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番外編~イートン校の誇りが守られた日~
41.交換留学5
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「私達はお二人のように目的があっての参加ではありません。九条さんに勧められたから参加しただけです」
最初の二人のように明確な理由付けは他のメンバーには無かった。
主催者の勧めで参加。断ることもできたのに何故?と真澄は思った。
(この人、九条さんとそんなに仲良かったかな?話すところは見掛けるけどそこまで親しいという間柄じゃなかったような……)
参加を勧めた理由が分からない。
「そっか……でも何でまた?」
「九条さん曰く『将来結婚した時に役に立つはずです!』との事でしたので参加させて頂いた次第です。要は花嫁修業の一環でしょうか?」
「はい?」
(今、サラっととんでもない事を言ったような気がするんですけど!?)
真澄は混乱した。
将来役に立つ花嫁修業としては特殊過ぎるからだ。
それに、まだ学生。結婚の話なんてまだまだ先に感じるのに彼女達はそうではないとはこれ如何に?と真澄の頭の中はプチパニックに陥っていた。
「あの、つかぬことを伺いますが、結婚を前提に付き合ってる恋人とかいるんですか?」
なので、同級生相手に丁寧な言葉使いをしてしまった。聞かなければ良いのだが、残念ながら真澄は好奇心を押さえられなかった。また、結婚と言う個人的な事に親しくもない自分が聞いても良い物だろうかとも考えた。それくらいにデリケートな問題だったからだ。
「いえ、残念ながらそのような男性はおりません」
「え~と、じゃあ好きな人は?」
「いいえ、おりません。そもそも九条さんに参加を勧められた方々が全員が家同士で決められた婚約者がいらっしゃいます」
淡々と言う姿には悲壮感は全くない。寧ろ、当然の事と捉えている節があった。
(そういえばここに集まっているメンバーって旧家出身だ。そりゃそういう人もいるか)
そんな事を考えながらも真澄は言葉を続ける。
「ちなみになんだけど、今回の料理教室になんて言われて参加したのか教えてくれる?」
「九条さんからは『淑女の嗜みとして学んでおかれると良いですわ』と言われましたね」
「なるほど?」
特殊な例だと真澄は思った。
この劇薬料理を学ぶ理由を一般的な家庭育ちである自分が想像するのは難しいだろうと考えたのだ。
しかし、料理教室の主催者であり目の前にいるクラスメイトは既に一般人とは言い難い。千年以上の歴史を持つ公家のお姫様の感性は独特のようだ。真澄の視線に気付いたお姫様は彼に振り向くとニッコリと微笑んだ。その姿は正に大和撫子。真澄は意を決して尋ねてみた。この料理教室を開催した理由を――――
彼女はおっとりとした態度で答えてくれた。
「理由ですか?そうですわね。一言で言うのなら、害虫駆除でしょうか。兎に角、良く効きますもの。特に水無瀬さんには是非とも習得して頂かないと」
「何故と聞いても?」
「彼女の婚約者が成り上がりの家で品位もなく素行も悪いと評判の方だからです。かと言って、その家との婚約を取りやめると言う事はできません。水無瀬家は資金援助が必要な立場ですから。嶋さん、御存知かしら?イートン校に食中毒患者が多数でたことを」
「いや。知らないけど……」
「ふふふ。野外授業での出来事だったらしくて、箝口令が敷かれたようです」
「はぁ……」
「食中毒は検死に引っ掛かりませんでしょう?」
「…………」
「ただ問題は見た目ですわね。この見るからに毒と思しき料理を食べてくださる方は早々いらっしゃるものではありませんわ。そうなると改良が必要になります。結婚まで後数年。この数年で見た目が美しく、この料理の最大の特徴を損なわれないようにしなければなりませんわ」
美しいアルカイックスマイルを浮かべながら語る彼女に真澄は大いに納得した。
最初の二人のように明確な理由付けは他のメンバーには無かった。
主催者の勧めで参加。断ることもできたのに何故?と真澄は思った。
(この人、九条さんとそんなに仲良かったかな?話すところは見掛けるけどそこまで親しいという間柄じゃなかったような……)
参加を勧めた理由が分からない。
「そっか……でも何でまた?」
「九条さん曰く『将来結婚した時に役に立つはずです!』との事でしたので参加させて頂いた次第です。要は花嫁修業の一環でしょうか?」
「はい?」
(今、サラっととんでもない事を言ったような気がするんですけど!?)
真澄は混乱した。
将来役に立つ花嫁修業としては特殊過ぎるからだ。
それに、まだ学生。結婚の話なんてまだまだ先に感じるのに彼女達はそうではないとはこれ如何に?と真澄の頭の中はプチパニックに陥っていた。
「あの、つかぬことを伺いますが、結婚を前提に付き合ってる恋人とかいるんですか?」
なので、同級生相手に丁寧な言葉使いをしてしまった。聞かなければ良いのだが、残念ながら真澄は好奇心を押さえられなかった。また、結婚と言う個人的な事に親しくもない自分が聞いても良い物だろうかとも考えた。それくらいにデリケートな問題だったからだ。
「いえ、残念ながらそのような男性はおりません」
「え~と、じゃあ好きな人は?」
「いいえ、おりません。そもそも九条さんに参加を勧められた方々が全員が家同士で決められた婚約者がいらっしゃいます」
淡々と言う姿には悲壮感は全くない。寧ろ、当然の事と捉えている節があった。
(そういえばここに集まっているメンバーって旧家出身だ。そりゃそういう人もいるか)
そんな事を考えながらも真澄は言葉を続ける。
「ちなみになんだけど、今回の料理教室になんて言われて参加したのか教えてくれる?」
「九条さんからは『淑女の嗜みとして学んでおかれると良いですわ』と言われましたね」
「なるほど?」
特殊な例だと真澄は思った。
この劇薬料理を学ぶ理由を一般的な家庭育ちである自分が想像するのは難しいだろうと考えたのだ。
しかし、料理教室の主催者であり目の前にいるクラスメイトは既に一般人とは言い難い。千年以上の歴史を持つ公家のお姫様の感性は独特のようだ。真澄の視線に気付いたお姫様は彼に振り向くとニッコリと微笑んだ。その姿は正に大和撫子。真澄は意を決して尋ねてみた。この料理教室を開催した理由を――――
彼女はおっとりとした態度で答えてくれた。
「理由ですか?そうですわね。一言で言うのなら、害虫駆除でしょうか。兎に角、良く効きますもの。特に水無瀬さんには是非とも習得して頂かないと」
「何故と聞いても?」
「彼女の婚約者が成り上がりの家で品位もなく素行も悪いと評判の方だからです。かと言って、その家との婚約を取りやめると言う事はできません。水無瀬家は資金援助が必要な立場ですから。嶋さん、御存知かしら?イートン校に食中毒患者が多数でたことを」
「いや。知らないけど……」
「ふふふ。野外授業での出来事だったらしくて、箝口令が敷かれたようです」
「はぁ……」
「食中毒は検死に引っ掛かりませんでしょう?」
「…………」
「ただ問題は見た目ですわね。この見るからに毒と思しき料理を食べてくださる方は早々いらっしゃるものではありませんわ。そうなると改良が必要になります。結婚まで後数年。この数年で見た目が美しく、この料理の最大の特徴を損なわれないようにしなければなりませんわ」
美しいアルカイックスマイルを浮かべながら語る彼女に真澄は大いに納得した。
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