【完結】子育ては難しい~廃嫡した息子が想像の斜め上にアホだった件~

つくも茄子

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15.愚息の逮捕

 数ヶ月後、愚息の子供(仮)が誕生した。
 元気で可愛らしい男児。
 ただし、両親のどちらにも似ていない色合いをしていたらしい。
 さすがの愚息も誕生した赤ん坊が自分の子ではないと分かり、激怒した。

「それで、どうなったんだ?」
「……はい、女性は瀕死の重傷を負った状態で発見されました。幸い、通りがかった商人が異変に気付き、すぐに医師を呼んでくれたおかげで、一命は取り留めたそうです」
「愚息はどうした」
「捕まりました」
「……そうか」
「はい。ただ、取り調べの最中でもセオドラ様はご自身の何が悪かったのかを理解しておられないようでして……。『自分は騙されたのだ』『当然のことをしただけだ』と、繰り返しているとのことです」
「……反省の色はなしか」
「はい。反省する理由がないと言わんばかりの態度に、取り調べた刑事達も困惑しておりまして……」

 ブレイクの報告に、愚息を担当している刑事に同情した。

「……つまり、罪の意識はまったくないのだな」
「はい。自分が何をしたのか、その結果がどれほど重大か……。まるで理解していない様子でございます」

 ブレイクの声には、職務上の冷静さの奥に、どうしようもない虚しさが滲んでいた。
 今のところ、暴行事件として処理されるだろう。
 だが……。

「女性は、意識は戻ったのか」
「まだです。医師によれば、峠は越えましたが……目を覚ますには時間がかかるだろう、と」
「赤子は?」
「女性の身内が見つかるまで孤児院に預けられました」
「そうか……」

 女性が意識不明だったのだ。
 それらを手配したのは警察だろう。
 まあ、妥当な判断だ。
 それにしても……。

「あの子に、子供を持てるはずがないだろうに……」
「はい」
「廃嫡して放逐する時に伝えるべきだったのか?」
「……旦那様、普通にお伝えしても、あの方は受け入れなかったでしょう」

 ブレイクはそこで一度口を閉ざし、慎重に言葉を選ぶように続けた。

「そもそも、セオドラ様は……〝子を成すことができない〟という事実を、まったく理解しておられませんでした」
「理解していなかった、だと?」
「はい。あの方は、放逐される前に服用した薬の意味を、最後まで……」

 ブレイクは言葉を濁した。
 だが、何を指しているのかは分かっている。
 あれは、家の名をこれ以上汚さぬための、苦渋の処置だった。
 公爵家の血を外で撒き散らされてもたまらない。
 ましてや、元嫡男。
 あのアホを担ぎ上げる者が出てこないとは言い切れなかったのだ。
 だからこその判断であり、貴族家の当主として当然のことをしたまでだ。

 ブツを切り落とされるよりはずっとマシだろうと。
 薬で子種を根絶やしにする方が痛さもないし、苦しみもないと――あの時は、そう判断した。
 父親としての情でそうした。
 苦い薬だ。
 コーヒーの中に入れて飲ませた。
 それがいけなかったのか?

「……まさか、意味を理解していなかったとはな」

 遠回しに言わずに「お前の子種は薬で潰した」と、はっきりと告げるべきだった。
 愚息は、貴族の言い回しが理解できていなかった。
 まさか、今更それを知るとは思わなかった。

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