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第4章 この手の届くところ
閑話 聖サントリアナ王国 王城にて
しおりを挟む聖サントリアナ王国。
あまり大きくはないが歴史は古く、美しい神殿などの歴史遺物などが豊富に残る国である。
主な産業は農業と観光。最近は観光に傾きがちである。
大陸のやや内側にあり、直接は海に面してはいない。領土の南の端にある、海とつながる巨大な塩水湖が唯一の海からの出入り口となる。
他には、大陸で1番大きな国家である帝国、その帝国と深い森や切り立つ山脈を隔てて隣り合う魔導国、他にもいくつかの小国と並ぶため、国境は複雑に入り組んでいる。それでも、その歴史と文化を武器に、今まで独立を保っている誇り高い国…というのが対外向けの顔である。
「陛下」
執務机の上の膨大な書類を前に、眉間に皺を寄せていた聖サントリアナ国王エンリケは、その声に顔を上げると声の主の顔を見て思わず破顔する。
「ファムタール。どうしたんだい?」
隣国である帝国の第13皇女だったファムタールが嫁いでからすでに12年。もともとこちらの学園に留学経験があり、その時に現王に見染められたのは、両国でも有名な恋愛譚として演劇に歌に小説に姿を変え…今でも2人は仲の良い夫婦である。
「そろそろご休憩をとられませんと」
「あ、ああ…もうそんな時間か」
「何度話しかけても『もう少し』と仰ると聞きましてよ。あまり周りを困らせてはいけませんわ」
国王は傍の側近を見やった。第一側近は胸に手を当てて一礼する。
「わかったよ。気をつけよう」
王妃は艶然と微笑み、国王はそんな王妃をエスコートして、庭にしつらえられたティーテーブルまで歩みを進めた。
腕に添えられる指には、2センチ程の水晶のような石が嵌った指輪が光っている。まるで水晶石を鳥籠で包むような細かな細工が施されている。水晶など基本的にはあまり価値のないものだが、似たような意匠の指輪は国王の指にもはめられており、最近では貴族たちが石を変えたり自分で意匠を考えたりして、似たような宝飾品を作って身につけていると言う。
「ふふ…今、国中でこのようなデザインの指輪が流行っているそうですわ」
「そのようだね。でも、私達のコレはどれだけ真似ようとも、同じものは無いだろうね」
「ええ。本当に良いものをいただきましたわ。どれほど助かっていることか…」
暗殺を防ぐための防具や解毒薬、もしもの時の武器、魔術具…この指輪に込められた空間収納で、そういったものを常に身につけることができる。そして…
「エンリケ…」
王妃ファムタールは、夫の肩に頭をもたせかけるようにして、低く囁いた。空間収納から、手に小さな手紙が現れる。
「帝国で捕まった魔導国の間者から手に入れた情報らしいわ」
「うん…」
国王エンリケは、妻の髪を撫でるようにして、ついと手紙を自分の収納へ仕舞った。
「困ったね…魔導国は、ちょっと荒れ模様だ。実はね……」
妻の髪に口付けるようにして、エンリケは笑顔で囁く。傍目には王妃に愛を囁いているようにしか見えない。
「やっと分かったんだ。ヤクドル侯爵を隠れ蓑にしてた輩が…」
「まあ…」
王妃は、額へ落ちて来た王の軽い口づけを恥じらうように笑う。
「もう少しだけ、我慢してね。城の中の不要物もまとめて片付けるからね」
数歩後ろをついてくる側仕えにも聴こえない発声でささやく内容はやや不穏だが、傍目には仲睦まじい国王夫妻の、いつも通りの午後のティータイムだ。
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