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第十四話〜やっぱり大騒動
しおりを挟む修鬼たちは、砂遠の案内で砂楽の武器コレクション部屋に来た。そんなに持っていていつ使うのかと思うほどの数。およそ数百もの武器たち。鑑賞用の武器もちらほらあるらしい。
「楽器もあるんだね」
「お兄様は芸術系が得意なんです。砂迦お兄様は・・・」
絵を描けば化け物が生まれ、歌を歌えば砂遠と砂楽の眠りを妨げる原因となる。
「そんなに?バイオリン高そう・・・」
「兄上がバイオリンを弾くと雷が落ちる。もはや武器だな」
「どんな演奏をすればそうなるの?」
バイオリンを弾くと何故か天気が変化する。雨がなかなか降らない時は砂楽に奏させればいい、というのは王家に関わる者たちの総意だ。
「雷ってことは天気操作みたいなところがある。この三兄妹にかかれば不可能なことなんてないんだよ」
「へ、へぇ・・・」
本当にそう思えてきた修鬼と夜刀。ここにある武器も楽器もどういうわけが全てに意味がある。何億にもなる楽器を買うとなると、国民から確実に怒られるため譲り受ける。もしくはそういったセレスを使う者に頼む。
「武器イコール国を守るために必要な物っていう認識だから、国民からすれば税金で戦艦一つ作った様なもんだ」
「あぁ、もうこの三兄妹は戦艦扱いか・・・」
軍事力は主にこの三人によるもの。兵士たちには、セレスが凝縮された宝玉が埋め込まれた最先端の武器を与える。隊長クラスになれば王の武器がもらえる。無論、そうなるまでには厳しい訓練に取り組まなければならない。キツすぎて途中で離脱する者もいる。
「武器も最先端。さすがトワイライト王国。世界一発展している国と言われるだけある」
「間違いねぇ」
「そういう向上心みたいなもの、アルバ国にも欲しいよ」
守りが手薄、王は若干引きこもり。国民から最も心配されている王としてなら一位になれるのではないかと思うほど、国民は不安になっている。そんな国を護衛してくれると言うのだから、こんなに良い話はない。守るということは、命の危険がはらむ。無論、ただで守るとは言わない。貿易する上での輸出物が増える。そちらの軍隊も何とかしろよ、ともちろん言うだろう。
「そちらに軍事力というか軍艦とかはないのか」
「戦艦が何隻かありますよ。あちこちにそういう港が。でも頼りない」
セレスのセの字も使えないのだ。セレスが使えなくても武器で補えるトワイライトとは雲泥の差。
「なるほど。セレスの宝玉の生産量はトワイライトが一位。そちらの軍に武器を送ってもいいかもしれん」
いつの間にか砂楽がいた。寝ていろと言われていなかったか、と全員から雰囲気で言われる。もちろん察した。
「砂楽」
「おっと綴・・・」
「俺とキラが目を離した隙に部屋から出たな」
砂楽は、また腹を殴られるのではと思ったのか構えた。その反応に修鬼は苦笑する。腹を殴られた記憶はあったのだ。綴としては、できればそこは忘れていてほしかった。
「ところで綴、兄上の記憶が朧気なことを良いことに血を吸ってはいないだろうな?」
「な、なんのことだ」
・・・やったね、この人
修鬼は頭を抱えた。砂楽をベッドまで運び、その後吸血衝動にかられて飲んでしまったと素直に供述した。蛇に噛まれた足から飲んだということは想像がつく。
「毒は混じっていたが・・・コーヒーのようだっどわっ!!」
目の前を稲妻が横切った。血の感想はいらんと目と行動で示す。砂楽の血は、コーヒーのように依存性が高いとのこと。飲まない修鬼たちからすれば全く要らない情報だ。
「コーヒーというか・・・麻薬・・・」
「そ、そんなにか?」
「蛇族は一番最初に飲んだ血に依存するものなのだ。元気そうだな、飲んでもいいか?」
「あー、そういえば頭が痛い。早く寝よう」
棒読みで言いながら部屋に戻った。砂楽を部屋に戻すための言い文句だ。
「俺たちの関係は親友以上恋人以下だからな。砂楽も察している」
「それ恋人だよね?」
恋人未満ではなくしれっと含んでいた。よっぽど砂楽のことが好きらしい。砂楽は間違いなく気づいているし、アプローチをかけられている側なので嫌でも分かる。
「男から血を吸われるって、俺なら絶対嫌だけどな。悪いけど」
「断らないってことは・・・そういうこと?」
砂楽としても実は綴と同じ認識説が浮上した。恋人に片足突っ込んでいる状態。
「鬼神は血を飲まないのか?」
「飲む人はいるよ。オレは肉を食べてるから多分抑えられてるんだと思う」
「俺も同じだぜ」
一度血を飲むと肉では我慢できなくなるのだと、綴を見ると察してしまう。飢えていた時に砂楽が現れた結果こうなってしまったのだ。結果的に、砂楽にとって信頼出来る相手となったからよかったものの、本当に暗殺者だったらとんでもない事になっていた。
「砂迦にはヴァルアがいて、俺には砂楽がいて、砂遠姫には灯夜がいる」
「ピッタリだね」
「当たり前じゃねぇか。俺に関しては幼なじみだからな」
砂遠と灯夜は幼い頃から遊んでいた関係だ。ヴァルアは砂迦が旅をしていた頃に出会った。綴は砂迦がいない頃に出会ったのだ。お互いに絶好のタイミングで出会えた。絆はとてつもなく固い。
「オレは夜刀か。うーん、めちゃくちゃ親友関係だね」
「そうだな」
お互いに恋愛対象として見たことは無い。というか見れない。
「さて、俺は砂楽の看病に・・・」
「キラはいるんだろうな?」
「あ、あぁ。いる」
ならいいと言って放した。気を遣って言ったが冗談でもないことを砂楽は察して部屋に戻ったのだ。監視されていなければおそらく飲む。キラか亜紗か雅紗がいなければ危険だ。
弟怖ぇという心の声が聞こえた。数時間くらい前にプロポーズしたとは思えない声だ。分からなくもないが。
「思いやられるね。うーん、この武器めっちゃ気になる」
「黒い大剣か。修鬼に似合いそうだな」
「はい。カッコイイです」
「砂楽さまなら二つ返事で下さるぜ」
「そうかな」
信頼しているものになら大切なものを譲ってくれる。砂楽が修鬼を信頼しているかどうかにかかっているのだが。砂遠と砂迦のお墨付きなので問題ないだろうと確信している。
「信頼していなかったらそもそもボディガードに選ばねぇだろ」
「あぁ、そっか。そういえば」
寝室に戻り、意識がしっかりしている砂楽に聞いたところ、二つ返事どころか何の交渉もなく譲ってもらえることになった。
「名前どうしようかな」
「私も名前が聞けるのを楽しみにしているぞ」
嬉しそうに言う。影属性の鬼からするととてつもなく眩しい笑顔だ。トワイライト王家の笑顔は目に痛くないだけで太陽のようだった。怨霊なら一瞬で成仏するレベル。
そして二日後。修鬼と夜刀は午前6時ごろ港にいた。パスポートを見る港の係員は驚くを通り越すことだろう。とはいえ、学校にはまだ言っていないのだ。
「遠路はるばるって訳でもないですけど、お疲れ様でした」
「出迎えありがとう」
優雅に船から降りてくる二人とその後ろに従者二人。係員にパスポートを見せれば
「は、はい。確かに・・・」
王ってこんなに若かったのか、と驚きの表情を見せる。人生何周かしているため、精神年齢はかなり高めだ。知識はどこぞ?とは思うが
まず案内するのは学校ではなく今回宿泊する旅館だ。アルバ国最高級の旅館で、温泉も評判がいい。修鬼と夜刀がアルバ国の王の関係者でもないのに調べたところ見つかった。灯台もと暗しとはこのこと。城の近場にあったのだ。旅館まではフェリーに乗せていたリムジンで向かう。運転は綴だ。
「ほう、雰囲気がいいな。こんなに朝早くチェックインしても良いのか?」
「勿論です」
「わたしも泊まっても良いのでしょうか」
「ちゃんと予約済みだよ。灯夜くんと綴さんもね」
この宿泊代は税金である。これに関しては、国王の世話役に頼んだ。雰囲気がいいと言いつつ、居るのは門の前。
門を真正面から通れば
「お待ちしておりましたシャラク=トワイライト国王陛下、シャオン=トワイライト王女陛下」
「ご苦労。とても好ましい景観だ。庭園も美しい」
「ありがたきお言葉、身の引き締まる思いでございます」
・・・えぇ、何この会話
修鬼と夜刀はなんとも言えない雰囲気に、美しい庭の風景など目に入らない。
女将に部屋を案内してもらう。砂楽の寝室よりも少し狭いが、その国王陛下は満足した様子だ。これには修鬼だけでなく女将も安心。
その後少しゆっくりしたあと、朝食が運ばれてきた。
「ほう。美味そうだ」
アルバ国の料理は口にあったらしい。確かに高級なだけあり絶品だった。砂楽の反応の一つ一つにハラハラさせられる。砂迦にはここまで緊張しなかった。
学校へは後でくるということになり、修鬼たちは先に行くことになった。
「ねぇ、なんでこんな緊張するのかな?」
「王ってすげぇ」
「というかあの服なんなの。緊張感増してくるんだけど」
「お兄様の正装です。外交の際はいつも色は変わりますがあんな感じです」
圧倒的なプレッシャー。それを目の前にすれば下手すれば跪きそうになるほど。砂楽の人間性を知らない人間はおそらく頭を下げる。
「そんな人が学校に来んの?」
「マントを羽織った軍服でいらっしゃると聴いたぜ」
「先生になんて言えばいいんだよ」
「わたしの兄ですと言えばいいのでは?」
妹である姫君の一番上の兄と言えば一瞬で特定される。もう考えることをやめた。
朝方はアルバ国の首都を回ることにしたらしく、来るのは昼からということになった。四時間目の授業が終わり昼休みに入り、校門の前で待っていた。
「うわっ、リムジンで来たの!?」
綴がドアを開ければ、そこから堂々と砂楽が降りてきた。白を基調とした軍服。紫がかった銀色の肩章。同色の飾緒。襟やベルトは上品な紫。チェーン付き肩マントはオフホワイトだ。似合いすぎるていた。さすがに剣は収められていない。
「か、かっこいい・・・」
「ありがとう」
「教室まで案内しますね」
教室に行けば担任である令寧が待っていた。令寧から見ても明らかにただの参観者では無いとわかる。
「わたしのお兄様です」
「ほう。では王子さまということか?」
「いや・・・えっとね。シャラク王なんだよねぇ」
教室がザワついた。令寧が早く言っとけやと痛いほど睨みつけてくる。
「あなたが令寧殿か?」
「えぇ!?あ、さ、左様でございます」
「シャオンがいつも世話になっている。感謝しているぞ。それからクラスメイトの者たちも」
王から殿と言われさらに礼まで言われる。修鬼たちを怒る気も失せた。王の前で怒れないというのも大きいが
「こちらの校長はいるだろうか」
「あー、校長ね。校長は・・・牢屋にいるよ」
「きょ、教頭ならいますが。お話なさいますか?」
「それはありがたい。是非」
クラスメイトの一人葵哉が砂楽と綴を職員室まで案内した。提出物を出すついでとは誰も言えない。二人が教室から出たのを確認した全員が肩の荷を下ろした。
「ど、どう?サプライズ・・・」
「心臓を止めるレベルのサプライズって何よ」
澪から一言。参観日に来た王子とはレベルが違う。
「もう授業受けさせちゃう?」
「アホか!次の授業音楽だぞ。見たいのは数学とかそのあたりだろう?」
「まぁ、多分ね。この学校この国の最先端の授業が受けられるっていうのを聞いたみたいでさ。参考にしたいとかなんとか言って・・・」
トワイライトの授業とは比べ物にならないほど遅れている可能性が高い。王に首を傾げられる事態となったらどうするのか。オレは悪くないと先生に責任を転嫁した。
「授業変更しちゃおうよ」
「そうだな。6時間目が歴史だ。歴史を5時間目にして音楽を6時間目に変更だ」
もしくは6時間目に演説させるか。砂遠が言えばどうとでもなる。最後は砂遠頼み。
「ふむ、良い話が聞けた」
「砂楽さん、話し終わったんですか?」
「ああ。寝てるとしばき起こされるそうだな」
「教頭何言ってんだよ」
「教頭が教科書を下さったのだ。音楽と歴史の教科書」
ペラッペラの教科書を渡したのか、と愕然とする修鬼と夜刀と令寧。毎回分厚い表紙で覆われた書類を読まされる砂楽としてはありがたいレベルの薄さ
「重要な部分を簡潔にまとめられているというのは素晴らしいことだ。ダラダラといるのかいらないのか分からない情報を書き連ねたものよりも価値がある」
「ということは、この教科書はいいってこと?」
「ああ。うちの政治家も見習ってほしい」
何十万字もダラダラと書き連ねられた眠くなる書類たちより何倍もいい。まとめるということが出来ないのかと普段辟易していたのだ。修鬼は、砂楽は実は勉学も強いのではないかと思えてきた。槍の塵にしてくれると言っていたのを思い出し、気のせいかと首を傾げた。
「言っておくが。毎年毎年教科書をチェックさせられるのは私だからな」
「・・・きっつ」
クラスメイトも顔を顰めるほどの苦行。内容の誤りはないかや誤字脱字までチェックさせられる。王からの許可が降りなければ授業で使えないのだ。
「校風も自由に見える」
「生徒たちの意思を尊重することに重きを置いております。この学校の校則は中央執行部が決めたものなのです」
「素晴らしい。自由の意味を履き違えることのない賢明な生徒や教師が多いということだな」
その校長や主任は自由の意味を思いっきり履き違えていたのだが。
「ん?チャイムか」
砂楽のために机を用意した。執務用のデスクとは比べ物にならない安物で、軍服に似合わない。
歴史は、グループになって話し合う時間がある。感想や意見などを述べる。メリットやデメリットについても話す。
「ほう。これから国を作り上げていく若者たちだからか。砂迦が言っていたとおり、砂遠を任せても問題なさそうだな」
ちなみに、砂楽は修鬼も砂遠も灯夜も夜刀もいないグループに参加している。思っていたよりも接しやすい王であったことに驚いている様子だった。
「学校は楽しいか?」
砂楽に問われ、生徒四人が思い思いに感想を述べる。こうしてもいいのにという意見も。それを楽しそうに聴いていた。緊張が解けたようで、授業が終わった頃には砂楽の周りには生徒たちが集まっていた。
「なにこのカリスマ」
「うちの王にも見習ってほしい・・・」
令寧がボソッと呟く。
王としてのあり方は王によってそれぞれだが、こう見てしまうと嫌でも比べてしまう。
こうして、慌ただしい学校での一日は過ぎた。生徒や教師たちに見送られ手を振りながら校舎を出た。
「恵まれたな。砂遠、灯夜」
「はいお兄様。わたしもそう思います」
「それはオレも思うよ」
砂楽は教科書を貰えたらしく、嬉しそうにしていた。
「私は学校に行ったことがなくてな」
「家庭教師とか?」
「いいや。家庭教師もいない。どちらかと言えば帝王学。内容はほとんど忘れたが」
理想の王になるために何が大切なのか。国民を動かすにはどうすればいいのか。侵略する際の心得。様々なことを教えられた気がするが、数学や諺のようなものはほとんど教えられてこなかった。王になることが決まっていた長男であるため、学力よりも王としての力量を問われたのだ。砂遠や砂迦は学校にはいっていなかったが、家庭教師がいた。
「砂楽さんの理想の王様像ってあるんですか?」
「誰よりも強い王。孤高ではない王」
「かっこいいっすね」
「だからと言って、無茶は行けませんよ。お兄様」
確かに誰よりも強いほどなのだが、過労で倒れかねないほど仕事する
・・・そんな王を放って観光してた王子様とお姫様はだれだっけ?
尊敬出来る、とか無茶をしないでください、とか言っている妹と弟が全く手伝ってくれないのだ。仕事の内容全てを把握している訳では無いのだ。
「いつも読まされている教科書を読めば勉強できるんじゃ・・・」
「ん?読んでみるか?今チェックしている教科書の内容」
修鬼は、砂楽にA5判の仮の教科書を渡され驚愕。砂遠と灯夜と夜刀も覗き込みギョッとした。
「ごめん、オレできない」
こんな雑用のようなものもさせられるのだ。トワイライトには首相が居ない。アルバ国の王はこんなことしない。政治は首相がするからだ。そこがトワイライトとは違う。
「砂楽、もう直城に着く」
「ああ」
変身するかのように正装に着替えた。城門を抜けた頃には王の顔に変わっていた。
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