目指せへいおんライフ!……波乱万丈なんて望んでない!!

おいしいクルミ

文字の大きさ
23 / 64
第1部

19:追跡します!①

しおりを挟む
うーん、と考えていると、




⦅どうしたのだ。⦆




とハクに言われたので、今日あったことを、私のフノカンジョウ云々を隠しながら話した。




⦅それならば、魔力痕跡を追えばよいのではないか?⦆




「魔力痕跡を追う?」




⦅その女は、周りの時間の流れを切り取ったり、一瞬で消えたりしたのだろう?それならば魔力を使っているはずだ。⦆




「うん。」




⦅魔力を使うと、よほど高位の生物でない限りそのものが使った魔力の香りだったり、色だったりが残るようになっている。人間では感じるのが難しいが、我ならば見ることができるぞ。⦆




「魔力の色や香り?」




⦅魔力は、一人ひとり少しずつ違う。特に、人間はその違いがとても大きい。⦆




「そうなんだ。その痕跡はいつまで残っているの?すぐ行った方がいいのかな?」




⦅うむ。時間がたつと薄れていくからな。その女と会ったのが2時間前くらいであろう?今すぐいかぬと消えるかもしれぬな。⦆




「じゃあ、案内するから、一緒に来てもらってもいい?」




⦅我に任せておけ。⦆




「ありがとう。」




こうして、夜の8時ごろ、宿を出た。

しばらく歩いて、女の人と出会った場所にたどり着く。




⦅むぅ!⦆




「どうしたの!?」




ハクが突然大声を上げた――――――念話だから私にしか聞こえないのだけど、その分頭に響く。




⦅時間がたっているというのにずいぶん濃い魔力が残っている。それもまがまがしい、人間の魔力が変質化しておるのか……?⦆




私にはよくわからなかったが、あの女の人の魔力は、人間が扱うものとしてはおかしいくらいに邪悪なものとなっているらしい。

危険な感じだが、魔力が多くとどまっていたのなら、こちらとしては追いやすいため、好都合である。




ただ、ここで疑問に思った。




「ねぇ、ハク。魔法を使ったところでしか痕跡が残らないのであれば、普通に移動したりされたら追うことができないんじゃないの?」




⦅我は、一度触れた魔力を記憶し、探知にかけることができる。心配せずともよい。⦆




「へぇ、すごいんだね。」




⦅そ、そうでもないぞ、これくらい。⦆




ハクが照れた。




⦅む、この町を出てしばらくした森の真ん中あたりから感じる。⦆




森か。

今の時間だと少しきついかもしれない。




「明日の朝まで魔力痕跡、あるかな?」




⦅この濃さであれば、朝一でも残っているだろう。明日の朝に行くとするか?⦆




「うん。いいかな?」




⦅我は主殿の考えに従うぞ。⦆




「じゃあ、明日早起きしていく、でもいいかな?」




⦅うむ。では戻るとするか。⦆







宿に戻ってベッドに入る。

目を閉じたら、あっという間に眠りについていた。







**********

翌日




まだ日の出前、私とハクは森を目指して宿を出た。




門番さんは、立っているのにうとうとしていた。

これでは不法侵入し放題である。この町の警備体制、危ない気がしてきた。




完全に日が出て、午前9時ごろ、私たちはハクの言っていた森の真ん中あたり、に到着していた。

ハクとであった時は、ハクが背中に乗せてくれて森の歩いて1時間半の道が10分になったりしたが、今日は何があるかわからないため、乗せていくと言ってくれたハクに断ってあるいてきた。

ハクの体力がたくさんあれば、何かあった時、逃げてきたりすることができるからだ。




ハクが探知をかけ、周辺を探る。

ハクの探知は、今は2つ隣の町くらいまでしかきかないらしい。それでも十分すごいと思うのだけど、ハクの同族には、2つの国を探知にかけることができる強者もいるらしい。

すごすぎる。

この世界のオオカミ、ハイスペックすぎる。




⦅すぐ近くの木の根元から感じる。⦆




「木の根元?」




⦅うむ。―――――――――――――ここだな。⦆




「普通の木だね?」




⦅いや、この木はカモフラージュだな。⦆




「え?この木は幻だったりするの?」




⦅そうではない。この木の根元に仕掛けがある。⦆




「仕掛け……。もしかして、アジトにつながっているとか?」




⦅そうかもしれぬな。仕掛けを起動することで別の場所にとぶ魔道具は存在するからな。⦆




冗談で言ったのだが、本当にどこかにつながっているらしい。

どうやって起動するのだろう。

というか、起動するのに魔力が必要ならば、私の魔力痕跡がついてしまうのではないか?




「ねぇ、起動したら、私やハクの魔力痕跡がついてしまわない?」




⦅痕跡を感じることができるのは、高位生物のみといったであろう?普通は見ることなどできぬのだから、気にする必要はないと思うぞ?⦆




確かにそう聞いたが、相手の仲間にもこういうことができる生き物がいるかもしれないではないか。

そして、ハクって、高位生物なの??

ハイスペックなことといい、この世界のオオカミは、地球のオオカミとはずいぶん位置づけが違いそうだ。




「じゃあ、思い切って起動してみる。あ、その前に、光化学迷彩!」




⦅なんだ、それは。⦆




「うん?あ、これは、魔力壁って防御魔法あるでしょ?それの応用版で、魔力で魔力壁の時みたいに体を覆って、光の反射角度とかをまげて、姿を外から見えなくさせているの。こうやって物が見えるのは、モノに当たった光が目に届いているからだから、それがなければ見えないでしょう?」




⦅なかなかおもしろいな。創作魔法か。⦆




「?? ただの応用だよ?」




⦅いや、元とは全く別物のような効果になっているが……。 まあ、なんでもよい。準備はいいか?⦆




「うん。ばっちりだよ。」




⦅では起動させる。我に触れておけ。絶対に離れるのではないぞ。⦆




「わかった」




この先にあの女はいるのだろうか。

ハクに触れ、すぐに攻撃できるように身構えておく。




一瞬世界がぐにゃりと歪んだかと思うと、無機質なコンクリートのような素材で覆われた壁が目の前に広がった。










しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...