【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子

文字の大きさ
2 / 37

1.筆頭公爵

しおりを挟む

――王族専用の軟禁室――



「なんのようだ?公爵。見ての通り私は軟禁中だ」
「フリッツ殿下、一つお訊きしたいのですが宜しいですか?」
「なんだ?」
「我が娘、アレクサンドラの何が不服だったのですか? 親の贔屓目を差し引いてもこれ以上にない次期王妃でした。私は今でも分からないのです。我が娘の何がデル男爵令嬢に劣るところがあったのか、と」

はっきり言って、今も理解できない。
好みと言われればそれまでだが、フリッツ殿下は王族だ。しかも次期国王だったのだ。客観的に見てもアレクサンドラの方が王妃に相応しい。

「私はミリーを愛しているんだ」
「フリッツ殿下、私は男爵令嬢を愛しているのかどうかを聞きたいのではありません」
「私は彼女と夫婦になりたかった……正式な夫婦に……」
「だから、アレクサンドラを罪人に仕立て上げてまで結ばれたかった、と? 側妃ではいけなかったのですか?」

男爵令嬢が側妃になること自体も異例だ。

「ミリーだけを愛しているんだ。彼女の愛と真心に応えたかった。確固たる地位を与えたかったのだ……」
「それが正妃の地位であったと言うのですか?」
「そうだ…揺るぎない唯一無二の地位だ。国一の女性にしてあげたかった」

脱力感に苛まれそうになった。
この王子はここまでアホだったか?
優秀な王子であったはずなのに…いつの間にこれほどまでに愚かになったのだ。

「失礼を承知で申し上げますが、デル男爵令嬢に王妃は務まりません。アレクサンドラの存在がなくとも周囲が納得しないでしょう。無理に正妃に据えようとなされば、その段階で王太子位は剥奪されていた事は間違いありません。もっとも、王子妃としても誰も認めないでしょう」
「何故だ!!!」

私の言葉が不服だったのか、フリッツ殿下は椅子から立ち上がった。
急に立ち上がったものだから、椅子が後ろに倒れてしまったが、私も殿下も気にしない。

「当然でしょう。血筋も悪く、身分も低い、碌な教養も身につけておらず、貴族の立ち居振る舞いすらできない女が正妃などと。一体、どこの誰が認めるというのですか。諸外国に侮られ嘲笑ちょうしょうされるだけです。外交にも貿易にも支障をきたし、臣民の心は王家から離れていくでしょうね」
「どうしてそう言えるんだ!そんなものはやってみなければ分からないだろう!!!」
「殿下は歴史の勉強をされていないのですか?古代から現在まで女に溺れて国を滅ぼした例は限りなくあるのですよ?」
「ミリーは違う!!! 私もそんなことはしない!!!」

本人に自覚がないとは。
恋は盲目というが…傾国の美女に狂った歴史上の王や皇帝もだったのだろうか?

「お気付きではないようですが、国中の者達がそのように噂しあっています。女に誑かされた王子、悪女に騙された王太子、肉欲に溺れ果てた愚かな王子、と陰口どころか堂々と表立って噂し合っている有様です」
「なんだと!?」
「驚くことでもありませんよ、殿下。フリッツ殿下は公衆の面前で私の娘に冤罪をかけて婚約破棄を宣言なさったのですよ。見ていた者達がそのことを話さないとでも?我が国以外の人々も大勢参加していた夜会なのですよ?」
「王太子たる私の行動を吹聴するとは!そんな不実な者がいるのか!?」

あれだけの人数の前で宣言したのだ。
口止めしたところで無駄というもの。
悪い事に他国の要人も多く参加していた夜会だ。
我が国だけで規制をかけても意味がない。

「私は、ただミリーとの仲を皆に認めてほしかったのだ。彼女に常に傍にいてほしかった。責められる彼女を守りたかっただけだ。それの何が悪いんだ…」

悔し気に言い放つ殿下には申し訳ないが、それがいけないのだ。

「私もミリーも何もしていないではないか」

…どの口が言うか!

「何故、こうまで責められねばならない」

あれだけの大事になって、まだ理解していないとは。

「殿下達が責められるのは当たり前ですよ。道理を弁えない行為、アレクサンドラへの仕打ち。殿下、事細かに言い聞かせねば理解できませんか?」
「それは……」
「殿下の責任であり、殿下を止めなかった側近達の責任でもあります」
「……こ、公爵。彼らは……」
「えぇ、解っていますとも。殿下の望みを叶えようとしたが故の行動だという事は」
「……」
「今回の場合は”全員の望みが一致した結果”ともいえる事のようですが…実に浅はかな事をなさったものです」
「……」

ダンマリですか。
まあ、弁解を聞いたところで怒りしか湧きませんがね。

「それほどまでに私の娘が邪魔でしたか? 罪人として捕らえ、地下牢に閉じ込めようと考えるほどに」
「なっ!? ヘッセン公爵!それは誤解だ!!!」
「誤解ですか?」
「そうだ!私はアレクサンドラを罠には嵌めた。だが、地下牢など有り得ない!!! 彼女はに入れるつもりであった!!!」

何を馬鹿な事を。
そんな事を信じる者は誰もいませんよ。
我が国の貴族達だけでなく、他国の外交官達だって信じていない。誰が見ても地下牢行きにさせようとしていたとしか思えなかった、と口を揃えて言われたのだ。他国の人間からはもっと辛辣な言葉を貰った。
確かに、そう思っても仕方ない、と思える内容であった。

「近衛の末端を事前に準備しておいてですか?」
「ヘッセン公爵。いい訳に聞こえるかもしれないが、私にそのような意図はなかったのだ。近衛を用意していた事は認めるが、飽く迄も、パフォーマンスの一環だ!!!」
「なるほど、公衆の面前で罪人として捕らえられたアレクサンドラに再起はないと踏んでのことだったのですね」
「ヘッセン公爵!!! 何故そのように歪曲して考えるのだ?!」
「違うと仰るのですか?」
「アレクサンドラは優秀だ。妃にならなくとも他に幾らでも輝かしい未来がある」
「罪人に輝かしいも何もないでしょう」
「……」
「それとも、後で謝れば済むとでも思っていたのですか?」
「……」
「なんとも愚かしい事だ。殿下、貴男には心底失望しましたよ」
「……公爵」
「もう、お会いすることはないでしょうが、貴男のような男が国のトップにならなくて本当に良かったですよ。幾ら、アレクサンドラが優秀といっても愚王とその臣下の面倒は見られませんからね!」

私は振り向くこともなく、その場を立ち去った。
王族に対して礼を欠く態度である事は百も承知だ。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

【完結】高嶺の花がいなくなった日。

恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。 清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。 婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。 ※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

処理中です...