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53.ブリジットside
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「そう……やっぱり次はミゲルを標的にしているようね」
「はい。ミゲル様に付いております『影』もそのように認識しております」
「待ち伏せの件は片を付けたようだけど、他がどうもねぇ」
「カストロ侯爵子息の事でしょうか?」
「ええ、あまり良くない傾向だわ。彼のミゲルを見る目は尋常ではないわ。今にも斬りかかりそうな雰囲気を醸し出しているではないの。自分の護衛が他者にそんな目を向けているというのに大公女は何の手立ても講じていないわ。注意を促す事もしないなんてね」
「大公女は気付いていないようです」
「それはまた……暢気な事だわ」
大半の人間が気付いている事に気付かないなんて。
父親である大公に何か言い含められている事には気付いているわ。当然、何らかの目的をもって学園に編入してきた事も――
「私とミゲルを囲い込むためかしら?」
「恐らくは」
「お父様は既に大公陣営だと言うのに。次世代まで確保しようとは強欲極まれりだわ」
けれど妥当な選択とも言える。
政治家としては優秀な父だけれど、家内に関しては一切の権限がない。暗黙の了解となっている公爵家の実態を大公はよくご存じだこと。
「大公家がどうしようと彼らの勝手だけれど、人様の物を欲しがるのだけはやめてほしいものね。他人の所有物にちょっかいを出すような人間は破滅を迎える事になるというのを知らないのかしら?それとも知っていてもなお手を伸ばさずにはいられないのかしらね」
「欲の皮で出来ているような方ですからね。あのような者達は一度痛い目を見た方が良いかと思われます」
「そうね、本当に愚かな人間だと思うわ。まぁ、私にとっては好都合なのだけど……」
「左様ですか」
「実に分かり易い状況だと思わない?あの大公女の様子だと自分の婚約者の動向すら把握していないのではないかしら?」
「第一王子殿下ですか」
「そう、中堅クラスに入った王子様」
「クラスが違いますから。頻繁に会う事はないようです」
「王子の方からも婚約者に会いに行く様子もないものね。代わりに何故か私のクラスに赴こうと頑張っているようだけれども」
その度に最高クラスのある校舎の門番に止められているらしいわ。
「最高クラスは別校舎にあり、門番が他のクラスの者を入れるのを禁止していることを知らなかったようです」
でしょうね。下位クラスがある校舎と上位クラスのある建物は完全に分かれていることも知らなかったようだし。そもそも最高クラスは例外なく高位貴族で固まっている事も知らなさそうだわ。こればかりは育った環境によるものだから仕方がないでしょうね。事前に勉学を習得している高位貴族が上位の成績を取るのは当然の事ですもの。
「ブリジット様、お気を付けください。恐らく第一王子殿下の狙いはブリジット様でしょう」
「……実に分かり易い王子様よね。大公家に対抗するために公爵家を利用したいだなんて」
「王家は秘かに第一王子殿下とブリジット様の婚約を整えようと画策されております」
「となると、国王が絡んでいると言う事ね。厄介だこと」
「どうされますか?」
「放っておきなさい」
「宜しいのですか?」
「私が何もせずとも彼らは勝手に近づいてくるだろうし、下手に介入して巻き込まれるのは御免だわ。それにこちらにとってメリットがないのなら動く必要はなくてよ」
わざわざ自分からトラブルに巻き込まれにいくなんて面倒臭い事この上ないわ。
「ただ、私とミゲルの『影』を増やしておいて頂戴。恐らく何か仕掛けてくるに違いないわ」
「承知しました」
さぁ、何を仕掛けてこようとしているのか楽しみにしておきましょう。
「はい。ミゲル様に付いております『影』もそのように認識しております」
「待ち伏せの件は片を付けたようだけど、他がどうもねぇ」
「カストロ侯爵子息の事でしょうか?」
「ええ、あまり良くない傾向だわ。彼のミゲルを見る目は尋常ではないわ。今にも斬りかかりそうな雰囲気を醸し出しているではないの。自分の護衛が他者にそんな目を向けているというのに大公女は何の手立ても講じていないわ。注意を促す事もしないなんてね」
「大公女は気付いていないようです」
「それはまた……暢気な事だわ」
大半の人間が気付いている事に気付かないなんて。
父親である大公に何か言い含められている事には気付いているわ。当然、何らかの目的をもって学園に編入してきた事も――
「私とミゲルを囲い込むためかしら?」
「恐らくは」
「お父様は既に大公陣営だと言うのに。次世代まで確保しようとは強欲極まれりだわ」
けれど妥当な選択とも言える。
政治家としては優秀な父だけれど、家内に関しては一切の権限がない。暗黙の了解となっている公爵家の実態を大公はよくご存じだこと。
「大公家がどうしようと彼らの勝手だけれど、人様の物を欲しがるのだけはやめてほしいものね。他人の所有物にちょっかいを出すような人間は破滅を迎える事になるというのを知らないのかしら?それとも知っていてもなお手を伸ばさずにはいられないのかしらね」
「欲の皮で出来ているような方ですからね。あのような者達は一度痛い目を見た方が良いかと思われます」
「そうね、本当に愚かな人間だと思うわ。まぁ、私にとっては好都合なのだけど……」
「左様ですか」
「実に分かり易い状況だと思わない?あの大公女の様子だと自分の婚約者の動向すら把握していないのではないかしら?」
「第一王子殿下ですか」
「そう、中堅クラスに入った王子様」
「クラスが違いますから。頻繁に会う事はないようです」
「王子の方からも婚約者に会いに行く様子もないものね。代わりに何故か私のクラスに赴こうと頑張っているようだけれども」
その度に最高クラスのある校舎の門番に止められているらしいわ。
「最高クラスは別校舎にあり、門番が他のクラスの者を入れるのを禁止していることを知らなかったようです」
でしょうね。下位クラスがある校舎と上位クラスのある建物は完全に分かれていることも知らなかったようだし。そもそも最高クラスは例外なく高位貴族で固まっている事も知らなさそうだわ。こればかりは育った環境によるものだから仕方がないでしょうね。事前に勉学を習得している高位貴族が上位の成績を取るのは当然の事ですもの。
「ブリジット様、お気を付けください。恐らく第一王子殿下の狙いはブリジット様でしょう」
「……実に分かり易い王子様よね。大公家に対抗するために公爵家を利用したいだなんて」
「王家は秘かに第一王子殿下とブリジット様の婚約を整えようと画策されております」
「となると、国王が絡んでいると言う事ね。厄介だこと」
「どうされますか?」
「放っておきなさい」
「宜しいのですか?」
「私が何もせずとも彼らは勝手に近づいてくるだろうし、下手に介入して巻き込まれるのは御免だわ。それにこちらにとってメリットがないのなら動く必要はなくてよ」
わざわざ自分からトラブルに巻き込まれにいくなんて面倒臭い事この上ないわ。
「ただ、私とミゲルの『影』を増やしておいて頂戴。恐らく何か仕掛けてくるに違いないわ」
「承知しました」
さぁ、何を仕掛けてこようとしているのか楽しみにしておきましょう。
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