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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

63-3.即席パーティー

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「不快だわ」
「ぶっ、くく……っ、ごめんごめん。君があまりにも通常運転だったものだから」

 クリスティーナは眉を寄せる。
 啖呵を切ったところを笑われたせいか、やや気恥ずかしさを覚えているようで、彼女の頬は僅かに赤い。
 初めて年下の少女としての一面を垣間見た気がして、それにまた笑みがこぼれそうになるのをノアは何とか堪えた。

 その代わりにと、彼女が浮かべていた笑みを真似してやる。
 悪役にだってなれそうな、不敵さ満載の微笑で二人は互いに顔を見合わせた。

「オーケー、期待に応えようじゃないか。任せたまえよ『天才』」
「期待くらいならしてあげてもいいわ、『天才』魔導師さん?」

 ノアは魔晶石の包みを握ったまま、拳を作ってクリスティーナへ突き出す。
 その行為の意図を理解するのに暫し時間がかかった彼女は、目を丸くした後にややぎこちなく拳を当てる。

 やがて拳を離して、満足そうに微笑み返して踵を返すクリスティーナ。
 その背中を見送りつつ、余韻に浸りそうになる気持ちをノアはすぐに切り替えた。

「エリー」

 そして受け取った小袋の中身をすぐ取り出せるようにと開け口を開いたまま足元へ配置してから、懐に手を入れる。
 クリスティーナとノアのやり取りを静かに見守っていたエリアスは自分の名が呼ばれるとは思っていなかったのか肩を跳ね上げてわかりやすく驚いてみせた。

 ノアはそれに笑いながら懐から出した小瓶を一つ、彼へ投げて寄越す。
 パシ、という小気味よい音を立てて片手で受け止めたエリアスはその小瓶をまじまじと観察する。

「余裕があれば炎魔法を使う直前に相手に向けてくれ。土魔法も地盤を緩める手伝いくらいならできる。基本は君に合わせるから、互いに上手くタイミングがかち合えば試してみよう」
「了解! ……あ、でもオレ、魔法の精度そんな良くないから期待はすんなよ」
「はは、大丈夫大丈夫。あくまで対抗手段を増やす為の相談だ。失敗したならしたで別の手を打てばいいだけさ。君のやりやすいように動いてくれ」
「おう」

 ノアの指示に頷きながらエリアスは小瓶をポケットへ入れる。
 それを横目で見ていたオリヴィエだったが、ふと思い出したようにリオを見やる。

「お前は?」
「はい?」
「言い出しっぺだろう。役割の確認をしようっていう」
「ああ、そうでした。俺は前衛です」

 リオは短く答えてから、顎に手を当てる。
 更に説明を試みた彼は何と話したものかと考えていたようだが、やがて更に言葉を付け足した。
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