7 / 15
第3話:笑顔のランチタイム③
しおりを挟む
ルカとの楽しい時間を噛みしめていた灯里。
そのとき、ふと目に入ったのは、少し離れたところで笑っている瀬戸陽真の姿だった。
誰かと並んで笑って話している。いつもより楽しそうで、自然に相手を気遣う様子が窺える。
ーー食器を片付けてあげたり、混み合う食堂内で人にぶつからないようにしたり……
「……あの人、瀬戸くんの彼女かなぁ……」
思わず小声で呟くと、後ろの方でルカが反応する。
「え? うそ!」
慌てて立ち上がるルカ。先ほどまでのヘロヘロ状態から、真剣な目つきに一変する。
女生徒が出た隙に、ルカは陽真に詰め寄る。
「今の人、彼女?」
「ちょ、ちょっと!」
灯里は慌てて小声で突っ込む。
陽真は少し驚いたあと、苦笑して首を振る。
「いや、全然。俺が一方的に……勝手に色々やっただけで……」
否定しているけれど、少し照れた様子はいつも教室で見る表情とは違う。陽真がさっきの女子のことを意識しているのは、明らかだった。
(へぇ……誰にでも優しい瀬戸くんが、こんな顔するんだ。そうか、好きな人がいるんだ……)
灯里はちょっとくすっと笑ってしまう。なんだか微笑ましい気持ちになる。
でも、笑った直後にふと、不安が胸をよぎる。
(……ってことは、ルカのキューピッドとしての仕事って、ここで終わっちゃうのかな……? そんなのって……)
ルカといる時間が、ちょうど楽しくなってきたところだった。
ーー冗談を言い合ったり、ちょっとしたことで笑い合ったり……
それがなくなってしまうかと思うと、胸が苦しくなる。
灯里は、思っていたよりショックを受けている自分に少し驚く。
(最初はやらかしたと思ってたのに、今はもっと一緒にいたいって思っちゃってる……
ほんと、私ってチョロすぎだよね~)
そんなふうに笑い飛ばしたい気持ちになったが、表情は晴れなかった。
◇ ◇ ◇
落ち込んだ表情の灯里をルカが心配そうに覗き込む。
「……灯里、大丈夫?」
灯里はなんでもないふりをして、明るい声で返す。
「いやー、瀬戸くん好きな人いたんだぁ~、知らなかったよ~」
でも寂しい気持ちは知られたくなくて、別れの言葉はルカの目を見て言えなかった。
「ルカ、短い間だったけど、ありがと。意外と楽しかったよ」
ーーしかし
灯里の言葉に、ルカはきょとんとした顔をする。
「え? なんで?」
「だって瀬戸くん好きな人いるって……」
困惑する灯里をよそに、ルカは相変わらず軽い調子で言う。
「別に付き合ってるわけじゃないんだから、灯里のこともっと知ったら変わるかもしれないよ」
灯里に笑顔を向けつつ、ルカは軽く肩をすくめる。その無邪気な仕草に、灯里の胸のざわつきがふんわりほどけていった。
「……でも、そんな簡単にいかないでしょ……」
胸の奥は嬉しくてふわっと温かい。だけど、心の片隅では少し引っかかる。
好きな人がいる相手に、キューピッドサービスを続けてもらっていいのだろうか。そもそも陽真が好きというのも嘘だし……
ルカはふっと真剣な顔になり、灯里をじっと見つめる。
「僕はこのまま終わりたくないよ。せっかく瀬戸くんと仲良くなれてきたところなのに……」
灯里が目を合わせると、ルカはさらに続ける。
「それに……灯里のいいところ、僕ももっと知りたいんだ」
ルカのまっすぐな言葉に、灯里も目を逸らせず、彼をしっかりと見つめる。
(思ってたより、真剣に私のことを考えてくれてるんだ……)
嬉しくて心が満たされていく。
「……そっか。じゃあもうちょっとよろしくね」
少し照れくさそうに話す灯里に、ルカはくすっと笑う。
「うん。よろしく」
ルカが手を差し出すと、灯里も自然に握り返す。
二人でふっと笑い合った瞬間、灯里の心はふんわり軽くなる。
その微笑みに少し安心したのか、ルカは軽く肩をすくめ、にやりといたずらっぽく笑う。
「よし、これでもうちょっと人間界で遊べるな……」
思わず灯里も笑い返す。
「なーんだ、そっちが本音でしょ」
緊張がほぐれ、自然と笑いがこぼれる。
(ルカといると笑ってばかりだな……)
「でも、もうあんまり変なことしないでよね!」
「変なこと? してるかなぁ~?」
「もう! 自覚ないの!?」
ルカは相変わらず何が悪いのかわかっていない表情で灯里は思わず吹き出す。
(……もうちょっと、一緒にいられるんだ……)
ウキウキした気持ちが込み上げ、自然と心が軽くなる。
ホッとしたような、名残惜しさを先延ばしできたような、不思議な気持ち。
――いつまで一緒にいられるかは分からないけど……今はただ、嬉しくて仕方がない。
そのとき、ふと目に入ったのは、少し離れたところで笑っている瀬戸陽真の姿だった。
誰かと並んで笑って話している。いつもより楽しそうで、自然に相手を気遣う様子が窺える。
ーー食器を片付けてあげたり、混み合う食堂内で人にぶつからないようにしたり……
「……あの人、瀬戸くんの彼女かなぁ……」
思わず小声で呟くと、後ろの方でルカが反応する。
「え? うそ!」
慌てて立ち上がるルカ。先ほどまでのヘロヘロ状態から、真剣な目つきに一変する。
女生徒が出た隙に、ルカは陽真に詰め寄る。
「今の人、彼女?」
「ちょ、ちょっと!」
灯里は慌てて小声で突っ込む。
陽真は少し驚いたあと、苦笑して首を振る。
「いや、全然。俺が一方的に……勝手に色々やっただけで……」
否定しているけれど、少し照れた様子はいつも教室で見る表情とは違う。陽真がさっきの女子のことを意識しているのは、明らかだった。
(へぇ……誰にでも優しい瀬戸くんが、こんな顔するんだ。そうか、好きな人がいるんだ……)
灯里はちょっとくすっと笑ってしまう。なんだか微笑ましい気持ちになる。
でも、笑った直後にふと、不安が胸をよぎる。
(……ってことは、ルカのキューピッドとしての仕事って、ここで終わっちゃうのかな……? そんなのって……)
ルカといる時間が、ちょうど楽しくなってきたところだった。
ーー冗談を言い合ったり、ちょっとしたことで笑い合ったり……
それがなくなってしまうかと思うと、胸が苦しくなる。
灯里は、思っていたよりショックを受けている自分に少し驚く。
(最初はやらかしたと思ってたのに、今はもっと一緒にいたいって思っちゃってる……
ほんと、私ってチョロすぎだよね~)
そんなふうに笑い飛ばしたい気持ちになったが、表情は晴れなかった。
◇ ◇ ◇
落ち込んだ表情の灯里をルカが心配そうに覗き込む。
「……灯里、大丈夫?」
灯里はなんでもないふりをして、明るい声で返す。
「いやー、瀬戸くん好きな人いたんだぁ~、知らなかったよ~」
でも寂しい気持ちは知られたくなくて、別れの言葉はルカの目を見て言えなかった。
「ルカ、短い間だったけど、ありがと。意外と楽しかったよ」
ーーしかし
灯里の言葉に、ルカはきょとんとした顔をする。
「え? なんで?」
「だって瀬戸くん好きな人いるって……」
困惑する灯里をよそに、ルカは相変わらず軽い調子で言う。
「別に付き合ってるわけじゃないんだから、灯里のこともっと知ったら変わるかもしれないよ」
灯里に笑顔を向けつつ、ルカは軽く肩をすくめる。その無邪気な仕草に、灯里の胸のざわつきがふんわりほどけていった。
「……でも、そんな簡単にいかないでしょ……」
胸の奥は嬉しくてふわっと温かい。だけど、心の片隅では少し引っかかる。
好きな人がいる相手に、キューピッドサービスを続けてもらっていいのだろうか。そもそも陽真が好きというのも嘘だし……
ルカはふっと真剣な顔になり、灯里をじっと見つめる。
「僕はこのまま終わりたくないよ。せっかく瀬戸くんと仲良くなれてきたところなのに……」
灯里が目を合わせると、ルカはさらに続ける。
「それに……灯里のいいところ、僕ももっと知りたいんだ」
ルカのまっすぐな言葉に、灯里も目を逸らせず、彼をしっかりと見つめる。
(思ってたより、真剣に私のことを考えてくれてるんだ……)
嬉しくて心が満たされていく。
「……そっか。じゃあもうちょっとよろしくね」
少し照れくさそうに話す灯里に、ルカはくすっと笑う。
「うん。よろしく」
ルカが手を差し出すと、灯里も自然に握り返す。
二人でふっと笑い合った瞬間、灯里の心はふんわり軽くなる。
その微笑みに少し安心したのか、ルカは軽く肩をすくめ、にやりといたずらっぽく笑う。
「よし、これでもうちょっと人間界で遊べるな……」
思わず灯里も笑い返す。
「なーんだ、そっちが本音でしょ」
緊張がほぐれ、自然と笑いがこぼれる。
(ルカといると笑ってばかりだな……)
「でも、もうあんまり変なことしないでよね!」
「変なこと? してるかなぁ~?」
「もう! 自覚ないの!?」
ルカは相変わらず何が悪いのかわかっていない表情で灯里は思わず吹き出す。
(……もうちょっと、一緒にいられるんだ……)
ウキウキした気持ちが込み上げ、自然と心が軽くなる。
ホッとしたような、名残惜しさを先延ばしできたような、不思議な気持ち。
――いつまで一緒にいられるかは分からないけど……今はただ、嬉しくて仕方がない。
0
あなたにおすすめの小説
守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。
星乃和花
恋愛
【完結済:全8話】
ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて)
村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう!
問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。
半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!?
周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。
守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。
待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。
箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。
落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。
侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!?
幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。
※完結まで毎日投稿です。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる