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第1部
19:追跡します!①
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うーん、と考えていると、
⦅どうしたのだ。⦆
とハクに言われたので、今日あったことを、私のフノカンジョウ云々を隠しながら話した。
⦅それならば、魔力痕跡を追えばよいのではないか?⦆
「魔力痕跡を追う?」
⦅その女は、周りの時間の流れを切り取ったり、一瞬で消えたりしたのだろう?それならば魔力を使っているはずだ。⦆
「うん。」
⦅魔力を使うと、よほど高位の生物でない限りそのものが使った魔力の香りだったり、色だったりが残るようになっている。人間では感じるのが難しいが、我ならば見ることができるぞ。⦆
「魔力の色や香り?」
⦅魔力は、一人ひとり少しずつ違う。特に、人間はその違いがとても大きい。⦆
「そうなんだ。その痕跡はいつまで残っているの?すぐ行った方がいいのかな?」
⦅うむ。時間がたつと薄れていくからな。その女と会ったのが2時間前くらいであろう?今すぐいかぬと消えるかもしれぬな。⦆
「じゃあ、案内するから、一緒に来てもらってもいい?」
⦅我に任せておけ。⦆
「ありがとう。」
こうして、夜の8時ごろ、宿を出た。
しばらく歩いて、女の人と出会った場所にたどり着く。
⦅むぅ!⦆
「どうしたの!?」
ハクが突然大声を上げた――――――念話だから私にしか聞こえないのだけど、その分頭に響く。
⦅時間がたっているというのにずいぶん濃い魔力が残っている。それもまがまがしい、人間の魔力が変質化しておるのか……?⦆
私にはよくわからなかったが、あの女の人の魔力は、人間が扱うものとしてはおかしいくらいに邪悪なものとなっているらしい。
危険な感じだが、魔力が多くとどまっていたのなら、こちらとしては追いやすいため、好都合である。
ただ、ここで疑問に思った。
「ねぇ、ハク。魔法を使ったところでしか痕跡が残らないのであれば、普通に移動したりされたら追うことができないんじゃないの?」
⦅我は、一度触れた魔力を記憶し、探知にかけることができる。心配せずともよい。⦆
「へぇ、すごいんだね。」
⦅そ、そうでもないぞ、これくらい。⦆
ハクが照れた。
⦅む、この町を出てしばらくした森の真ん中あたりから感じる。⦆
森か。
今の時間だと少しきついかもしれない。
「明日の朝まで魔力痕跡、あるかな?」
⦅この濃さであれば、朝一でも残っているだろう。明日の朝に行くとするか?⦆
「うん。いいかな?」
⦅我は主殿の考えに従うぞ。⦆
「じゃあ、明日早起きしていく、でもいいかな?」
⦅うむ。では戻るとするか。⦆
宿に戻ってベッドに入る。
目を閉じたら、あっという間に眠りについていた。
**********
翌日
まだ日の出前、私とハクは森を目指して宿を出た。
門番さんは、立っているのにうとうとしていた。
これでは不法侵入し放題である。この町の警備体制、危ない気がしてきた。
完全に日が出て、午前9時ごろ、私たちはハクの言っていた森の真ん中あたり、に到着していた。
ハクとであった時は、ハクが背中に乗せてくれて森の歩いて1時間半の道が10分になったりしたが、今日は何があるかわからないため、乗せていくと言ってくれたハクに断ってあるいてきた。
ハクの体力がたくさんあれば、何かあった時、逃げてきたりすることができるからだ。
ハクが探知をかけ、周辺を探る。
ハクの探知は、今は2つ隣の町くらいまでしかきかないらしい。それでも十分すごいと思うのだけど、ハクの同族には、2つの国を探知にかけることができる強者もいるらしい。
すごすぎる。
この世界のオオカミ、ハイスペックすぎる。
⦅すぐ近くの木の根元から感じる。⦆
「木の根元?」
⦅うむ。―――――――――――――ここだな。⦆
「普通の木だね?」
⦅いや、この木はカモフラージュだな。⦆
「え?この木は幻だったりするの?」
⦅そうではない。この木の根元に仕掛けがある。⦆
「仕掛け……。もしかして、アジトにつながっているとか?」
⦅そうかもしれぬな。仕掛けを起動することで別の場所にとぶ魔道具は存在するからな。⦆
冗談で言ったのだが、本当にどこかにつながっているらしい。
どうやって起動するのだろう。
というか、起動するのに魔力が必要ならば、私の魔力痕跡がついてしまうのではないか?
「ねぇ、起動したら、私やハクの魔力痕跡がついてしまわない?」
⦅痕跡を感じることができるのは、高位生物のみといったであろう?普通は見ることなどできぬのだから、気にする必要はないと思うぞ?⦆
確かにそう聞いたが、相手の仲間にもこういうことができる生き物がいるかもしれないではないか。
そして、ハクって、高位生物なの??
ハイスペックなことといい、この世界のオオカミは、地球のオオカミとはずいぶん位置づけが違いそうだ。
「じゃあ、思い切って起動してみる。あ、その前に、光化学迷彩!」
⦅なんだ、それは。⦆
「うん?あ、これは、魔力壁って防御魔法あるでしょ?それの応用版で、魔力で魔力壁の時みたいに体を覆って、光の反射角度とかをまげて、姿を外から見えなくさせているの。こうやって物が見えるのは、モノに当たった光が目に届いているからだから、それがなければ見えないでしょう?」
⦅なかなかおもしろいな。創作魔法か。⦆
「?? ただの応用だよ?」
⦅いや、元とは全く別物のような効果になっているが……。 まあ、なんでもよい。準備はいいか?⦆
「うん。ばっちりだよ。」
⦅では起動させる。我に触れておけ。絶対に離れるのではないぞ。⦆
「わかった」
この先にあの女はいるのだろうか。
ハクに触れ、すぐに攻撃できるように身構えておく。
一瞬世界がぐにゃりと歪んだかと思うと、無機質なコンクリートのような素材で覆われた壁が目の前に広がった。
⦅どうしたのだ。⦆
とハクに言われたので、今日あったことを、私のフノカンジョウ云々を隠しながら話した。
⦅それならば、魔力痕跡を追えばよいのではないか?⦆
「魔力痕跡を追う?」
⦅その女は、周りの時間の流れを切り取ったり、一瞬で消えたりしたのだろう?それならば魔力を使っているはずだ。⦆
「うん。」
⦅魔力を使うと、よほど高位の生物でない限りそのものが使った魔力の香りだったり、色だったりが残るようになっている。人間では感じるのが難しいが、我ならば見ることができるぞ。⦆
「魔力の色や香り?」
⦅魔力は、一人ひとり少しずつ違う。特に、人間はその違いがとても大きい。⦆
「そうなんだ。その痕跡はいつまで残っているの?すぐ行った方がいいのかな?」
⦅うむ。時間がたつと薄れていくからな。その女と会ったのが2時間前くらいであろう?今すぐいかぬと消えるかもしれぬな。⦆
「じゃあ、案内するから、一緒に来てもらってもいい?」
⦅我に任せておけ。⦆
「ありがとう。」
こうして、夜の8時ごろ、宿を出た。
しばらく歩いて、女の人と出会った場所にたどり着く。
⦅むぅ!⦆
「どうしたの!?」
ハクが突然大声を上げた――――――念話だから私にしか聞こえないのだけど、その分頭に響く。
⦅時間がたっているというのにずいぶん濃い魔力が残っている。それもまがまがしい、人間の魔力が変質化しておるのか……?⦆
私にはよくわからなかったが、あの女の人の魔力は、人間が扱うものとしてはおかしいくらいに邪悪なものとなっているらしい。
危険な感じだが、魔力が多くとどまっていたのなら、こちらとしては追いやすいため、好都合である。
ただ、ここで疑問に思った。
「ねぇ、ハク。魔法を使ったところでしか痕跡が残らないのであれば、普通に移動したりされたら追うことができないんじゃないの?」
⦅我は、一度触れた魔力を記憶し、探知にかけることができる。心配せずともよい。⦆
「へぇ、すごいんだね。」
⦅そ、そうでもないぞ、これくらい。⦆
ハクが照れた。
⦅む、この町を出てしばらくした森の真ん中あたりから感じる。⦆
森か。
今の時間だと少しきついかもしれない。
「明日の朝まで魔力痕跡、あるかな?」
⦅この濃さであれば、朝一でも残っているだろう。明日の朝に行くとするか?⦆
「うん。いいかな?」
⦅我は主殿の考えに従うぞ。⦆
「じゃあ、明日早起きしていく、でもいいかな?」
⦅うむ。では戻るとするか。⦆
宿に戻ってベッドに入る。
目を閉じたら、あっという間に眠りについていた。
**********
翌日
まだ日の出前、私とハクは森を目指して宿を出た。
門番さんは、立っているのにうとうとしていた。
これでは不法侵入し放題である。この町の警備体制、危ない気がしてきた。
完全に日が出て、午前9時ごろ、私たちはハクの言っていた森の真ん中あたり、に到着していた。
ハクとであった時は、ハクが背中に乗せてくれて森の歩いて1時間半の道が10分になったりしたが、今日は何があるかわからないため、乗せていくと言ってくれたハクに断ってあるいてきた。
ハクの体力がたくさんあれば、何かあった時、逃げてきたりすることができるからだ。
ハクが探知をかけ、周辺を探る。
ハクの探知は、今は2つ隣の町くらいまでしかきかないらしい。それでも十分すごいと思うのだけど、ハクの同族には、2つの国を探知にかけることができる強者もいるらしい。
すごすぎる。
この世界のオオカミ、ハイスペックすぎる。
⦅すぐ近くの木の根元から感じる。⦆
「木の根元?」
⦅うむ。―――――――――――――ここだな。⦆
「普通の木だね?」
⦅いや、この木はカモフラージュだな。⦆
「え?この木は幻だったりするの?」
⦅そうではない。この木の根元に仕掛けがある。⦆
「仕掛け……。もしかして、アジトにつながっているとか?」
⦅そうかもしれぬな。仕掛けを起動することで別の場所にとぶ魔道具は存在するからな。⦆
冗談で言ったのだが、本当にどこかにつながっているらしい。
どうやって起動するのだろう。
というか、起動するのに魔力が必要ならば、私の魔力痕跡がついてしまうのではないか?
「ねぇ、起動したら、私やハクの魔力痕跡がついてしまわない?」
⦅痕跡を感じることができるのは、高位生物のみといったであろう?普通は見ることなどできぬのだから、気にする必要はないと思うぞ?⦆
確かにそう聞いたが、相手の仲間にもこういうことができる生き物がいるかもしれないではないか。
そして、ハクって、高位生物なの??
ハイスペックなことといい、この世界のオオカミは、地球のオオカミとはずいぶん位置づけが違いそうだ。
「じゃあ、思い切って起動してみる。あ、その前に、光化学迷彩!」
⦅なんだ、それは。⦆
「うん?あ、これは、魔力壁って防御魔法あるでしょ?それの応用版で、魔力で魔力壁の時みたいに体を覆って、光の反射角度とかをまげて、姿を外から見えなくさせているの。こうやって物が見えるのは、モノに当たった光が目に届いているからだから、それがなければ見えないでしょう?」
⦅なかなかおもしろいな。創作魔法か。⦆
「?? ただの応用だよ?」
⦅いや、元とは全く別物のような効果になっているが……。 まあ、なんでもよい。準備はいいか?⦆
「うん。ばっちりだよ。」
⦅では起動させる。我に触れておけ。絶対に離れるのではないぞ。⦆
「わかった」
この先にあの女はいるのだろうか。
ハクに触れ、すぐに攻撃できるように身構えておく。
一瞬世界がぐにゃりと歪んだかと思うと、無機質なコンクリートのような素材で覆われた壁が目の前に広がった。
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