処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka

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第26章「戦火の王都」

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一ヶ月が過ぎた。
その日の朝、伝令兵が駆け込んできた。
「報告!東国軍、国境を越えました!」
セリーヌは作戦室にいた。
大きな地図が広げられている。
「どこからだ」
「三箇所、全てです!」
伝令兵は息を切らせながら報告した。
「北の峠、中央の平原、南の森。三方向から、同時に」
予想通りだ。
「兵力は」
「それぞれ三千から四千」
合計一万以上。
ロベルトの情報より多い。
「すぐに各地の指揮官に伝えろ。予定通りの配置で迎撃しろ」
「はい!」
伝令兵は走り去った。
父王が心配そうに言った。
「セリーヌ、大丈夫か」
「わかりません」
セリーヌは正直に答えた。
「ですが、やるしかありません」
地図を見る。
三箇所の戦場。
北の峠には、ダミアン卿が三千の兵を率いている。
中央の平原には、グレン侯爵の息子が三千。
南の森には、若い将軍が三千。
そして、王都近くに予備軍一千。
レオンは、中央の平原にいる。
「神よ、彼らを守りたまえ」
セリーヌは祈った。
数時間後、最初の戦況報告が届いた。
「北の峠、戦闘開始!ダミアン卿、防衛線を構築!」
「中央の平原、敵と接触!激しい戦闘!」
「南の森、伏兵により敵の先鋒を撃退!」
セリーヌは地図に印をつけていく。
敵の位置。味方の位置。
全てを把握する。
「中央が激しいようだ」
父王が言った。
「平原だからだ」
セリーヌは答えた。
「騎兵が使える。敵の主力が、そこに集中している」
「レオンは」
「中央にいます」
セリーヌは不安を隠せなかった。
「大丈夫だ。レオンは強い」
父が励ました。
「信じよう」
夜になり、一日目の戦闘が終わった。
報告書が届く。
セリーヌは一つ一つ読んだ。
「北の峠。敵の攻撃を撃退。味方の損害、二百。敵の損害、推定五百」
「中央の平原。一進一退の攻防。味方の損害、五百。敵の損害、推定六百」
「南の森。伏兵作戦成功。敵を後退させた。味方の損害、百。敵の損害、推定四百」
一日で、味方は八百人を失った。
敵は千五百。
数字だけ見れば、有利だ。
だが、八百人の命が失われた。
八百の家族が、涙を流している。
セリーヌは報告書を置いた。
重い。
王の責任。
人の命を左右する決断。
これが、戦争だ。
二日目。
戦闘は激化した。
「北の峠、敵の増援到着!数は二千!」
「中央の平原、敵の騎兵突撃!防衛線が破られた!」
「南の森、敵が迂回!背後を突かれる恐れ!」
全ての戦線で、危機だ。
「予備軍を動かします」
セリーヌは決断した。
「どこに」
「中央です」
セリーヌは地図を指した。
「敵の主力は中央にいます。ここで勝てば、戦局が変わります」
「ですが、他の戦線は」
「耐えてもらいます」
セリーヌは苦渋の決断だった。
「全てを守ることはできません。一箇所で勝つしかありません」
伝令兵が走る。
予備軍一千が、中央の平原へ向かう。
その夜、中央から報告が届いた。
「予備軍到着。敵の騎兵を撃退。防衛線を回復」
「レオン隊、敵将を討ち取る!」
セリーヌは安堵した。
レオンは生きている。
しかも、活躍している。
「よくやった」
だが、他の戦線は厳しかった。
「北の峠、兵力不足。後退を余儀なくされる」
「南の森、敵の迂回を許す。防衛線が崩壊の危機」
セリーヌは拳を握った。
どうする。
予備軍はもういない。
援軍を送れない。
「各戦線に伝えろ」
セリーヌは命じた。
「あと一日、耐えろ。必ず援軍を送る」
嘘だった。
援軍はない。
だが、希望を与えなければ、兵は戦えない。
三日目。
最も激しい戦闘が起こった。
中央の平原で、決戦。
レオンとダミアン卿が指揮する軍が、東国の主力と激突した。
セリーヌは作戦室で、刻々と届く報告を聞いた。
「レオン隊、敵の中央に突撃!」
「ダミアン卿、敵の右翼を攻撃!」
「敵将、後退!」
「追撃開始!」
報告が続く。
セリーヌは地図を見つめた。
中央で勝っている。
だが、北と南は。
「北の峠、防衛線崩壊。後退」
「南の森、全滅の危機」
セリーヌは決断しなければならなかった。
「中央の勝利を優先します」
セリーヌは冷たく言った。
「北と南には、可能な限り後退を許可します」
父王が驚いた顔をした。
「セリーヌ、それは」
「見捨てるということです」
セリーヌは目を伏せた。
「ですが、全てを救うことはできません」
父は何も言わなかった。
ただ、悲しそうな顔をした。
夕方、中央から決定的な報告が届いた。
「敵の主力を撃破!敵将、戦死!残存兵、退却!」
勝った。
中央で、勝利した。
だが、代償は大きかった。
「北の峠、放棄。生存者、千」
「南の森、壊滅。生存者、五百」
三日間で、味方は四千人を失った。
半分だ。
セリーヌは報告書を床に落とした。
四千人。
四千の命。
自分の決断で、失われた命。
「殿下」
伝令兵が呼んだ。
「レオン隊長が、戻られました」
「レオン」
セリーヌは駆け出した。
中庭に、レオンがいた。
鎧は傷だらけ。血まみれ。
だが、生きている。
「レオン!」
セリーヌは抱きついた。
「殿下」
レオンは驚いた。
「人前で」
「構わない」
セリーヌは涙を流した。
「生きていてくれて、ありがとう」
レオンは優しく抱き返した。
「約束を守りました」
二人はしばらく、そのままだった。
周りの兵士たちは、微笑んで見ていた。
やがて、セリーヌは離れた。
「戦況は」
「中央は制圧しました」
レオンは報告した。
「敵の主力は壊滅。残存兵は東へ逃げました」
「北と南は」
「厳しいです」
レオンは暗い顔をした。
「多くの仲間を失いました」
セリーヌは頷いた。
「わかっています」
その夜、セリーヌは一人で泣いた。
四千人。
名前も顔も知らない人たち。
だが、全員が誰かの息子で、誰かの父で、誰かの夫だった。
その命を、セリーヌの決断が奪った。
「これが、王の責任」
セリーヌは呟いた。
重すぎる。
だが、背負わなければならない。
それが、王の宿命だ。
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