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第1部

6:兄、ローベルの心中/最善の回避策は?

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俺は、ローベル・ディベメント。

この家の長男で、父上に一番認められている。だからこの商会の跡取りの第1候補だった。




だが、今妹が洗礼式から持って帰ってきた結果表はなんだ。

俺の洗礼式の時の何十倍も上。

母上が騒ぐのは仕方なかったが、父上まで興味を示しだした。父上が自ら鍛えようとするなんて、この商会の跡取りにしようと考えているに違いない。

父上は実力第一主義なのだ。

それが商会の仕事と関係のない力でも、他より抜け出ている力をもつものに興味を示す。

自分の立ち位置が一気に怪しいものになった。




あの妹が3歳にして家の書庫の本を読んでいた、というのは母上がことあるごとに自慢していたが、母上の大げさに変換された話だろうと気にも留めなかった。

しかし、それが本当なのだとしたら、間違いなく跡取りの座は妹のものになるだろう。




どうする、どうすればいい?




ここまで6年間、父上の厳しい鍛練と座学をこなし、あと一歩で継ぐことのできる、父上の合格ラインだ。




ここまでやってきて、捨てられるのか?




激しい憎悪が胸の中をかき乱す。




妹と、皆の笑う声が聞こえた。

聞きたくない、耳障りだ。




表面上は、父上に叩き込まれた商人の笑顔ポーカーフェイスで妹をほめたたえる。

しかし、その心は、ふたをあければぞっとするような殺気が渦巻いていた。







そして思いついてしまった。この憎たらしい妹をこの家から消す方法を・・・
















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次から次に運ばれる料理の数に軽くめまいがする。

最悪の場合、国王様との会見が待ち受ける私の未来。私の望むのは”普通”な生活だよ!?




かーさまの褒め言葉に合図地を打ってにこにこしながら、とにかく国王様はだめだ、と回避ルートを探していた。




洗礼式の次の日、妙案の思いつかなかった私はとりあえずかーさまに直接抗議しに行ってみることにした。




「かーさま、国王様にご報告するというのは本当ですか?」




「もちろんよ!」




「それ、やめにできませんか?」




「……え?どうしてかしら?」




「私は国王様の前に出れるような常識をわきまえておりませんし、魔法の方も結果こそよかったものの、実力は伴わないのです。」




「そこまで考えるなんて、さすがエレナちゃんね!でも、その必要はないのよ?国王様もそのあたりは気にしないということだったはずよ。」




「こ、国王様ともうお話しされたのですか?」




「いいえ?この情報は、7年前に出されたお触書に書いてあったものよ。」




「そうなのですね。しかしかーさま、私は完ぺきな状態で国王様に会いたいのです。」




「んー、そうね。エレナちゃんの心がけは立派だわ。2年間お勉強して力をつけてから行く、でどうかしら?」




2年間の延命に成功しました。




やはり、行かないという選択肢はないらしい……。

2年のうちに良い方法を考えなくては……。




この家にいる限りどうやっても逃げられないような?




いっそのこと家出しちゃう?




んー、でもこの家は好きだからなぁ。最終手段、かな。










この時、兄の計画と回避最善策は苦しくも同じだったのであった。

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