19 / 130
~ロクサーヌ王国編~
19.義弟side
生家の子爵家につくと実父から殴られた。そして母と兄たちから罵声を浴びせられた。
「お前は何てことをしたんだ!!」
「ブランシュ様を陥れるとは……お前は自分の立場を理解していないのか?!」
「ブランシュ様が王太子妃になるからこその養子縁組だったんだ!!それを……それを……」
怒りに顔を歪める両親や兄弟たちを前にして何も言えなかった。
後から知った事だが、僕は公爵家と養子縁組を正式に執り行われていなかった。なんでも、義姉が嫁いで世継ぎを産むということが前提の話だったため正式な書類を交わしていなかったそうだ。交わしたのは仮契約だった。
ははっ。
僕はそんな事も知らずに公爵家の子息だと自惚れていた。
そもそも僕は中継ぎでしかなく、王太子と義姉が結婚して第二子が授かればその子供が正式な跡取りなのだと兄から説明された。
なんだそれは。
僕は知らなかった。
きっとそれが顔に出ていたのだろう。
「公爵家で説明を受けなかったのか?」
「色々と言われた気はするけど……」
「子供ながら頭の良さを買われたんだ」
「それは知っていたよ。だけどまさか中継ぎだったなんて……」
「当たり前だろう。直系の総領姫であるブランシュ様がいるんだ。彼女の子供が公爵家を継ぐ。そういう約束で王太子殿下の婚約者になったんだ」
「義姉……「ブランシュ様だ」……ブランシュ様が王太子殿下と結婚したいといったんじゃないの?」
「はっ?! 誰がそんなバカげたことを言ったんだ!!?」
「ち、違うの?」
「当たり前だろう!! 王妃殿下の実家はしがない伯爵家だ。後見人とは名ばかりのな!! だからこそ王家が公爵家に頼み込んでブランシュ様を婚約者にしてもらったんじゃないか!!! そうでなければブランシュ様が王家に嫁ぐ訳がないだろう!!! 後ろ盾の弱い王太子殿下はブランシュ様と婚約したからこそ今の地位があるんだ!!!」
嘘だろう?
王太子殿下の話と違う。
義姉に付きまとわれて困っていると。
義姉が王太子殿下に惚れ込んでいると。
「はぁ……ま、その様子じゃあ、知らなかったみたいだな。お前が誰に唆されたのかも何となくだが分かった」
溜息交じりに吐かれた兄の言葉は冷たく響いた。
失望した目で見てくる両親よりも、兄の呆れた目が僕にとっては一番堪えた。
前提条件を最初から間違えていたのは僕だった。
「我が娘との婚約を白紙にしていただきたい」
婚約者の父親が子爵家に来て早々言い放ったのは「婚約の白紙」だった。
両親は卒倒しかけ、兄は目を伏せた。
「ど、どういうことでしょうか?」
「おや?わざわざ説明をしなければ分からないのかね」
「一方的過ぎると申しているんです」
「ほぉ?一方的と」
嘲笑う笑みには怒りがます。
だってそうだろ?
こんな一方的な宣言はない。
両親や兄が言えないなら僕が話をするしかない。
「はい。幾らなんでも『婚約解消してくれ』と申されて『はい』と黙って従う者はおりません。理由を仰ってくださらなければ承諾できません」
「なんとまぁ……聞きしに勝る愚かさだな」
「なっ!? し、失礼です!!」
「失礼なのは君の方だ。たかだか子爵家の若造が侯爵家に楯突くという意味を理解できていないのかね」
「横暴な!!家格が上なら何をしても許されると思っているのですか!!?」
「これは面白い。王家という立場を利用して公爵令嬢を貶めた首謀者の一人が何を言っているのか。それとも何かね?自分達は理不尽な事をしても許され、他者にされる事は許さないとでも?まさに道理の通らない話ではないか」
「そ、それは……」
「最初に言っておくが、私が先のない公爵家の猶子である君と娘の婚約を認めたのはヴァレリー公爵家との繋がりを求めた結果だ。それを失った男に用はない。しかも直系の令嬢を罠に嵌め、格上の王家まで巻き込んで公爵家を乗っ取ろうと企むなど言語道断だ!そんな男と娘を結婚させれば我が侯爵家も君達に乗っ取られかねない。それ故に婚約を白紙にするのだ。こちらとしては『婚約解消』でも構わん。その場合、御家乗っ取り計画を家族ぐるみで行おうとしていたと裁判所に訴えるまでだ」
「乗っ取り!?」
何を言われたのか理解できなかった。
そんなこと考えた事がなかったからだ。
「ああ、もしかして君は自分の行動がどういう結果に繋がるのか理解できていないようだ。君を含めた仲良しグループは、ヴァレリー公爵家の乗っ取りを企んだとの噂だ。もっとも噂ではなく事実だがな」
「そんな!!」
「これは子爵夫妻も御存知なかったようだ。まぁ、社交界に顔をだしていないのであれば無理ない話だが」
確かに僕たちは社交に参加していない。というか、僕の事があってできなかった。
それがなぜこんな事になるなんて。
僕が呆然としている間に話は進む。
そして気付いた時には侯爵令嬢との婚約は無かった事になっていた。
それから一年余り後――――
あの日から僕の生活は大きく変わった。
まず両親は離婚。
僕は母に引き取られる事となった。
一時は母の実家である男爵家に身を寄せてはいた。
伯父はそうでもなかったが従兄妹達の僕を見る目は厳しい。厄介者がきた、といったところだろう。
母は伯父の勧めで商人と再婚した。
最初は平民の男との結婚に難色を示した僕だったけど、「再婚相手がいるだけマシだわ」と言う母の言葉に黙るしかなかった。相手の男性は母の幼馴染で、母の事情を全てしった上で結婚をしてくれた。
『この国に住み続けるのは君たちのためにならないと思うんだ。私の店は隣国に本店をおいているから、そちらに行こう』
彼は僕たち母子のために隣国に移住を促してくれた。
『大丈夫。私がついている』
優しく笑う彼に僕は心の中で感謝する事しかできなかった。
彼は僕に大学進学を勧めてくれた。
卒業後に彼の商会に勤務した。
その頃には歳の離れた弟ができていた。
『まさかこの歳で子供ができるなんて』
母だけでなく、彼も驚いていた。因みに僕も驚いた。
小さな弟はとても可愛いかった。目に入れても痛くないとはこのことか。その後も必死に働き、二年後には商会を継いだ。その二十年後に正式な跡取りである異父弟に跡を譲ったのだった。
「お前は何てことをしたんだ!!」
「ブランシュ様を陥れるとは……お前は自分の立場を理解していないのか?!」
「ブランシュ様が王太子妃になるからこその養子縁組だったんだ!!それを……それを……」
怒りに顔を歪める両親や兄弟たちを前にして何も言えなかった。
後から知った事だが、僕は公爵家と養子縁組を正式に執り行われていなかった。なんでも、義姉が嫁いで世継ぎを産むということが前提の話だったため正式な書類を交わしていなかったそうだ。交わしたのは仮契約だった。
ははっ。
僕はそんな事も知らずに公爵家の子息だと自惚れていた。
そもそも僕は中継ぎでしかなく、王太子と義姉が結婚して第二子が授かればその子供が正式な跡取りなのだと兄から説明された。
なんだそれは。
僕は知らなかった。
きっとそれが顔に出ていたのだろう。
「公爵家で説明を受けなかったのか?」
「色々と言われた気はするけど……」
「子供ながら頭の良さを買われたんだ」
「それは知っていたよ。だけどまさか中継ぎだったなんて……」
「当たり前だろう。直系の総領姫であるブランシュ様がいるんだ。彼女の子供が公爵家を継ぐ。そういう約束で王太子殿下の婚約者になったんだ」
「義姉……「ブランシュ様だ」……ブランシュ様が王太子殿下と結婚したいといったんじゃないの?」
「はっ?! 誰がそんなバカげたことを言ったんだ!!?」
「ち、違うの?」
「当たり前だろう!! 王妃殿下の実家はしがない伯爵家だ。後見人とは名ばかりのな!! だからこそ王家が公爵家に頼み込んでブランシュ様を婚約者にしてもらったんじゃないか!!! そうでなければブランシュ様が王家に嫁ぐ訳がないだろう!!! 後ろ盾の弱い王太子殿下はブランシュ様と婚約したからこそ今の地位があるんだ!!!」
嘘だろう?
王太子殿下の話と違う。
義姉に付きまとわれて困っていると。
義姉が王太子殿下に惚れ込んでいると。
「はぁ……ま、その様子じゃあ、知らなかったみたいだな。お前が誰に唆されたのかも何となくだが分かった」
溜息交じりに吐かれた兄の言葉は冷たく響いた。
失望した目で見てくる両親よりも、兄の呆れた目が僕にとっては一番堪えた。
前提条件を最初から間違えていたのは僕だった。
「我が娘との婚約を白紙にしていただきたい」
婚約者の父親が子爵家に来て早々言い放ったのは「婚約の白紙」だった。
両親は卒倒しかけ、兄は目を伏せた。
「ど、どういうことでしょうか?」
「おや?わざわざ説明をしなければ分からないのかね」
「一方的過ぎると申しているんです」
「ほぉ?一方的と」
嘲笑う笑みには怒りがます。
だってそうだろ?
こんな一方的な宣言はない。
両親や兄が言えないなら僕が話をするしかない。
「はい。幾らなんでも『婚約解消してくれ』と申されて『はい』と黙って従う者はおりません。理由を仰ってくださらなければ承諾できません」
「なんとまぁ……聞きしに勝る愚かさだな」
「なっ!? し、失礼です!!」
「失礼なのは君の方だ。たかだか子爵家の若造が侯爵家に楯突くという意味を理解できていないのかね」
「横暴な!!家格が上なら何をしても許されると思っているのですか!!?」
「これは面白い。王家という立場を利用して公爵令嬢を貶めた首謀者の一人が何を言っているのか。それとも何かね?自分達は理不尽な事をしても許され、他者にされる事は許さないとでも?まさに道理の通らない話ではないか」
「そ、それは……」
「最初に言っておくが、私が先のない公爵家の猶子である君と娘の婚約を認めたのはヴァレリー公爵家との繋がりを求めた結果だ。それを失った男に用はない。しかも直系の令嬢を罠に嵌め、格上の王家まで巻き込んで公爵家を乗っ取ろうと企むなど言語道断だ!そんな男と娘を結婚させれば我が侯爵家も君達に乗っ取られかねない。それ故に婚約を白紙にするのだ。こちらとしては『婚約解消』でも構わん。その場合、御家乗っ取り計画を家族ぐるみで行おうとしていたと裁判所に訴えるまでだ」
「乗っ取り!?」
何を言われたのか理解できなかった。
そんなこと考えた事がなかったからだ。
「ああ、もしかして君は自分の行動がどういう結果に繋がるのか理解できていないようだ。君を含めた仲良しグループは、ヴァレリー公爵家の乗っ取りを企んだとの噂だ。もっとも噂ではなく事実だがな」
「そんな!!」
「これは子爵夫妻も御存知なかったようだ。まぁ、社交界に顔をだしていないのであれば無理ない話だが」
確かに僕たちは社交に参加していない。というか、僕の事があってできなかった。
それがなぜこんな事になるなんて。
僕が呆然としている間に話は進む。
そして気付いた時には侯爵令嬢との婚約は無かった事になっていた。
それから一年余り後――――
あの日から僕の生活は大きく変わった。
まず両親は離婚。
僕は母に引き取られる事となった。
一時は母の実家である男爵家に身を寄せてはいた。
伯父はそうでもなかったが従兄妹達の僕を見る目は厳しい。厄介者がきた、といったところだろう。
母は伯父の勧めで商人と再婚した。
最初は平民の男との結婚に難色を示した僕だったけど、「再婚相手がいるだけマシだわ」と言う母の言葉に黙るしかなかった。相手の男性は母の幼馴染で、母の事情を全てしった上で結婚をしてくれた。
『この国に住み続けるのは君たちのためにならないと思うんだ。私の店は隣国に本店をおいているから、そちらに行こう』
彼は僕たち母子のために隣国に移住を促してくれた。
『大丈夫。私がついている』
優しく笑う彼に僕は心の中で感謝する事しかできなかった。
彼は僕に大学進学を勧めてくれた。
卒業後に彼の商会に勤務した。
その頃には歳の離れた弟ができていた。
『まさかこの歳で子供ができるなんて』
母だけでなく、彼も驚いていた。因みに僕も驚いた。
小さな弟はとても可愛いかった。目に入れても痛くないとはこのことか。その後も必死に働き、二年後には商会を継いだ。その二十年後に正式な跡取りである異父弟に跡を譲ったのだった。
あなたにおすすめの小説
真実の愛で婚約を奪った義妹は除籍されましたが、私は公爵夫人としてすべてを取り戻しました
こもど
恋愛
伯爵家嫡女ヴィオレーヌは、卒業記念パーティの場で婚約者から突然の婚約破棄を言い渡される。しかも彼が選んだ“真実の愛”の相手は、健気な涙で周囲を味方につけた義妹だった。
だが、ヴィオレーヌは取り乱さない。
静かに婚約破棄を受け入れたその瞬間、彼女へ手を差し伸べたのは、公爵アルフォンス・ド・レーヴェ。彼はすでに、伯爵家が隠してきたある重大な歪みに気づいていた。
やがて明らかになるのは、義妹の身分詐称、学籍書類の偽装、そして本来ヴィオレーヌのものであるはずだった財産の流用。婚約を奪われただけでは終わらなかった。彼女は長いあいだ、家そのものから正しい立場を奪われ続けていたのだ。
公爵家の妻となったヴィオレーヌは、記録と事実を武器に、歪められた伯爵家を正しい形へ戻していく。
婚約を奪った義妹も、すべてを見て見ぬふりした父も、裏で糸を引いていた後妻も――もう二度と、彼女の席を奪うことはできない。
静かに、確実に、すべてを取り戻していく令嬢ざまあ恋愛譚。
「側妃を迎える。準備は王妃府で」そう告げた王は、二ヶ月後、王座を失いました
さんけい
恋愛
王妃フレイアは、五年間、王宮の見えない仕事を支えてきた。
儀礼、寄付、夫人同士の調整、外交の細かな配慮。誰かが困る前に整える仕事は、いつも王妃府へ流れてきた。
ある朝、王は告げる。
「側妃を迎える。準備は王妃府で」
相手はすでに懐妊しているという。
入内は十日後。南の離宮を望み、王宮医の診断もまだ。
そのすべてを、王は正妃であるフレイアに任せようとした。
「そなたならうまくやってくれる」
その言葉を聞いたフレイアは、父へ手紙を書く。
――疲れました。
公爵家は娘を迎えに来た。
王は、少し休めば戻ると思っていた。側妃が来れば、王宮は明るくなるとも。
だが、王妃がいなくなった王宮は、二ヶ月ももたなかった。
茶会、寄付、外交、国境。正妃ひとりに押しつけられていた仕事が、次々と崩れていく。
そして王は知ることになる。
王妃は、王宮の欠けたところを埋めるための備品ではない。
もう、戻らない。
※初日以外は6時・17時更新となります。
夫の幼馴染に家も財産も奪われたので、彼女が捨てた兄妹を連れて出ていきます〜辺境伯家の住み込み家政婦になった今、戻れと言われてももう遅い~
他力本願寺
ファンタジー
夫の幼馴染に家も財産も奪われ、身一つで追い出されたアリシア。
しかし雨の宿場町で、その幼馴染が実子の幼い兄妹を置き去りにした現場を目撃する。
「私が守る」――血の繋がらないエミルとリリィを連れ、彼女は辺境伯家で住み込み家政婦として生き抜くことを選んだ。
帳簿と観察力、揺るぎない実務能力を武器に屋敷を立て直し、偏屈だが真っ直ぐな辺境伯ヴィルヘルムの信頼を得るアリシア。
子どもたちに「先生」と呼ばれ、家族のような温かさに包まれながら、彼との心の距離も静かに縮まっていく。
やがて王都から元夫と幼馴染が「戻ってきてほしい」と懇願してくるが――。
アリシアは静かに微笑み、こう告げた。
「もう、遅いわ」
追放された有能妻が、子どもたちとの家族愛と辺境伯との恋で本当の幸せを掴む、ざまぁと甘さの両方を味わえる完全復讐再生ラブストーリー。
【完結】破棄されたのは、婚約だけではありませんでした
しばゎんゎん
ファンタジー
「私、ヴァルディア伯爵家次男、レオン・ヴァルディアはエリシアとの婚約を破棄する」
それは、一方的な婚約破棄だった。
公衆の面前で告げられた言葉と、エリシアに向けられる嘲笑。
だがエリシア・ラングレイは、それを静かに受け入れる。
断罪される側として…。
なぜなら、彼女は知っていたからだ。
この栄華を、誰が支え、誰が築き上げてきたのかを。
愚かな選択は、やがて当然の帰結をもたらす。
時が来たとき、真に断罪される者が明確に示される。
残酷な結果。
支えを外し、高みを目指した結果、真っ逆さまに転落する男、レオン。
利用価値がなくなった男〘レオン〙を容赦なく切り捨てる女、アルシェ侯爵家令嬢のミレイユ。
そう、真の勝者は彼らではない…
真の勝者はすべてを見通し、手中に収めたエリシアだった。
これは、静かにすべてを制する才女と、
自ら破滅を選んだ愚かな者たちの物語。
※毎日2話ずつ公開予定です(午前/午後 各1話を順次予約投稿予定)。
※16話で完結しました
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
五年間この国を裏で支えた公爵令嬢、婚約破棄されたので全部置いていきます ~帳簿も外交草案も私の著作物ですので、勝手にお使いになれませんよ?~
今井 幻
恋愛
「——お前は、この国にとって害悪だ」
卒業舞踏会の大広間で、王太子リオンに公開断罪された公爵令嬢エレノア。
彼女は五年間、王太子の名の下に南部同盟との外交交渉の草案を書き、疫病対策の法案を起草し、国庫の帳簿を一人で管理してきた。功績はすべてリオンのものとして奪われ、代わりに王太子の隣を手にしたのは、転入わずか一年で計算し尽くされた涙を武器にのし上がった男爵令嬢リリアーナだった。
婚約破棄の翌日、父はエレノアを物置同然の離れに追いやり、母の形見の白百合の花壇はリリアーナの好みの薔薇に植え替えられる。社交界からも締め出され、居場所を完全に失ったエレノア。
けれど、左手の甲に幼い頃から浮かんでいた金の紋様が光を放ち始めたとき、すべてが動き出す。
離れの暖炉の奥に隠されていた母の秘密の書斎。そこに遺された一通の手紙には、母がヴェルザンド帝国の古代魔導師の血を引く者であること、そしてエレノアが千年に一度の「契約の継承者」であることが記されていた。
『帝国があなたの味方になります』
折しも届いた帝国皇帝カイからの招待状にはこうあった。
『貴女の母君との約束を果たしに参ります』
——「死神」の異名を持つ大陸最強の皇帝。母の追伸には「本当はとても優しい子です。昔はよく泣いていました」と書かれていた。
守るべきものを全て奪われた令嬢は、自分の足で帝国への一歩を踏み出す。
一方、エレノアという「国の土台」を失った王国では、外交交渉の決裂、帳簿の解読不能、偽聖女の不正が次々と露呈し始め——今さら「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、もう遅い。
「仕方ない」には疲れました ~三年続いた白い結婚を終わらせたら、辺境公爵の溺愛が待っていました~
ゆぷしろん
恋愛
「仕方ない」と白い結婚に耐え続けていた伯爵夫人エリス。
彼女の誕生日、夫は幼なじみのセシリアを屋敷に連れ帰り、エリスが大切にしてきた猫を彼女に見せろと言う。冷めた晩餐の前で心が折れたエリスは、ついに離縁を宣言し実家へ戻った。
彼女の薬草知識と領地経営の才は、北方を守る公爵ディートリヒが目を留める。流行り病に苦しむ公爵領を救うため奮闘するエリスは、初めて努力を認められ、大切に扱われる喜びを知っていく。一方で彼女を失った元夫の伯爵家は傾き、身勝手な幼なじみの嘘も暴かれて――。
我慢をやめた傷心令嬢が、辺境公爵に溺愛され、自分らしい幸せを選び直す逆転愛されファンタジー。
《完結》結婚式で「愛することはできない」と言った夫が、身重の女性を連れて帰ってきました。
さんけい
恋愛
結婚式の誓いの場で、夫となる青年に言い放たれた。
――お前を愛することはない。
唖然とする列席者達の前で始まった、冷えきった夫婦生活。
実家から疎まれ、ようやく嫁いだ先でも歓迎されないはずだったアメリアは、若い継母グラディス、気の強い義妹ポーリーンとぶつかり合いながら、少しずつ家政と領地の実務を握っていく。
けれど、無責任な夫が不穏な秘密を抱えて戻ってきた時、止まっていたはずの歯車が動き出す…
家を守るのは誰か?
肩書きだけの当主か、それとも現実を見て働く者達か?
これは、軽い言葉で花嫁を踏みにじった男の“物語”を剥がしながら、血のつながらない女達が家を立て直していくお話です。
全57回、6時、17時の1日2回更新です。
※謎解き要素がありますので、感想欄は開いておきますが、作者がネタバレしそうなために今回は返信は無しといたします。ご了承ください。