後宮の右筆妃

つくも茄子

文字の大きさ
45 / 82
第一章

45.朝儀2

しおりを挟む

「うむ……許婕妤は巽才人とも。早く良くなって欲しいと思うのも当然だ。他の妃達も同様。心労の身では到底子供を育てられないだろうとの意見が内侍省から出ておる。そこで、だ。子供達を一ヶ所にまとめて養育してはどうかと朕は考えたのだ。子供達が心身共に健やかに成長するにはその方が良いのではないかと思ってな」

 成程、そうきましたか。
 彼ら親族達が妃の次に狙いを定めるのはその子供達。子供を使って皇帝陛下に「オネダリ」させるかもしれない。そうならないために陛下は先手を打った。

 それは理解できるのだけど、物凄く含みのある言い方は止めて欲しい。
 私が何時、許婕妤と親しくなったんですか?
 嫌がらせのような贈り物の数々はいただきましたけどね。もしかして、そのことを仰ってます? ……嫌味ですよ、陛下。可哀想に、許将軍が蒼白になっているわ。


「巽才人は、随分と妃や子供達を気に掛けてくれている。そこで内侍省との繋ぎを任せようと思う。巽才人ならば安心して任せられる故な。皆もそのつもりで居てくれ」

 ……陛下、 それは職権乱用過ぎます。下手をすれば後宮の勢力均衡が崩れる事になりかねません。私の心の中を読んだかのように、陛下は含みのある笑いを向ける。
 この笑みはどういう意味ですか?
 私に後宮を支配しろと!?
 いえ、それはないでしょう。
 そもそも四夫人が居ると言うのに新参者が後宮を掌握できるはずもないこと。今、後宮は郭貴妃が掌握しているも同然。しかも、郭貴妃に対抗している殷徳妃いんとくひの存在もある以上、迂闊に手は出せないはず。

 それは陛下も良く御存知のはず……一体……。


「!!……陛下……陛下におかれましては、後宮の規律を乱すような発言はお控えください」

郭丞相かくじょうしょう、それはどういう意味だ?」

「後宮に新しく入られたばかりの方にそのような重責を与えるとは、あまりに酷というものです」
 
「ほう、朕が巽才人に重責を与えるように見えるのか? そう思うのであれば、丞相の目は曇っておるぞ。だが、朕の決定に不満があるというのなら……」
 
「めっ滅相も無いことでございます! ですが、ここ最近の陛下の巽才人に対する御寵愛は目に余るものがございます! 巽才人に掛ける情を他の妃方にも向けるべきでございます!」

「朕は、為に入内させたのだ。他の妃には諦めてもらう他ない」

「「「「「!!!」」」」」

 ……陛下、それは言ってはいけないことだと思うわ。もしかして煽ってます?

 案の定と言うべきか、内侍司のみならず、尚書省の文官達が色めき立った。中には立ち上がって顔を真っ赤にしている者もいる。他の官僚たちも愕然としていた。皆、驚きを隠す事が出来ない様子。
 まさか、皇帝陛下がここまで言い切るとは思わなかったのだろう……。
 そんな臣下達を、面白がっているようにしか見えない陛下は本当に質の悪い。

 溜息がでそう。
 きっと、この場に居る人達は勘違いしている。
 陛下が私に皇子を生ませようとしていると。

 考えて欲しい。
 今、後宮にということを――

 


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

後宮の隠れ薬師は闇夜を照らす

絹乃
キャラ文芸
12月26日よりコミカライズ開始。 旧題:後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~ 陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...