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本編
9.国際問題1
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身分詐称は犯罪だ。
例えそれが高貴な身分の者であったとしても。
それが自国ではなく他国でなら尚更だ。
国際問題に発展しかねない。
「以上のことから、カルーニャ王国がペトロニラ王女殿下を不当に貶め、嫡出のエルビラ王女殿下付きの侍女として召し抱えたと推測されます。また、その際にペトロニラ王女殿下の身分を『男爵令嬢』と身分を記載したに違いないと推察いたします。貴国はペトロニラ王女殿下の身分を詐称しておいて“両国の友好関係が変わらぬものであることを切に願う”と言うのですか?我が国に嫁いで来られたエルビラ王女殿下ですが、彼女は本物なのでしょうか?もしや身分を偽って嫁いで来られたのではありませんか?」
要約すると「お前のところは自国の王女を男爵令嬢にして何がやりたいんだ?スパイ活動でも目論んでいるのか?それにしても王女を侍女に仕立て上げてのスパイ活動はお粗末すぎる。なら王妃として嫁いで来た幼女も怪しい。本当に王女か?偽物じゃないのか?」である。
もっというなら「てめぇらが泣きついてきた結婚だろう!何、被害者ぶった顔してやがる!いい加減にしろよコラ!それともうちの国に喧嘩売っているのか?なら高値で買ってやる!」であった。
戦争まったなし。
カルーニャ王国の対応次第では戦争も辞さないだろう、という強い意志が感じられる。
対してカルーニャ王国の外交官達は慌てふためいた。
それはそうだろう。
まさか王女を嫁がせた同盟国から「信用ならない」と糾弾されるとは思わなかった。
スパイやら偽物やら。
訳の分からないことを言われ、パニックに陥ってしまった。
「お、お、……お待ちください!我々はそのような事は決していたしておりません!エルビラ様は間違いなくが我が国の王女殿下でいらっしゃいます!!」
「では何故、ペトロニラ王女殿下は『男爵令嬢』と記載されていたのですか?貴国には『王女』の身分を偽る者が多いのですか?」
「そ、そのようなことはありません!」
「では何故、『侍女』としてこの国に?おかしいでしょう。ペトロニラ王女殿下は『失われたカルーニャ王族の証である虹色の瞳』の持ち主。なので、カルーニャ王族とはっきりと証明できますが、エルビラ嬢は違う。証明するだけの根拠がない。そうではありませんか?」
「……っ」
外交官は言葉に詰まる。
敬称を変えた事に気付いたのだろう。
ファブラ王国は「エルビラという名前の少女を一国の王女とは認めない」という意思表示を――
エルビラ王女は王妃の娘。
王妃によく似た美しい少女だ。
けれど「王妃に似ている」と言ったところで、証明にはならない。
「似ている少女を連れて来ただけではないか?」と言われるのがオチだ。
「ご理解できたようですね。ご自分達が如何に矛盾したことを仰っているのは」
「……」
「我が国としては本物かどうか分からない王女を正妃に迎い入れる気はありません」
「……し、信じていただけないかもしれませんが……エルビラ様は間違いなくカルーニャ王女殿下です!」
最後は叫ぶように告げたが、ファブラ王国側の結論は変わらない。
仮にエルビラ王女の出生記録を始めとした書類を提出したとしても、「偽造では?」と突っぱねられることだろう。
カルーニャ王国が幾ら「エルビラ王女は本物」と言ったところで意味はない。
そのカルーニャ王国が「もう一人の王女を侍女の男爵令嬢」として偽っているのだから。
庶子の王女だ。
それも侍女が産んだ王女。
美しいわけでもない。醜くはないが、凡庸だ。
劣り腹の王女、と陰口を叩いていたのは何も貴族だけではない。
国民もまた、華やかさのない王女を軽く扱っていたのだ。
ずっとそれが当たり前だった。
許されない行為だと疑問にすら思わなかった。
そうした積み重ねがあったからこそ、他国がカルーニャ王国を糾弾する事態となったのだろうに。
「この件に関して、我が国は国際法に則り対応してまいります。よろしいでしょうか?」
ファブラ王国側がそう告げてもカルーニャ王国の外交官は「それは……その……」と口籠るばかり。
彼らは自分達の行いを恥じていない。
それどころか「自分達は悪くない」とすら思っている。
いや、何が悪いのかを理解していなかった。
自分達の常識が大多数の国では「非常識な行い」になるとは夢にも思わずに。
そのツケを彼らは存分に支払うことになる。
例えそれが高貴な身分の者であったとしても。
それが自国ではなく他国でなら尚更だ。
国際問題に発展しかねない。
「以上のことから、カルーニャ王国がペトロニラ王女殿下を不当に貶め、嫡出のエルビラ王女殿下付きの侍女として召し抱えたと推測されます。また、その際にペトロニラ王女殿下の身分を『男爵令嬢』と身分を記載したに違いないと推察いたします。貴国はペトロニラ王女殿下の身分を詐称しておいて“両国の友好関係が変わらぬものであることを切に願う”と言うのですか?我が国に嫁いで来られたエルビラ王女殿下ですが、彼女は本物なのでしょうか?もしや身分を偽って嫁いで来られたのではありませんか?」
要約すると「お前のところは自国の王女を男爵令嬢にして何がやりたいんだ?スパイ活動でも目論んでいるのか?それにしても王女を侍女に仕立て上げてのスパイ活動はお粗末すぎる。なら王妃として嫁いで来た幼女も怪しい。本当に王女か?偽物じゃないのか?」である。
もっというなら「てめぇらが泣きついてきた結婚だろう!何、被害者ぶった顔してやがる!いい加減にしろよコラ!それともうちの国に喧嘩売っているのか?なら高値で買ってやる!」であった。
戦争まったなし。
カルーニャ王国の対応次第では戦争も辞さないだろう、という強い意志が感じられる。
対してカルーニャ王国の外交官達は慌てふためいた。
それはそうだろう。
まさか王女を嫁がせた同盟国から「信用ならない」と糾弾されるとは思わなかった。
スパイやら偽物やら。
訳の分からないことを言われ、パニックに陥ってしまった。
「お、お、……お待ちください!我々はそのような事は決していたしておりません!エルビラ様は間違いなくが我が国の王女殿下でいらっしゃいます!!」
「では何故、ペトロニラ王女殿下は『男爵令嬢』と記載されていたのですか?貴国には『王女』の身分を偽る者が多いのですか?」
「そ、そのようなことはありません!」
「では何故、『侍女』としてこの国に?おかしいでしょう。ペトロニラ王女殿下は『失われたカルーニャ王族の証である虹色の瞳』の持ち主。なので、カルーニャ王族とはっきりと証明できますが、エルビラ嬢は違う。証明するだけの根拠がない。そうではありませんか?」
「……っ」
外交官は言葉に詰まる。
敬称を変えた事に気付いたのだろう。
ファブラ王国は「エルビラという名前の少女を一国の王女とは認めない」という意思表示を――
エルビラ王女は王妃の娘。
王妃によく似た美しい少女だ。
けれど「王妃に似ている」と言ったところで、証明にはならない。
「似ている少女を連れて来ただけではないか?」と言われるのがオチだ。
「ご理解できたようですね。ご自分達が如何に矛盾したことを仰っているのは」
「……」
「我が国としては本物かどうか分からない王女を正妃に迎い入れる気はありません」
「……し、信じていただけないかもしれませんが……エルビラ様は間違いなくカルーニャ王女殿下です!」
最後は叫ぶように告げたが、ファブラ王国側の結論は変わらない。
仮にエルビラ王女の出生記録を始めとした書類を提出したとしても、「偽造では?」と突っぱねられることだろう。
カルーニャ王国が幾ら「エルビラ王女は本物」と言ったところで意味はない。
そのカルーニャ王国が「もう一人の王女を侍女の男爵令嬢」として偽っているのだから。
庶子の王女だ。
それも侍女が産んだ王女。
美しいわけでもない。醜くはないが、凡庸だ。
劣り腹の王女、と陰口を叩いていたのは何も貴族だけではない。
国民もまた、華やかさのない王女を軽く扱っていたのだ。
ずっとそれが当たり前だった。
許されない行為だと疑問にすら思わなかった。
そうした積み重ねがあったからこそ、他国がカルーニャ王国を糾弾する事態となったのだろうに。
「この件に関して、我が国は国際法に則り対応してまいります。よろしいでしょうか?」
ファブラ王国側がそう告げてもカルーニャ王国の外交官は「それは……その……」と口籠るばかり。
彼らは自分達の行いを恥じていない。
それどころか「自分達は悪くない」とすら思っている。
いや、何が悪いのかを理解していなかった。
自分達の常識が大多数の国では「非常識な行い」になるとは夢にも思わずに。
そのツケを彼らは存分に支払うことになる。
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