【BL大賞、奨励賞受賞】嫌いなバディとキスをする!? ~ふたりきりの任務で再会したのは初恋の幼馴染でした~

mei@ネトコン13受賞

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第九話 推理スタート

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”赤の間”は大きな会議室くらいの空間だった。
赤というだけあって、ふかふかの赤い絨毯が敷かれている。部屋の中心には台座があり、真っ白い女神像が見下ろしていた。
台座は二メートルくらい。大人が手を伸ばせば届く距離だ。

「”白の間”の台座もこのように置かれているのですか?」
「そうですね。高さは三メートルほどですが。聖体は台座の中心に置かれていました」
「そうですか。”白の間”とこの部屋で違うところはあります?」
「部屋の広さは三倍ほどになります。あと、がらんとしていて、”白の間”に台座以外の物は置かれていません」

そうですか、と呟きながら部屋を見渡す。
カップルが使うからか、”赤の間”には高級そうなソファが置かれている。教会の豊かさを伝えるような内装だ。
”白の間”はただシンプルな内装になっているのかもしれない。司祭しか用がないなら華美な装飾は必要ないのだろう。

セオドア司祭の説明を聞きながら部屋を調べる。思考を巡らせている内に、あっという間に三時間経ってしまった。




「犯人はどうやって入ったと思う、エルマ」

拠点に戻った。
ギルバートが俺にコーヒーを差し出す。
俺はやや視線を下げて唸る。

”赤の間”のおかげで具体的な鍵の構造が分かった。
”白の間”の鍵は、上級司祭全員の魔素を認識して扉が開く。ひとりでも一致しなかったら開かない。

「まず疑ったのはスキミングなんだけど。
”赤の間”は、石版に触れてる箇所の魔素で個人を識別するだろ」

俺は扉を図解する。
指紋認証では直接触れてる指を認識する。
魔素認証も同じで、触れてる箇所の魔素を読み取る。

”赤の間”の鍵を開けたとき。ギルバートからもらった魔素でも、石版は俺だと認識した。
つまり、触れているのが”誰か”が重要なのだ。

「司祭たちの魔素の形をかたどって、石版に触れさせる。上から自分の魔素を流せば、石版は司祭たちが触れてるように認識する」

魔素の形をかたどるのは不可能ではない。
上級司祭に読み取る機械に触れてもらい、その情報を石などに刻めばいい。


「……ただ、必要な魔力量が多すぎる」


”赤の間”で鍵を開けたとき、俺が倒れたように。
この形式の扉を開けるには大量の魔素を消費する。一般人向けの”赤の間”ですら、魔力を補充してもらった俺が倒れるくらい。

セオドア司祭によれば、”白の間”を開けるには2000ルナが必要だそうだ。2000ルナは平均的な男性30人分の魔力量に匹敵する。
”赤の間”を開けるには100ルナ。単純計算で、20倍。

「鍵があっても回す力がない、ということか」
「ああ。一般人じゃ無理だな。平均的な市民の魔力量が60~70ルナ。魔術師でもせいぜい200~300ルナだし」
「俺も入団試験のときに計ったが、150くらいだった」

俺は、はぁ、と深いため息を吐いた。
魔素不足になる前は俺だって320ルナあったのに。今はすっからかんだ。

「単独犯だとしたら、桁外れの魔力を持ってるヤツ。かつ、”白の間”の構造を知ってて、上級司祭全員の魔素を読み取れるくらい近い人物。複数犯だとしても、少なくともひとりは教会関係者だろ」
「やはり上級司祭が怪しいな」

だよな、と視線を合わせる。



セオドア司祭に協力してもらい、教会関係者のフリをして潜入することになった。
ギルバートは騎士として上級司祭の護衛をする。司祭たちに近づき、情報を得る係。

俺は、というと。

「……見習い修道士かぁ」

ぺらっぺらの修道服を前に、うーんと唸った。
藍色のカソックに白地の刺繍。トラオム聖教会でも一番下の階級。
今は魔法も使えないし、下っ端として潜入するしかないのはわかってるんだけど。


潜入するときのイメージを掴むため、カソックを着る。やっぱちょっと薄い。あと思ったより安っぽい。
用意してくれたセオドア司祭には申し訳ないんだけど、宗教団体って身分制強いんだなぁと、改めて感じた。

ちらり、と隣で着替えるギルバートに目を向ける。
上級司祭の護衛は、オルフェリア教を守る聖騎士でもある。そのせいか、シルバーを基調としたマントとスタイリッシュな甲冑だった。
部屋の明かりを反射してキラキラ光る。
思わず見惚れてしまうくらいかっこよくて、一瞬息を呑んだ。

「エルマ?」

ハッとして、急いで顔を背ける。
そして自分のペラペラの修道服を見ろして、すぐ現実に戻った。
……俺とは大違いだ。

「別に、なんでもない」

この扱いの差に異論があるわけじゃないけど。
やっぱりモヤモヤは晴れなかった。

「エルマ、その服、似合うな」
「はあっ!?」

イヤミかよ! どうせ俺は下っ端だよ!!
と叫びそうになったけれど、ギルバートの顔を見たら、その叫びも引っ込んでしまった。

……俺を見る目が、妙に輝いていた。
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