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第3話 お姉さん
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「僕、律子さんのとこに行くよ」
「……あ、うん。お母さんに言っとくね」
加奈美ちゃんはミナお姉ちゃんと遊ぶという当初の目的を果たせず、かと言って僕に付いて行く道も断たれ、やむ無く家に引き返すことにしたらしい。
僕の行動に興味がないからではない。
この村の人々は皆、村外れの屋敷やその住人、つまり律子さんたちのことを敬遠する節がある。
ただ嫌っているというわけでもなく、どことなく触れないようにしているといった具合だ。
森の中に浮世離れした雰囲気のある洋館と、不自然なほどに情報もなく、噂も立たない住人にどう接して良いものかと考えあぐねているのだ。
考えても考えても出るわけのない答えを考えて、結局放置した末の疎遠。
律子お姉さんとの交流のある僕にしてみれば、それは実に勿体ないことだと思う。
あんなにも魅力的な人は滅多にいるものではない。
容姿もさることながら、その生き方や考え方、話し方や仕草に至るまで。もちろん女性としても。
お陰で独り占めできる僕はなんて幸せ者だろう。
村の中でも比較的民家の集まった区画を抜け、森に続く道へと逸れる。
しばらく行くと古びた鉄扉が開かれていて、先には曙杉の並木道が続いている。
周辺の雑木林から鉄扉を境にして唐突に現れる背の高い木々の列。
奥に見える二階建ての洋館がまるでドールハウスのようだ。
庭先を目前にして、洋館の方から向かってくる者がある。
黒い立襟の祭服に銀の十字を身につけた男。
日本人離れした高さから僕に向かって軽く頭を垂れ、庭の隅に置かれた白い車に乗ってすぐに去った。
「やあ、翔太郎くん。待ってたよ」
バルコニーからお姉さんの声が降ってくる。
ちょうど昇った陽と重なるお姉さんの姿を捉えようと、手で頭上を覆い目を細めて見る。
麦色のキャペリンハットに涼しげな白のワンピース。横に流した長い髪が森の風に揺れる。
「お嬢様! いけません!」
手すりから身を乗り出したお姉さんを、先の神父を見送りに出ていたお手伝いの里見さんが嗜める。
「早く上がっておいで」
今日の律子さんはいつになくはしゃいでいる。
尚も手を振る姿を見兼ね急いで中に戻る里見さんに向けて、軽く舌を出して笑っていた。
正面すぐの階段を昇り、突き当たりにあるお姉さんの部屋を目指す。
外の強い陽によって洋館内の影は濃く、開け放たれた廊下の窓からは時折風が吹き抜ける。
すれ違うかと思われた里見さんには会うことなく、難なくお姉さんの部屋の前に辿り着いた。
「いらっしゃい」
扉を開いた途端、一気に冷気が溢れ出し剥き出た肌を凍えさせた。
お姉さんはベッドに腰掛け片手で隣に座るよう促す。
「律子さんは神様を信じてるの?」
「いいや、全然」
甘く芳しい匂いに背後から包まれる。
僕の胸に、腿に、お姉さんの冷たい手が滑り込んだ。
「そんなものがいるとしたら、きっとどうしようもないサディストなんだろうね」
「さでぃ……」
「物凄い乱暴者ってことだよ」
笑った吐息が首元をくすぐる。
お姉さんの口からそんな言葉が出てくるなんて意外だった。
もしかすると僕が思っている以上にお姉さんは悪戯好きのお嬢様なのかもしれない。
「ああ……君は温かいな」
身体を撫でる手が僕を強く引き寄せる。
柔らかな胸から、背中をお姉さんの鼓動が伝ってくる。
やっぱりお姉さんも寒かったのだ。
「人ってなんだろうね。感情なんて無ければもっと楽になれたのに」
僕らの周りを一匹の蚊が飛んでいる。
狙いを定めたお姉さんの両手が空を切り、上に逃れたそれを僕が捉えた。
「ははっ。格好つかないな」
どちらとも分からない血がその骸と共に僕の手に伸びる。
お姉さんはそれをハンカチで丁寧に拭ってくれた。
「一生だったら人も蚊も何も変わらない。意味もないはずなのにね」
「でも、僕は律子さんが大好きだよ。一緒にいたい」
肩に埋めた顔を上げ、はっと息を呑むのが分かった。
「……そうだね。うん。意味なんて勝手に見つければいい。無くたっていいじゃないか!」
不意に横になるお姉さんに従って、僕は抱かれたまま寄り添う。
額を合わせてじっと催促するお姉さんの唇を何度も啄む。
それからぴったりと口を合わせ、お互いに舌を擦り続けた。
粘膜同士が這い回る毎に頭が痺れ、身体は硬直し、より強くより長く快楽を貪ろうと唇や舌に力が籠る。
衣服越しに怒張した先端をお姉さんの下腹部に擦り付ける。
長い口付けに蕩ける意識の中、射精感の込み上げた一物が柔らかな場所、お姉さんの大切な器官を圧迫する度に興奮で頭が沸騰しそうになる。
胎内とその温もりのことを思うだけで果ててしまいそうだった。
「しよっか」
朦朧とした視界に、いつの間にか唇を離したお姉さんが頬を紅潮させ僕を待っている。
その腰に腕を伸ばしかけた途端、部屋中にけたたましいノック音が響き渡った。
『――お嬢様。お茶をお持ちいたしました』
「……はあ。本当に間が悪いね。分かってやってるんだ」
不服そうに口を尖らせたお姉さんは、のぼせ切った僕を優しく抱き起こした。
長い髪とシワになったワンピースを軽く整え終えたと見て、里見さんがワゴンを押して部屋に入ってきた。
「今日はなに?」
「水羊羹でございます」
お姉さんの柔らかな頬が僕の肩に乗る。
慣れた手つきで急須に湯を注ぐ里見さんの姿、お茶菓子がテーブルに並ぶのを二人して呆然と眺める。
「夕方からは先生が問診にいらっしゃいます。あまりご無理はなさらないでください」
「……それが何になる」
「何か?」
注ぎ終えた急須をやや乱暴な動作でワゴンに載せた里見さんは、笑顔を貼り付けたままじっとお姉さんを見据える。
「あー……餡子は体にいいからね。さあ、早いうちに頂こうじゃないか」
僕の背をそっと押し、自らもテーブルに着いたお姉さんは行儀良く手を膝に置いた。
満足そうに頷いた里見さんはベッドに置かれた空調のリモコンをいくつか操作し、何事もなかったかのようにそっと部屋を後にした。
「……はあ。息が詰まる」
「律子さんが大切なんだよ」
どうだか、と言いつつ皿を片手に黒文字で羊羹をつついた。
「どうせだったら生クリームをお腹いっぱいに食べたかった」
「水羊羹も美味しいよ」
「君は私の味方だろう?」
次第に適温になっていく部屋で、僕とお姉さんは冷たい羊羹と温かいお茶を啜りながら談笑を楽しんだ。
「お祭りには行けるの?」
初めて律子さんと出会ってから三年。
三度目になる誘いを欠かすことなく入れる。
「約束はできない。けど、行きたいのは本当だよ」
「じゃあ、迎えに来るから」
「君も懲りない男だなあ。私なんかを誘ってどうするんだか」
内二回はお祭り当日の体調不良と、親族との付き合いが理由で本人と里見さんから断られてきた。
それでも律子さんを誘うのは、僕がお姉さんといたいから。それだけの単純な理由だ。
「絶対に来るから。準備して待ってて」
「……敵わないな。分かったよ」
お姉さんは椅子に座った僕を抱き寄せ、綺麗な形の膨らみを僕の顔に強く押し付けた。
「ありがとう。忘れないでいてくれて」
温かな響きが蟀谷を伝ってくる。
この慎ましい振動が、お姉さんの綺麗な身体を支えている。
僕が愛して止まないお姉さんの、美しくささやかな生命の鼓動だ。
「失礼いたします」
再度響き渡るノックにより、僕らの身は自然とあるべき距離をとる。
「そうだ。今日はこのまま泊まってくといい」
「いけません! お坊ちゃんにも都合というものがあるのです」
「あるのかい?」
「うん。美咲さんの家に泊まる約束をしてるんだ」
言葉とは裏腹に先の期待に膨らんだ股間を抑える。
実の所、明確な約束など存在しないが、お姉さんとの良好な関係を続けるためにはここで譲歩しておく必要があった。
「いつでも遊びにおいで」
寂しそうにそっと手を振るお姉さんの姿に後ろ髪が引かれる。
急かされるように扉を開き、部屋を跨いだ。
閉まる直前にふと見えたお姉さんが、一瞬だけどこか別の人のように映った。
「……あ、うん。お母さんに言っとくね」
加奈美ちゃんはミナお姉ちゃんと遊ぶという当初の目的を果たせず、かと言って僕に付いて行く道も断たれ、やむ無く家に引き返すことにしたらしい。
僕の行動に興味がないからではない。
この村の人々は皆、村外れの屋敷やその住人、つまり律子さんたちのことを敬遠する節がある。
ただ嫌っているというわけでもなく、どことなく触れないようにしているといった具合だ。
森の中に浮世離れした雰囲気のある洋館と、不自然なほどに情報もなく、噂も立たない住人にどう接して良いものかと考えあぐねているのだ。
考えても考えても出るわけのない答えを考えて、結局放置した末の疎遠。
律子お姉さんとの交流のある僕にしてみれば、それは実に勿体ないことだと思う。
あんなにも魅力的な人は滅多にいるものではない。
容姿もさることながら、その生き方や考え方、話し方や仕草に至るまで。もちろん女性としても。
お陰で独り占めできる僕はなんて幸せ者だろう。
村の中でも比較的民家の集まった区画を抜け、森に続く道へと逸れる。
しばらく行くと古びた鉄扉が開かれていて、先には曙杉の並木道が続いている。
周辺の雑木林から鉄扉を境にして唐突に現れる背の高い木々の列。
奥に見える二階建ての洋館がまるでドールハウスのようだ。
庭先を目前にして、洋館の方から向かってくる者がある。
黒い立襟の祭服に銀の十字を身につけた男。
日本人離れした高さから僕に向かって軽く頭を垂れ、庭の隅に置かれた白い車に乗ってすぐに去った。
「やあ、翔太郎くん。待ってたよ」
バルコニーからお姉さんの声が降ってくる。
ちょうど昇った陽と重なるお姉さんの姿を捉えようと、手で頭上を覆い目を細めて見る。
麦色のキャペリンハットに涼しげな白のワンピース。横に流した長い髪が森の風に揺れる。
「お嬢様! いけません!」
手すりから身を乗り出したお姉さんを、先の神父を見送りに出ていたお手伝いの里見さんが嗜める。
「早く上がっておいで」
今日の律子さんはいつになくはしゃいでいる。
尚も手を振る姿を見兼ね急いで中に戻る里見さんに向けて、軽く舌を出して笑っていた。
正面すぐの階段を昇り、突き当たりにあるお姉さんの部屋を目指す。
外の強い陽によって洋館内の影は濃く、開け放たれた廊下の窓からは時折風が吹き抜ける。
すれ違うかと思われた里見さんには会うことなく、難なくお姉さんの部屋の前に辿り着いた。
「いらっしゃい」
扉を開いた途端、一気に冷気が溢れ出し剥き出た肌を凍えさせた。
お姉さんはベッドに腰掛け片手で隣に座るよう促す。
「律子さんは神様を信じてるの?」
「いいや、全然」
甘く芳しい匂いに背後から包まれる。
僕の胸に、腿に、お姉さんの冷たい手が滑り込んだ。
「そんなものがいるとしたら、きっとどうしようもないサディストなんだろうね」
「さでぃ……」
「物凄い乱暴者ってことだよ」
笑った吐息が首元をくすぐる。
お姉さんの口からそんな言葉が出てくるなんて意外だった。
もしかすると僕が思っている以上にお姉さんは悪戯好きのお嬢様なのかもしれない。
「ああ……君は温かいな」
身体を撫でる手が僕を強く引き寄せる。
柔らかな胸から、背中をお姉さんの鼓動が伝ってくる。
やっぱりお姉さんも寒かったのだ。
「人ってなんだろうね。感情なんて無ければもっと楽になれたのに」
僕らの周りを一匹の蚊が飛んでいる。
狙いを定めたお姉さんの両手が空を切り、上に逃れたそれを僕が捉えた。
「ははっ。格好つかないな」
どちらとも分からない血がその骸と共に僕の手に伸びる。
お姉さんはそれをハンカチで丁寧に拭ってくれた。
「一生だったら人も蚊も何も変わらない。意味もないはずなのにね」
「でも、僕は律子さんが大好きだよ。一緒にいたい」
肩に埋めた顔を上げ、はっと息を呑むのが分かった。
「……そうだね。うん。意味なんて勝手に見つければいい。無くたっていいじゃないか!」
不意に横になるお姉さんに従って、僕は抱かれたまま寄り添う。
額を合わせてじっと催促するお姉さんの唇を何度も啄む。
それからぴったりと口を合わせ、お互いに舌を擦り続けた。
粘膜同士が這い回る毎に頭が痺れ、身体は硬直し、より強くより長く快楽を貪ろうと唇や舌に力が籠る。
衣服越しに怒張した先端をお姉さんの下腹部に擦り付ける。
長い口付けに蕩ける意識の中、射精感の込み上げた一物が柔らかな場所、お姉さんの大切な器官を圧迫する度に興奮で頭が沸騰しそうになる。
胎内とその温もりのことを思うだけで果ててしまいそうだった。
「しよっか」
朦朧とした視界に、いつの間にか唇を離したお姉さんが頬を紅潮させ僕を待っている。
その腰に腕を伸ばしかけた途端、部屋中にけたたましいノック音が響き渡った。
『――お嬢様。お茶をお持ちいたしました』
「……はあ。本当に間が悪いね。分かってやってるんだ」
不服そうに口を尖らせたお姉さんは、のぼせ切った僕を優しく抱き起こした。
長い髪とシワになったワンピースを軽く整え終えたと見て、里見さんがワゴンを押して部屋に入ってきた。
「今日はなに?」
「水羊羹でございます」
お姉さんの柔らかな頬が僕の肩に乗る。
慣れた手つきで急須に湯を注ぐ里見さんの姿、お茶菓子がテーブルに並ぶのを二人して呆然と眺める。
「夕方からは先生が問診にいらっしゃいます。あまりご無理はなさらないでください」
「……それが何になる」
「何か?」
注ぎ終えた急須をやや乱暴な動作でワゴンに載せた里見さんは、笑顔を貼り付けたままじっとお姉さんを見据える。
「あー……餡子は体にいいからね。さあ、早いうちに頂こうじゃないか」
僕の背をそっと押し、自らもテーブルに着いたお姉さんは行儀良く手を膝に置いた。
満足そうに頷いた里見さんはベッドに置かれた空調のリモコンをいくつか操作し、何事もなかったかのようにそっと部屋を後にした。
「……はあ。息が詰まる」
「律子さんが大切なんだよ」
どうだか、と言いつつ皿を片手に黒文字で羊羹をつついた。
「どうせだったら生クリームをお腹いっぱいに食べたかった」
「水羊羹も美味しいよ」
「君は私の味方だろう?」
次第に適温になっていく部屋で、僕とお姉さんは冷たい羊羹と温かいお茶を啜りながら談笑を楽しんだ。
「お祭りには行けるの?」
初めて律子さんと出会ってから三年。
三度目になる誘いを欠かすことなく入れる。
「約束はできない。けど、行きたいのは本当だよ」
「じゃあ、迎えに来るから」
「君も懲りない男だなあ。私なんかを誘ってどうするんだか」
内二回はお祭り当日の体調不良と、親族との付き合いが理由で本人と里見さんから断られてきた。
それでも律子さんを誘うのは、僕がお姉さんといたいから。それだけの単純な理由だ。
「絶対に来るから。準備して待ってて」
「……敵わないな。分かったよ」
お姉さんは椅子に座った僕を抱き寄せ、綺麗な形の膨らみを僕の顔に強く押し付けた。
「ありがとう。忘れないでいてくれて」
温かな響きが蟀谷を伝ってくる。
この慎ましい振動が、お姉さんの綺麗な身体を支えている。
僕が愛して止まないお姉さんの、美しくささやかな生命の鼓動だ。
「失礼いたします」
再度響き渡るノックにより、僕らの身は自然とあるべき距離をとる。
「そうだ。今日はこのまま泊まってくといい」
「いけません! お坊ちゃんにも都合というものがあるのです」
「あるのかい?」
「うん。美咲さんの家に泊まる約束をしてるんだ」
言葉とは裏腹に先の期待に膨らんだ股間を抑える。
実の所、明確な約束など存在しないが、お姉さんとの良好な関係を続けるためにはここで譲歩しておく必要があった。
「いつでも遊びにおいで」
寂しそうにそっと手を振るお姉さんの姿に後ろ髪が引かれる。
急かされるように扉を開き、部屋を跨いだ。
閉まる直前にふと見えたお姉さんが、一瞬だけどこか別の人のように映った。
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