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1-1 識別エラー
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『識別番号を確認――エラー。対象を特定できません。再度確認を要求します』
「――お、俺は違う! 俺は異端者なんかじゃない! ――そこだ、そこにいる奴らだ!」
騒然となった駅車内に男の叫び声が響き渡った。
周囲にいた人々はすでに別の車両になだれ込み次の駅への到着を今か今かと待ち構えている。
鋭い銃声が耳をつんざく。同時に先まで叫んだ男の頭部が吹き飛び座席や床に夥しい量の血が付着した。
頭部の大半を失った男は跪いたまま座席にもたれ、ズルズルと床へと落ちていった。
すでに脱力し切った男に生気はまるで感じられない。しかし、明確に私たちを指し示した指が未だにこちらを向いている。
「……」
黒い防護服に身を包んだ人物は迷うことなく次なる狙いを定め歩み寄ってくる。
『識別番号を確認――』
手にした携帯型の「管理番号識別器」が兄へと向けられた。
恐怖心を与えないために限界まで角の落とされた先端。その外見は「非接触型検温器」を想起させ、通称「体温計」などと呼ばれている。
識別器は通常役所や医療機関で厳重に管理されているはずの物だ。それを当てるだけで個人が正確に特定され、容易に情報への接続が可能となってしまうからだ。
『エラー。対象を特定できません』
そして何より、国が推奨する「医療用ナノマシン」の有無が判明してしまう。
私たちにとってはそれが何よりも屈辱であり致命的だった。
『再度確認を要求します――』
「やめて!」
容赦なく向けられる銃口。分厚いレンズの先にある表情はまるで窺えない。
「逃げろ、サチ!」
医療用ナノマシンの投与について、国の推奨するキャンペーン期間を過ぎたあたりからテロリストが国中に現れ出した。
それを拒否し続ける私たちを排除すること。少数派を気取る我々に対する嫌がらせ。
彼らの目的はそんなことなのだろうか。それが彼らの意思、或いは国家の意思なのだろうか。
押された体が駅に辿り着いた車両から這い出る。
――耳をつんざく銃声。
兄が託した私の生。降り立った瞬間に私はその終わりを確信した。
プラットホームには虚ろな目をした乗客と黒い防護服を纏った彼らの姿がある。
「――お、俺は違う! 俺は異端者なんかじゃない! ――そこだ、そこにいる奴らだ!」
騒然となった駅車内に男の叫び声が響き渡った。
周囲にいた人々はすでに別の車両になだれ込み次の駅への到着を今か今かと待ち構えている。
鋭い銃声が耳をつんざく。同時に先まで叫んだ男の頭部が吹き飛び座席や床に夥しい量の血が付着した。
頭部の大半を失った男は跪いたまま座席にもたれ、ズルズルと床へと落ちていった。
すでに脱力し切った男に生気はまるで感じられない。しかし、明確に私たちを指し示した指が未だにこちらを向いている。
「……」
黒い防護服に身を包んだ人物は迷うことなく次なる狙いを定め歩み寄ってくる。
『識別番号を確認――』
手にした携帯型の「管理番号識別器」が兄へと向けられた。
恐怖心を与えないために限界まで角の落とされた先端。その外見は「非接触型検温器」を想起させ、通称「体温計」などと呼ばれている。
識別器は通常役所や医療機関で厳重に管理されているはずの物だ。それを当てるだけで個人が正確に特定され、容易に情報への接続が可能となってしまうからだ。
『エラー。対象を特定できません』
そして何より、国が推奨する「医療用ナノマシン」の有無が判明してしまう。
私たちにとってはそれが何よりも屈辱であり致命的だった。
『再度確認を要求します――』
「やめて!」
容赦なく向けられる銃口。分厚いレンズの先にある表情はまるで窺えない。
「逃げろ、サチ!」
医療用ナノマシンの投与について、国の推奨するキャンペーン期間を過ぎたあたりからテロリストが国中に現れ出した。
それを拒否し続ける私たちを排除すること。少数派を気取る我々に対する嫌がらせ。
彼らの目的はそんなことなのだろうか。それが彼らの意思、或いは国家の意思なのだろうか。
押された体が駅に辿り着いた車両から這い出る。
――耳をつんざく銃声。
兄が託した私の生。降り立った瞬間に私はその終わりを確信した。
プラットホームには虚ろな目をした乗客と黒い防護服を纏った彼らの姿がある。
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