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第八話 捜査のために偽装カップルになりました
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翌日、俺たちはトラオム聖教会に向かった。今日は一般信徒として。
”白の間”から聖体を盗み出した方法を考えれば、自ずと犯人も絞られる。
早いところトリックを見破らなければーーーー
「だからって! なんで俺とお前が”恋人”なんだよ!!!」
俺はびしっ!と指を指して叫んだ。
ギルバートはしらっとした顔をしている。
セオドア司祭が申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありません、クライン様。”白の間”は上級司祭三人がいなければ鍵が開かないのです。ただ、いま彼らには盗難のことは伏せておきたくて」
「あ、いや、すみません、わかってます、それは」
「”白の間”と同じ部屋の作りをしている”赤の間”でしたら、怪しまれず捜査できるかと考えまして……」
丁寧に、さきほどされた説明を繰り返される。腰が低い分、断りづらい。
いや、わかってるんだ。
鍵開けのトリックを考えるのに適してる部屋を用意してくれたってことは。
異論があるのはそこじゃないんだ。
問題は、その”赤の間”が、結婚直前のカップルが使う部屋ってことなんだ。
「捜査のためだ、仕方ないだろ」
「ぐぅっ……!」
「ほら、申請書。エルマの分も書いておいた」
ぺらり、と示された紙には間違いなく俺とギルバートの名前が記されていた。
オルフェリア聖教では、結婚する前に神に祈りを捧げる。”赤の間”はその祈りの場だ。
つまり、もし他の人に見られたら、俺たちは結婚直前のカップルと見なされるわけだ。
「今だけですから、クライン様。捜査が終わったら申請書は処分しますから」
「……ハイ。お気遣いありがとうございます…………」
丁寧に対応される分、自分がくだらないことでワガママ言ってるみたいに思える。恥ずかしい。子どもみたい。
ギルバートは全然気にしてない様子なのがまた、情けなくなってくる。
「こちらの”赤の間”は本日、三時間ほど予約を取っております。いかような捜査をしても私は他言いたしません」
セオドア司祭はにっこり笑顔を俺に向ける。
さっさと調べろよ、という圧を感じる。
……うん、これに関しては俺が悪いな。時間がないってのは事実だし。
「エルマ、始めるぞ」
ギルバートが扉に目を向ける。俺は腹をくくった。
”赤の間”は重厚な扉で閉じられている。
開けるには、扉に備え付けられている石版に手を置き、魔素を込める。
魔素は、指紋や虹彩のように個人で形が異なっている。
手のひらから流れる魔素を識別し、登録したふたり分の情報と一致したとき、鍵が開く。閉じるときも同様だ。
”白の間”は、上級司祭三人の魔素情報が一致しなければ開かない造りになっている。
人数の違いはあるが、それ以外は同じ。トリックを考えるには適している。
ざらざらした石版に手を乗せる。
ギルバートも隣で石版に手を乗せた。魔素が認識され、手のひらがカッと熱くなる。
途端に、ぐらっと身体が揺れた。
体内の魔素が吸い取られていく感覚に冷や汗が垂れた。
今朝ギルバートに魔素を供給してもらったけど、体内に残ってるのはいつもより少ない。
全身から力が抜けていく。ふらつく足に必死に力を込めた。
しばらくして、カチャリ、と扉が開いた。
「エルマ、大丈夫か」
「……ちょっとタンマ」
「魔素不足か」
ギルバートが俺の身体を支える。
足に力が入らないから、半分もたれかかっていた。指先が冷たく震えている。
この形式の鍵を開けるときって、かなり魔素を消費するんだな。
ギルバートが俺の顔を覗き込んで、くいっと顎を持ち上げた。
「補給する。口、開けろ」
「は? ちょっ、待っ……」
次の瞬間、唇が塞がれた。
俺は声にならない悲鳴を上げるが、ギルバートは執拗に舌を絡めた。唾液が行き交い、熱い吐息が包み込む。魔素が与えられる。
冷え切った指先は熱を取り戻し、震えもなくなった。けど。
もうちょっと、心の準備ってものがあるだろ、と、叫びたくなる。
唇が離れた途端、勢いよくギルバートから距離をとった。ごしごしと口元を拭う。
セオドア司祭は後ろを向いて、見ていませんよ~ってアピールをしてくれていた。
……その気遣いが妙に恥ずかしい。
「エルマ、体調は」
「………治った」
ギルバートはほっと胸をなで下ろす。
純粋に心配しての魔素供給だったのは、わかるんだけど。
急にキスされるのはマジで心臓に悪いからやめてくれ。
「鍵。見るんだろ、入るぞ」
調子を取り戻すように向き直ると、ギルバートは「ああ」とだけ返した。
……若干、口角が上がっていた気がする。
”白の間”から聖体を盗み出した方法を考えれば、自ずと犯人も絞られる。
早いところトリックを見破らなければーーーー
「だからって! なんで俺とお前が”恋人”なんだよ!!!」
俺はびしっ!と指を指して叫んだ。
ギルバートはしらっとした顔をしている。
セオドア司祭が申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳ありません、クライン様。”白の間”は上級司祭三人がいなければ鍵が開かないのです。ただ、いま彼らには盗難のことは伏せておきたくて」
「あ、いや、すみません、わかってます、それは」
「”白の間”と同じ部屋の作りをしている”赤の間”でしたら、怪しまれず捜査できるかと考えまして……」
丁寧に、さきほどされた説明を繰り返される。腰が低い分、断りづらい。
いや、わかってるんだ。
鍵開けのトリックを考えるのに適してる部屋を用意してくれたってことは。
異論があるのはそこじゃないんだ。
問題は、その”赤の間”が、結婚直前のカップルが使う部屋ってことなんだ。
「捜査のためだ、仕方ないだろ」
「ぐぅっ……!」
「ほら、申請書。エルマの分も書いておいた」
ぺらり、と示された紙には間違いなく俺とギルバートの名前が記されていた。
オルフェリア聖教では、結婚する前に神に祈りを捧げる。”赤の間”はその祈りの場だ。
つまり、もし他の人に見られたら、俺たちは結婚直前のカップルと見なされるわけだ。
「今だけですから、クライン様。捜査が終わったら申請書は処分しますから」
「……ハイ。お気遣いありがとうございます…………」
丁寧に対応される分、自分がくだらないことでワガママ言ってるみたいに思える。恥ずかしい。子どもみたい。
ギルバートは全然気にしてない様子なのがまた、情けなくなってくる。
「こちらの”赤の間”は本日、三時間ほど予約を取っております。いかような捜査をしても私は他言いたしません」
セオドア司祭はにっこり笑顔を俺に向ける。
さっさと調べろよ、という圧を感じる。
……うん、これに関しては俺が悪いな。時間がないってのは事実だし。
「エルマ、始めるぞ」
ギルバートが扉に目を向ける。俺は腹をくくった。
”赤の間”は重厚な扉で閉じられている。
開けるには、扉に備え付けられている石版に手を置き、魔素を込める。
魔素は、指紋や虹彩のように個人で形が異なっている。
手のひらから流れる魔素を識別し、登録したふたり分の情報と一致したとき、鍵が開く。閉じるときも同様だ。
”白の間”は、上級司祭三人の魔素情報が一致しなければ開かない造りになっている。
人数の違いはあるが、それ以外は同じ。トリックを考えるには適している。
ざらざらした石版に手を乗せる。
ギルバートも隣で石版に手を乗せた。魔素が認識され、手のひらがカッと熱くなる。
途端に、ぐらっと身体が揺れた。
体内の魔素が吸い取られていく感覚に冷や汗が垂れた。
今朝ギルバートに魔素を供給してもらったけど、体内に残ってるのはいつもより少ない。
全身から力が抜けていく。ふらつく足に必死に力を込めた。
しばらくして、カチャリ、と扉が開いた。
「エルマ、大丈夫か」
「……ちょっとタンマ」
「魔素不足か」
ギルバートが俺の身体を支える。
足に力が入らないから、半分もたれかかっていた。指先が冷たく震えている。
この形式の鍵を開けるときって、かなり魔素を消費するんだな。
ギルバートが俺の顔を覗き込んで、くいっと顎を持ち上げた。
「補給する。口、開けろ」
「は? ちょっ、待っ……」
次の瞬間、唇が塞がれた。
俺は声にならない悲鳴を上げるが、ギルバートは執拗に舌を絡めた。唾液が行き交い、熱い吐息が包み込む。魔素が与えられる。
冷え切った指先は熱を取り戻し、震えもなくなった。けど。
もうちょっと、心の準備ってものがあるだろ、と、叫びたくなる。
唇が離れた途端、勢いよくギルバートから距離をとった。ごしごしと口元を拭う。
セオドア司祭は後ろを向いて、見ていませんよ~ってアピールをしてくれていた。
……その気遣いが妙に恥ずかしい。
「エルマ、体調は」
「………治った」
ギルバートはほっと胸をなで下ろす。
純粋に心配しての魔素供給だったのは、わかるんだけど。
急にキスされるのはマジで心臓に悪いからやめてくれ。
「鍵。見るんだろ、入るぞ」
調子を取り戻すように向き直ると、ギルバートは「ああ」とだけ返した。
……若干、口角が上がっていた気がする。
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