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第2部
39:気になる会話
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「報告に行くぞー。」
ライアン君をおいかけて椅子を立つ。
部屋を出たところに通りかかったギルド職員さんにギルマスの居場所を聞くと、3つ奥の部屋だといわれた。
しかし、3番目の部屋など存在しない。
奥には2つしか扉はないのだ。
伝え間違いかもしれない、と1つ目の部屋に入ってみるが、やはりそこに姿はない。
もう一つ奥の部屋にも行ってみるが、やはりいない。
んー、どうしたんだろ。
「一回受付行ってみよーぜ。」
「うん、そうだね。――――――あ、ちょっと待って!」
「ん?なんだ?」
「声、声が聞こえるの!――――静かにしてて。」
出ていこうとした時、壁の方から声が聞こえた。
思わず耳を澄ます。
『―――――――――確実に仕留めよ。我々の計画に支障が出る。失敗は許されない、5年も猶予があるとはいうものの、2年以内が望ましいだろう。』
『了解した。必ずや。』
『178も派遣したのだ、失敗したら即あれになってもらう。』
『わ、わかっている。対象はまとめた。動きやすいようにはなるだろう。』
『そうか。2”セサンカ・B・レ・3チネ・7・ルバオーット”』
『新しいところか?』
『言わせるな、当たり前だ。使うことはないだろうが、念のためだ。』
『そうか、了解した。人が来るだろう、またこちらから。』
『いや、必要ない。』
そこで会話は終わった。
「――――――なぁ、声なんて聞こえねーけど?」
「へ?いや、でも……?」
「空耳じゃねーの?」
「そう、かな?」
「とりあえず受付いこーぜ。」
歩き始めたライアン君にあわててついていきながら考える。
聞こえなかった?
確かに音量は大きくはなかったけど、静かに耳を澄まして聞こえない大きさではない。
それに、声の主の一人。
その声は、私が知っている人の声。
それは――――――
「おわったのか、なのじゃ?」
―――――ほかでもない、ギルドマスターの声である。
「あ、どこにいたんだ?」
「ちょっとよばれたのじゃ。で、どうするのじゃ?」
「結局、パーティー組むことにした。」
「そうか!よろこばしいのじゃ!さっそくとうろくを――――――あ、えれなのさいとうろくがまだだったのじゃ。あした、またきてほしいのじゃ。」
「わかった。昼過ぎ頃くる。」
「またなのじゃ!」
いつもの明るい、子供っぽい声、独特なしゃべり方ではなかったが、あの声はギルマス。
さっきまでしゃべっていた人の声をきき間違えるはずはない。
話の内容は、ギルドマスターより偉い人とかとの報告連絡だと思えば、一応は、納得はできる。
しかし、気になる点がいくつか。
一つ目は、派遣したもののことを178と番号で呼んでいたこと。
派遣、というからには、人だと思う。なのに、番号。
二つ目は、2”セサンカ・B・レ・3チネ・7・ルバオーット”という言葉。
”新しいところか?” ”使うことはないだろうが、念のためだ。” という会話から、場所である、という想像ができる。
でも、こんな長い地名、この世界にはないと思う。国、領地、町名、これらを合わせれば長くはなるだろうけど、一つでこんなに長くはない。わかりやすさが好まれているのだ。
じゃあ、暗号か何か?
でも、なんで暗号にする必要があるのか?
ギルドでは共通の暗号とかあるのだろうか?
三つ目は、ギルマスが歩いている私たちの後ろから声をかけてきたこと。
あの後ろにあったのは、私たちが話していた部屋と、会話が聞こえた部屋、誰もいなかった部屋、のみだ。
ぎるますはどこから来たのか?
あの声が本当にギルマスであっていたら、わざわざ姿を消していたか、本当に3つ面お部屋があって、扉が消えていたかのどちらかである。
まるで、心霊現象のようではないか。
あと、なぜギルマスは、しゃべり方を変えているのだろう。
会話で聞いたしゃべり方、声、あの方がギルドマスターっぽいし、仕事ができそうに感じるから、わざわざ変える必要性が思いつかない。
いつものでは、仕事ができない頼りない子供なギルドマスターである。
あと、もう一つ――――――――――――
あ、ギルド女職員Bさんだ。
「あの、お名前を教えてもらってもいいですか?」
「え?わたしのですか?」
「はい、そうです!」
「え、ええっと、あ、イナハ、です。」
「そうですか、ありがとうございます!」
イナハ、か。
178、って思っちゃうのは、あの会話に影響されすぎなのかな?
わたしの考えでは、あのギルド女職員Bさん――――イナハさんは、たぶんここに来てから日が浅い。
他の職員さんたちは、受付対応以外ではけっこうおしゃべりしてるし、『〇〇ちゃん、これお願い∼。』とか、『〇〇ちゃん後で一緒にお昼食べよ~。』とかよく聞こえて、みんな仲良しな友達、みたいな感じだ。
でも、イナハさんは、そんな風に誰かと話している様子はないし、営業スマイル以外は出していない。
「あ!ギルド女職員Aさん!」
「へ??私のこと!?」
「あ……。えっと、すみません、心の中でそう呼んでて……。な、名前はなんですか?」
「幽霊ちゃん、名づけセンスがないわ!私は、ピアナ。」
「ゆ、幽霊ちゃんではないです!生きているといっているではないですか!」
「あはは。幽霊ちゃん、面白いねー。」
「最近、面白いってよく聞くんですけど、そんなことないと思います!」
「んー?そーかな?ふふ、まあ、気にしなければいいんじゃない?」
「むー。あ、そういえば、今日はギルドマスターのお部屋に一緒に来るの、ギルド女職員Aさんではなかったのですね。」
「ピアナ、ね。ずっとそうだったんだけど、最近あの子が来てからはあの子ばっかりなのよねー。ま、仕事が減って嬉しい限りだけどね。」
「そうなのですか。それでは、ギルド女職員Aさん、さようなら。」
「ピアナ、よ。またね、幽霊ちゃん。」
んー、やっぱり、イナハさん、最近来たんだね。
178、なのかな?
ライアン君をおいかけて椅子を立つ。
部屋を出たところに通りかかったギルド職員さんにギルマスの居場所を聞くと、3つ奥の部屋だといわれた。
しかし、3番目の部屋など存在しない。
奥には2つしか扉はないのだ。
伝え間違いかもしれない、と1つ目の部屋に入ってみるが、やはりそこに姿はない。
もう一つ奥の部屋にも行ってみるが、やはりいない。
んー、どうしたんだろ。
「一回受付行ってみよーぜ。」
「うん、そうだね。――――――あ、ちょっと待って!」
「ん?なんだ?」
「声、声が聞こえるの!――――静かにしてて。」
出ていこうとした時、壁の方から声が聞こえた。
思わず耳を澄ます。
『―――――――――確実に仕留めよ。我々の計画に支障が出る。失敗は許されない、5年も猶予があるとはいうものの、2年以内が望ましいだろう。』
『了解した。必ずや。』
『178も派遣したのだ、失敗したら即あれになってもらう。』
『わ、わかっている。対象はまとめた。動きやすいようにはなるだろう。』
『そうか。2”セサンカ・B・レ・3チネ・7・ルバオーット”』
『新しいところか?』
『言わせるな、当たり前だ。使うことはないだろうが、念のためだ。』
『そうか、了解した。人が来るだろう、またこちらから。』
『いや、必要ない。』
そこで会話は終わった。
「――――――なぁ、声なんて聞こえねーけど?」
「へ?いや、でも……?」
「空耳じゃねーの?」
「そう、かな?」
「とりあえず受付いこーぜ。」
歩き始めたライアン君にあわててついていきながら考える。
聞こえなかった?
確かに音量は大きくはなかったけど、静かに耳を澄まして聞こえない大きさではない。
それに、声の主の一人。
その声は、私が知っている人の声。
それは――――――
「おわったのか、なのじゃ?」
―――――ほかでもない、ギルドマスターの声である。
「あ、どこにいたんだ?」
「ちょっとよばれたのじゃ。で、どうするのじゃ?」
「結局、パーティー組むことにした。」
「そうか!よろこばしいのじゃ!さっそくとうろくを――――――あ、えれなのさいとうろくがまだだったのじゃ。あした、またきてほしいのじゃ。」
「わかった。昼過ぎ頃くる。」
「またなのじゃ!」
いつもの明るい、子供っぽい声、独特なしゃべり方ではなかったが、あの声はギルマス。
さっきまでしゃべっていた人の声をきき間違えるはずはない。
話の内容は、ギルドマスターより偉い人とかとの報告連絡だと思えば、一応は、納得はできる。
しかし、気になる点がいくつか。
一つ目は、派遣したもののことを178と番号で呼んでいたこと。
派遣、というからには、人だと思う。なのに、番号。
二つ目は、2”セサンカ・B・レ・3チネ・7・ルバオーット”という言葉。
”新しいところか?” ”使うことはないだろうが、念のためだ。” という会話から、場所である、という想像ができる。
でも、こんな長い地名、この世界にはないと思う。国、領地、町名、これらを合わせれば長くはなるだろうけど、一つでこんなに長くはない。わかりやすさが好まれているのだ。
じゃあ、暗号か何か?
でも、なんで暗号にする必要があるのか?
ギルドでは共通の暗号とかあるのだろうか?
三つ目は、ギルマスが歩いている私たちの後ろから声をかけてきたこと。
あの後ろにあったのは、私たちが話していた部屋と、会話が聞こえた部屋、誰もいなかった部屋、のみだ。
ぎるますはどこから来たのか?
あの声が本当にギルマスであっていたら、わざわざ姿を消していたか、本当に3つ面お部屋があって、扉が消えていたかのどちらかである。
まるで、心霊現象のようではないか。
あと、なぜギルマスは、しゃべり方を変えているのだろう。
会話で聞いたしゃべり方、声、あの方がギルドマスターっぽいし、仕事ができそうに感じるから、わざわざ変える必要性が思いつかない。
いつものでは、仕事ができない頼りない子供なギルドマスターである。
あと、もう一つ――――――――――――
あ、ギルド女職員Bさんだ。
「あの、お名前を教えてもらってもいいですか?」
「え?わたしのですか?」
「はい、そうです!」
「え、ええっと、あ、イナハ、です。」
「そうですか、ありがとうございます!」
イナハ、か。
178、って思っちゃうのは、あの会話に影響されすぎなのかな?
わたしの考えでは、あのギルド女職員Bさん――――イナハさんは、たぶんここに来てから日が浅い。
他の職員さんたちは、受付対応以外ではけっこうおしゃべりしてるし、『〇〇ちゃん、これお願い∼。』とか、『〇〇ちゃん後で一緒にお昼食べよ~。』とかよく聞こえて、みんな仲良しな友達、みたいな感じだ。
でも、イナハさんは、そんな風に誰かと話している様子はないし、営業スマイル以外は出していない。
「あ!ギルド女職員Aさん!」
「へ??私のこと!?」
「あ……。えっと、すみません、心の中でそう呼んでて……。な、名前はなんですか?」
「幽霊ちゃん、名づけセンスがないわ!私は、ピアナ。」
「ゆ、幽霊ちゃんではないです!生きているといっているではないですか!」
「あはは。幽霊ちゃん、面白いねー。」
「最近、面白いってよく聞くんですけど、そんなことないと思います!」
「んー?そーかな?ふふ、まあ、気にしなければいいんじゃない?」
「むー。あ、そういえば、今日はギルドマスターのお部屋に一緒に来るの、ギルド女職員Aさんではなかったのですね。」
「ピアナ、ね。ずっとそうだったんだけど、最近あの子が来てからはあの子ばっかりなのよねー。ま、仕事が減って嬉しい限りだけどね。」
「そうなのですか。それでは、ギルド女職員Aさん、さようなら。」
「ピアナ、よ。またね、幽霊ちゃん。」
んー、やっぱり、イナハさん、最近来たんだね。
178、なのかな?
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