてこなかった。理由はいろいろあるけど、要するに、誰かを好きになることから逃げてたんだと思う」
陸はワインを一口飲んだ。
「でも、篠原さんに会って、変わった」
「変わった?」
「うん。もう一度、人を好きになってもいいんだって思えた」
私は何も言えなかった。
「急がなくていいから。ゆっくり考えて」
陸は優しく笑った。
「ありがとう」
料理が運ばれてくる。私は鶏肉のグリル、陸はパスタ。
「今日は逆だね」
陸が言った。
「ほんとだ」
笑いながら、食べ始める。
会話が続く。
仕事のこと。家族のこと。趣味のこと。
「篠原さん、休みの日は何してるの?」
「掃除と洗濯と、あとは母の通院に付き添ったり」
「それだけ?」
「うん。たまに真紀と会うくらい」
「趣味とかないの?」
「昔は映画見るのが好きだったけど、最近は時間なくて」
「じゃあ、今度一緒に映画見に行かない?」
「いいの?」
「もちろん。何が見たい?」
「うーん、何だろう」
「ミステリーとか好き?」
「好き」
「じゃあ、今度調べておくよ」
「ありがとう」
食事を終えて、デザートを注文した。
「そういえば、娘さんとは最近会ったの?」
陸が聞いた。
「先月会ったよ。元気そうだった」
「どんな子なの?」
「真面目で、しっかりしてる。私に似て、自分のことは後回しにするタイプ」
「それ、心配だね」
「うん。だから、会ったときはなるべく話を聞くようにしてる」
「いいお母さんだね」
「そんなことない。離れて暮らしてるから、ちゃんと母親らしいことできてないし」
「でも、娘さんのこと大切に思ってるのは伝わってくるよ」
陸の言葉が、胸に染みた。
「ありがとう」
デザートが運ばれてくる。今日はパンナコッタ。
スプーンですくって、口に運ぶ。甘くて、なめらか。
「美味しい」
「うん」
陸も食べている。
窓の外では、まだ雨が降っていた。
「雨、止まないね」
「うん」
「傘、ある?」
「持ってきたよ」
「よかった」
会話が途切れた。
でも、この沈黙は心地よかった。
無理に話さなくてもいい。ただ一緒にいるだけで、安心できる。
高校時代も、こうだった。
図書室で、二人で模造紙に向かっていた時間。誰も話さなくても、居心地がよかった。
「篠原さん」
陸が言った。
「なに?」
「こうやって一緒にいると、時間が止まったみたいな気がする」
「私も」
「高校のときに戻ったみたいで」
「うん」
陸は笑った。
「でも、俺たちはもう大人だから」
「そうだね」
「だから、今度は逃げないようにしたい」
その言葉に、胸がきゅっとした。
「私も」
時計を見ると、もう九時を過ぎていた。
「そろそろ帰ろうか」
陸が言った。
「うん」
会計を済ませて、店を出る。
雨は小降りになっていた。
陸は傘を開いて、私の隣に立った。
「入って」
「いいの?」
「もちろん」
傘の下に入る。肩が触れ合う距離。
駅まで歩く。
雨音が、静かに響いている。
「寒くない?」
陸が聞いた。
「大丈夫」
「もし寒かったら言って」
「ありがとう」
信号待ちで立ち止まる。
周りには、他にも傘を差した人たちが行き交っている。
でも、私には陸しか見えなかった。
信号が青に変わる。
歩き出す。
駅の改札が見えてきた。
「じゃあ、ここで」
陸が言った。
「うん」
傘から出る。
「気をつけて帰ってね」
「久我くんも」
「また連絡するよ」
「待ってる」
陸は少し迷ってから、私の手を握った。
温かい手。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
手を離して、改札へ向かう。
振り返ると、陸がまだこちらを見ていた。
手を振ると、陸も振り返してくれた。
電車に乗って、窓際の席に座る。
スマホを見ると、陸からメッセージが来ていた。
「今日も楽しかった。ありがとう」
「こちらこそ」
「次は映画、行こうね」
「楽しみにしてる」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
私はスマホを握りしめた。
久我陸。
彼と一緒にいると、自分が自分でいられる気がする。
無理をしなくていい。背伸びをしなくていい。
ただ、そのままの自分でいられる。

金曜日、仕事が終わって帰宅すると、真紀から電話がかかってきた。
「もしもし」
「夕ちゃん、久しぶり」
「久しぶり。どうしたの?」
「ううん、ちょっと声が聞きたくて」
真紀の声が、いつもより優しい。
「何かあった?」
「いや、こっちは何もないよ。夕ちゃんこそ、最近どう?」
「普通だよ。仕事忙しいし」
「久我くんとは?」
心臓が跳ねた。
「何で知ってるの?」
「だって、同窓会のあと、二人で帰ったでしょ。それから連絡取り合ってるんじゃないかなって」
「……うん」
「やっぱり! で、どうなの?」
「どうって」
「進展は?」
「まだ何も」
「嘘。絶対何かあるでしょ」
真紀は笑った。
「ご飯食べに行ったでしょ」
「……二回」
「ほら! で、告白された?」
「まあ、そんな感じ」
「で、夕ちゃんの返事は?」
「まだ」
「何で?」
「怖いから」
真紀は少し黙ってから、言った。
「夕ちゃん、幸せになっていいんだよ」
「え?」
「離婚してから、ずっと自分のこと後回しにしてるでしょ。仕事と、お母さんと、娘ちゃんのこと。それも大事だけど、夕ちゃん自身の幸せも大事なんだよ」
涙が出そうになった。
「でも」
「でもじゃない。久我くん、いい人じゃん。昔から優しかったし。夕ちゃんのこと、ちゃんと見てくれる人だよ」
「そうだけど」
「もう一度、恋してみなよ。大人の恋愛、いいと思うよ」
真紀の言葉が、胸に響いた。
「ありがとう」
「何のために友達やってると思ってるの。夕ちゃんが幸せになってくれるのが、一番嬉しいんだから」
「真紀」
「はいはい。じゃあ、また連絡するね。頑張って」
電話が切れた。
私はソファに座り込んだ。
真紀の言葉。母の言葉。
みんな、私の幸せを願ってくれている。
でも、私自身は、自分の幸せを信じられていない。
どうして?
離婚したから? 娘と離れたから?
それとも、また傷つくのが怖いから?
わからない。
スマホを見ると、陸からメッセージが来ていた。
「おやすみ。いい週末を」
「ありがとう。久我くんも」
返信してから、もう一度考えた。
久我陸。
彼は、私のことを好きだと言ってくれた。
もう一度やり直したいと。
私は、どうしたいのだろう。
答えは、もう出ている気がする。
でも、それを認めるのが怖い。

週末、娘から連絡が来た。
「お母さん、来週会えない?」
久しぶりのメッセージだった。
「いいよ。いつがいい?」
「日曜日の午後とか」
「大丈夫。どこで会う?」
「駅前のカフェでいい?」
「わかった。二時でいい?」
「うん。じゃあ、また連絡する」
娘に会える。
それだけで、気持ちが少し軽くなった。

日曜日、駅前のカフェで娘を待った。
二時ちょうど、娘が入ってきた。
「お母さん」
「久しぶり」
娘は少し背が伸びた気がする。髪も、前より長くなっている。
席に座って、飲み物を注文する。
「元気だった?」
「うん。お母さんは?」
「元気だよ。仕事、忙しいけど」
「相変わらずだね」
娘は笑った。
「学校はどう?」
「楽しいよ。友達もできたし」
「よかった」
「部活も頑張ってる」
「何部?」
「吹奏楽部。フルート吹いてる」
「へえ、すごいね」
「まだ下手だけどね」
娘は照れたように笑った。
飲み物が運ばれてくる。娘はカフェラテ、私はコーヒー。
「お父さんは元気?」
「うん。相変わらず仕事ばっかりだけど」
「そっか」
「でも、週末は家にいるようにしてくれてる」
「いいお父さんだね」
「うん」
娘は少し迷ってから、言った。
「お母さん、最近何か変わった?」
「え?」
「なんか、前より明るい気がする」
心臓が跳ねた。
「そうかな」
「うん。何かいいことあった?」
「……ちょっとね」
「教えて」
「恥ずかしい」
「お母さん、もしかして恋してる?」
顔が熱くなった。
「してない」
「嘘だ。絶対してる」
娘は笑った。
「いいじゃん。お母さんも幸せになっていいんだよ」
真紀と同じことを言う。
「ありがとう」
「で、どんな人?」
「昔の同級生」
「へえ。同窓会で会ったの?」
「うん」
「いいじゃん。お母さん、頑張って」
娘が、私を応援してくれている。
それが嬉しかった。
「ありがとう」
「お母さん、もっと自分のこと大事にしていいんだよ」
娘の言葉が、胸に染みた。
「わかった」
二人でケーキを食べて、コーヒーを飲んだ。
四時過ぎ、娘が「そろそろ帰らなきゃ」と言った。
「気をつけてね」
「お母さんも。また連絡する」
「待ってる」
娘は手を振って、カフェを出ていった。
私は一人、席に残った。
窓の外を見る。
娘の後ろ姿が、人混みに消えていく。
もう、小さな子どもじゃない。
私がいなくても、ちゃんと生きていける。
だから、私も。
私も、自分の人生を生きていい。
スマホを取り出して、陸にメッセージを送った。
「今度、ゆっくり話せない?」
すぐに返信が来た。
「もちろん。いつがいい?」
「来週の金曜日」
「大丈夫。どこで会う?」
「いつものビストロで」
「了解。楽しみにしてる」
私は画面を見つめた。
来週、陸に会ったら、答えを伝えよう。
私の気持ちを。
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