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四章
第112話 屋敷の中へ
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黒装束たちが展開する魔法印から魔法が発せられるより早く、灰色の影が動いた。ウォフナーだ。
「ぎゃあっ!」
ウォフナーは魔物化した腕で黒装束たちをなぎ倒した。
もう一方の――人間の方の手にはロングソードが握られている。
跳ぶ。
持っている剣で、黒装束を切り伏せる。
魔法印がウォフナーに向けられる。
《火球召喚》――放たれた炎はしかし、それ以上のスピードで駆けるウォフナーをかすめもしなかった。
さらに振るわれた魔物化した腕。
――しかしそれを装飾のあしらった剣で受け止める者があった。
黒装束を守るように魔物化した腕を魔法石のあしらった剣で防いでいる男。
自称《ガルデローヴ》だ。
「甘いわ!」
雷撃が放たれ、とっさにウォフナーは後方へ跳んだ。
後方へ避けてから、間髪入れず、ウォフナーは横に跳ぶ。
ウォフナーの体は片腕や片足など一部が魔物化しているせいか、人間の部分との重量バランスがおそろしく悪い。
はじめは歩いたり走ったりすることさえ難儀していたが……今はそれを克服し、自分のものにしている。
ウォフナーが手に入れた、重量バランスの悪さからくるブレを利用した動き。
人間の体のほうが振り回される不便さを矯正せず、無駄を削ぎ落さず、振り回されるままにすることで得た予測不能な体捌き。
不規則な軌道で駆けるウォフナーに、ガルデローヴは狙いを定めて雷撃を放つ。
跳ぶ。避ける。当たらない。
当たるはずがない。
おそらく本人さえどうブレるか正確にはわからない規則性のない動きに、完璧に狙いを定めるのは至難の業だ。
「――行け。ここは引き受ける」
片腕をついて、やや四つん這いになって止まったウォフナーは、俺たちに告げる。
「頼んだぞ」
いうが早いか、ウォフナーは《ガルデローヴ》へ肉迫する。
体をひねりながら、手に持つ長剣を振りかぶる。
振り下ろされる攻撃的な剣は、しかし《ガルデローヴ》にすかさず受け止められた。
剣戟が響く。
それを背に、俺たちは進む。
屋敷の前まで到着する。
目の前には、見えない結界が張り巡らされてある。
「破れるかラミナ」
「うん」
ラミナが銀色のナイフを振るうと、空間が割れて結界が暴かれる。
鉄製の門が、ついでに真っ二つにされる。
「ちょっと縮もうかダストよ」
「わざわざ屋敷の中に招かれるのですか」
「そういうことだ」
俺は口元を吊り上げた。
「屋敷の外から攻撃を加えずわざわざ入っていくというのは、また何か意地の悪いことを企んでいるのでしょう」
「いや、そんなことはないぞ」
「どうだか」
でかい溜息をつきながら、ダストの外殻が剥がれ落ちていき、やがて俺と同じくらいのサイズにまで縮んでいく。
しかし全身甲冑に包まれたように、薄く外殻を纏っている。
「べつにすっぴんでもいいんじゃないか」
「魔王っぽくと言ったのはどこのどいつですか」
軽口を叩き合いながら屋敷の中に入ると、いきなり魔法で攻撃を受ける。
「む?」
風の刃。
風圧とともに放たれた不可視の斬撃が、俺たちを襲う。
ラミナが、ナイフを振るってその風をかき消す。
敵の姿はない。広い屋敷のどこかに隠れながら、こちらを攻撃している。
「敵の場所、見つける。先に行って」
ラミナが両手にナイフを構えながら言った。
俺たちは頷く。
リィサの見せてくれた映像で、《魔王》の居場所はだいたい把握している。
その通りのルートに沿って、俺たちは進む。
「ぎゃあっ!」
ウォフナーは魔物化した腕で黒装束たちをなぎ倒した。
もう一方の――人間の方の手にはロングソードが握られている。
跳ぶ。
持っている剣で、黒装束を切り伏せる。
魔法印がウォフナーに向けられる。
《火球召喚》――放たれた炎はしかし、それ以上のスピードで駆けるウォフナーをかすめもしなかった。
さらに振るわれた魔物化した腕。
――しかしそれを装飾のあしらった剣で受け止める者があった。
黒装束を守るように魔物化した腕を魔法石のあしらった剣で防いでいる男。
自称《ガルデローヴ》だ。
「甘いわ!」
雷撃が放たれ、とっさにウォフナーは後方へ跳んだ。
後方へ避けてから、間髪入れず、ウォフナーは横に跳ぶ。
ウォフナーの体は片腕や片足など一部が魔物化しているせいか、人間の部分との重量バランスがおそろしく悪い。
はじめは歩いたり走ったりすることさえ難儀していたが……今はそれを克服し、自分のものにしている。
ウォフナーが手に入れた、重量バランスの悪さからくるブレを利用した動き。
人間の体のほうが振り回される不便さを矯正せず、無駄を削ぎ落さず、振り回されるままにすることで得た予測不能な体捌き。
不規則な軌道で駆けるウォフナーに、ガルデローヴは狙いを定めて雷撃を放つ。
跳ぶ。避ける。当たらない。
当たるはずがない。
おそらく本人さえどうブレるか正確にはわからない規則性のない動きに、完璧に狙いを定めるのは至難の業だ。
「――行け。ここは引き受ける」
片腕をついて、やや四つん這いになって止まったウォフナーは、俺たちに告げる。
「頼んだぞ」
いうが早いか、ウォフナーは《ガルデローヴ》へ肉迫する。
体をひねりながら、手に持つ長剣を振りかぶる。
振り下ろされる攻撃的な剣は、しかし《ガルデローヴ》にすかさず受け止められた。
剣戟が響く。
それを背に、俺たちは進む。
屋敷の前まで到着する。
目の前には、見えない結界が張り巡らされてある。
「破れるかラミナ」
「うん」
ラミナが銀色のナイフを振るうと、空間が割れて結界が暴かれる。
鉄製の門が、ついでに真っ二つにされる。
「ちょっと縮もうかダストよ」
「わざわざ屋敷の中に招かれるのですか」
「そういうことだ」
俺は口元を吊り上げた。
「屋敷の外から攻撃を加えずわざわざ入っていくというのは、また何か意地の悪いことを企んでいるのでしょう」
「いや、そんなことはないぞ」
「どうだか」
でかい溜息をつきながら、ダストの外殻が剥がれ落ちていき、やがて俺と同じくらいのサイズにまで縮んでいく。
しかし全身甲冑に包まれたように、薄く外殻を纏っている。
「べつにすっぴんでもいいんじゃないか」
「魔王っぽくと言ったのはどこのどいつですか」
軽口を叩き合いながら屋敷の中に入ると、いきなり魔法で攻撃を受ける。
「む?」
風の刃。
風圧とともに放たれた不可視の斬撃が、俺たちを襲う。
ラミナが、ナイフを振るってその風をかき消す。
敵の姿はない。広い屋敷のどこかに隠れながら、こちらを攻撃している。
「敵の場所、見つける。先に行って」
ラミナが両手にナイフを構えながら言った。
俺たちは頷く。
リィサの見せてくれた映像で、《魔王》の居場所はだいたい把握している。
その通りのルートに沿って、俺たちは進む。
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