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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
156-2.企ての恐れ
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クリスティーナ達は互いに目配せをしてから扉を潜り、来た道を戻っていく。
だがその時、その背中を見送っていたディオンが引き留める様に口を開いた。
「そうだ、ジルベール」
「はい」
ジルベールは何か言い残したことでもあるのだろうかと不思議そうに振り返る。
振り返った先、真面目な面持ちで彼を見ていたディオンと目が合う。
「ニコラもそうだが、お前も相当焦っている様に見える。早まった行動は自分の首を絞めるだけだ。覚えておけ」
「……ええ。ありがとうございます」
ディオンの指摘に思い当たる節があったのだろう。彼は図星を衝かれて目を丸くしたが、すぐに穏やかに微笑みを返した。
まるで事前に用意していたかのような精巧な微笑。その違和感に気付いたのはクリスティーナだけであった。
それに対し、何か言おうとクリスティーナが口を開くもジルベールは再び進路へ向き直り、歩き出してしまう。
話す機会を失ったクリスティーナは複雑な気持ちを抱きながらもリオとエリアスを引き連れてその背中を追ったのだった。
***
翌日。クリスティーナ達はシャルロットの見舞いという名目でオリオール邸を訪れ、暫しシャルロットと談笑を楽しんだ後に館の書庫を見せてもらう名目で廊下へ繰り出していた。
クリスティーナもシャルロットも本好きであることから、書庫を軽く見せて欲しいという頼みも不審に思われることはない。
体を壊しているシャルロットは同行できないが、代わりにいくつか気に掛った本を見繕って来ることを約束してから案内役を任されたジルベールと共に部屋を出る。
非常時の為にエリアスはシャルロットの傍へ残るよう指示を残してきた為、この場にはクリスティーナとリオ、ジルベールしかいない。
三人はクリスティーナを先頭に速足で廊下を進んで行く。
彼女達が目指すのはシャルロットに絡まる闇の出所――昨日、ジョゼフと対話をした扉の先だ。
「今日のこの時間、旦那様は外出しています。行き先を詳しく知る者はいませんでしたが恐らくは明日のオークション絡みかと」
クリスティーナの後ろに控えるジルベールが小声で言う。
それに頷くクリスティーナの顔は僅かに曇っている。
闇の出所へ近づく度に強まる嫌悪感だけが理由ではない。
「……貴方、本当に大丈夫なの?」
クリスティーナはジルベールへ視線を投げながら自身の顔を曇らせる要因となっている不安を口にする。
それと同時に思い出されるのは昨晩のディオンとの会話の一部分であった。
だがその時、その背中を見送っていたディオンが引き留める様に口を開いた。
「そうだ、ジルベール」
「はい」
ジルベールは何か言い残したことでもあるのだろうかと不思議そうに振り返る。
振り返った先、真面目な面持ちで彼を見ていたディオンと目が合う。
「ニコラもそうだが、お前も相当焦っている様に見える。早まった行動は自分の首を絞めるだけだ。覚えておけ」
「……ええ。ありがとうございます」
ディオンの指摘に思い当たる節があったのだろう。彼は図星を衝かれて目を丸くしたが、すぐに穏やかに微笑みを返した。
まるで事前に用意していたかのような精巧な微笑。その違和感に気付いたのはクリスティーナだけであった。
それに対し、何か言おうとクリスティーナが口を開くもジルベールは再び進路へ向き直り、歩き出してしまう。
話す機会を失ったクリスティーナは複雑な気持ちを抱きながらもリオとエリアスを引き連れてその背中を追ったのだった。
***
翌日。クリスティーナ達はシャルロットの見舞いという名目でオリオール邸を訪れ、暫しシャルロットと談笑を楽しんだ後に館の書庫を見せてもらう名目で廊下へ繰り出していた。
クリスティーナもシャルロットも本好きであることから、書庫を軽く見せて欲しいという頼みも不審に思われることはない。
体を壊しているシャルロットは同行できないが、代わりにいくつか気に掛った本を見繕って来ることを約束してから案内役を任されたジルベールと共に部屋を出る。
非常時の為にエリアスはシャルロットの傍へ残るよう指示を残してきた為、この場にはクリスティーナとリオ、ジルベールしかいない。
三人はクリスティーナを先頭に速足で廊下を進んで行く。
彼女達が目指すのはシャルロットに絡まる闇の出所――昨日、ジョゼフと対話をした扉の先だ。
「今日のこの時間、旦那様は外出しています。行き先を詳しく知る者はいませんでしたが恐らくは明日のオークション絡みかと」
クリスティーナの後ろに控えるジルベールが小声で言う。
それに頷くクリスティーナの顔は僅かに曇っている。
闇の出所へ近づく度に強まる嫌悪感だけが理由ではない。
「……貴方、本当に大丈夫なの?」
クリスティーナはジルベールへ視線を投げながら自身の顔を曇らせる要因となっている不安を口にする。
それと同時に思い出されるのは昨晩のディオンとの会話の一部分であった。
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