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正義2
しおりを挟む「学生達はハミルトン侯爵ために活動していたと言っても過言ではない。学生たちは日常的に活動しておった。様々な場所に拠点を置き討論や演説をしておってな、自前のビラなど作成して街で配ったりしてな。時には学内の空き教室を借りて集会やら講演会やらのイベントを開いておった」
「随分、地道な作業ですね」
しかも地味です。
学生達はサークル活動か何かのように楽しんでいるようにも感じますし……。一種の紳士クラブのようなものでしょうか?
「最初は、な。しかし次第に学生共が自分の主張を声高に言い始めるようになった。税金の値上げ反対に、賃上げ問題、汚辱事件などなど。まあ、ただ言っているだけなら問題にはせん。じゃが、学生共は自分らが正義であるかのように振る舞う始めたのじゃ」
「どういうことですか?」
「賄賂を受け取った役人がいると聞けば、その役人の家を襲う。愛人に貢いでいる政治家の場合は、その愛人宅を襲って金品を強奪する。ぼったくりの店があれば、押し入り強盗をする……「犯罪ではありませんか!」……まあ、そうじゃな」
はしたなくも話の途中に割り込んでしまいました。
ですが、それは正義でも何でもありません!
ただの犯罪行為です!
「……庶民には人気じゃった」
「犯罪者がですか!?」
理解できません。
犯罪者がどうやったら人気者になるんですか!
「盗んだ金品は貧しい民に分け与えておったんじゃ。しかも、やたら悪名高い連中ばかりを狙った犯行でもあったので余計に人気に火が付いたという訳じゃ」
「つまり、義賊を装っていたのですね」
「そうじゃ。大半の金は自分達の懐に入れて一部を民に還元しておった」
盗んだ金品で還元って……。
「大衆から支持を得た学生共の行動は更に苛烈を増してな。普段は政治のせの字にも関心のない一般の学生も加わってやりたい放題じゃ。お陰で治安部隊が寝る暇もないほどの大忙し。かといって、捕まえたら捕まえたで民衆は反発するわ、人権屋を気取る若い弁護士が彼らを擁護するわ、で踏んだり蹴ったりじゃった。奴らのせいで秘密警察なんぞを設置する羽目になったわ!」
ああ……。
そこから始まったのですね。かの悪名高き秘密警察組織は……。
「そしたら余計に反発しおったわ!」
それは反発するでしょう。
火に油を注ぐ行為です。
だからと言って他に方法も無かったのでしょう。
「学生共は遂には学校を本拠地にしおった! あそこは国の物であって学生の個人の持ち物ではないぞ! 全く図々しいにも程がある」
祖父曰く、若さゆえの暴動が最悪の形で現れた結果だそうです。
授業をボイコットし、校舎を占拠してバリケードを作る。自家製の武器で警察関係者を殺したり拉致したり、自分達の要求を飲まなければ警察官を殺すと脅したり……もはやそれはテロ行為では?
「奴らにとっては『正義の行動』じゃ」
便利な言葉です。
この世に絶対の正義などありはしないと言いますのに。
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