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王子1
しおりを挟む「はっ!?王妃様がですか?」
「そうだ。アリス嬢の指導をする事になった」
個人的に父上から呼び出された居間で聞かされる現実に眩暈がした。よりにもよって王妃様から直々に教育される事になるなど。僕や父上も同伴の妃教育ときた。
「ですが父上。僕たちが傍にいた処で何も出来ないではありませんか」
「王妃が申すには、愛する婚約者が見守っていてくれるならばアリス嬢も頑張るのではないか、と言ってな」
「なっ!!!父上!それではまるでアリスが今まで頑張っていないかのような言いようではありませんか!!!」
「落ち着くのだ、エドワード。何もそうとは言っておらん。ただな、一年経つのに結果が芳しくないのも事実だ」
「あれは教師が悪いのです!何も知らないアリスに対して始めから厳しく指導するなど!!お陰でアリスは情緒不安定になってしまったんですよ?」
「だがな、あのシルバー夫人でさえも匙を投げたのだ」
「……シルバー夫人も他の教育係たちのようにアリスに厳しかったせいです」
「他の者達が一ヶ月も絶たずに辞職していく中でシルバー夫人は半年も続けてくれたのだぞ」
「そ、それは……」
「私の処にも妃教育の報告は来ている。キャサリンの受けた教育の百分の一程の事が出来ないという苦情と共にな」
「……」
「よいか、これは決定事項だ」
最後は父親でなく国王陛下としての言葉だった。
王妃様は国王である父上と共同統治をなさる才媛。「賢妃」と名高いお方だ。
美しく強く優雅。
王国有数の貴族出身。
公式の場以外は言葉を交わす事も稀な雲の上の女性。
キャサリンとの婚約破棄に、父上は烈火の如く怒ったが最後には許してくださったのに対して、王妃様は終始静かであった。
あの時は、実の母ではないため、僕を叱責出来ないとばかり思っていたが、本当は父上同様に許してくださっていたのだろう。
そうでなければアリスの教育を請け負う事はなさらないはずだ。
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