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15.夫side
しおりを挟む結婚するつもりはなかった。
女という生き物は兎角、姦しい。
嫉妬深く癇癪持ち。
一人では何もできない。
徒労を組んで相手を攻撃する事を得意とする。
そして、それらを恥ずかしげもなく得意満面に吹聴している。
それが女という生き物だ。
冷たくあしらえば「冷血漢」「人の心を持ち合わせてないから」という陰口を囁き続け、甘い言葉をかけてやれば「女好き」「下半身は別の生き物」というレッテルを貼りつけてくる。どうしろというのだ?
後腐れのない相手だと思って付き合っていれば、勝手に本気になられた事など数知れず。
互いに遊びだと割り切っていた筈だろう!?
どうしてそれで恨まれるのが私の方なのだ!?
だいたい向こうの方から「遊び」として誘っておいてなんだ!
責められるのは筋が違うだろう!
本当に面倒臭い生き物だ。
そういった女と同じ屋敷で暮らすなど想像するだけでも鬱だった。
縛り付けられ自由を奪われ続ける生活など真っ平ごめんだ。そもそも一人の女性と生活をしていける気がしない。だから――結婚するつもりはなかったのだ。
伯爵家の跡取りを考えるなら結婚して子供を儲ける事は義務だ。
義務だが、それは必ずしも「しなければならない義務」ではない。分家は多い。他の家よりも親族は多い方だろう。何故か疎遠になっているが、同年代の従兄弟たちには既に数人の子供がいると聞いた。そこから後継者を選べばいい。
なのに――
ひょんなことから「妻」を持った。
そう、持ってしまったのだ。
「妻」に迎えたのは学生時代の同級生。
一応、世間では「学友」と呼べる部類に入る男だ。その男の「妹」を「妻」にした。
今まで見て来た女達の誰よりも控えめで謙虚な女性だった。
最初は、まだ本性を現していないだけと思っていたが、屋敷の者達は彼女を絶賛した。
結婚生活はお世辞にも良いとは言えなかっただろう。
仮面夫婦だ。
挨拶一つ交わさない。
私が屋敷に帰る時間が遅いせいだろう。帰ってきた時にはアリックスは眠っている事などザラにある。起きる時間だって遅い。私が起きた頃には彼女は王宮に出仕している事もあった。王妃殿下のお気に入りと噂のある彼女だ。てっきり、結婚生活を王妃殿下に話しているものだとばかり思っていたが、意外な事にプライベートの話は余りしないようだ。
正直ほっとした。
「は?誕生日?」
「はい。奥様の誕生日は来週です。奥様ご自身はあまり誕生日を重要に考えていらっしゃらないご様子で……パーティーをする必要はないと仰られたんですが……」
……知らないぞ?誕生日なんて?
「アリックスが必要ないと判断したのならそれでいい」
「宜しいのですか?」
「ああ、盛大にする必要はない。屋敷の者達だけで祝えば良いだろう」
「……畏まりました」
執事長が何か言いたげな顔をしていたが、私はそれに気付かなかった。
自分の妻の誕生日を知らなかった事もある。来週に間に合うプレゼントを見繕う事で頭が一杯だった。だから、知らなかった。
アリックスが毎年誕生日を王宮で過ごしていた事を。
王妃殿下主催で誕生日パーティーが開かれ、そこに国王陛下と王太子殿下がご臨席賜っていた事を。
そのパーティーは飽く迄も身内に限定されていた。
私はそれに招待されていなかった。
それを知るのは少し後の事。
誕生日当日、屋敷では一人分の豪華な食事が準備されていた。
使用人達の憐れむ眼差しがキツイ……。
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