異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ

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守るべきもの

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 漆黒に包まれていたのはごくわずかな時間だった。
 体感で数秒。戸惑う間もなく、俺達は世界樹内部の生命の間に帰還する。

 ずっとこの場所にいたかのように――実際、肉体はここにあったのだろう――俺達は裏世界に赴く直前の状態から変わっていなかった。
 戦いで負った肉体のダメージはすべて無かったことになっている。
 精神世界で受けたすべての負荷は、精神的疲労となって表れている。
 とはいえ、ここにいるのは誰もが強靭な意志を持つ者達だ。心に後遺症が残るようなことはないだろう。

「マスター。あれを」

 意識を取り戻したアイリスが、生命の間の中央を指す。
 小さな木に磔になっていたエマ。その手足に絡みついていた枝や蔓が、ゆっくりと解けていく。
 樹上から落ちるエマを、俺はそっと受け止めた。
 彼女は俺の腕の中で、ゆっくりと瞼を開く。

「エマ。気がついたか」

「戻って、きたんですね」

 精神が疲弊しているのだろう。
 エマは覚醒しきらない意識で受け応える。

「気分はどうだ?」

「……不思議と、悪くありません」

「なによりだ」

 俺はエマを自分の足で立たせると、そのまま彼女を縛っていた木に向き直る。

「アデライト先生。この木って、世界樹の一部なんですかね? 世界樹の中に生えてるから、そうだと思うんですけど」

「おそらく」

 先生もまた、木の傍に歩み寄る。

「本来、世界樹はただ一つの存在。種子を落とすことはありません。しかしこの木は、世界樹の苗と言って差し支えない物でしょう」

「世界樹のこどもってことですか?」

「こどもというよりは、双子のようなものかと」

「双子……」

 なるほど。
 俺の直感の通りだったってわけだ。
 エレノアの創世が完全ではなかったがゆえに生まれた、二つ目の世界樹。

「いま俺が考えていること。皆ならわかると思う」

 じっと木を見上げる俺の背中に、皆の視線と想いが集中しているのを感じた。

「創世を、為すのですか」

 アデライト先生の問いかけに、俺ははっきりと頷く。

「ロートス。よいのじゃな?」

 アカネの声には、真意を探るようなニュアンスがあった。
 そりゃそうだ。

 創世を行うとは、すなわち神になること。
 エレノアと同じ業を背負おうということなのだ。

「アカネ。お前が話してくれたこと、忘れちゃいない」

 人でありながら、神になる。
 神であろうとするために人であることを捨てたエレノアとの決定的な違いは、そこにあるだろう。

「腹は決まっておるようじゃな」

「とっくにな」

 俺の答えを聞いたアカネは、どこか満足げだった。
 生命の間は、妙な静寂の中にあった。
 誰もが皆、俺の次の言葉を待っているかのように。

「みんな、神の山に言った時のことを憶えてるか? エレノアの再創世を阻止しに行って、失敗した時のことだ」

「忘れもしないのです」

 サラをはじめ、みんなが神妙に頷く。

「あの時、教皇が言ってたのです。この世界を存続させるため、女神を打倒して、新たな神が生まれなきゃならないって。その新たな神は〈尊き者〉……ご主人様だって」

 ああそうだ。
 けど、それだけじゃない。
 〈八つの鍵〉であるみんなも、新たな神になるって話だった。

「ロートスさん。改めて問う必要はありません。私たちはすでに、あなたと使命を同じくする覚悟はできています」

 極めて重大なことを、アデライト先生はさらりと口にした。

「そっすね。むしろやっとか、って感じっすよ」

 ウィッキーが茶化すように笑う。

「ええ、わたくしも。どこまでもマスターについていく所存ですわ」

 相変わらずのほほんとした表情のアイリス。

「あたしも構わない。あなたと共に、あたしたちの世界を取り戻したいから」

 セレンは小さく頷いた。

「そうだね。私達は、ずっとそのために戦ってきたんだから」

 今一度の決意を固め、ルーチェは噛みしめるように呟く。

「自分は……」

 オルタンシアだけは、すぐに賛同の意を示さなかった。
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