48 / 67
48.王太子side
「もう他の女に会わないで!」
「ソニア、何度言ったら分かるんだ」
「そんなの分かんない!!」
「これは必要な事なんだ」
「酷い!」
酷いのはどっちだ。
ソニアの癇癪は酷くなる一方だった。
カレンと比べてはいけないと分かっているが。それにしてもソニアは酷い。
私に他の女性の臭いが染みついていると言ってはヒステリックに泣き叫ぶ。髪を振り乱し半狂乱で罵倒する。幼児のように地団駄を踏んで暴れる彼女をどう扱えばいいのか私もいい加減分からなくなってきた。私は疲れて溜息を漏らす。
ストレスが溜まる……。
ハッキリ言って、ソニアの言動は私の精神をがんがん削っている気がした。最近では後宮に行く足取りすら重い。後宮を去る時に必ずといっていいほどソニアに縋り付かれる。涙と鼻水が混じったような汚らしい顔で足に縋りつかれて、私はソレを振り払いたい衝動に堪えなくてはならない。汚れる衣服。……もう着れないな。
昔ならソニアが膨れた顔をすると、どうやって機嫌を直そうかと楽しく考えた。それが今ではどうだ?あれだけ可愛らしいと思った言動の全てが疎ましく感じる。いや、違う。いつからだろう?彼女と会話をすることが苦痛になったのは……。ソニアに向ける想いが色褪せ始めたのはいつからだろう?記憶の中よりもずいぶんと歳をとった。それでも愛らしい美貌は衰えていない。それでも彼女の子供のような言動は見苦しいの一言に尽きた。受け入れられない。
不思議なものだ。
まるで魔女からかけられた魔法が解けたかのような感覚だった。
もしかすると本当に魔法だったのかもしれない。
恋という魔法に掛けられていた。それが解けて冷静になっただけかもしれない。
子供が出来ないからといってソニアとの離縁はありえない。
無理を通して妃にしたのだ。
父上だって許さない。
貴族達だって同じだろう。
夜に後宮に赴くのも面倒になってきた。
気が滅入る。
ここまで我慢して通う必要はあるのか?
ソニアは感情的だ。
会話にならない。
何か話すたびに一々癇癪を起こす。ヒステリックに叫んで暴れるソニア。
この女に私の貴重な時間を割く意味があるのか? 気が付けば苦痛なだけの時間をだらだらと過ごしている自分に気が付いた。益々ソニアを疎ましく感じ、ほんの少し会話をするのが億劫になっている自分がいる。何故ここまで疲弊するのかといえば一つしかない。
愛情が尽きてしまったのだ。
数日後、私は後宮を管理する女官長を呼び出した。
「ソニアの部屋替えをしたい」
「お部屋の移動ということでございますね?」
「そうだ」
「現在、後宮にはソニア側妃様しかいらっしゃいません。どちらの部屋に移動いたしましょうか」
「もっとも最奥の部屋だ」
「宜しいのですか?」
「ああ」
「最奥の部屋は寵愛を失った妃、または、お身体が不適格と判断された妃に与えられる部屋にございますが……」
「構わない」
「……畏まりました。直ぐに手配いたします」
「よろしく頼む。それと部屋替えはソニアには内密に進めてくれ」
私の言葉に、女官長は戸惑いながらも頭を下げたのだった。
あなたにおすすめの小説
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」