82 / 82
第三章
81.八州公2
「あれだけ言っておけば勘違いするお馬鹿さんはでてこないでしょうよ」
クスクスと笑いながら話す坎州公は実に楽しげだった。内容は恐ろしいけど。私は思わず顔を強張らせてしまう。
それにしても、あの後は本当に大変だった。
本来ならば皇帝より先に退出することなど許されない。なのに、坎州公は知ったことかと言わんばかりに踵を返して足早に立ち去ってしまったのだ。
それも飛びっきりの皮肉を言い放って――
『先代も色を好まれましたけど、それは今も同じのようですわね。ま、種のなかった先代と違ってあちらこちらに種を蒔き過ぎているようですけど、それは良しとしましょう。問題は『庶子』ばかりが増えて一向に震家の嫡出ができないことかしら?ふふ。バカボンは一体何を考えているのでしょうか?皇后はおろか皇太子も未だなし。これでは、皇位争いでこの国が亡びかねませんわね。もしもその時がきましたら、わたくし達は高みの見物をさせていただきますけれど。ああ、でもそうなると八州公に累が及びかねませんから、関所を封鎖させなくてはいけませんわねぇ……。まったく!バカボンのせいで面倒なことが増えたものだわ!!』
後半はほぼ悪態であったと思うわ。
しかも、最後の言葉は小声ではなく、かなり大声で言っていた。私も聞いた瞬間に背筋が凍ったぐらいだし。陛下や周囲の臣下たちも顔を引き攣らせて固まっていた。
ここまで悪態をつかれても反論一つしない陛下にも問題があるのかもしれないわね。まぁ、皇帝陛下に悪態をつく者なんて早々……というよりも坎州公くらいじゃないかしら?
その後、八州公達は最初の目的通りに淑妃の挨拶に向かった。何故か私も同行していた。というよりも、坎州公に「杏樹殿を連れて行きますわ」と言われて手を引かれたのでしょうがない。
それにしても、まるで嵐のような方。
まさか朝儀の間中、言いたいことを好き勝手仰るなんて思ってもいなかったもの。
そして現在、姉上の部屋で他の州公達も集まってお茶会を開いている。
「さすが照様。朝儀の場を利用して陛下を牽制をするとは!」
「ええ!素晴らしいお言葉でした」
双子の坤家当主達がそれぞれ拍手をしながら言う。他の八州公の皆さんも同じなのか嬉々としているように見えるわ。もしかして陛下、人気がないのでは?それとも八州公に何か嫌われるような事をしたのかしら?私が首を傾げていれば、察してくれたのか姉上は苦笑を浮かべながら話し始めた。
「杏樹が驚くのも無理ないわ。けれど、これが皇帝陛下と八州公の距離感なのよ。そうね、簡単に言えば、皇帝の権威が及ばないのが八州公と言った処かしら?」
「そうよ。だから杏樹ちゃんは心配しなくてもいいのよ。もし何かあればわたくし達が守ってあげるわ!!」
高らかと宣言する様に言った坎州公の言葉。
その時は冗談の一種として笑って受け流したけれど、数年後、私はその意味を知ることになったのだった―――
クスクスと笑いながら話す坎州公は実に楽しげだった。内容は恐ろしいけど。私は思わず顔を強張らせてしまう。
それにしても、あの後は本当に大変だった。
本来ならば皇帝より先に退出することなど許されない。なのに、坎州公は知ったことかと言わんばかりに踵を返して足早に立ち去ってしまったのだ。
それも飛びっきりの皮肉を言い放って――
『先代も色を好まれましたけど、それは今も同じのようですわね。ま、種のなかった先代と違ってあちらこちらに種を蒔き過ぎているようですけど、それは良しとしましょう。問題は『庶子』ばかりが増えて一向に震家の嫡出ができないことかしら?ふふ。バカボンは一体何を考えているのでしょうか?皇后はおろか皇太子も未だなし。これでは、皇位争いでこの国が亡びかねませんわね。もしもその時がきましたら、わたくし達は高みの見物をさせていただきますけれど。ああ、でもそうなると八州公に累が及びかねませんから、関所を封鎖させなくてはいけませんわねぇ……。まったく!バカボンのせいで面倒なことが増えたものだわ!!』
後半はほぼ悪態であったと思うわ。
しかも、最後の言葉は小声ではなく、かなり大声で言っていた。私も聞いた瞬間に背筋が凍ったぐらいだし。陛下や周囲の臣下たちも顔を引き攣らせて固まっていた。
ここまで悪態をつかれても反論一つしない陛下にも問題があるのかもしれないわね。まぁ、皇帝陛下に悪態をつく者なんて早々……というよりも坎州公くらいじゃないかしら?
その後、八州公達は最初の目的通りに淑妃の挨拶に向かった。何故か私も同行していた。というよりも、坎州公に「杏樹殿を連れて行きますわ」と言われて手を引かれたのでしょうがない。
それにしても、まるで嵐のような方。
まさか朝儀の間中、言いたいことを好き勝手仰るなんて思ってもいなかったもの。
そして現在、姉上の部屋で他の州公達も集まってお茶会を開いている。
「さすが照様。朝儀の場を利用して陛下を牽制をするとは!」
「ええ!素晴らしいお言葉でした」
双子の坤家当主達がそれぞれ拍手をしながら言う。他の八州公の皆さんも同じなのか嬉々としているように見えるわ。もしかして陛下、人気がないのでは?それとも八州公に何か嫌われるような事をしたのかしら?私が首を傾げていれば、察してくれたのか姉上は苦笑を浮かべながら話し始めた。
「杏樹が驚くのも無理ないわ。けれど、これが皇帝陛下と八州公の距離感なのよ。そうね、簡単に言えば、皇帝の権威が及ばないのが八州公と言った処かしら?」
「そうよ。だから杏樹ちゃんは心配しなくてもいいのよ。もし何かあればわたくし達が守ってあげるわ!!」
高らかと宣言する様に言った坎州公の言葉。
その時は冗談の一種として笑って受け流したけれど、数年後、私はその意味を知ることになったのだった―――
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(19件)
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
いまお休みですか。続きはいつですか?
やべぇ魔窟に居るから八州公達の言葉に
ε-(´∀`*)ホッ
ろくでなし皇帝、また杏樹を弾よけに使ったなッ🤬
ろくでなし皇帝の〈思いつき〉が実行されれば、されるほど杏樹の身が危険になるのはどういう事💢😠💢
ろくでなし皇帝が危険な目に遭うのは自業自得だから別にいいけど、人を巻き込むのは辞めてくれませんか?😡
淑妃、そろそろ〈ろくでなし皇帝〉をボコボコにしてくれませんか?
ろくでなし皇帝が淑妃に〈巽家の跡取り〉授けてくれたのは感謝するけど、あのアホはちょっと痛め付けた方がいいと思う。