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第三章✦戸惑い

戸惑い

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ズガガ....


ピカッ!!


....ゴロゴロ!



遂に雷が鳴った。

男が外を見ると....

ピカッ!!

一瞬、雷で空が明るくなり、黒い人影が映った!

ガシャーン!!

ザァァァァァァァァ

先程に増して、空が泣いている。

何者かが...
洞窟に近付いてきている!

ピカッ!!

再び、空が明るくなった時、
男は不審者の居場所を突き止めた!

洞窟から、ほぼ100メートル先にいる!

男は立ち上がり、その場に向かった!!


ザァァァァ!!!

ピカッ!

ドドーン!!....

男の身体をけたたましく、雨が打ち付ける。
男が不審者に斬りかかると同時に、その不審者も男に飛び掛かった!

ザシュ!!!!

時間にして、およそたったの30秒程の出来事だった。
男が不審者の皮を剥ぐ。
それは緑色の肌をした、地面に住み着く妖種だった。

男は洞窟に戻った。

しかし...
亜紀の姿がなかった....。


...ピシャ...ピシャ...

重い瞼を開け、亜紀は意識を戻した。

ピシャ....

頬に天井からの滴が垂れていく。

「...ここ...は..」

亜紀は辺りを見渡した。
岩に囲まれた洞窟のような場所だった。
亜紀だけ、たくさんの腐った太い木で覆われて檻の中のようだ。

六畳間ほどの広さで、松明の明かりが二ヶ所....

「ぇ....」

亜紀は身を固くした。

ドシャ...ドシャ...ドシャ...ドシャ....

この洞窟に響き渡る足音が近付いてくる。

....ドシャ...ドシャ........

それは、亜紀の前で立ち止まった。

「きゃ...」

亜紀は声に出ない程の小さな悲鳴を上げた。

「ダーシガダイ...グフフッ..」

それは、どす黒い緑色の人の形をした...妖怪だった!

「..いっ...いやっ....」

亜紀は恐怖のあまり動けなかった。

その妖怪が、檻の中に入ってきた。
似たようなどす黒い緑の妖怪が、他に三体いる。

「...やっ...こないでっ...」

亜紀の強張る顔をよそに、妖怪達は口角を上げてゲラゲラ笑っている!

「...やだっ...ぅあっ!」

中でも一番、重そうな鎧戸を着た妖怪が亜紀の顎を掴む!

「はっ...はなしてっ」

亜紀が振り払うと、妖怪の表情が一変し、形相を変えて亜紀を睨みつけた。

「グゥエガジギェ!!!!
ギャャャャ!!ギェ!!」

酷く怒りを表し、妖怪は亜紀を殴りつけた!

「はぅっ...」

亜紀が倒れると、妖怪は亜紀の上に跨がった!

「ギャアギャア!!」

「イヒヒヒヒッ!!!!」

不気味な笑い声....
妖怪は亜紀の顔を上げさせ、首筋をしゃぶり始めた。

「.....やっ...」

亜紀は抵抗するが、妖怪の力に敵わない!
必死に首を振り抵抗する!
妖怪は亜紀を押さえ付け、そして....

ビッッ!!

胸元の服が破かれた!
亜紀の白い肌があらわになる。

「ギャアギャアギャア!!!!」

「イヒャヒャヒャッ!!!!」

笑い声とともに、妖怪は亜紀の胸元に舌を這わせてきた。

「いっ..やぁぁ....」




「...ハーマンシガイ」

後方で...
聞き覚えのある低い声...!

妖怪達も振り返る。


漆黒紫の髪をした、あの男だ!

「グゲゲッ!」

妖怪達は一斉に飛び掛かった!
男は拳を交えることなく、気功で吹き飛ばす!!

ドガッ!

妖怪達は岩々にたたき付けられる。

ザシュ!

ザシュ!!ザシュ!!!!

ブシュッ!!!!

男の白の装束に、緑色の混ざった赤い血が付着する。

男は強かった....

男は事が終わると、
亜紀に歩み寄り、手を伸ばしかけた...

しかし、先に亜紀の方がその手を求めしがみつき、
男の腕の中に飛び込んだ。

「..あぁっ....
来てくれないかと...ばかり..思って...た」

亜紀はガタガタと身体を震わせていた。

「...シニョウレイ?」

前にも一度、聞いたことのある言葉...

   無事か?

亜紀は堪えていた涙をこぼした。

「もぉ無理....怖い..怖いよ..
帰りたい..元の世界に帰してぇぇ..」

うわぁぁぁ.....


この世界に迷い込んで、亜紀は泣いてばかりいた。
男は亜紀を引き離し、口元に静かに手を当てた。

  静かに...

と、言っているよぅだ。

「.....ヒック..ぅぅっ..」

亜紀は涙を堪えた。

...ガシャ...ガシャ....ガシャーン..........

幾つも、鎧を着た足音が聞こえる。

「.......やっ!」

亜紀は耳を塞いだ。
まだ同じような妖怪がウヨウヨしてるかと思うと背筋がゾッとする。

男も同じことを思ったのか、亜紀の腕を掴み、忍び足で移動を始めた。
亜紀も足音をたてないよう努力し、手を引かれるまま男の後をついていく。

が、しかし...

..ガシャ..ガシャ...ゴツゴツ!!!!..

二人の背後に緑色の妖怪が現れた!

「ひぃ!」

亜紀は悲鳴を上げる!
その時、男は舌打ちをした。

「カヌンダ!!」

  走れ!

そう聞こえる!
二人は一気に走りだした!

カツカツカツカツ......

「..あっ...もう...だめぇ..」

亜紀はすぐに息が上がった。
男はチラリと横目で亜紀を見て、ヒョイと亜紀を抱えた。

(おおおお姫様抱っこ!??)

男は穴が開いている天井を見つけ、すかさず飛び出した!

ザァァァァァァァァ!!!!

外で二人を待ち受けていたのは、大雨だ!

ザァァァァ....

男は猛スピードでその場を離れた。

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