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一 青春って何ですか?
一 青春って何ですか?1p
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ここは大都会の真ん中。
時間は知らない。
ただ、今は夜だ。
人込みに流されながら、俺は盛大にため息をついた。
そのため息は人混みに紛れ、消えてしまう。
さて、ここで問題です。
大学四年生と言えば何ですか?
答は就職活動。
俺は今、その大学四年生なわけで、そしてこの間面接を受けた会社からの不採用の通知を今朝見たわけで。
二十四回目の面接だった。
最後の希望を掛けて挑んだ面接。
手ごたえは……不採用の通知から見て取れる様に全く無かった。
「はぁ……」
またため息。
朝からずっと、ショックで一人暮らしのアパートの部屋で布団を被って落ちていた。
周りの同級生達は次々と内定が決まり、浮かれている。
そんな彼らの笑顔を思い出すと、とてもじゃ無いけれど起きて何ていられなかった。
俺は社会に必要とされていないんだ。
そんなネガティブな言葉が頭の中をグルグルと回り、気が付けば暗くなった部屋の中で涙を流していた。
こんなんじゃダメだ、と思いきって外に出たが、沢山の人が街には溢れていて、その中には仕事帰りと見えるスーツ姿の人達の姿があって。
それをぼんやりと目で追っているうちに、また落ちてしまったのだ。
街中で、人にこんなにも囲まれながら孤独を感じた。
俺の足はピタリと止まる。
見上げた空には星は無い。
と、俺の肩に何者かがぶつかって来た。
「痛っ」と俺が声を出すと、何者かは舌打ちをかまして去って行った。
世の中、一体どうなってるんだ。
フラフラと歩き出した俺。
目的も無く、歩き続ける。
一体俺は何処へ向かっているんだろう。
色んな意味で。
大都会の夜を彷徨う事数時間。
気が付けば、俺は小さな居酒屋にいた。
客は俺一人。
カウンター席で慣れないお酒をちびりちびりと飲んでいる。
実は、お酒は初めて嗜む。
これは果たしてうまいのか?
眉を顰めながら、つまみを摘み、ゆっくりと飲むはビール。
一度は言いたかった台詞、「取り敢えずビールで」を店員相手に言った時は感動した。
俺も大人になったものだ。
大人になったのに就職先が決まらない。
「はぁ……」
これは何十回目のため息なのか。
頬杖を付き、センチメンタルをビールと共に味わった。
カラリ。
店の扉が乾いた音を立てて開く音がした。
「へいっ! らっしゃい!」
元気な店員の声。
どうやら客が来たようだ。
「大将、こんばんは」
何とも爽やかな声が店に響く。
男の声だ。
「イカちゃん、いらっしゃい!」
アルコールのせいなのか、大将の大声が耳に痛い。
イカちゃんと呼ばれた客は俺の隣に腰掛けた。
俺は目を細める。
わざわざ俺の隣に座らなくても、他に席はあるだろう、と思ったのだ。
おしぼりを持って来た女性店員に、「いつものやつ」とイカちゃんは言う。
彼女は、「はい!」と元気な声でそれに答えた。
俺が注文をした時はそんなテンションじゃ無かっただろう、と頭の中で俺は毒づいた。
その瞬間、俺の口からは、もはやおなじみとなったため息がこぼれた。
「お兄さん、景気悪そうだね」
イカちゃんがそう言って話し掛けて来た。
俺はムッとしてイカちゃんの方を向いた。
この時、俺は初めてイカちゃんの顔を見たわけだが、イカちゃんは同性の俺からしてみてもイケメンであった。
サラリとした黒髪は吹いてもいない風になびかれる様。
肌も恐ろしく綺麗だ。
そして、やや狐目の目がさらに細まり、俺に笑顔を向けている。
時間は知らない。
ただ、今は夜だ。
人込みに流されながら、俺は盛大にため息をついた。
そのため息は人混みに紛れ、消えてしまう。
さて、ここで問題です。
大学四年生と言えば何ですか?
答は就職活動。
俺は今、その大学四年生なわけで、そしてこの間面接を受けた会社からの不採用の通知を今朝見たわけで。
二十四回目の面接だった。
最後の希望を掛けて挑んだ面接。
手ごたえは……不採用の通知から見て取れる様に全く無かった。
「はぁ……」
またため息。
朝からずっと、ショックで一人暮らしのアパートの部屋で布団を被って落ちていた。
周りの同級生達は次々と内定が決まり、浮かれている。
そんな彼らの笑顔を思い出すと、とてもじゃ無いけれど起きて何ていられなかった。
俺は社会に必要とされていないんだ。
そんなネガティブな言葉が頭の中をグルグルと回り、気が付けば暗くなった部屋の中で涙を流していた。
こんなんじゃダメだ、と思いきって外に出たが、沢山の人が街には溢れていて、その中には仕事帰りと見えるスーツ姿の人達の姿があって。
それをぼんやりと目で追っているうちに、また落ちてしまったのだ。
街中で、人にこんなにも囲まれながら孤独を感じた。
俺の足はピタリと止まる。
見上げた空には星は無い。
と、俺の肩に何者かがぶつかって来た。
「痛っ」と俺が声を出すと、何者かは舌打ちをかまして去って行った。
世の中、一体どうなってるんだ。
フラフラと歩き出した俺。
目的も無く、歩き続ける。
一体俺は何処へ向かっているんだろう。
色んな意味で。
大都会の夜を彷徨う事数時間。
気が付けば、俺は小さな居酒屋にいた。
客は俺一人。
カウンター席で慣れないお酒をちびりちびりと飲んでいる。
実は、お酒は初めて嗜む。
これは果たしてうまいのか?
眉を顰めながら、つまみを摘み、ゆっくりと飲むはビール。
一度は言いたかった台詞、「取り敢えずビールで」を店員相手に言った時は感動した。
俺も大人になったものだ。
大人になったのに就職先が決まらない。
「はぁ……」
これは何十回目のため息なのか。
頬杖を付き、センチメンタルをビールと共に味わった。
カラリ。
店の扉が乾いた音を立てて開く音がした。
「へいっ! らっしゃい!」
元気な店員の声。
どうやら客が来たようだ。
「大将、こんばんは」
何とも爽やかな声が店に響く。
男の声だ。
「イカちゃん、いらっしゃい!」
アルコールのせいなのか、大将の大声が耳に痛い。
イカちゃんと呼ばれた客は俺の隣に腰掛けた。
俺は目を細める。
わざわざ俺の隣に座らなくても、他に席はあるだろう、と思ったのだ。
おしぼりを持って来た女性店員に、「いつものやつ」とイカちゃんは言う。
彼女は、「はい!」と元気な声でそれに答えた。
俺が注文をした時はそんなテンションじゃ無かっただろう、と頭の中で俺は毒づいた。
その瞬間、俺の口からは、もはやおなじみとなったため息がこぼれた。
「お兄さん、景気悪そうだね」
イカちゃんがそう言って話し掛けて来た。
俺はムッとしてイカちゃんの方を向いた。
この時、俺は初めてイカちゃんの顔を見たわけだが、イカちゃんは同性の俺からしてみてもイケメンであった。
サラリとした黒髪は吹いてもいない風になびかれる様。
肌も恐ろしく綺麗だ。
そして、やや狐目の目がさらに細まり、俺に笑顔を向けている。
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