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第一章
31.再試験2
しおりを挟む「また検挙されたようだぞ」
「え?また?これで何人目?」
「数えるのも馬鹿馬鹿しい数だと言う事は確かだ」
皇帝陛下の勅命により、再試験が実施される事が発表されて一週間。金を払って試験問題を買おうとしていた人々は阿鼻叫喚だったそう。なんでも、御用になったのは分かっているだけでも数十人。これからも増えること間違いなしの展開だった。
「普通に試験に望むという考えができないのかしら?」
「甘いぜ、杏樹。不正で合格した奴らにそんな殊勝な心掛けを期待しても無駄ってもんさ」
「不正の噂は聞いてはいたけど……そんなに多いの?」
「ああ。特に貴族連中や金持ちや地主のボンボンなんかは。陛下が舵を切った理由も昨年度の不正合格者が過去最多だったからなんだよ」
思っていた以上に酷い。改めて聞くと溜息が出る程には呆れ返ってしまう話だわ。でも、それだけ不正が横行しているなら今回の試験でも何らかの不正行為が行われていてもおかしくない。
「……杏樹」
「なに?」
「暫く……いや、再試験が終わるまで陛下の処で寝起きしろ」
「はっ!?」
「その方が安全だ」
「何かあるの?」
「試験問題の流出が相次いでいる。その元締めが後宮の妃付きの宦官だという情報が入った」
「それ本当?!」
「その情報が正しければな……もしかすると女官殺しも関係しているかもしれねぇ」
「それって……」
「詳しくはまだ分からねぇが、何もないとは言えない。それに今度の再試験、官吏たちは杏樹が関係しているんじゃないかって疑ってんだよ」
「……何故? 私……関係ないでしょう? どうして私が関与しているって話になるの?」
「そりゃお前、アレだ。ほら...」
歯切れの悪い言いように思わず首を傾げると、盛大に溜息を吐きながら説明してくれた。
どうやら皇帝の寵愛深い私が「不正はいけない」と訴えたという話らしい。何故そんな話になったのか謎だけど巷ではその話が真実だと言わんばかりにまかり通っているらしい。実際に不正合格者は多かった。愛する妃の訴えもある。皇帝は妃の可愛さに重い腰を上げたという美談になりそうな流れなのだとか。ただ、それはそれで面白くないという方々がいるわけで、要はその人達は再試験によって全てを失う事実を受け入れたくないのだろうということだった。
そんな事で……とは思ったけれど、そう思う人は残念ながら多くいるらしく不満も大きいのだという。そしてその矛先がどこへ向かうかというと、まぁ言わずともわかるというものよね。
「それで私の所へ来たのね……」
「一応身辺警護を強化してはいるが用心に越したことは無い。しばらくは皇帝の宮で生活してくれ」
「……分かったわ」
青がここまで言うのだから後宮は私にとって安全地帯ではない。下手に動くこともできない状況なので大人しく従っておいた方がいいかもしれないわね。
「“特別な妃”の進言ってやつだ。杏樹が文官の真似事をしているのもお前の我が儘から始まった事になってるからな……」
「……陛下の命令なんですけど」
「ああ。だが、他の連中はそう思ってないぜ。まぁ、女が政治に関与するってんだからしょうがねぇ」
「……いっそのこと女人官吏も採用すべきだと思うわ」
「そりゃ、無理だ」
「陛下の一言で採用されそうだけど?」
「不浄な存在は官吏にはなれない。だから、女も商人も官吏にはなれない決まりだ。分かってるろ?」
貴賎関係なく門戸を開けている官吏の採用試験。
それでも試験ができない立場の者がいる。
商人、罪人、そして女人……。
この中で女人が政治に関わると世が乱れると考える男が多いのが問題だと思うわ……。
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