【完結】キューピッド通販で買いました。〜通販で届いたのは、推し似のポンコツ天使でした〜

菟田野すもも

文字の大きさ
10 / 15

第5話:ハンバーガーと恋の味②

しおりを挟む
 先ほどの一件で、周囲の空気は悪意より驚きと恐怖が勝ったようだ。ルカはすっかり元気を取り戻していた。

「わー!おいしー!」
 席に着くと、早速ハンバーガーにかぶりつく。
 目を輝かせ、ニコニコ満面の笑みで食べている。

 灯里はルカの無邪気な笑顔に思わず笑ってしまう。
「……そんな幸せそうに食べる? ……じゃあこっちもどうぞ」

 灯里が自分のポテトを差し出すと、ルカはウキウキと手を伸ばす。
「いいの? じゃあ、灯里もこっちの食べて! すっごく美味しいから!」
「ルカ、相変わらず大袈裟だね~」
「本当だって~」

 ルカに促されて灯里も一口食べて、目を丸くする。
「おいしー!」
「でしょ~?」
 
 ルカがあまりに得意げに話すので、灯里は吹き出してしまう。
「ルカが作ったわけじゃないのに、ドヤりすぎだって」

「え~! だって灯里が大袈裟だっていうから。僕の言った通りだろ?」
 相変わらずの自信満々な発言のルカ。

「だから威張るところじゃないって」
 ルカの無邪気な姿に灯里は楽しそうにゲラゲラ笑う。

 同じものを食べて、顔を見合わせて笑う二人。

 二人の笑い声が重なり、温かな空気がテーブルいっぱいに広がっていく。心が触れ合う時間が、ゆったりと流れていた。

 灯里は、そんなひとときに自然と胸が満たされていくのを感じていた。
(ルカって変だけど、安心できるし、ちょっと可愛くもあって……一緒にいると居心地いいな。ずっとこのまま一緒にいられたらいいのに……)

 そんな灯里の視線に気づいたルカは、頬を緩めて笑った。小さな手の仕草や、少しの身振りからも、彼の嬉しさが伝わってくる。

 ルカもまた、灯里の笑顔に胸をくすぐられていた。
(灯里って、明るくて優しくて、やっぱりいい子だな……灯里にはずっと笑顔でいてほしいな……)

 ーーそのために僕ができるのは……

(......灯里の恋を全力で応援すること。全力で頑張ろう。絶対、灯里の恋を成就させなくちゃ)


 二人の想いは自然に重なり合いながらも――
 灯里の最初の小さな嘘が、ちょっとずつズレとなって積もりはじめていた。


◇ ◇ ◇

「人間界って楽しいなぁ。ずっといれたらいいのになぁ……」
 ルカは思わず心のうちをつぶやく。

 ふと灯里が口を開く。
「……そういえば、ルカっていつまでここにいられるの?」

「え? 灯里の恋が成就するまで。完全に失敗しても終わりだけどね」
「そうなんだ……」

(ってことは――まだしばらく一緒にいられるんだ。ーー私と瀬戸くんが進展することは絶対ないもん)

 嬉しくて顔がにやけるのが止まらない。

◇ ◇ ◇

 片付けて店を出ると、灯里の目に、陽真と女子が口論している姿が入った。
 女子はそのまま出て行ってしまう。

「灯里、行って来なよ、チャンスじゃん!」
「え? でも……」

 ルカの言葉を聞いて、灯里はふと現実に引き戻される。
 さっきまでふわふわと幸せな気分で、まるで恋人同士になったみたいに感じてたのに――
 急な仕事モード全開のルカに気持ちが追いつかなかった。

(そうだよね……ルカはキューピッドだもん)

 灯里はルカの優しい笑顔を見て、深呼吸しながら気持ちを切り替える。
 ——嫌な気持ちになることじゃないよね。私を思ってのことなんだから。
 ルカに促されるまま、陽真の元へ向かった。

「……瀬戸くん、もしかして揉めてたの?」
「あー、うん、実は……」

 陽真の恋愛相談に乗る灯里。どうやら、三角関係に悩んでいるようだ。

「確かに”トキメキ☆モンスター”の悠翔みたいだね……瀬戸くんが共感するのもわかるかも」
「そうなんだよー、めちゃくちゃ俺と似てるんだよ!」
「切ないね~!」

 同じ漫画好きということもあり二人は恋愛トークで意気投合して盛り上がる。

◇ ◇ ◇

 ルカは天使の姿に戻り、二人を遠目で見守る。

 細かい会話はルカには聞こえておらず、まさか灯里が陽真から恋愛相談を受けているとは思っていない。ルカは二人の仲が進展していると完全に誤解していた。

(二人、すごく仲良くなってるな……)

 ーーよかった……はずなのに、なぜか心から喜べない……

(おかしいな…何か胸が痛い…これ……さすがに食べ過ぎのせいじゃないよね……?)
 ルカは自分のモヤモヤの原因が何かわからずに戸惑っていた。

(いや、何も問題ないはず。灯里が笑ってるんだから、この調子で頑張らないと……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。

星乃和花
恋愛
【完結済:全8話】 ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて) 村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう! 問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。 半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!? 周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。 守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。 なろうに別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。 一部加筆修正しています。 2025/9/9完結しました。ありがとうございました。

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました

ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!  フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!  ※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』  ……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。  彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。  しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!? ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

処理中です...