邪教団の教祖になろう!

うどんり

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二章

22 飛躍の法具

「あの人間は俺がやる! 黒犬ばかりで退屈していたからちょうどいい!」

 俺に最初に会った戦士の一人が、聖刻騎士団の男と対峙した。

「俺の名はダバルガ! 部族の中ではモルガ族長の次に強え!」

 マジか。そんな強かったのか。

「バカ言うな!」

「お前は五番目くらいだろ!」

 諸説あった。

 だが実力者なのは違いないらしい。
 長身に鍛え抜かれた肉体は、オブダに並ばないまでも十分な威圧感を放っている。
 顔には黒色顔料ブラックオーカー……アギ族がよくやる戦化粧が派手に塗られていた。

 聖刻騎士団の男はつばを吐いた。

「手出し無用の一騎打ちってやつか? くっだらねえ!」

 聖刻騎士団の男の踏み込みは速かった。
 あっという間に間合いまで詰め寄ると剣を振るった。
 ひと目見て、戦い慣れていると感じる動きだ。

 ダバルガはショートスピアの柄で防ぐ。
 余裕そうな表情。

 鍔迫り合いが始まったが、しかし力は拮抗しない。

「がははは! 弱えええんだよ!」

「……ちっ! 馬鹿力が」

「『キシ』だかなんだか知らねえが、里で三番目の俺より腕力は弱ぇみてえだなあ!」

「何言ってるかわからねえけど、馬鹿にしてやがるな? くそが!」

 さすが脳筋……いや力自慢のそろった戦闘集団だけある。
 ダバルガが力で押していく。

 木製の柄だからか、鉄製の剣がどんどん柄に食い込んでいくのも構わず、ただのショートスピアが剣の間合いで押していく。

「うおっ!?」

 やがて聖刻騎士団の剣をダバルガの槍が弾いた。

 明後日の方向に剣が飛んでいき、聖刻騎士団の男は尻餅をつく。

「やるじゃねえか。参った。降参だよ」

 騎士の男は尻餅をつきながら、たまらずお手上げのポーズ。

 しかしそれを無視して、

「死ねえええ!」

 ダバルガが槍を突き出す。

「――――!」

 疾風が吹いたと思った突如、腰を地につけていたはずの聖刻騎士団の男は起き上がっていた。
 そしてダバルガの、槍ごと突き出されていたはずの腕が、切り飛ばされて転がっていた。

 何が起こったんだ?
 何をしたのか見えなかった。
 武器をはじかれ手ぶらだったはずの聖刻騎士団の男が、相手の片腕を切り落としたように見えた。
 そんなことが可能なのか。

「……あ?」

 ダバルガはキョトンとして、なくなった自分の右手を探す。

「いや、いいね。そういうリアクションだよ俺が見たかったのは。まさかここから反撃されるなんて思わなかっただろ? 確信していたはずの勝利が覆った気分はどうだい?」

「ぐっ、うおおおお!」

 ダバルガが痛みに咆哮しながら、それでも残った片腕でナイフを握り、突撃する。

 蹴り。

 速すぎて判別しにくいが、騎士の男が突き出された腕に向かって回し蹴りを放っていた。

 そしてダバルガのもう一本の腕が切断されて飛んだ。

 両腕をなくしたダバルガは、おびただしい血を失いながら地面に倒れる。

「なるべく殺すなってことだったからよ、殺さないでおいてやるぜ。……まあもっとも、すぐに出血多量で死ぬだろうがなあ。その前にショックで死んだか?」

 聖刻騎士団の男の足。
 鎧の脛当てだったものが、物々しく変形していた。

 表面にはブレードが出現し、後ろ側にはなにか管のようなものが数本生えている。
 脛当ての中心が、神聖文字の形に光っていた。

「まあどっちでもいいか。どうせ第六位階には生きる価値なんてないんだからな!」

 男は、また跳躍した。

 すさまじく速い飛び蹴り。
 横槍を入れようとしていたアギの戦士が切り伏せられる。

 アギ族の男たちから投擲されるナイフ。
 軽やかにかわし、跳躍し、薙ぐように蹴る。
 一撃、二撃。またアギの戦士が倒れる。

「おいおい、まさか何が起こっているのかわからねえってか? 俺が身につけてる《飛躍の法具》の説明が必要か!? 教えねえがな!」

 高く跳躍。
 いや、人間の持つ跳躍力を超えた跳躍で、

「で、お前何者だ!?」

 一気に俺の方へ距離を詰めてくる。

「町の人間だな? なんでこんなところにいて、第六位階に助言してやがるんだ!?」

 俺へ放った問い。

 容赦のない蹴りを放つが、

「!」

 当たる前に、横からダッタがショートスピアを突き出した。

「おっと!」

 それに気づいた聖刻騎士団の男は、途中で跳躍の軌道を変えた。

 空中にいて方向転換できないにも関わらず、勢いを無視して側面へ跳び俺たちから距離を取った。
 空中を蹴ったかのような動きに、俺は瞠目した。

「鎧の脛当てが、蹴りをパワーアップさせるような法具になっているのか」

「だった」

 俺のつぶやきに、ダッタはうなずいた。

「あの足から空気出て、ジャンプや蹴りの速さ上げてた」

「途中で跳躍の軌道が変わったのも、空中で空気を吹き出したからか」

 脛当ての、管のようになっている場所から空気を出して、蹴りを加速させたり跳躍力を上げたりしていたってことか。

「賢いやつがいるじゃあねえか。正解だ。空気を圧縮して放つ、それが俺の飛躍の法具だ。わかったところでどうしようもないがな!」

 ダッタが距離を詰め、槍を突き出す。
 男はかわしてダッタの頭部へ蹴りを放つ。
 それを読んでいたのか、ダッタは身体を反らして避け、避けざまナイフを投げる。
 男は蹴りで投擲されたナイフを払った。

 ふたりとも速すぎてまったく他を寄せ付けない。

 周囲を見る。

 味方の数も少なくなってきたが、敵もそれなりに倒している。
 アギ族の精鋭が強すぎるのだ。

 フリーになった族長のモルガが、指揮官がいると思われる森の中へ入ろうとした――そのとき一本の矢が飛来する。

「!」

 モルガはとっさにそれを掴む。

 矢はほかにも放たれている。
 次々仲間を襲おうとするも、戦士たちはそれを防ぐ。

 が、残っていた人形の法具の攻撃もやまない。
 防いでいくうちに、徐々に後退していく。

 森の中から、弓矢を放っている者がいる。
 前線に出ているやつの仲間だろう。
 方向的に、数カ所にわかれて射っている。
 四、五人はいるのではないか。

 指揮官の護衛だろうか?
 だとしたら、すぐ近くに指揮官がいるのは濃厚だ。

 だが、弓矢の猛攻がつらい。考えなしに突っ込んでいけばやられる。

 どうする?

 このままではジリ貧だ。
 じわじわとやられていって全滅する。

 どうしたらいい。
 どうすれば戦闘の流れが変えられる?

 人形の法具たちの攻撃をしのぎ、まずはあの脛当て野郎を倒す。
 戦いの流れを変えるなら、それしか方法がないように思える。

 なにかないか。

 そうだ、なにか、適切な、ちょうどいい奇跡はないのか。
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