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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
92-1.身内の陰謀
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オーケアヌス魔法学院を後にしたクリスティーナ達はノアの案内に従ってグロワールを散策する。
移動に際して、エリアスの体調面はクリスティーナの気に掛る部分であったが本人曰く歩く程度なら問題ないという話であった為その言葉を信用することとした。
とはいえ、怪我人を長時間歩き回すようなことは出来れば避けたい。
そういった理由を鑑みても、案内人が付いているという事はありがたかった。
「時間があれば観光でもどうかと誘う所なんだけどなぁ。残念だ」
市場に始まり、軽食やアクセサリーを売っている屋台、カフェや本屋、魔導具店などが立ち並ぶ立派な商店街。
多くの人々が行き交う通りをクリスティーナ一行とノア、レミの五人は歩いていく。
大した接点もないながら、賑やかな方が楽しいからというノアの考えだけで巻き込まれたレミは初めこそ居心地悪そうにそわそわとしていたものの、エリアスがいくつか会話を投げかける内にその緊張も解れて言ったようだ。
エリアスの誰とでも打ち明けられそうな明るさが作用したのだろう。お陰で道中の空気は悪いものではなかった。
「いくつか当てはあるんだけど、明日一度学院まで戻ることを考えるとあまり離れた場所じゃない方がいいよね」
「そうね」
「ならやっぱりここかな」
建ち並ぶ建物の内一つの前でノアが足を止める。
頭上に吊り下げられているのは、そこが宿屋と食事処を兼ね備えた店であることを記した看板。
「ここは料理も酒も美味しいんだよね。問題は空きがあるかなんだけど」
そう言いながらノアは扉を引く。備え付けられたベルが明るい音色を奏でながらクリスティーナ達を迎え入れた。
「いらっしゃいま……あら、ノアさん」
入って正面に見えるカウンターに立っていた女性はノアの姿を目に留めると朗らかに笑う。
ノアは付けている途中であったらしい帳簿を脇へ逸らし、受付を片付け始める彼女へ歩み寄った。
「やあ、女将さん。部屋は空いてるかい?」
「あら、珍しい。泊っていくの?」
「俺じゃなくて連れがね」
彼は自分の後ろに立つクリスティーナ達へ視線を向ける。
促されるようにその視線を追った女将はその笑みを更に深めた。
「あらあら、若いお客さんがいっぱいねぇ。まだ空いているわよ」
レミとも顔見知りらしい彼女は彼へも明るく挨拶をしてから宿泊する人数と部屋の数、宿泊日数を確認する。
それを紙に書き留め、料金を受け取ってから女将は受付の脇に広がる空間を指し示した。
そこにはいくつものテーブルと椅子が並べられている。食事処として機能している場所なのだろう。
奥はキッチンと繋がっており、下準備をしている男性の姿が見える。
「ご飯は食べてく? まだ準備中だからもう少しだけ待ってもらうことになるけれど」
女将の問いかけに対し、ノアは承諾を求めるようにクリスティーナ達を見た。
それに各々が頷いたのを確認してから彼も首を縦に振る。
「そのつもり。あと、連れがもう一人遅れて来ると思う」
「六人ね。ならテーブルをくっつけて使って頂戴。注文は後で聞きに行くわね」
「ありがとう」
二人の会話を聞いていたレミは呆れた顔でため息を吐き、他三人は目を丸くする。
そんな四人を他所に会話を切り上げたノアは食事処の角の席を選び、手際よく六人席を作っていった。
移動に際して、エリアスの体調面はクリスティーナの気に掛る部分であったが本人曰く歩く程度なら問題ないという話であった為その言葉を信用することとした。
とはいえ、怪我人を長時間歩き回すようなことは出来れば避けたい。
そういった理由を鑑みても、案内人が付いているという事はありがたかった。
「時間があれば観光でもどうかと誘う所なんだけどなぁ。残念だ」
市場に始まり、軽食やアクセサリーを売っている屋台、カフェや本屋、魔導具店などが立ち並ぶ立派な商店街。
多くの人々が行き交う通りをクリスティーナ一行とノア、レミの五人は歩いていく。
大した接点もないながら、賑やかな方が楽しいからというノアの考えだけで巻き込まれたレミは初めこそ居心地悪そうにそわそわとしていたものの、エリアスがいくつか会話を投げかける内にその緊張も解れて言ったようだ。
エリアスの誰とでも打ち明けられそうな明るさが作用したのだろう。お陰で道中の空気は悪いものではなかった。
「いくつか当てはあるんだけど、明日一度学院まで戻ることを考えるとあまり離れた場所じゃない方がいいよね」
「そうね」
「ならやっぱりここかな」
建ち並ぶ建物の内一つの前でノアが足を止める。
頭上に吊り下げられているのは、そこが宿屋と食事処を兼ね備えた店であることを記した看板。
「ここは料理も酒も美味しいんだよね。問題は空きがあるかなんだけど」
そう言いながらノアは扉を引く。備え付けられたベルが明るい音色を奏でながらクリスティーナ達を迎え入れた。
「いらっしゃいま……あら、ノアさん」
入って正面に見えるカウンターに立っていた女性はノアの姿を目に留めると朗らかに笑う。
ノアは付けている途中であったらしい帳簿を脇へ逸らし、受付を片付け始める彼女へ歩み寄った。
「やあ、女将さん。部屋は空いてるかい?」
「あら、珍しい。泊っていくの?」
「俺じゃなくて連れがね」
彼は自分の後ろに立つクリスティーナ達へ視線を向ける。
促されるようにその視線を追った女将はその笑みを更に深めた。
「あらあら、若いお客さんがいっぱいねぇ。まだ空いているわよ」
レミとも顔見知りらしい彼女は彼へも明るく挨拶をしてから宿泊する人数と部屋の数、宿泊日数を確認する。
それを紙に書き留め、料金を受け取ってから女将は受付の脇に広がる空間を指し示した。
そこにはいくつものテーブルと椅子が並べられている。食事処として機能している場所なのだろう。
奥はキッチンと繋がっており、下準備をしている男性の姿が見える。
「ご飯は食べてく? まだ準備中だからもう少しだけ待ってもらうことになるけれど」
女将の問いかけに対し、ノアは承諾を求めるようにクリスティーナ達を見た。
それに各々が頷いたのを確認してから彼も首を縦に振る。
「そのつもり。あと、連れがもう一人遅れて来ると思う」
「六人ね。ならテーブルをくっつけて使って頂戴。注文は後で聞きに行くわね」
「ありがとう」
二人の会話を聞いていたレミは呆れた顔でため息を吐き、他三人は目を丸くする。
そんな四人を他所に会話を切り上げたノアは食事処の角の席を選び、手際よく六人席を作っていった。
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