4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第一章 妹弟救出

5話 覚えた魔法について

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――レベル4になってから1週間後……

「むにゃ……そのステーキは俺が食べるから……」

「待って! ――ッ!!」

 無防備にも川原で寝ていたようだ。
 俺は寝ぼけ眼を擦り、周囲を見渡した。

 少しづつ状況を思い出してきた。俺はエンハンスの修行? をしている最中にぶっ倒れて寝てしまったようだ……。

「危なすぎるだろ……よく生きてたな俺……」

 そのまま立ち上がり、川で顔を洗った。
 この場所は祭壇に近い川辺だ。俺は祭壇を見つけてからは拠点をその祭壇へと移していた。

 祭壇の中で寝るのはなんだか怖かったので、祭壇に入るの扉の前で寝泊まりをしている状況だ。

 その間の1週間、エンハンスを使用し続けたおかげで、この魔法についてはかなり理解できた……つもりだ。

 まず、この魔法にインターバルは無い。
 オンオフはすぐに出来る魔法だった。
 発動中は身体能力が大幅に上昇している。
 それは瞬間的な動きと防御力だけでは無く、木に思いっきり正拳すれば無傷でなぎ倒せるほどの力も備わっている。
 常時発動しておきたいと思ったが、この魔法は常に魔力を垂れ流し状態にしているようで……
 気がつけば、魔力は空っぽ。そのままその場で気を失ってしまったと言う訳だ。

 川で顔を洗い終えた後、木の板と棒で火を起こした。
 エンハンス状態での火おこしは高速で棒を擦れるからめちゃくちゃ楽だな……そしてその火でデッドマンティスの肉を焼き、頬張った。
 そういえば、ここでの生活を始めてから体力と筋肉が結構ついた気がするな。

「さーて、エンハンスはとりあえず一旦終了! 次はバインドを試すか」

 俺はエンハンスを解除し、手付かずだったバインドを試す事にした。

・・・
・・


「四輪、バインド!」

 掌を前に突き出し、魔法は射出されるが……中々遠くの的に当てる事が出来ない。

「標準もなにもねえから、狙いを定めるのきっついな!」

 バインドは20秒のインターバルがあった。
 敵と戦っている時に外して、20秒何もできないのは致命的だ。
 絶対に外さないようにしないと。

 20秒後、俺はまた構え魔法を発動する。

「四輪、バインド!」

 だが、それが外れるのは射出した瞬間に分かった。

「くそ! もうちょい右だっての……!」

 無意識に右手を振りながら俺は呟いた。
 すると、バインドは緩やかに軌道を変え右に曲がり、的に命中したのだ。

「あれ、今曲がったぞ……?」

・・・

 そこからの上達は早かった。
 射出後、手の動きとバインドはリンクさせる事が出来ると判明した。

 速度を変えたり止めたりは出来ないが、方向なら自在に変える事が出来る。

 例えば……

「四輪、バインド!」

 そして、バインドと右手を繋げるように意識……
 その状態で右手を思いっきり後ろへ!


――シュルルル……

 バインドは一瞬だけ止まり方向転換……ヨーヨーがこっちに戻ってくるように、俺の方へと向かってきた。
 そして俺はそれをそのまま受けるッ!

――バンッ!!

「うお!」

 円盤から鎖が無数に伸び、俺の身体の自由を奪っていく。

「ぐ……すげえ締め付けだな……」

 腕も完全に締め付けられ、一切の身動きが取れない。

「ダメだ、万が一撃たれた時に抜け出せるか? と思ったけど無理だわ……解けるまで待つか……」

・・・
・・


――1時間後……

「え……いつ解けるのこれ!!」

 一時間後の俺はまだ鎖に巻き付けられたままだった。
 まさかここまで持続力があるとは思わなかった……。

「魔物に見つかったら終わりだぞこれ……そうだ。エンハンスさえ出来れば抜け出せるかも!」

 しかし、腕は完全に固定されており、魔法発動の所作を取る事が出来ない。

「ぐぐぐ、ダメだ。動かねえ! 魔法輪を使う奴にはバインドが最強かもしれないな……」

 必死に手の甲に触れようと転がりまわるが、拘束力は一切緩まず動く事が出来ない。

――チチチ……

「え……嘘……!」

 のたうち回っていて、全然気がつかなかったが……
 目の前にデッドマンティスが現れていた。

「まてまてまて、こんな間抜けな死に方があるか……?」

――チチ

 デッドマンティスは余裕の表情……に見える。
 機敏な動きは見せず、まるで上品なディナーを頂くように緩やかな動きである。

 いや、死を目前にしてそう見えただけだったのかもな……。
 その瞬間、咄嗟の閃きで俺はそれに全神経を集中した。

「動け……俺なら"制御"出来るだろう……!!」

 その瞬間、手は動かしていないのに、射出された自身のバインドにもう一度繋がるような感覚が脳を走った。

――ガシャ!

――ヂヂヂ!

 鎖は一瞬で解かれ、そのままデッドマンティスに巻き付いた。

――ザンッ!

 俺はすぐさま剣を構え、頭部を切り落とした。

「手を使わずとも操作が出来た……」

 繋がる感覚をもう一度思い出そうとしたが、
 身体が痛いので、一旦祭壇の方へと戻ることにした。

・・・
・・


「一輪、サーチ」

 祭壇付近では何度もサーチを行っているが、どうやら祭壇の付近には魔物は近づいてこないらしい。
 神聖な力とかが働いてるのかな?
 この辺なら、妹たちを安全に匿う事が出来るかもしれないな。

「ふう……」

 辺りはもう暗い。そろそろ休もうか。
 そうして俺はまた、祭壇に入るの扉の前で一夜を過ごした。

――翌朝

「さて……」

 とりあえず、魔法輪に関しては自分なりに色々分かってきた。
 二輪以降は多分、魔物を倒して経験値? を貯めてそのレベルまで達していた場合、祭壇で新たな魔法輪が手に入る。
 祭壇の石板は俗にいうステータス画面みたいなものだろう。

 マグはそこまで言ってくれなかったな。
 まぁ結局何を言われても、自分でやって判断するしかないが……

 俺が二輪まですぐ覚えたのは、強力な魔物を狩った経験のおかげなのだろう。
 レベルという概念はあるが……それがどこまで影響しているのかは分からない。
 体力や魔力はレベルが上がっても、いきなり上昇している感じはしないしな……。
 ただ、体力と同じく、魔力も使えば使う程、ばてにくくなっているのは間違いない。

「三輪、エンハンス」

 薄く俺の全身を纏う魔力……。
 これをしている状態では他の魔法を一切放つ事が出来ない。
 バインドを撃ちたいならエンハンスを解除して、バインドの魔法を輪に入れないといけない。
 そして、バインドのインターバルは20秒……つまり20秒経たなければ次のエンハンスは発動出来ないのだ。

「マグは、バインドを撃った時も間違いなくエンハンスを纏ったままだった……」

 俺も出来るようになりたいが……考えられるのは一つ!
 レベル5になったら解放されると言う左手の輪……輪が左手甲にも浮かび上がるのなら、魔法を左手でも撃てるようになるんだろう。
 左手でエンハンスを維持し、右手でバインドを放つといった所だろうか。

「とにかく、レベル5になってみれば分かるか。それまではサーチとエンハンスのみで戦おう」

 基本的にはエンハンスを常に纏い、安全な場所でサーチを行う……30秒はその場から動かない。
 それを基本行動とし、俺は動き始めた。
 ここに来てからもうすぐ4カ月……多分今年やって来た子供達は誰一人としていないだろう。

「何人が1カ月くらい生き残って、リターンを覚えて帰れたんだろうな……」

――チチチ

 そんな事を考えていると、デッドマンティスの鳴き声が聞こえてきた。
 今は他人の生死を考えていても仕方がない。

「さて、エンハンスでの狩り……解禁だ!」

 俺は右足に力を込めて地面を思いきり蹴り垂直に飛んだ。
 そのまま飛び蹴りのような態勢になり、デッドマンティスの前足を吹き飛ばした。

「軽い……!」

 まるで小枝を折る様にポキっと折る事が出来た。
 殆ど俺の脚に負荷がかかっていない。
 これがエンハンスの力なのか。

――ヂ……

 そして、そのまま態勢を崩したデッドマンティスの頭上に飛び上がり、マグと同じように回転踵落としを頭部へ向けて放った。

――ゴシャァ……

 するとデッドマンティスの頭部は、想像以上に粉砕され、一瞬で討伐に成功した。

「初めてやってみたけど、上手く行った……!」

 エンハンスを纏っていれば、もうこいつには負ける気がしない。

「にしても恐ろしい力だな……纏っている時とそうでないときの差が大きすぎる」

 体感的に今まで木の棒で戦ってたのに、いきなり戦車で戦う事になった。という程の差がある。
 エンハンスを使えるかどうか……これだけで人としても圧倒的差が生まれている。
 デッドマンティスの頭部がこんなことになる。
 万が一、エンハンスの無い人にこの力をふるってしまったら……。

 考えただけでも恐ろしい。
 力の出し方をしっかり調整出来るようにならないとな。

 そんな事を考えながら俺はナイフを取り出した。
 いつもの解体作業である。しかし……

――ググ……

「ダメだな……もう刃がこぼれちゃってるな」

 少し前から切りにくいなと感じていたが、いよいよ切れ味が完全に無くなってきていた。

 ナイフだけではない、剣も刃こぼれし始めている。
 手入れは血や体液などを落とし洗う程度……研ぐ為の道具などない事から、いずれこうなってくることは予想できたが……。

「肉が捌けなくなるのは困ったな……エンハンスを纏った手刀で何とかならないかな……?」

 とりあえず試してみるが、もちろん何とかなるわけも無く……。

「そういえば……エンハンスも制御で操作とかできるのかな?」

 手刀は無理だが、エンハンスの魔力を動かせるのであれば、エンハンスだけ鋭利な状態に出来るかもしれない。
 思い立ったらすぐに行動だ。
 俺はバインドを操作した時の様に、発動しているエンハンスの魔力に意識を集中した。

「お……?」

 繋がった感覚が来た……さぁエンハンスはどう動かせるのか!
 その瞬間、視界が暗転した……

・・・

「――ッ!!」

 俺はまた意識を失い、この場で倒れていたようだ……。
 日が傾いている事から3~4時間程時間が経っているようだ。
 幸い襲われず生きているが、そう何度も幸運は続かないだろう……。

「……エンハンスの修行は祭壇近くでやろう……いつか意識がないまま死ぬ」

 そうして俺は祭壇に戻り、エンハンスの制御について色々試す事にした。

――三日後……

「……これで4回目か」

 俺はゆっくりと体を起こし、保存していたデッドマンティスの肉を頬張った。
 色々試すうちに俺は計4回意識を飛ばしてしまっていた。

「結局、ナイフの代わりには出来なかったな」

 だが、エンハンスもある程度制御できることが分かった。
 といっても出力制御に限るが……。

 簡単に言うと、通常の出力状態が1とすればそれを増やす事が出来る。俺は瞑想で魔力を抑える事ばかりを行っていたが……それを逆にすればいいだけだった。
 部分的に出力を増やす事も出来るし、全身を纏う魔力も増やす事が出来る。
 纏う出力が多ければ多い程もちろん身体能力も大幅に向上したが……。
 全身を2にした瞬間、俺の意識は飛んでしまった。

 それだけ魔力の消費量も飛躍的に上昇してしまっているのだろう。
 現時点では右手だけ2にする等、部分的に使う以外は危険そうだ……。

「この力を使いこなす事が出来れば、より確実に妹と弟を救う事が出来るはずだ」

 洗礼の試練……毎年同じタイミングでそれは発生する。
 来年……つまり後8か月後にもそれは始まるのだ。
 どういう状況でここへ飛ばされるのか見当もつかない。
 
 とにかく……可能な範囲で子供達を助けよう……気持ち的にはとりあえず紫髪の子限定だけどな。

・・・

 飛ばされてくる子供達を助けるために準備をしなければならない。
 と言ってもやる事は単純だ。
 まずは自身のレベル上げ、そして子供達を匿う場所を作る。
 この祭壇の近くに住む場所を作るのが一番間違いないだろう。
 勝手に住み込んで、罰(バチ)とか当たらなければいいが……。
 
「さて、今日は名前の表示がない魔物の所へ行ってみるか」

 サーチで映る、名前の無い魔物……多分見た事がない魔物なのだろう。
 ここで随分と生活するが、今までに見た魔物はたった3種……
 スライムボールとデッドマンティスの柔らかいのと硬いのだ。
 
 どんな魔物がいるか、情報として理解しておきたい。
 こっちに来る子ども達が何処に飛ばされるか分からないからな……。

 最終的に魔物の分布図のような物を作成出来ればいいのだが。

「一輪、サーチ」

 俺はサーチを発動すると同時に、その魔力にリンクした。
 通常は正円上にレーダーが伸びるのだが、伸び方も制御が出来る様だ。
 進む方向にのみレーダーを伸びるようにすると、長い丸状にレーダーが表示され、確認距離が1kmどころか10km先くらいまで見る事が出来るのだ。
 真っ直ぐ進む分には非常に便利である。

「名称が見えないのがちらほらいるな。全部見て行こう……」

 そうして俺の周辺調査が始まったのだ。
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