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マジックアワー
9. 薄明
しおりを挟むー … in the case of ナッツ …
名前の無い病気を、医師から聞いた時、
私は 大声で笑いそうになった。
「 今の日本の医学では、
到底 無理です。治せません。」
日本では、この病気になった人は
私が、第1号 だったから。
何年も掛けて、
パパは 朝から翌朝まで働き続け、
そして、貯まったお金で
まるで、全国を旅するみたいに、
私を連れて、
" めずらしい脳の病気 " に強い病院を、
渡り歩いた。
" 最後の砦 " と 思っていた、
最先端の病院へ行った時、
ベテラン と呼ばれている医師が、
私に言ってきた。
その ためらいもなく言い放った言葉に、
パパは ひどく落胆し、
私は、そんなパパを見て…
落胆している暇など なくなった。
「 ですよね~、うん、解ってた 」
見透かした目を医師に向けて、
今までの、この… 何年間、
パパが 自分の身を削ってきた苦労を、
馬鹿にされたような気持ちにすらなり、
激しい 憤りを感じた。
「 帰るよ、パパ 」
私は、診察中の丸椅子から立ち上がる。
「 ナツ! まだ、先生の話は終わって」
「 終わったよ、何もかも。何もない。
だから、今ここからまた 始めてやる 」
止まらない涙で濡れた パパの頬を、
私は そっと 手の甲で拭ってあげた。
「 帰るよ、パパ 」
私達は、おかしな2人 だ。変な親子だ。
私は、加速していく脳の発達に、
老化すら加速していき、
人より短い寿命を宣告された。
私のパパは、生まれた時から、
男性でも 女性でも、何者でもない。
解ってる。知ってたんだ、ちゃんと 私。
パパには、知らないふりをして、
隠してる事に 付き合ってあげてるけど。
でもね、それでもいいの。
私は、そんなパパが 大好きだから。
ママが、パパを 愛していたように。
私が、ママの代わりに パパを守るんだ。
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