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第2部

54:お客様、馬車に招かれる③

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ライアン君も席に着き、3人で軽く自己紹介をする。

お互い踏み込んだことは聞かず、しゃべらずだったが、なんとなく、知り合い程度にはなったところで、夜ご飯にしよう、ということになった。




夜ポーションを飲もうとマジックバックからポーションを取出す。




「ん?エレナ、ケガでもしたのか?」




ライアン君、言葉遣い、ちょびっとだけ丁寧になりましたが、まだまだですよ!




「しておりませんよ?どうかされたのですか?」




「いや、ポーションを出したから、なにかあったのかと思って。」







ん?けが?ポーション?




……あ、普通ポーションで生活のエネルギー蓄えないんだった。

それは精霊だった……。




いつの間にか精霊界での生活が習慣になってたのかぁ。




そういえば、ごはんって久しく食べてないような?

2年前から食べてないのか。




それで大丈夫だった私、やっぱり精霊よりの人間なのか……。




栄養ドリンクだけで生きてるようなものだから、普通の人間では無理。

あと、人間界のポーションは、精霊の真似事から始まって、いろいろ伝わる過程で変わっちゃったりしているから、精霊界で使われているやつの劣化版。私のは精霊界から持ってきたものだから本家。




そうそう、最初にポーション作りの依頼受けて、下級ポーションのレシピで宝級に近いものができたのは、私の魔力が精霊に近いものだからなのだとソフィアナさんは言っていた。




あの時、聖水って言っていたのは、本物の聖水が何百分の一まで薄まったもので、精霊界と人間界が離れる直前に最後の最後に贈り物として、小さな聖水の池をつくってあげたものの名残みたいなもので、もう数百年したら普通の水のようになるだろうとのこと。精霊の森っていうのも、別に精霊がいるわけじゃない。




精霊草やマナ草も、今ほんの少し残っている精霊の影響のもので、そのうちは得なくなってしまうのではないか、と言っていた。




ポーションが人間につくれなくなったら、回復魔法や、治療魔法以外に医療が発達していないこの世界は、けっこう大変なことになるんじゃないかと思う。

ポーションが薬の代わり、というか、予防のような物だったりするのだ。







「考え事は終わった?」




「! すみません。え、ええと、ポーションを出してしまったのは、癖なのです。そ、育てていた植物にたまにあげていて、それが私の夕食のタイミングだったものですから、つい。」




いや、よく考え事終ったタイミングで話しかけられたね?

最近そういうことが多いんだけど、本当に私って顔に出やすいのかな?

気を抜いたらダメだね。




ていうか、後から考えてこの言い訳はないな。

うそっぽい。




んー、でも意外と効果あったりするのかね?

今度ためしてみよう。







「あのさ、僕、夕食、持っているんだけど、よかったら一緒にどうかな?」




サト様、用意周到!

でも、お貴族様、どうして自分で食料持ってるの?

いざとなったらそれで生き延びろ、みたいな?




「よろしいのですか?」




「もちろんだよ。これくらいしか僕には出来ないからね。」




「ありがとうございます。」




サト様は持っていたマジックバックであろうものから次々に料理を出していった。

コース料理なのかそれはもうたくさんの皿、皿、皿。




出し終えるころには、とても大きかったはずのテーブルは料理の皿で埋め尽くされていた。




……多すぎじゃない!?

三人でこの量、どうしろと!?




サト様、やっぱり高位の貴族だ。確信だよ。

お忍びならもうちょっと隠そうよ。




「これでは少し品数が少ないかもしれないが、このような場だ。これで我慢してくれ。」




いや、多いから、多すぎだからね?




「旅の途中でこのような料理を食べられるとは思っておりませんでした。十分でございます。本当にありがとうございます。」




「たいしたことじゃないよ。さ、食べようか。今日はマナーなど気にせず楽にしてよい。」




って、言われてもねぇ?

真に受けて気にしないのはよくないよね。

サト様も気にしないとか言いつつやっぱりやってるし。




あ、ライアン君が真に受けてる。

これはテーブルマナーを教えた方がいいかもしれない。




いやぁ、かーさまに感謝だよ!

かーさまの淑女教育、めちゃくちゃ役立ちます!




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