遅咲き騎士は花々の夢を見るか ~追放された役立たずは最強のスキルを持つ英雄でした~

朝食ダンゴ

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もう遅い

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「なんなんですか。面白くない冗談ですよ、そんなの」

 フレデリカは眉を吊り上げ、あからさまに不機嫌な顔をする。

「パーティに戻らないための口実なら、もっと他になんかあるんじゃないですか」

「信じられないかもしれないけど、本当の話だ。なんならリーベルデ様に取り次いでもいい。鑑定の儀、まだなんだろう?」

「ちょ、ちょっとお待ちになって。一体どういうことですの? 話がまったく分かりませんわ」

 クレインの反応ももっともだ。
 俺は頷く。

「立ち話もなんだ。詳しく話すから、場所を変えようか」

 男子寮に女子が長居するのも問題があるだろう。
 というわけで食堂へと移動した俺達は、久々に同じ食卓を囲むことになった。
 奇跡的に被害を免れた食堂は、学生や職員達で賑わっていた。皆、日常の憩いを求めてここに集まってきているのだろう。いつも以上の喧騒が広い空間に満ちている。

「要するに……リーベルデ様をお救いした功績を認められて、神聖騎士に登用されたと」

 事の顛末を聞いたクレインは、やはり信じられないといった風に目をぱちくりさせた。
 俺の説明は嘘と真実を織り交ぜたものだ。破戒のスキルと、リーベルデの恋心。この二つを公にするわけにはいかない。そのあたりの誤魔化し方については、昨夜メローネとしっかり話し合っている。

「男が聖女付きなんて、歴史の講義でしか聞いたことありませんよ」

「それだけの異常事態」

「そりゃ分かってますけど」

 フレデリカも驚きを隠せない様子だ。表情に乏しいユキでさえ、その心情がありありとわかる。

「俺がリーベルデ様と旧知だったこと。神聖騎士団が壊滅してしまったこと。そして俺がスキル持ちだったこと。いくつもの偶然が重なって起きた奇跡みたいなもんだよな」

 普通なら考えられない出来事だ。

「なぜ、リーベルデ様はフリードさんのスキルをお隠しになられたのです?」

「あ、そうそう。そうですよ。大講堂で大恥かかされたってのに、よく騎士なんかなる気になれましたね」

「その言い方はよくない」

「あーはいはい。不敬でした」

 俺のスキルについて。やっぱり突っ込まれるよな、そこは。

「これは俺も後から聞いたんだけど」

 メローネとの口裏合わせを思い出す。

「俺のスキルは、効果を知っていれば対策できてしまうものなんだ。だから、リーベルデ様は咄嗟に機転を利かせ、スキルを見出せなかったことにして下さった。どうやらそういう話らしい」

「あーなるほど。ありますよねそういうの。わかります。私の転移発動もそんな感じですし」

 フレデリカがうんうんと頷く。ちなみに彼女の言う転移発動とは、魔法の発動位置を任意の空間に転移できるというものだ。これはスキルではなく、魔法における応用の一種である。敵の虚を衝くことで最大の威力を発揮するものなので、あまり口外したくない術式なのだ。

「そういうことなら合点がいきますけれど……では、あの時わたくし達が苦戦していた黒騎士を倒したのも」

「スキル、ですよね?」

 俺は首肯で答える。

「元パーティメンバーのよしみでこっそり教えておく。俺のスキルは敵の死角から致命の一撃を叩き込む『アサシン・ダガー』だ。みんなも見た通り、黒騎士の上半身を吹っ飛ばしたあれだよ」

「……とんでもないスキルですね」

「一撃必殺」

「まぁそうなんだけど、使いどころが難しいんだ。警戒されているとまず当たらない。あの時も運よく視界が遮られてたから上手くいっただけで、いつでも使えるってわけじゃない。そういうわけで、隠しておいた方が都合がいいんだ。口外しないでくれよな」

 メローネとの相談通り、俺はベラベラとスキルの効果を口にする。当然これはブラフだ。他言無用という秘密感を演出し、本来のスキルをより深く隠してしまおうという魂胆。一撃必殺という効果を共通させることで、万が一発動の瞬間を見られても誤魔化せる余地を残している。
 聞けば、これはリーベルデのアイデアらしい。かわいい顔してなかなかの策士である。

「お話はわかりましたわ。危険指定種を一蹴できるだけの実力があれば、騎士に取り立てられるのも不思議ではありません」

 クレインは肩を落とし、儚げな溜息を漏らす。

「ぜひともパーティに戻ってきて頂きたかったのですが……もう遅い、ということですわね」

「悪いなクレイン。もう少し早く言ってくれれば、喜んで戻ってたんだろうけど」

「いいえ。謝罪するのはこちらの方です。あなたの潜在能力を見抜けなかったわたくしの落ち度。リーダー失格ですわ」

 それは仕方あるまい。俺が無能だったのは確かだし、スキルを見出せるのは聖女だけ。たとえクレインに人の才能を見抜く目があったとしても、スキルだけは見抜けないのだから。
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