【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子

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子供の悪知恵

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「知らなかったとは……」

 お父様が遠い目をなさっています。
 まぁ、無理もありません。
 私の提案が受け入れられてヴィランは実家で再教育を受ける事になったのですが……まさか実の両親がヴィランの教育課程を知らなかったなんて。

 お父様曰く、『ヴィランの教育については手紙で知らせてある。それでも何も言ってこないとなるとコチラで好きに使って良いという無言の返答だろう』と前回言ってましたから。

 私も信じられません。
 ヤルコポル伯爵夫妻が家庭的とは言い難い親である事は理解していましたが、ここまで無関心でいたのは驚きです。
 いえ、それ以上にヴィランの我が家での滞在理由やその他諸々の事に酷く驚いていました。
 自分達の息子が婚約者の家で入り浸りの生活をしているのは知っていたし、婚約者の家族旅行に一緒に行っていたのも知っていたようですが、その他の購入物や飲食のツケをスタンリー公爵家が支払っていた事は知らなかったのです。しかも、我が家にヴィランの部屋があるのも家族旅行に連れて行くのも全て公爵家の好意とみなされていたのです。

 そんな訳ないでしょう!

 ヴィランの部屋と言いますけどアレは客間ですよ?
 家族旅行にしても勝手についてくるのです。大きな旅行鞄を持って「一緒に連れて行って」と言わんばかりの目をするんですよ? 放っておける筈もないでしょう。お父様もお母様も伯爵夫妻に何度も確認していたではないですか! 全く、勘違いも甚だしい!

 ですが、これで愚かな勘違いはもうしないでしょう。

 と、思っていた私はバカです。
 大バカでした。

 そもそも伯爵夫妻が勘違いした一番の理由はヴィランにあったのです。

 ヴィランは意図的に隠していたのです。
 自分の教育課程を記載した手紙という名の報告書を事前に握り潰していました。
 家族旅行も「公爵家の人達が僕にも一緒にって言ってくれた」と言い、購入した物は「公爵家からのプレゼントだ」と言っていたのです。


「どうりで話が嚙み合わなかった筈だ」

「伯爵夫妻は仕事人間ですからてっきり『合理的な判断』をしていると思っていましたけど……違ったのですね」

「ヴィランは本当の事を親に言えば怒られると思ったんだろう」

「子供の浅知恵と言えばそれまででしょうけど……あのヴィランにそんな知恵があったなんて……悪知恵は働く方だったのね」


 お母様、何気に酷いですわ。
 気持ちは分かります。
 なんだかんだ言っても伯爵夫妻は厳格です。ヴィランの今までの行動の全容を知って激怒しました。自分の行動が「悪い事」と理解していたからこそ黙っていたのでしょう。ヴィラン一人で出来る事ではありません。恐らく、伯爵家の使用人の何人かを抱き込んでいる筈です。


 後日、ヤルコポル伯爵夫妻からの謝罪文が公爵家に届きました。
 その中に、ヴィランに買収されていた使用人が居た事、その使用人たちに口裏を合わせて貰っていた事も書かれていました。

 
 

 

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