上 下
12 / 16

続・すず子の夢日記

しおりを挟む

…………恐る恐る……恐る恐る…………

…あたい達は、少しずつ進んで行った。足元の道は……一人がぎりぎり通れる幅のものもあれば、三人で通れる場所もあったけど……どろどろの……血が……血が……

……しかも、時々……どろどろに腐った血の池から……人間の屍の手や、足が伸びて来て……あたい達に触る………ひあぁぁ…………

…………一緒にいたのは……確かに、梅子とゆず子……だと、思うけど……なぜか見た目はよく思い出せない……誰も、誰もしゃべらなかったし……

……でも、一緒にいて少しは安心できたから……多分、あの子たちのはず……


しばらく進むと、一段上に上がるような傾斜があった……数メートル分かな……

……もう、あたいも、他の2人も、……多分……進むしかない……と思って、進んでた……疑問があるとかないとかなじゃい……体が勝手に動いてた……

こんな、広い広い坂のような場所……あたし達が飛べたら、簡単に上に上がれるのに……と思ったけど……仕方ない……手も使って、這うようにして……翼は汚さないように……なんとか登って行った……

……そしたら、そこには、今までとは違って、比べ物にならないくらい大きな大きな血の池があった……。……もちろん、血みどろだけど……

……でも……ここにも…………何かいる!……何か動いてる!……

……でも……人間じゃない……こんな大きな池いっぱいにいるような…………島?…………島じゃない!……左の方!……細い先っぽが見えた!……あれは、あれは、象! 象の鼻だ!……

……池いっぱいに……一頭の象が沈んでる!……上の方だけ、鼻や、頭や、耳や、背中だけ……少し動くと、どろどろの水面から見え隠れしてる!……

……でも、こんなおっきい象さんなんて……あたし達の世界でも、見たことない……

……40m? 50m?……それぐらいあった……その象さんには、何か……キラキラしたものが付いてた……。どろどろのどす黒い血がまとわりついてたから、はっきりしなかったけど……体の輪郭にそって、金か銀の鎖……体を囲うように、複雑な模様の装飾品が付いていた……


…………あああ……この、象たんは……この象たんは……地球の神様だ…………


あたし、そんなこと知らなかったけど……その時、瞬間的に、思い出してた……

……地球の神様……地上の神様なのに……

人間の欲得で腐った血みどろの地獄に囚われてしまっている……


…………助けなきゃ!助けなきゃ!助けなきゃ!…………

……でも、どうやって?……どうやって?…………

…………そばにいる二人に聞こうと思った……そう思った瞬間、……ほんの一瞬だけだけど、……私には見えた………


……この神様……象たんを助けたら……この目の前の血まみれの地獄が、変化していって、美しい緑が戻って……目に見える先の先まで、果ての果てまで……自然が戻って、花も草も木も、動物たちも戻って来るのが………見えた………見えた……けど、それは一瞬で、すぐ目が覚めてしまった……


……夢だった……。


……夢?……あれが本当に夢?……


あたいは、地球の神様に会った……。ここじゃない。地球の神様……地上の神様……。……夢の中のあたいは……それを知ってた……。

……あたいにどうしろと?……


あれが、地球の成れの果て?……でも、あれは地獄……多分、彼らの魂の世界……

……あたいにどうしろと?……


だいたい、彼らはもうとっくの昔に、絶滅してしまったんでしょ?……ここは、違う世界、違う次元、……多分、凄く離れた場所……気が遠くなるほど離れた場所のはず……

……あたいにどうしろと?……


……こんな夢の話し……誰にも出来ない……いえ、誰に話してもいいのかな……

…だって、人間界のことなんて、……ここの誰にも……どうでもいいことなんだし………

………なぜ、あたいが、こんな夢を見たの………? )」



しおりを挟む

処理中です...