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マジックアワー
10. 薄明
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会社から自宅に戻り、自分の部屋に入る。
" 「 今夜は、帰りが遅くなるよ。
先に、ごはん食べてなさい。」 "
パパが そう言っていたから、
私は
今夜は 何も食べない。
食べたくないから。
本当はね、いつだって
何も食べたくはないんだ。
でもね、
何か食べなくちゃ死んじゃうから。
死んだら、パパが哀しむから、
だから、仕方なく 食べてる。
パパの目の前で 食事をとる事が、
パパにとっての安心感に繋がるなら。
私は 去年から、味覚を失っていた。
たぶん、この 変な病気のせいだと思う。
" 美味しい " という感覚は、
もう 味わう事が出来ない。
こうやって、急速に
私の体は無抵抗なまま、蝕んでいく。
生きてる間に、" 何か " 残さなくちゃ。
もう、二度と 会えなくなっても。
私を 忘れないでほしいから。
なのに、その " 何か " が 思いつかない。
「 あっ… 、あった 」
蜻蛉玉 。私のカラーの、蜻蛉玉が。
世界に1つしかない、私の 欠片。
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